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生活保護法第63条返還金と第78条徴収金の違いとは?

不正受給

福祉事務所は本来支給する金額よりも多くの生活保護費を支給してしまった場合に、
生活保護法第63条返還金又は生活保護法第78条徴収金を根拠に
生活保護者から返還又は徴収することができます。

返還金も徴収金も生活保護受給者から生活保護費を返しもらうと言う意味では、
同じものですが、意味合いが全く異なります。

このページでは返還金と徴収金の違いについて説明したいと思います。
返還方法についてはQ不正受給が発覚した場合の取扱いは?を参照してください。

では、まず返還金、徴収金について詳しく見ていきましょう。

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63条返還金とは

返還金は不正受給に至った経緯が悪質ではないと認められた場合に適用されます。

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また、システムの関係等で生活保護費を多く支給してしまった場合も返還金として取り扱われます。

原則全額返還対象になりますが、例外として勤労控除自立更生費の控除が認められる場合があります。

勤労控除とは

勤労控除とは、給与収入のページにある基礎控除、未成年者控除、新規就労控除のことです。

例:最低生活費10万円の世帯で給与収入63,000円があることが申告によって判明し、勤労控除が認められた場合
既に支給した額=10万円
最低生活費10万円-(給与収入63,000円-基礎控除20,000円)=本来支給すべき金額57,000円
既に支給した額10万円-本来支給すべき金額57,000円=返還金43,000円
この場合43,000円福祉事務所に返さないといけません。

自立更生費とは

自立更生費とは、自立更生に必要だと認められる費用のことです。
こういう場合に認められるといった明確な基準はありません。
エアコン、冷蔵庫、洗濯機などの家電の購入費が自立更生費として認められることが多いです。

自立更生費として認められる金額の上限は特に決まりはありませんが
大体返還金額の1割程度、最大でも10万円程度です。

以前は年金の遡及金でも自立更生費が認められていましたが、
最近は、ほとんど認められていません。

なぜなら、自立更生費として認めてしまうと
年金を受給していない方(手続きをサボった方)が最大10万円も得をするからです。

生活保護法は他法他施策優先です。そのため、本来であれば自分で年金受給権があるか調べて
手続きまですることが正しい姿です。

ところが年金の遡及金に対して自立更生費を認めてしまうと、
年金を受給していない方(手続きをサボった方)を
優遇することになり、本来の趣旨に反するため、現在は認められていません。

参考

生活保護法第六十三条
被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、
保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は
市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に
相当する
金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

78条徴収金とは

徴収金は不正受給に至った経緯が悪質であると認められた場合に適用されます。

返還金との違いは、控除が一切認められない点です。

さらに平成26年7月1日の法改正により、最大で不正受給した金額の40%を上乗せして徴収することが
できるようになりました。

例:100万円の不正受給があったことが判明した場合
不正受給した金額100万円+罰則金40万円(不正受給した金額100×40%)=徴収金140万円
この場合、不正受給した金額は100万円ですが、更に40万円返還しなければなりません。

ただ実際に徴収金額を上乗せすることは、ほとんどないと思います。
なぜなら不正受給した金額すら回収することが難しいからです。

そもそも生活保護受給者は徴収金を払える資力がありません。(だから生活保護受給中なわけですが)
そして、月々の返還額も最低生活費の1割が上限のため、長期に渡ります。
長期に渡るほど返還中に死亡したり、所在不明になる等、回収できなくなる確率が高くなります。

回収できない不良債権を増やせば増やすほど、自治体の財政を圧迫してしまうことになるため
余程のことがない限り、自治体としても徴収金額の上乗せをしたくはありません。

参考

生活保護法第七十八条
不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、
保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の額の全部又は一部を、
その者から徴収するほか、その徴収する額に百分の四十を乗じて得た額以下の金額を
徴収することができる。

 

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返還金と徴収金の違い

返還金と徴収金の違いを簡単にまとめると以下のようになります。

63条返還金78条徴収金
不正受給の経緯悪質ではない悪質である
控除の有無控除あり(勤労控除・自立更生費)控除なし
上乗せの有無上乗せ無し上乗せあり(最大40%)

返還金と徴収金の判定基準

明確な基準はありません。
そのため、担当ケースワーカーの判断に依ります。
基本的には収入があった時に自発的な申告があったかどうかが基準になります。

すぐに申告があれば返還金として処理されることが多いですが、申告が遅い場合や
収入調査金融機関調査等の各種調査で発覚した場合は徴収金として処理されます。

また、収入が発生することが判明している場合(年金や保険金の支払い等)は、一括で
返還するかどうかで取扱いが変わります。

返還する約束をしていても、使い込んでしまい一括返還されないことが、しばしばあります。
そのような場合は徴収金として処理されます。

収入が発生することがわかっていたら、差し押さえたら良いのでは?
と思うかもしれませんが、福祉事務所には差し押さえる権限がないため
生活保護受給者に対して指導することしかできず、結果、徴収金になることがあります。

1.収入があったらすぐに担当ケースワーカーに申告すること。
2.担当ケースワーカーの指示が出るまでお金は使わずにとっておくこと。

上記2点を守れば、徴収金になることはないため、収入があった場合は
すぐに担当ケースワーカーに相談しましょう。

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