「生活保護を受けると、どんな暮らしになるのか」「月にどれくらいのお金で生活するのか」「普通の生活はできるのか」生活保護の申請を検討している方や、受給者の実態を知りたい方はこのような疑問をお持ちの方が多いのではないでしょうか。
本記事では、生活保護受給者の実際の暮らしぶりを、具体的な支給額、家計の内訳、日常生活の実態、そして生活のやりくり術まで、データと実例を交えて詳しく解説します。

生活保護の支給額

地域別・世帯別の支給額
生活保護の支給額は、居住地域と世帯構成によって大きく異なります。

東京都区部(1級地-1)の例(令和6年度基準)
| 世帯構成 | 生活扶助 | 住宅扶助 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 単身(20~40代) | 約75,000円 | 53,700円 | 約128,700円 |
| 単身(60代) | 約75,000円 | 53,700円 | 約128,700円 |
| 母子2人(母30代、子5歳) | 約154,000円 | 64,000円 | 約218,000円 |
| 夫婦2人(40代) | 約117,000円 | 64,000円 | 約181,000円 |

大阪市(1級地-2)の例
| 世帯構成 | 生活扶助 | 住宅扶助 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 単身 | 約71,000円 | 40,000円 | 約111,000円 |
| 母子2人 | 約145,000円 | 54,000円 | 約199,000円 |

地方都市(2級地)の例
| 世帯構成 | 生活扶助 | 住宅扶助 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 単身 | 約65,000円 | 35,000円 | 約100,000円 |
| 母子2人 | 約130,000円 | 45,000円 | 約175,000円 |

加算がある場合
- 障害者加算:約18,000円~27,000円
- 母子加算:約23,000円~
- 児童養育加算:約10,000円~
- 介護保険料加算:実費相当額
これらの加算が適用されると、支給額はさらに増えます。

支給額に含まれるもの・含まれないもの
生活扶助に含まれる費用
- 食費
- 光熱費(電気・ガス・水道)
- 日用品費
- 衣服費
- 通信費
- 交通費
- 交際費

住宅扶助でカバーされる費用
- 家賃(上限額まで)
- 契約更新料(2年に1回など)
- 火災保険料

別途支給されるもの
単身世帯の暮らしぶり実例

実例1:東京都区部の単身男性(40代)
月額支給額:約128,700円
- 生活扶助:75,000円
- 住宅扶助:53,700円
実際の家計内訳
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 家賃 | 53,700円(住宅扶助) |
| 食費 | 25,000円 |
| 光熱費(電気・ガス・水道) | 10,000円 |
| 通信費(スマホ) | 3,000円 |
| 日用品 | 3,000円 |
| 衣服費 | 2,000円 |
| 交通費 | 3,000円 |
| 医療費(処方箋以外) | 0円 |
| 交際費・嗜好品 | 5,000円 |
| 貯金・予備費 | 0円 |
| 合計 | 約104,700円 |
| 手元に残る額 | 約0~2,000円 |
生活の実態
- 食事は自炊が中心、外食は月1~2回程度
- 娯楽は図書館、公園など無料施設を活用
- 衣服は古着屋やリサイクルショップ
- スマホは格安SIM
- 冷暖房は最小限に抑える
- 貯金はほぼできない
実例2:地方都市の単身女性(60代)
月額支給額:約100,000円
- 生活扶助:65,000円
- 住宅扶助:35,000円
実際の家計内訳
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 家賃 | 35,000円 |
| 食費 | 20,000円 |
| 光熱費 | 8,000円 |
| 通信費 | 2,500円 |
| 日用品 | 2,500円 |
| 衣服費 | 1,000円 |
| 交通費 | 2,000円 |
| その他 | 4,000円 |
| 合計 | 約75,000円 |
| 手元に残る額 | 約0円 |
生活の実態
- 食費を抑えるため、スーパーの見切り品を活用
- 地域の無料配布食品を利用
- 冬は寒さを我慢して暖房を最小限に
- テレビが唯一の娯楽
- 美容院は年に2~3回のみ
- 友人との交際は自宅で
母子世帯の暮らしぶり実例

