生活が困窮し、生活保護の申請・受給をしようと考えている方は、家族や身内も生活保護の条件に関係があるのか?調査の対象になるのか?気になると思います。
また、生活保護申請者の家族・身内の方は、ある日突然、扶養義務調査が来ます。
この扶養義務調査にどう回答したら良いのか困惑するとともに、回答次第によって、どのような影響を及ぼすのか心配になると思います。
そこで、このページでは、生活保護を受給する条件に家族・身内は関係があるのか?また、よく聞く扶養義務とは何なのか?扶養義務調査の回答はどうしたら良いのか?等について、わかりやすくご説明します。
生活保護の条件とは
生活保護の条件は「世帯の収入が最低生活費以下であること」です。
生活保護の申請時に貯金等の資産がなく、世帯の収入が最低生活費以下であれば、生活保護の条件を満たすため、生活保護を受給することができます。
では、最低生活費はいくらなのか?についてですが、最低生活費は住む地域と世帯員数によって異なるため、一概にいくらとは言えません。
しかし、世帯ごとに最低生活費が大体いくらくらいなのか?の目安については、モデルケースが下表のとおり厚生労働省より発表されています。
上記のとおり、都会に住めば住むほど、世帯の人数が増えれば増えるほど、最低生活費は増えます。
特に子どもがいる場合は、児童養育加算や母子加算が付きますし、小学校・中学校・高校に通い始めると、教育扶助・生業扶助が支給されるようになるため、最低生活費はかなりの金額になります。
次に世帯の収入についてですが、あらゆる収入が対象となります。
代表的なもので言えば給料収入や年金収入、児童手当、児童扶養手当等も収入として見なされます。
例外として、新型コロナウイルス感染症に伴う臨時特別給付金は収入認定しませんが、基本的にはあらゆる収入は収入認定の対象となります。
これらの収入の合計金額が、各家庭ごとに算出された最低生活費以上であれば、生活保護の条件に該当しないため、生活保護は却下となりますし、最低生活費以下であれば生活保護の条件を満たし、受給が開始されます。
ちなみに、よく勘違いされている方が多いですが、仮に正社員として働いていたとしても、その給料収入が最低生活費以下であれば生活保護を受給することができます。
例えば上表の母子3人世帯が1級地-1に住んでいる場合、最低生活費は約26万円ですが、子どもの成長に合わせて生活扶助も増加し、別途教育扶助・生業扶助も支給されるようになるため、最低生活費は約30万円近くにもなります。
働いても月約30万円も収入を得るのは、なかなか難しいため、母子家庭・父子家庭の場合は大半が生活保護の対象世帯となります。
同居している家族・身内は生活保護の条件に関係する
生活保護の条件は「世帯の収入が最低生活費以下であること」であるため、同居している家族・身内は生活保護の条件に関係します。
生活保護は世帯単位で申請するため、同居している家族・身内は、むしろ生活保護の申請者となります。
そのため、同居している家族・身内全員が生活保護の申請を望む必要がありますし、同居している家族・身内全員の収入等が調査されます。
なお、家族・身内に限らず、他人であっても同居していれば、生活保護上は同じ世帯として見られるため、結婚していようと、内縁関係であろうと、友人・知人であろうと、生活保護の条件に関係してきます。
そんなの当たり前では?と思うかもしれませんが、生活保護は個人で申請できると勘違いしているケースが多々あります。
例えば親がお小遣いをくれないから、生活保護を申請したいと言う相談者や、逆に自分が稼いだお金を家に入れたくないから、親だけ生活保護を受けさせてくれと相談してくる方もいます。
生活保護は世帯単位での申請・受給となるため、同居している以上は家族・身内はもちろん、他人であっても生活保護の申請者となるため、当然、生活保護の条件に関係してきます。
同居していない家族・身内は生活保護の条件に関係しない
生活保護の条件は「世帯の収入が最低生活費以下であること」であるため、同居していない家族・身内は生活保護の条件に一切関係しません。
仮に家族・身内がお隣さんやご近所さんであっても、同居していなければ世帯が違うため、生活保護の条件には関係しません。
また、家族・身内がとてつもない資産家や高給取りであっても、関係ありません。
売れっ子芸能人の場合は、親族が生活保護を受けていた事をマスコミに取り上げられ、バッシング等を受けていましたが、法律上は同居していなければ関係なく、また、有名人でもなければ、マスコミ等から取り上げられることもないため、
ただし、家族・身内には扶養義務があるため、扶養義務調査は実施されます。
家族・身内の扶養義務とは?
民法第877条に「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」と定められています。
また、生活保護法第4条第2項に「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」と定められています。
これらの法律を根拠にケースワーカーは生活保護申請者の親族等に対して扶養義務調査を行います。
「扶養義務」なので、非常に責任重大な印象を受けますが、扶養義務を果たさなくても罰則等は何もありません。
あくまで「できるだけ家族・身内同士は助け合いましょう」と言う趣旨の内容に過ぎません。
扶養義務調査への回答は正直に書けば良い
ある日突然、行政から「ご親族の○○さんが生活保護を申請しています。家族・身内である△△さんには扶養義務がありますが、扶養することは可能ですか?」と言った内容の扶養義務調査が送られてきたら、驚くと共に困惑すると思います。
中には、扶養義務調査を送ってきた福祉事務所に対して、クレームの電話を入れる人もいます。
それだけ扶養義務調査を重く受け止めて頂いていると言うことだと思いますが、扶養義務調査への回答は正直に扶養できないなら「扶養できない」、扶養したくないなら「扶養したくない」と答えて大丈夫です。
家族・身内の方が「扶養できない」もしくは「扶養したくない」と回答しても、生活保護の受給要件には何ら影響を及ぼさないため、どう回答しても問題ありません。
実際、扶養義務調査を行った結果、金銭的な援助につながった例は1.45%しかなく、福祉事務所も、そもそも経済的援助を受けられると思って扶養義務調査を行っているわけではないため、正直に書いて頂いて大丈夫です。
ただし、家族・身内の方が仕送り等の援助をすると言っているのにも関わらず、申請者の方が仕送り等の援助を拒否する場合は、資力を活用していないと見なされ、生活保護を要件を満たさず、受給できなくなるため、その点だけは注意が必要です。
扶養義務調査の目的は精神的援助
福祉事務所は、金銭的な援助につながらないのに、なぜ扶養義務調査を行うのでしょうか?
