Q 健康でわざと働かない生活保護受給者を役所はなぜ働かせないの?

Q&A

Q 健康でわざと働かない生活保護受給者を役所はなぜ働かせないの?
A 生活保護受給者は職業選択の自由で守られているからです。

「病気や障害等があって生活保護を受給しているのはわかる。しかし、特段病気や障害もなく、至って健康な人が、なぜ生活保護を受給しているんだ!!そして、そのような生活保護受給者に対してケースワーカーは何をしているんだ!!キチンと就労指導しろ!!これだからお役所仕事は!!」

と福祉事務所でケースワーカーとして働いていると、上記のような指摘を市民の方から受けることが多々あります。

ケースワーカーとは?仕事内容は?
生活保護受給者には、必ずケースワーカー(CW)と言う担当の人がつきますが、このケースワーカーとは、そもそも何者なのか?どういう仕事をするのか?よくわからないと思います。そこで、このページではケースワーカーはどうい人なのか?仕事内容は?など、...

市民の方々の気持ちは凄くよくわかります。

では、なぜわざと働かない生活保護受給者に対して役所は動かないんでしょうか?仕事をサボっているのでしょうか?気になるところだと思います。

そこで、このページでは、なぜ健康なのに働かない生活保護受給者がいるのか?について、わかりやすくご説明します。

生活保護の条件は収入が最低生活費以下であることのみ


そもそも病気や障害がなくても生活保護を受給できるのでしょうか?

答えは病気や障害がなく健康そのものであっても生活保護を受給することができます。

なぜなら、現在の生活保護の条件は「世帯の収入が最低生活費以下であること」だけだからです。

生活保護の条件はたった1つ!
生活保護は最後のセーフティネットと呼ばれており、生活に困窮された人のための、最後の救済措置です。生活保護とは資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、...
生活保護の最低生活費とはいくら?最低生活費の計算方法は?
よく生活保護制度の中で、「最低生活費」と言う単語を聞くと思います。それもそのはず、生活保護の条件が「世帯の収入が最低生活費以下であること」なので、最低生活費が非常に重要な指標となります。しかし、ケースワークの現場でも、実際によく使う言葉なん...

一昔前までは、働ける健康状態であれば、生活保護を受給することができなかったんですが、バブル崩壊後、不景気となり、働けないのは個人の責任ではなく、社会にも責任があると言う考えから、病気等がなく、いたって健康であっても世帯の収入が最低生活費以下であれば、生活保護を受給できるようになりました。

生活保護受給者への就労支援は充実している


生活保護には8つの扶助があります。

生活保護の8つの扶助とは?特性・要件・支給内容について解説
生活保護には全部で8つの扶助があります。生活保護の支給はどれも必ず、この8つの扶助のどれかに該当します。ただし、自動的にもらえるわけではなく、必ず申請が必要です。このページではそれぞれの特性・要件・内容・支給金額等についてわかりやすく解説しています。