実例3:東京都区部の母子2人(母35歳、子7歳)
月額支給額:約218,000円
- 生活扶助:約121,000円
- 母子加算:約23,000円
- 児童養育加算:約10,000円
- 住宅扶助:64,000円
実際の家計内訳
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 家賃 | 64,000円 |
| 食費 | 40,000円 |
| 光熱費 | 12,000円 |
| 通信費(スマホ1台) | 3,000円 |
| 日用品・消耗品 | 5,000円 |
| 子どもの学用品 | 3,000円 |
| 衣服費(母子分) | 4,000円 |
| 交通費 | 4,000円 |
| 子どもの習い事 | 0円(無料の学習支援を利用) |
| 交際費・その他 | 5,000円 |
| 合計 | 約140,000円 |
| 手元に残る額 | 約14,000円 |
生活の実態
- 食事は毎日自炊、お弁当も手作り
- 子どもの服はお下がりやフリマアプリ
- 図書館で絵本を借りる
- 公園や無料施設で遊ぶ
- 誕生日やクリスマスのプレゼントは控えめ
- 学校行事には参加できる
- 地域の学習支援で塾代を節約
- 児童手当は子どものために使う


実例4:大阪市の母子3人(母40歳、子10歳・13歳)
月額支給額:約255,000円
- 生活扶助:約165,000円
- 母子加算:約26,000円
- 児童養育加算:約20,000円(2人分)
- 住宅扶助:約54,000円
実際の家計内訳
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 家賃 | 54,000円 |
| 食費 | 50,000円 |
| 光熱費 | 15,000円 |
| 通信費 | 5,000円 |
| 日用品 | 6,000円 |
| 子どもの学用品・教材費 | 8,000円 |
| 衣服費 | 6,000円 |
| 交通費 | 5,000円 |
| 子どもの部活動費 | 3,000円 |
| その他 | 8,000円 |
| 合計 | 約160,000円 |
| 手元に残る額 | 約40,000円 |
生活の実態
- 成長期の子どもたちの食費がかさむ
- 入学準備金があるとは言え中学生の制服や体操服の出費が大きい
- 修学旅行費は教育扶助で対応
- 部活動は費用がかからないものを選択
- スマホは子ども用の格安機種
- 塾には行けず、学校の補習や無料学習支援を活用
生活保護でできること・できないこと

できること
日常生活
- 普通の食事(自炊が中心)
- 清潔な住居での生活
- 基本的な衣服の購入
- スマートフォンの所有(格安SIMなど)
- テレビの視聴
- 図書館の利用
- 無料の公共施設の利用
医療・健康
- 必要な医療を全額無料で受ける
- 処方薬を無料で受け取る
- 歯科治療(保険適用範囲)
- メガネの作成(条件付き)
子育て
- 学校教育(教育扶助)
- 給食費(教育扶助)
- 修学旅行費(教育扶助)
- 無料の学習支援サービス
- 児童手当の受給
就労活動
- ハローワークでの求職活動
- 職業訓練の受講
- 就労準備支援プログラム
できないこと・制限されること
資産の保有
- 高額な貯金(目安:単身50万円以上)
- 自動車の保有(原則、例外あり)
- 不動産の保有(居住用を除く)
- 高価な貴金属・美術品
生活面
- 頻繁な外食
- ブランド品の購入
- 高額な娯楽(パチンコ、ゲームセンターなど)※法律上の禁止ではないが推奨されない
- 海外旅行(原則不可)
- 高額な習い事
経済活動
- ギャンブル(推奨されない)
- 投資・株式売買
- 高額な借金

生活のやりくり術

食費の節約
月25,000円で生活する工夫
- スーパーの閉店間際の値引き品を狙う
- 業務スーパーや激安店を活用
- 旬の野菜を選ぶ
- まとめ買いと冷凍保存
- もやし、豆腐、卵など安価な食材を活用
- 地域のフードバンクやフードパントリーを利用
1週間の食費内訳例(単身)
- 米(5kg):月1,500円(1週間約375円)
- 野菜:週1,000円
- 肉・魚:週800円
- 卵・豆腐・納豆:週500円
- 調味料・その他:週500円
- 週合計:約3,200円
- 月合計:約12,800円
余った予算で嗜好品や外食に充てる。
光熱費の節約
月10,000円以内に抑える工夫
- エアコンは扇風機と併用
- 冬は重ね着で暖房を最小限に
- LED電球に交換
- こまめにコンセントを抜く
- シャワーの時間を短縮
- 洗濯はまとめ洗い
季節別の光熱費目安
- 夏(7~9月):約12,000円(エアコン使用)
- 冬(12~2月):約13,000円(暖房使用)
- 春秋:約8,000円
平均すると月10,000円前後。

