仕事を辞めたりして、生活が苦しいと、生活保護を受給しようか迷われると思います。
そこで気になるのが、生活保護を受給するメリット・デメリットはどういうものなのか?だと思います。
生活保護のメリットと言うと「働かなくても生活するのに必要なお金が支給される」くらいしか認識がないのではないでしょうか?
実は毎月生活費がもらえる以外にも様々なメリットがあります。
また、生活保護の申請・受給することで、調査をされたり、多少の制限が掛かるなど、当然デメリットもあります。
そこで、このページでは、生活保護を受給するメリット・デメリットについて、わかりやすく解説していきたいと思います。
生活保護を受給するメリット
まず始めに生活保護のメリットについて、ご紹介します。
生活保護を受給するメリットは全部で8つあります。
それでは一つ一つのメリットについて、それぞれわかりやすくご説明します。
多少の贅沢ができるお金が毎月支給される
生活保護の最大のメリットは、何と言っても毎月決まった日に決まった金額が支給されることです。
支給日は自治体によって異なりますが、大抵は毎月1日~5日までのいずれかの日に支給されます。

支給金額についても、世帯の人数は世帯の構成員によって異なるため、一概に「毎月いくら支給される!」とは言えませんが、最も支給金額が低い単身世帯であっても、多少の贅沢ができるだけのお金が毎月支給されます。


生活保護で保障されているのは「最低生活」のはずなのに、なぜ多少の贅沢ができるのでしょうか?

その答えは生活保護では「健康で文化的な最低限度の生活」が保障されているからです。
この「健康で文化的な」がキーワードで、この文言により、生活保護では趣味や娯楽に使えるお金も支給されています。
そのため、生活保護受給者でもネットフリックスやアマゾンプライムに加入してパソコンやテレビで映画・ドラマを視聴したり、ゲームで遊ぶこともできます。



禁止されていると勘違いされがちですが、実はお酒やタバコ、パチンコ等のギャンブルをすることもできます。



海外旅行の場合は返還金の対象になりますが、旅行にだって行くことができます。

このように、生活保護を受給すると、多少の贅沢ができるお金が働かなくても毎月支給され、しかも、そのお金を、ほぼ何の制限もなく自由に使えると言うメリットがあります。

子どもにしっかりとした教育を受けさせることができる
生活保護を受給するメリットとして、子どもにしっかりとした教育を受けさせることもできます。
一昔前の新聞記事で、母子世帯の生活保護受給者が取り上げられました。
その世帯は生活保護費の支給金額が少ないから、子どもを習い事や塾に通わせられないと記事の中で訴えていました。

しかし、実態はと言いますと、生活保護受給中でも子どもにしっかりとした教育を受けさせることはできます。
子どもが増えると、児童養育加算が付くようになりますし、生活扶助費も増額されます。


また、子どもが小学校、中学校に通学を始めると、別途教育扶助が支給されるようになります。

高校生になると、教育扶助はなくなりますが、代わりに生業扶助が支給されるようになります。

生活保護では高校卒業後は就職して働くことが想定されているため、残念ながら、大学や専門学校の学費までは支給されません。


しかし、高校卒業までは、これら教育扶助・生業扶助が支給されることにより、教材代や給食費、通学のための交通費、入学準備金、部活動に掛かる費用等、様々な教育に必要な費用が支給されます。


特にシングルマザー、シングルファザーと呼ばれる母子家庭・父子家庭の場合、子どもが病気等をした場合に仕事を休まなければいけないため、正社員やフルタイムで働くことは難しく、生活が非常に苦しいと思います。
しかし、生活保護を受給すると、母子家庭・父子家庭の場合は、母子加算も付くことから、普通に働くよりも遥かに多くのお金を得ることができるため、子どもの教育に力を入れる余裕もできます。


このように、働きながら子育てをするのは非常に大変ですが、生活保護を受給することで、時間的にも金銭的にも余裕ができ、子どもにしっかりとした教育を受けさせることができると言うメリットがあります。
子どもを優先的に保育園に入園させることができる
生活保護のメリットとして、子どもを優先的に保育園に入園させることができます。

現在働いていなくても、また、病気等で働ける状態になかったり、そもそも働く気が一切ない場合であっても関係なく、生活保護を受給していると言うだけで、優先的に保育園に入園させることができます。
もちろん、保育料は無料です。
働いている人よりも生活保護受給者を優先するとは何事だ!と言うクレームを市民の方から受けることもありますが、生活保護受給者を優先する理由は、生活保護を早く脱却してもらえるように、まずは働く環境を整えるためです。
当然、保育園に入園させた以上は治療に専念したり、就職活動を積極的にしなければいけないため、ケースワーカーによる指導も厳しくはなりますが、このように、生活保護を受給すると、子どもを優先的に保育園に入園させることができます。