その8つの扶助のうち、生業扶助から世帯の収入増加、又は自立を助長する上で必要な費用を支出できることから、就労支援は非常に充実しています。

生業扶助の例を挙げると、下記のような支援制度があります。

資格取得費
生活保護受給者が就職するために必要とする資格取得・技能習得費用については、資格取得費が臨時的に支給されます。正式名称は技能習得費です。しかし、技能習得よりも資格取得に利用されることが多いためこのページでは資格取得費として説明します。ちなみに...
就職が決まると就職支度費が支給されます。
就職の決まった生活保護受給者が、就職のため直接必要とするスーツや靴等の購入費用については、就職支度費が臨時的に支給されます。また、初任給が支給されるまでの通勤費についても、就職支度費から支給されます。ちなみに…就職支度費は生業扶助に分類され...
就労自立給付金が創設されました。
平成26年7月1日から就労自立給付金が創設されました。簡単に言うと就労して生活保護を脱却したら、お金を支給する制度です!!趣旨生活保護受給中は固定資産税、国民健康保険料、国民年金保険料、介護保険料等が免除されています。しかし、生活保護廃止後...
就労意欲喚起等支援事業
「就労意欲喚起等支援事業とは就労意欲の喚起を図るための支援を民間職業紹介事業者等に委託して実施し、既存の就労支援策と併せて生活保護受給者の更なる就労支援策の充実を図る事業です。」(厚生労働省のHPより抜粋)今までは就労指導についても担当ケー...
就労活動促進費が創設されました。
平成25年8月1日から生活保護法が改正されて就労活動促進費が創設されました。支給の趣旨生活保護では能力に応じて勤労に励み、生活の維持、向上に努めること等を規定しています。しかし、就職活動を、すればするほど電話代や面接会場までの交通費がかかり...

また、資格取得費に関しては条件を見たせば自動車の免許の取得費用も出すこともできます。

Q 車の運転免許を取得できますか?
Q車の運転免許を取得できますか?A条件は難しいですが担当ケースワーカーに就労が確実と認めさせれば支給されます。生活保護受給中の場合、原則として自動車を運転することはもちろん、保有することも禁止されています。しかし自動車のページにもあるように...

これだけの支援体制が整っていて、なぜ生活保護受給者を就労させることができないのでしょうか?

生活保護受給者は職業選択の自由に守られている


日本国憲法第22条で、全ての国民は職業選択の自由が認められています。

この職業選択の自由が担当ケースワーカーが就労させられない最大の原因です。

もちろん本人が嫌がっているのに女性なら風俗、男性なら土木等の肉体労働と言った仕事を強制させられるのは問題です。

そのため、職業選択の自由が認められるべきだと思います。

しかし、職業選択の自由が認められることから例えば
「今まで経験したことのある仕事以外したくない。」
「正社員採用でないと働きたくない。」
「年収600万円以上は最低欲しい。」
と言うような理由で就職しなくても、職業選択の自由で守られてしまっているのが現状です。

そのせいか、最近は年配の方だけでなく、若くて働き盛りの人が生活保護を受給するケースも増えてきています。

生活保護は20代でも受給できる?20代の場合の条件や金額、注意点等について
20代と言うと、若く健康で、これから社会に出て仕事をしていく年代でもあることから、生活保護を受給できないのでは?と思う方が多いのではないでしょうか?結論から言いますと、実は生活保護は20代でも受給することができます。しかも、病気や障害等の特...

ケースワーカーは生活保護受給者に対して就労指導できないのか?


生活保護受給者が就職活動自体をしない場合は、就労活動をするように指導することができます。

就労指導ってどんなことするの?
一昔前までは健康なのに就職できないのは、個人の責任と見なされていたため生活保護の条件を満たせず生活保護を受給することができませんでした。しかし、時代は変わり、不景気となったため就職できないことを個人だけの責任で片付けることができなくなりまし...
Q 担当ケースワーカーの指導指示に従わない場合どうなりますか?
Q 担当ケースワーカーの指導指示に従わない場合どうなりますか?A 最悪の場合、生活保護の停止又は廃止になります。生活保護法第二十七条を根拠に担当ケースワーカーは生活保護受給者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示...

そして、その指導指示に従わない場合は、生活保護の停止・廃止と言った対応をすることもできます。

生活保護が打ち切りになる条件とは?打ち切り後に再申請できる?
生活保護受給中でも、ある日突然、生活保護費の支給がとまる「打ち切り」になることがあります。別途、収入や貯金等の資産があれば、突然、生活保護の支給がとまっても、すぐに生活に困ることはありませんが、生活保護費しかない場合は、打ち切られると、生活...
Q 「生活保護の廃止」「生活保護の停止」「支給なし」って違うの?
Q 「生活保護の廃止」「生活保護の停止」「支給なし」って違うの?A どれも月々の生活保護費の支給はありませんが全く違います。毎月1日の生活保護費の支給がないところは共通していますが「生活保護の廃止」「生活保護の停止」「支給なし」では、その内...