よく、ネット上では、家族・身内に知られたくない申請者を追い返すための水際作戦に扶養義務調査を利用していると言われています。
実際に家族・身内に知られるのを嫌がり生活保護の申請を取り下げる方もいるため、辞退させるために扶養義務調査を利用する側面もあります。
ただ、家族・身内に知られたくないから生活保護を辞退する人は、いわゆる明日の食事にも困っているような本当に困窮している人ではありません。
まだ、生活保護を受けなくても生活が維持できるだけの、多少の余力があるため、家族・身内に知られたくないと言える余裕があります。
本当に余力がなく、明日の生活に困っている人は扶養義務調査等、意に介さず申請をするので、申請者を追い返すために扶養義務調査を実施しているわけではありません。
扶養義務調査を実施する本当の目的は、精神的な援助を依頼するためです。
精神的な援助とは、社会との繋がりを保つことはもちろんですが、生活保護受給者が入院しなければいけなくなった時の保証人や手術をする時の承諾者になることの他、生活保護受給者本人が手続きできない時に代わりに電気・ガス・水道等、各種契約手続きをすることです。
残念ながら、ケースワーカーは入院時の保証人や手術の承諾者になることはできませんし、生活保護受給者に代わって契約をすることはできません。
これら各種手続きには絶対に家族・身内の方の協力が必要です。
そのため、扶養義務調査を実施し、精神的援助を依頼するとともに、家族・身内の方に緊急時に連絡がとれるよう携帯電話番号等を記載してもらいます。
家族・身内でもDV等、特別な事情がある場合は扶養義務調査はしない
家族・身内からの虐待やDVなど、特別な事情がある場合はケースワーカーに依頼すれば、その方を扶養義務調査の対象から外すことができます。
ただし、家族・身内に対して扶養義務調査をしてもらいたくない場合は、住民票や戸籍の閲覧を制限する手続きをしておく必要があります。
なぜなら、婚姻関係や、親子関係にある人は住民票や戸籍の住所を無条件で見ることができるからです。
いくらでも家族・身内の方が住所を調べられる状況で、「居場所を知られたくないから扶養義務調査をしないで欲しい」と訴えても意味がないため、残念ながら扶養義務調査をしないわけにはいきません。
住民票の閲覧制限ができることや閲覧制限をする方法がわからない場合は、ケースワーカーが一緒に手続きをしてくれるので、生活保護の相談時に、その旨を伝えましょう。
家族・身内が仕送りをする場合の注意点
家族・身内の方が生活保護受給者に対して仕送りをする場合の注意点として、その仕送りした金額は全額収入認定の対象となります。
この場合、生活保護費として月々8万円の支給となります。
もしも、生活保護受給者が仕送りを受けていたのに、ケースワーカーに黙っていた場合は、不正受給となり、徴収金の対象になります。
生活保護費は生活に足りない分だけを支給する制度のため、仕送りを収入認定をするのは当然の対応と言えます。
しかし、生活保護受給者が生活保護費を紛失してしまった場合など、特別な事情によって急遽援助が必要になることがあります。
このような特別な事情がある場合に家族・身内の方が援助又またはお金を貸す場合は注意が必要です。
なぜなら、生活保護費を紛失してしまった場合の援助も仕送りとみなされ収入認定されますし、お金を貸した場合(借金)も収入認定されてしまうからです。
事情はよくわかりますが、生活保護の制度上、ケースワーカーは収入認定をするしかありません。
そのため、生活保護受給者に何かしらの援助をする場合は、食料等、現物による援助をオススメします。
どうしてもお金を渡す必要がある場合、通帳でやり取りをしてしまうと、金融機関調査で発覚してしまうため、直接手渡ししましょう。
まとめ
生活保護の条件に家族・身内は関係あるのか?について、ご説明させていただきました。
上記をまとめると
- 生活保護の条件は「世帯の収入が最低生活費以下であること」
- 同居している家族・身内は世帯員となるため生活保護の申請者となる
- 同居していない家族・身内は例え大富豪でも高給取りであっても生活保護の条件に一切関係ない
- 家族・身内には扶養義務があるが、罰則規定等はなく、あくまでできるだけ家族・身内同士は助け合いましょうと言う趣旨の内容に過ぎない
- 扶養義務調査の目的は経済的援助ではなく、精神的援助のため、扶養したくないなら扶養したくないと正直に書いて良い
- 家族・身内から虐待やDVを受けている等、特別な事情がある場合は扶養義務調査は実施されない
- 仕送りは全額収入認定されるため、金銭ではなく食料等の現物による援助がオススメ
となります。
その他、生活保護の申請・手続きに関する様々な疑問については、下記にまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
https://seikathuhogomanabou.com/category/tetuduki/
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