ちなみに幼稚園にも入園させることができますが、幼稚園の方が自己負担額が多いため、保育園に入園させる方がメリットがあります。

無料であらゆる医療行為を受けられる
生活保護のメリットとして、あらゆる医療行為を無料で受けることができます。
生活保護を受給すると、医療扶助が支給されるようになります。

この医療扶助により、国民健康保険の保険給付の対象となるサービスは全て無料で受けることができます。
例えばガンになった場合、入院して抗がん剤による薬物療法やガンの摘出手術をしますが、それらも全て無料で受けられます。


残念ながら、放射線治療の「陽子線治療」や「重粒子線治療」の他、「内視鏡手術支援ロボット(ダビンチ)」による患部の切除手術など、いわゆる先進医療は、国民健康保険のサービス対象外のため、医療扶助は支給されません。
とは言え、先進医療と言えば聞こえは良いですが、先進医療とは要するに国がまだ認可していない危険な医療行為であり、非常にリスクの高い治療法であるため、受けられなくても、特に支障はありません。
注意点として、病院を初めて受診する場合は、医療券を発行してもらう必要がありますが、そのひと手間だけすれば、後は継続して医療扶助を受けることができます。


「生活保護を受けたくない!」と思っている方も入院中は働けないことから、病気が治るまでの間だけ生活保護を受給し、治療完了後に生活保護を辞めると言う方もいます。

このように、生活保護を受給すると、医療扶助により、あらゆる医療行為を無料で受けることができると言うメリットがあります。
各種支払いが免除・減免される
生活保護のメリットとして、各種支払いが免除・減免されるようになります。

生活保護を所管とする福祉事務所は市役所内にあるため、生活保護が受給中であると言う情報が共有され、国民健康保険料や国民年金保険料、住民税、固定資産税、上下水道の使用料等の支払いが免除・減免されます。
過去に滞納した税金も3年間生活保護を受給し続けることで、回収不可と見なされ消滅します。

その他にも、生活保護を受給すると、NHKの放送受診料も免除になります。
ただし、注意点として、免除申請をしないといけません。
福祉事務所の窓口に「放送受診料免除申請書(全額免除)」と「受信料免除専用の封筒」があるので、忘れずに手続きをしましょう。

なお、免除されると勘違いされる方が多いですが、残念ながら電気、ガス等の光熱費については、免除や減免の対象とはなりません。

このように、生活保護を受給すると、各種支払いが免除・減免されると言うメリットがあります。
就職や仕事に役立つ資格や技能を無料で取得できる
生活保護のメリットとして、就職や仕事に役に立つ資格や技能を無料で取得することができます。
生活保護には8つの扶助があり、そのうちの生業扶助では、高校生の学費等の他に、就職するために必要な費用が支出されます。


その生業扶助の支給項目の中に技能習得費があり、これを活用することで、資格取得や技能習得に掛かる実額費用全額が生活保護費から支給されます。

具体的には、フォークリフト、訪問介護員2級養成研修課程修了(旧ホームヘルパー2級)、美容師の資格等の資格を取得することができます。
原則は1つの資格につき年間最大81,000円支給されますが、例外もあります。
自立支援プログラムに基づく場合で1年間のうちに複数の資格を習得する必要がある場合は1年間で最大216,000円まで支給されます。
また自立助長に資することが確実に見込まれる場合は上限380,000円まで支給されます。
この例外を利用することで自動車運転免許の取得も可能です。

このように、生活保護を受給すると、就職や仕事に役立つ資格や技能を無料で取得でき、例外を活用することで、自動車運転免許まで取得できると言うメリットがあります。
就職してもしばらくは働きながら生活保護を受給できる
生活保護のメリットとして、就職しても、しばらくは働きながら生活保護を受給することができます。
働き始めたら生活保護を辞めなくてはいけないと勘違いされている方が多いですが、生活保護は働きながらでも受給することができます。

生活保護の条件である最低生活費以上の収入を得るようになった場合は、生活保護の要件を満たさなくなるため、生活保護は廃止になりますが、最低生活費以下の収入であれば生活保護を受給し続けることができます。

例えば最低生活費が10万円の場合、働いて63,000円の給料収入を得るようになったとしても、まだ最低生活費以下のため、生活保護を受給し続けることができます。
もちろん、給料がある分、生活保護費は減額されますが、給料分全額が減額されるわけではありません。
生活保護受給中に給料収入を得た場合、基礎控除等があるため、この基礎控除分、働いた方が月々に使えるお金が増えるメリットがあります。