しかし、生活保護受給者がハローワークに行く等、形だけでも何かしらの就職活動をしていれば、職業選択の自由があることから、それ以上の指導をすることはできません。

「いつまでに就職するように指導すれば職種を限定しているわけではないので、良いのでは?」と思うかもしれません。

しかし、その期間内に本人の希望する職種がない場合は、「本人の意志に背く就労を強制させた」と言うことになってしまうため、期間を定めた指導もすることができません。

わざと働かない生活保護受給者にケースワーカーができること


生活保護受給者に対して担当ケースワーカーができることは、生活保護開始後半年~1年以内に就労させるように一生懸命支援することだけです。

生活保護を受給開始した当初は何とか就労しようと努力するため、生活保護を脱却するモチベーションが高い最初のうちに就労させるしかありません。

生活保護を受給すると働かなくても最低生活は維持できますし、世帯の状況によっては、働くよりも良い生活をすることができます。

生活保護は楽すぎる?まじめに働くよりも生活保護の方が良い?
生活保護の世間一般的なイメージは、「働かずに楽してお金をもらっている」と言うイメージが強いのではないでしょうか?ケースワーカーをしていると市民の方から「生活保護受給者は楽すぎではないか?もっと厳しく指導しろ!」と厳しい意見を言われることも多...
母子家庭の生活保護費はいくら?働くよりも贅沢な暮らしができる?
「母子家庭の生活保護受給者はずるい!生活保護費をもらいすぎている!」等の声をよく聞きますが、実際に母子家庭だと生活保護費はいくらもらえるのでしょうか?パート・アルバイトで働くよりも生活保護をもらった方が贅沢な暮らしができるのでしょうか?また...

受給期間が長くなれば、長くなるほど、やる気が下がり、最終的には「求職活動はするけど、働く気もないし、働かない」と言う状態に陥ってしまいます。

実際は少額でも働いて給料収入を得ながら生活保護を受給する方が、生活保護受給者にとっても月々に使えるお金も増えるため良いんですが、なかなか理解してもらえません。

生活保護は働きながらでも受給できるの?仕事で得た収入の取り扱いは?
「生活保護を受けながら仕事はできない!」「生活保護受給中は働いたら駄目!」「働きだしたら生活保護がすぐに廃止させられる!」と言ったデマを時々信じている方がいらっしゃいますが、それらはハッキリ言って嘘です。生活保護を受けながら仕事はできる生活...
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わざと働かない生活保護受給者を働かせるには法改正しかない


生活保護を受給していない場合は、明日の生活に困るため、就ける職業に就くしかありません。

しかし、生活保護を受給していると、時間的にも精神的にも仕事を探す余裕できます。

それは、それで良いことなんですが、余裕がありすぎて、いつまでも就職することができなくなります。

そのため、生活保護受給者に対して職業選択の自由を認めつつも、健康で働ける人に対しては、もう少し強制力のある指導指示ができるように生活保護制度そのものを改正するしかないのでは?と個人的には思います。

改正されなければ現状では職業選択の自由を悪用されると、ケースワーカーはどうすることもできません。

まとめ


生活保護費は役所のミスでも返還しなければいけないのか?また、逆に支給金額が少ない場合に追加支給されるのか?について、ご説明させていただきました。

上記をまとめると

  • 病気や障害等がない健康な人でも生活保護を受給することができる
  • 生活保護受給者に対しても就労支援は充実している
  • 生活保護受給者は職業選択の自由で守られている
  • 生活保護受給者に対して就労指導はできるが、就職活動を形だけでもしていれば、それ以上指導することはできない

となります。

その他、生活保護に関する様々な疑問については、下記にまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。

https://seikathuhogomanabou.com/category/qa/

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