「同居している親だけ生活保護を受給させたい!」
「同居している子どもだけ生活保護を受給させたい!」
「親と同居しているけれど生活保護を受給したい!」
このような相談を福祉事務所ではよく受けます。
しかし、同居している親だけ、または子どもだけで生活保護を受給できるのでしょうか?気になるところだと思います。
そこで、このページでは、同居している親だけ、または子どもだけが生活保護を受給できるのか?また、その理由等、あらゆる疑問にわかりやすくお答えします。
同居している親だけ、子どもだけは受給できない
結論から先に言うと、残念ながら同居している親だけ、または子どもだけが生活保護を受給することはできません。
例えば
「自分は働いているから生活ができるけど、親の面倒までは見きれないから、親だけ生活保護を受給させて欲しい」
「二人だけなら年金で生活ができるが、大人になっても働かないニートの子どもは生活保護でどうにかしてほしい」
等、福祉事務所では、同居している家族の相談はよく受けます。
中には「親がお小遣いをくれない(お小遣いが少ない)から自分だけ生活保護を受給したい」と相談に来る方もいらっしゃいます。
しかし、残念ながら、生活保護の制度上、同居している親だけ、子どもだけでは生活保護を申請・受給することはできません。
生活保護は世帯単位で申請・受給する
同居している親だけ、子どもだけで生活保護を申請・受給できない理由は、生活保護は原則として、世帯単位で申請・受給しなければいけないからです。
仮に同居しているのであれば、親や子どもなどの親族でなくても一緒です。
例えば知人・友人等とルームシェアをしている場合も、自分だけ生活保護、もしくは知人・友人だけ生活保護を申請・受給することはできません。
では、どうすれば良いのか?
答えは簡単で、同居している家族や知人・友人等、全員で生活保護を申請・受給すれば良いんです。
同居している家族に年金収入や給料収入があったら、生活保護を申請しても受給できないのでは?と思われている方が多いですが、実は、年金収入や給料収入があっても、生活保護を受給することはできます。
生活保護の条件は「世帯収入が最低生活費以下であること」のため、当然、最低生活費以上の年金収入や給料収入がある場合は、生活保護の条件を満たさないため、受給することはできませんが、年金収入や給料収入があっても、最低生活費以下であれば生活保護の条件を満たすため、受給することができます。
なお、注意点として、世帯員全員での申請が必要のため、誰か1人でも「生活保護を受けたくない!」と反対する人がいれば、生活保護の条件を満たしていても、生活保護を申請することはできませんので、気を付けましょう。
世帯分離と言う手法もあるが原則認められない
同じ家に住んでいたら、絶対に全員が生活保護を受給するしかないのか?と言いますと、例外規定もあります。
それが世帯分離です。
世帯分離により同居人を除いて生活保護を受給することも可能です。
ただし、世帯分離の条件は、かなり厳しいです。
- 世帯員のうちに、稼働能力があるにもかかわらず収入を得るための努力をしない等保護の要件を欠く者があるが、他の世帯員が真にやむを得ない事情によって保護を要する状態にある場合
- 要保護者が自己に対し生活保持義務関係にある者がいない世帯に転入した場合であって、同一世帯として認定することが適当でないとき
- 保護を要しない者が被保護世帯に当該世帯員の日常生活の世話を目的として転入した場合であって、同一世帯として認定することが適当でないとき
- 当該要保護者がいわゆる寝たきり老人、重度の心身障害者等で常時の介護又は監視を要する者であるとき
- その者を出身世帯員と同一世帯として認定することが出身世帯員の自立助長を著しく阻害すると認められるとき
- 5の場合で、6か月以上入院又は入所を要する患者等の出身世帯員のうち入院患者等に対し生活保持義務関係にない者が収入を得ており、当該入院患者等と同一世帯として認定することがその者の自立助長を著しく阻害すると認められるとき
- 同一世帯員のいずれかに対し生活保持義務関係にない者が収入を得ている場合であって、結婚、転職等のため1年以内において自立し同一世帯に属さないようになると認められるとき
- 救護施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム若しくは介護老人福祉施設、障害者支援施設又は児童福祉施設(障害児入所施設に限る。)の入所者(障害者支援施設については、重度の障害を有するため入所期間の長期化が見込まれるものに限る。)と出身世帯員とを同一世帯として認定することが適当でない場合
上記でも、かなり内容を省略したものなんですが、わかりにくいと思いますので、非常に簡単に説明すると介護や看病等、よほど特殊な状況でなければ、世帯分離は認められないと言うことです。
実際に世帯分離が認められるケースはほとんどなく、世帯分離が認められるのも高校卒業後、就職せずに大学や専門学校等に進学した世帯員を外すための世帯分離しか、少なくとも私は見たことがありません。
生活保護を受給するには転居して世帯を分けるしかない
どうしても親だけ、子どもだけに生活保護を受給させたい場合は、転居する、もしくは転居させて世帯を分けるしかありません。
例えば親を老人ホームに入れたり、子どもをアパートに転居させた後であれば、別世帯となるため、親だけ、子どもだけ生活保護を受給することができます。
ちなみに転居先についてですが、食事代や電気代やガス代などの支出が世帯ごとで明確に分けられるのであれば、どこに引っ越しても問題ありません。
極端な話、隣の家に引っ越しても良いですし、同じアパートの別の部屋でも大丈夫です。
仮に敷地が同じであっても、建物が完全に分かれていれば別世帯として認定されます。
費用についてですが、生活保護では、条件を満たせば引っ越し費用が支給されますが、残念ながら同居を解消するための引っ越し費用については、生活保護申請前の引っ越しとなるため、引っ越し代は全額自己負担となります。
生活保護を申請し、受給が開始すれば、引っ越し後の老人ホームの費用や家賃、生活費等については、生活保護から支給されます。
そのため、同居している親だけ、子どもだけ生活保護を受給させたい場合は、転居に要する費用だけは捻出する必要があります。
なお、注意点として、引っ越し後は、すぐに生活保護を申請してください。
生活保護の受給が開始されれば申請時点まで遡って生活保護費を支給してくれますが、申請するまでの期間については、一切考慮してくれず、その分、自腹を切らなければいけません。
そのため、申請できる状態になったら、すぐに福祉事務所に行って、生活保護の申請手続きを行いましょう。
まとめ
同居している親だけ、または子どもだけが生活保護を受給できるのか?また、その理由等について、ご説明させていただきました。
上記をまとめると
- 同居している親だけ、子どもだけで生活保護を申請・受給はできない
- 生活保護は原則として世帯単位で申請・受給する必要がある
- 親族に限らず、知人・友人等も同居していたら全員で生活保護申請・受給しなければいけない
- 同居人に収入があっても世帯収入が最低生活費以下であれば生活保護は受給できる
- 世帯分離という方法で、同居している親だけ、子どもだけ生活保護を申請・受給することも可能だが、条件が厳しい
- 転居にかかる費用を自己負担すれば同居している親だけ、子どもだけ生活保護を受給させることができる
- 転居先は、別世帯と明確に分かれば、お隣でも同じアパートでも同じ敷地でも問題ない
となります。
その他、生活保護に関する様々な疑問については、下記にまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
https://seikathuhogomanabou.com/category/qa/
コメント