例えば先程と同様に最低生活費が10万円、給料収入が63,000円の場合、基礎控除額は20,000円になるため
最低生活費10万円-(給料収入63,000円-基礎控除20,000円)=57,000円
支給額57,000円+給与収入63,000円=12万円
となり、月に使えるお金が20,000円増えます。
このように、生活保護を受給すると、働いて足りない分を生活保護費として受給することができますし、給料収入が増えれば、増えるほど、基礎控除も増えるため、より毎月の生活が豊かになると言うメリットがあります。

生活保護を受給するデメリット
次に生活保護のデメリットについて、ご紹介します。
生活保護を受給するデメリットは全部で6つあります。
それでは一つ一つのデメリットについて、それぞれわかりやすくご説明します。
定期的にケースワーカーが訪問調査にやってくる
生活保護のデメリットとして、数ヶ月に1度、定期的にケースワーカーが訪問調査にやってきて、最近の生活状況等の聞き取りがあります。

訪問頻度は世帯の格付けによって決まり、生活保護を受給したばかりの時は毎月のように訪問調査があり、生活状況が安定してきたと判断されれば訪問頻度が少なくなり、3ヶ月に1度の訪問になります。
老人ホームに入居したり、長期入院している場合でも半年に1回、もしくは1年に1回は訪問調査があります。

訪問調査の内容ですが、就職活動の状況や通院状況、子どもの通学状況、生活環境に変化がないかを確認されます。
中には、居住実態がない場合や世帯員が増減している場合、認知症が発症している場合、子どもが虐待を受けている場合もあるため、ケースワーカーが家の中に入って家財等、家の中の状態をチェックされます。
なお、訪問調査をする場合には、事前連絡をすると意味がないため、何の連絡もなくケースワーカーが、ある日、突然家にやって来ます。
しかも、ケースワーカーは危険な仕事のため、必ず2人組で来ますし、女性職員が少ないため、特に若い女性は訪問調査を嫌がります。
このように、生活保護を受給すると、ケースワーカーが突然やって来て、家の中の様子を確認されたり、近況について根掘り葉掘り聞かれると言うデメリットがあります。
扶養義務調査で親族にバレる
生活保護のデメリットとして、生活保護を申請すると扶養義務調査をされるため、親族に生活保護を受給しようとしていることがバレます。


民法第877条に「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」と定められています。
また、生活保護法第4条第2項に「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、
すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」と定められています。
これらの法律を根拠に福祉事務所は生活保護の申請があった場合に、生活保護申請者の親族等に対して扶養義務調査を行います。
扶養義務調査の対象者ですが、絶対的扶養義務者と呼ばれる直系血族及び2親等以内の親族(祖父、祖母、両親、兄弟姉妹、子、孫等)には必ず扶養義務調査が行きます。
扶養義務調査をする目的は、親族等が申請者に対して経済的、精神的に援助できるかどうか把握するためです。
経済的援助とはお金や食料等の仕送りのことです。
精神的援助とは見守りや各種手続きの保証人や代理人になることです。
「経済的援助は、まず受けられないから扶養義務調査は辞めるべきではないか?」と言う声が多いですが、もちろん、福祉事務所も経済的援助を期待してはいません。
しかし、精神的援助は絶対に必要です。
勘違いされている方が多いですが、ケースワーカーは各種手続きの保証人や代理人にはなれません。
例えば入院が必要な場合であっても、家族の援助がなければ入院もできませんし、入院期間中の電気・ガス等を止めることもできません。
そのため、DVや虐待等により、住民票の写し等の交付等を制限しているなど、特別な事情がある場合は扶養義務調査はしませんが、「親に生活保護を申請したことがバレたら怒られる」と言った理由では、扶養義務調査を拒否することはできません。
このように、生活保護を受給すると、扶養義務調査により、親・兄弟等の親族に生活保護を申請していることが知られてしまうと言うデメリットがあります。
自動車やバイクに乗れない等の制限がある
生活保護のデメリットとして、自動車やバイクの所有・運転ができなくなる等の制限が掛かります。