通信費の節約
月3,000円以内に抑える方法
- 格安SIM(楽天モバイル、mineo、IIJmioなど)
- データ通信は自宅のWi-Fi(なければ最小プラン)
- 通話はLINE通話を活用
- 端末は中古スマホや型落ちモデル
おすすめプラン例
- 楽天モバイル:月0円~1,078円(3GBまで)
- mineo:月880円~(1GB)
- IIJmio:月850円~(2GB)
衣服費の節約
年間24,000円以内の工夫
- ユニクロ、GU、しまむらなどのファストファッション
- 古着屋、リサイクルショップ
- フリマアプリ(メルカリ、ラクマ)
- 地域のフリーマーケット
- 必要最小限の枚数で着回し
娯楽・交際費の工夫
無料または低額で楽しめること
- 図書館(本、DVD、雑誌)
- 公園、散歩
- 無料の美術館・博物館(入館無料日)
- 地域のイベント
- YouTubeやネット動画
- ラジオ
- 家での映画鑑賞(レンタルまたは無料配信)
生活保護受給者の声

「最低限だが人間らしく生きられる」
60代男性・単身 「派遣の仕事を失い、貯金もなくなって生活保護を申請しました。最初は恥ずかしさもありましたが、今は感謝しています。食事ができ、暖かい部屋で眠れる。病院にも行ける。当たり前のことですが、それがどれだけありがたいか身にしみています」
「子どもに申し訳ない気持ちもある」
40代女性・母子世帯 「DVから逃れて生活保護を受けています。子どもたちには友達と同じようなゲームや服を買ってあげられず、申し訳ない気持ちでいっぱいです。でも、子どもたちは文句も言わず、私を気遣ってくれます。いつか仕事を見つけて、自立したいと思っています」
「自立に向けて頑張っている」
30代男性・単身 「病気で仕事を辞め、生活保護を受けています。体調が回復してきたので、就労支援を受けながらアルバイトを始めました。勤労控除があるので、働いた分だけ手元に残るお金が増えます。完全に自立できるまで、もう少し時間がかかりますが、前向きに頑張っています」
「高齢で年金だけでは生活できない」
70代女性・単身 「年金が月5万円しかなく、生活保護で差額を補填してもらっています。医療費がかからないのが本当に助かります。持病があり、毎月病院に通っていますが、医療扶助のおかげで安心して治療を受けられます」
生活保護からの自立

就労による自立
就労自立のための支援
- ハローワークとの連携
- 就労準備支援プログラム
- 職業訓練
- 就労自立給付金(自立時の一時金)
勤労控除の活用 働いて得た収入の一部が手元に残る仕組みがあり、働くインセンティブになっています。

年金による自立
高齢者の場合、年金が増額されたり、遺族年金を受給できるようになったりすると、生活保護から自立できることがあります。

健康回復による自立
病気やケガから回復し、就労可能な状態になることで、自立への道が開けます。
よくある誤解と真実

誤解1:「生活保護受給者は贅沢している」
真実 大多数の受給者は、限られた予算の中で日々やりくりしており、贅沢とは程遠い生活を送っています。食費を削り、娯楽を我慢し、将来のための貯金もできない状況です。
誤解2:「働かずに楽をしている」
真実 受給者の約半数以上は高齢者や傷病・障害者であり、働きたくても働けない状況にあります。就労可能な受給者も、求職活動や就労支援プログラムへの参加が義務付けられています。
誤解3:「パチンコや酒に使っている」
真実 一部にそうした使い方をする人もいますが、大多数は食費や光熱費など生活必需品に充てています。福祉事務所も適正な使用を指導しており、不適切な支出があれば指導の対象となります。

誤解4:「十分なお金がもらえる」
真実 生活保護費は「最低限度の生活」を保障する水準であり、決して余裕のある金額ではありません。急な出費には対応できず、貯金もほとんどできないのが実態です。

まとめ

生活保護受給者の暮らしぶりについて、重要なポイントをまとめます。
支給額と生活水準
- 地域・世帯により月10万円~25万円程度
- 「最低限度の生活」を保障する水準
- 贅沢はできないが、健康で文化的な生活は可能
実際の暮らし
- 食費は自炊中心で月2~4万円
- 光熱費は節約して月8,000円~12,000円
- 娯楽は無料施設を活用
- 貯金はほとんどできない
- 急な出費への対応が困難
生活のやりくり
- 徹底的な節約が必要
- 地域の支援サービスの活用
- 格安サービスの選択
- 無料の娯楽を楽しむ
受給者の実態
- 多くは高齢者、傷病者、母子世帯
- 働きたくても働けない人が大半
- 自立に向けて努力している人も多い
- 最低限の生活を送りながら尊厳を保っている
生活保護は「最後のセーフティネット」であり、本当に困窮している人を支える重要な制度です。受給者の多くは、限られた予算の中で懸命に生活しており、決して「楽をしている」わけではありません。


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