Q 健康でわざと働かない生活保護受給者を役所はなぜ働かせないの?
A 生活保護受給者は職業選択の自由で守られているからです。
「病気や障害等があって生活保護を受給しているのはわかる。しかし、特段病気や障害もなく、至って健康な人が、なぜ生活保護を受給しているんだ!!そして、そのような生活保護受給者に対してケースワーカーは何をしているんだ!!キチンと就労指導しろ!!これだからお役所仕事は!!」
と福祉事務所でケースワーカーとして働いていると、上記のような指摘を市民の方から受けることが多々あります。

市民の方々の気持ちは凄くよくわかります。
では、なぜわざと働かない生活保護受給者に対して役所は動かないんでしょうか?仕事をサボっているのでしょうか?気になるところだと思います。
そこで、このページでは、なぜ健康なのに働かない生活保護受給者がいるのか?について、わかりやすくご説明します。
生活保護の条件は収入が最低生活費以下であることのみ
そもそも病気や障害がなくても生活保護を受給できるのでしょうか?
答えは病気や障害がなく健康そのものであっても生活保護を受給することができます。
なぜなら、現在の生活保護の条件は「世帯の収入が最低生活費以下であること」だけだからです。


一昔前までは、働ける健康状態であれば、生活保護を受給することができなかったんですが、バブル崩壊後、不景気となり、働けないのは個人の責任ではなく、社会にも責任があると言う考えから、病気等がなく、いたって健康であっても世帯の収入が最低生活費以下であれば、生活保護を受給できるようになりました。
生活保護受給者への就労支援は充実している
生活保護には8つの扶助があります。

その8つの扶助のうち、生業扶助から世帯の収入増加、又は自立を助長する上で必要な費用を支出できることから、就労支援は非常に充実しています。
生業扶助の例を挙げると、下記のような支援制度があります。





また、資格取得費に関しては条件を見たせば自動車の免許の取得費用も出すこともできます。

これだけの支援体制が整っていて、なぜ生活保護受給者を就労させることができないのでしょうか?
生活保護受給者は職業選択の自由に守られている
日本国憲法第22条で、全ての国民は職業選択の自由が認められています。
この職業選択の自由が担当ケースワーカーが就労させられない最大の原因です。
もちろん本人が嫌がっているのに女性なら風俗、男性なら土木等の肉体労働と言った仕事を強制させられるのは問題です。
そのため、職業選択の自由が認められるべきだと思います。
しかし、職業選択の自由が認められることから例えば
「今まで経験したことのある仕事以外したくない。」
「正社員採用でないと働きたくない。」
「年収600万円以上は最低欲しい。」
と言うような理由で就職しなくても、職業選択の自由で守られてしまっているのが現状です。
そのせいか、最近は年配の方だけでなく、若くて働き盛りの人が生活保護を受給するケースも増えてきています。

ケースワーカーは生活保護受給者に対して就労指導できないのか?
生活保護受給者が就職活動自体をしない場合は、就労活動をするように指導することができます。


そして、その指導指示に従わない場合は、生活保護の停止・廃止と言った対応をすることもできます。


しかし、生活保護受給者がハローワークに行く等、形だけでも何かしらの就職活動をしていれば、職業選択の自由があることから、それ以上の指導をすることはできません。
「いつまでに就職するように指導すれば職種を限定しているわけではないので、良いのでは?」と思うかもしれません。
しかし、その期間内に本人の希望する職種がない場合は、「本人の意志に背く就労を強制させた」と言うことになってしまうため、期間を定めた指導もすることができません。
わざと働かない生活保護受給者にケースワーカーができること
生活保護受給者に対して担当ケースワーカーができることは、生活保護開始後半年~1年以内に就労させるように一生懸命支援することだけです。
生活保護を受給開始した当初は何とか就労しようと努力するため、生活保護を脱却するモチベーションが高い最初のうちに就労させるしかありません。
生活保護を受給すると働かなくても最低生活は維持できますし、世帯の状況によっては、働くよりも良い生活をすることができます。


受給期間が長くなれば、長くなるほど、やる気が下がり、最終的には「求職活動はするけど、働く気もないし、働かない」と言う状態に陥ってしまいます。
実際は少額でも働いて給料収入を得ながら生活保護を受給する方が、生活保護受給者にとっても月々に使えるお金も増えるため良いんですが、なかなか理解してもらえません。


わざと働かない生活保護受給者を働かせるには法改正しかない
生活保護を受給していない場合は、明日の生活に困るため、就ける職業に就くしかありません。
しかし、生活保護を受給していると、時間的にも精神的にも仕事を探す余裕できます。
それは、それで良いことなんですが、余裕がありすぎて、いつまでも就職することができなくなります。
そのため、生活保護受給者に対して職業選択の自由を認めつつも、健康で働ける人に対しては、もう少し強制力のある指導指示ができるように生活保護制度そのものを改正するしかないのでは?と個人的には思います。
改正されなければ現状では職業選択の自由を悪用されると、ケースワーカーはどうすることもできません。
まとめ
生活保護費は役所のミスでも返還しなければいけないのか?また、逆に支給金額が少ない場合に追加支給されるのか?について、ご説明させていただきました。
上記をまとめると
- 病気や障害等がない健康な人でも生活保護を受給することができる
- 生活保護受給者に対しても就労支援は充実している
- 生活保護受給者は職業選択の自由で守られている
- 生活保護受給者に対して就労指導はできるが、就職活動を形だけでもしていれば、それ以上指導することはできない
となります。
その他、生活保護に関する様々な疑問については、下記にまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
https://seikathuhogomanabou.com/category/qa/