都会だと電車やバス等の公共交通機関が充実しているため、大した問題ではありませんが、田舎の場合、公共交通機関が発展しておらず、自動車やバイクがないと買い物に行くのも大変であったりと意外と死活問題だったりします。
では、なぜ自動車やバイクの所有や運転が認められないのか?
理由はシンプルで自動車やバイクの維持費にお金が掛かることと、事故を起こした場合に相手方に十分な保障をすることができないからです。
自動車やバイクを所有すると、駐車場代、ガソリン代、自動車税、保険代、車検代など様々な維持費が掛かります。
生活保護費だけで、それらの経費を賄うことは不可能です。
また、生活保護受給中の方で指導指示を無視して自動車やバイクに乗っている人がいますが、そういう方々は維持費を抑えるために、大抵は任意保険に加入していません。
そのため、事故を起こして相手方が怪我等をした場合に治療費や慰謝料等支払うことができません。
任意保険に加入していないことで、生活保護受給者が困るなら自業自得ですが、実際は事故で怪我させられた方が治療費や慰謝料等を請求することができず、泣き寝入りするしかないため、生活保護受給者の自動車やバイクの運転を固く禁止しています。
ただし、旅行先でレンタカーに乗るくらいはグレーではありますが可能です。


その他にも生活保護を受けると様々な制限が掛かります。

このように、生活保護を受給すると、自動車やバイクの所有・使用ができない他、様々な制限が掛かると言うデメリットがあります。
福祉事務所に対して報告義務がある
生活保護のデメリットとして、何かしらの変化があった場合は、福祉事務所に対して逐一報告する義務があります。
福祉事務所には調査権限があるため、いちいち報告をしなくても、調べることができます。
だからと言って、生活保護受給者が生活の変化について報告をしなくて良いわけではありません。
もしも報告を怠り、福祉事務所の調査によって判明した場合、最悪の場合、不正受給と見なされ徴収金として、生活保護費を返さなくてはいけなくなってしまうこともあります。


このように、生活保護を受給すると、生活の変化等が少しでもあれば面倒でもケースワーカーを通して福祉事務所に報告する義務があると言うデメリットがあります。
ケースワーカーの指導指示には従わないといけない
生活保護のデメリットとして、ケースワーカーの指導指示には、必ず従わなければいけません。

生活保護の受給が開始されると、担当ケースワーカーが付きます。

この担当ケースワーカーが生活保護受給者の相談に応じたり、各種調査を行い、生活指導、通院指導、就労指導など、生活保護受給者が精神的にも経済的にも自立できるようにサポートを行います。
生活保護受給者自身も生活保護を受ける以上は、治療に専念する、就職活動を行うなど、様々な義務を負うため、ケースワーカーから受けた様々な指示には必ず従わなければいけません。
そして、もしも、ケースワーカーからの指示に従わなければ、最悪の場合、生活保護を廃止されてしまいます。

1度や2度、指導指示に従わないくらいで「すぐに生活保護廃止!」とはなりませんが、数回の口頭指導の後に文書で指導指示を受けたら要注意です。

文書で記載された指導内容を期限までに実施しなければ問答無用で職権により生活保護が廃止されてしまいます。
このように、生活保護を受給すると、ケースワーカーから受ける様々な指導指示に従わなければいけないと言うデメリットがあります。
国の都合で減額され生活できなくなる可能性がある
生活保護のデメリットとして、財政状況等、国の都合によって、急遽、生活保護の支給金額等が減額され、生活が苦しくなる可能性があります。
基本的には憲法で守られていますが、財政状況等によっては、生活保護費の支給金額が減額され、生活が苦しくなる可能性があります。
世界情勢を見たら分かる通り、現在、日本の主要産業である自動車は窮地に陥っていますし、今後世界の中心となるであろう産業分野のICT関連では、かなり遅れを取っています。
経済状況が悪化すれば失業者も必然的に増えますし、労働者の給料も下げられます。
そんな中、生活保護受給者だけ、今の生活水準を維持できるわけがありません。
世論によって、必ず生活保護費の減額も声高に叫ばれるようになり、その結果、実際に生活保護費が減額される危険性があります。
最悪の場合、生活保護制度そのものが破綻してしまう可能性だってあります。
このように、生活保護に頼りきってしまうと、生活保護の支給金額が減額された場合や制度そのものが破綻してしまった場合に、為す術がなく、国の動向に振り回されてしまうと言うデメリットがあります。
まとめ
生活保護のメリット・デメリットについて、できるだけわかりやすくご説明させていただきました。
生活保護を申請しようかどうか迷っている方は、上記のメリット・デメリットを参考に、どうするべきか判断していただけたらと思います。
そして、生活保護を申請すると決めた方は、下記ページにて、申請方法等についてまとめているので、ぜひご参考にしてみて下さい。

その他、生活保護に関する様々な疑問については、下記にまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
https://seikathuhogomanabou.com/category/qa/
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