「生活保護を受けているのに毎月お金が足りない」「保護費だけでは生活できない」「月末になるといつも困窮する」生活保護を受給していても、実際には生活が苦しいと感じている方は少なくありません。
厚生労働省の調査によれば、生活保護受給世帯の約30%が「生活が苦しい」と回答しており、特に単身高齢世帯や母子世帯で困窮度が高い傾向にあります。生活保護は最低限度の生活を保障する制度ですが、それでも足りないと感じるのには様々な理由があります。
本記事では、生活保護費が足りないと感じる原因の分析から、追加で受けられる支援制度、ケースワーカーへの相談方法、実践的な家計管理のコツまで、生活困窮の解決に向けた具体的な方法を徹底解説します。
この記事でわかること
- 生活保護費が足りないと感じる主な5つの原因
- 本来受け取れるはずの加算や扶助の確認方法
- 追加で利用できる一時扶助と支援制度
- ケースワーカーに効果的に相談する方法
- 月末まで保護費を持たせる家計管理術
- 無料・低価格で利用できる支援サービス
生活保護費が「足りない」と感じる5つの主な原因

まず、なぜ保護費が足りないと感じるのか、その原因を理解しましょう。
原因1:本来受け取れる加算が適用されていない
生活保護には、世帯の状況に応じて様々な加算制度があります。これらが適用されていないと、本来より少ない金額しか受給できていない可能性があります。
主な加算制度
- 母子加算:ひとり親世帯(月約2万1,000円~2万3,000円)
- 障害者加算:障害者手帳を持つ方(月約1万7,000円~2万6,000円)
- 介護施設入所者加算:施設入所者(月約1万3,000円)
- 児童養育加算:中学生までの子ども(1人あたり月1万円~1万5,000円)
- 妊産婦加算:妊娠中・産後の女性(月約9,000円)
- 冬季加算:寒冷地の暖房費(11月~3月、月数千円~1万8,000円)
確認方法 保護決定通知書を確認し、該当する加算が適用されているかチェックしましょう。適用されていない場合は、ケースワーカーに相談してください。

原因2:家賃が住宅扶助の上限を超えている
現在の家賃が住宅扶助の上限額を超えている場合、超過分を生活扶助費から自己負担する必要があります。
具体例(東京都区部、単身者)
- 住宅扶助の上限:5万3,700円
- 実際の家賃:6万5,000円
- 超過分:1万1,300円(生活扶助から負担)
- 実質的な生活費の減少:月1万1,300円
対処法
- 住宅扶助の範囲内の物件への転居を検討
- ケースワーカーに転居指導を依頼(転居費用が支給される場合あり)
- 大家に家賃減額の交渉(ケースワーカー経由で可能な場合も)


原因3:光熱費や通信費が高額
電気・ガス・水道代、携帯電話代などの固定費が高額だと、生活費を圧迫します。
一般的な光熱費の目安(単身世帯)
- 電気代:約5,000円/月
- ガス代:約3,000円/月
- 水道代:約2,000円/月
- 携帯電話代:約3,000円~4,000円/月(格安SIM利用時)
高額になる原因
- 古いエアコンの24時間稼働
- 大手キャリアの高額プラン(月7,000円~1万円)
- プロパンガス(都市ガスの約2倍)
- 待機電力の無駄
対処法
- 格安SIMへの乗り換え(月3,000円~5,000円削減可能)
- 新電力への切り替え
- 節電・節水の工夫
- 自治体の水道料金減免制度の利用


原因4:食費の使い方が非効率
外食やコンビニでの買い物が多いと、食費が高騰します。
食費の目安
- 単身世帯:月2万5,000円~3万5,000円
- 2人世帯:月4万円~5万円
高額になる原因
- 頻繁な外食(週2~3回で月3万円~4万円)
- コンビニでの日常的な買い物(スーパーより2~3割高)
- ペットボトル飲料の毎日購入(月4,000円~5,000円)
- 食材の無駄(賞味期限切れ、使い切れない)
対処法
- 自炊中心の生活
- スーパーの特売日利用
- まとめ買いと冷凍保存
- フードバンクの利用
原因5:医療費や交通費などの想定外の出費
医療扶助で医療費自体は無料ですが、関連費用が積み重なることがあります。
想定外の出費例
- 市販薬の購入(医療扶助は処方薬のみ)
- 通院のための交通費(申請すれば支給されるが、立替が必要)
- 子どもの学校関連費用(教育扶助の範囲外の費用)
- 冠婚葬祭費
- 家電の故障・買い替え
対処法
- 市販薬ではなく、医師に処方してもらう
- 通院交通費は必ず申請する
- 一時扶助(家具什器費など)の利用
- ケースワーカーへの事前相談


本来受け取れる保護費を確認する方

生活保護費が本当に適正に支給されているか、確認しましょう。
保護決定通知書の見方
保護決定通知書とは 福祉事務所から送付される、保護費の詳細が記載された書類です。
確認すべき項目
- 生活扶助の金額
- 第1類費(個人単位の経費)
- 第2類費(世帯単位の経費)
- 各種加算
- 住宅扶助の金額
- 実際の家賃額
- 上限額
- その他の扶助
- 教育扶助
- 医療扶助
- 介護扶助
- 収入認定額
- 年金、手当などの収入
- 就労収入(基礎控除後)
自分の世帯の保護費を試算する
基本的な計算式 保護費 = 生活扶助 + 住宅扶助 + 各種加算 – 収入認定額
具体例1:単身高齢者(70歳、東京都区部)
- 生活扶助:約8万円
- 住宅扶助:5万円(実家賃)
- 合計:約13万円
具体例2:母子世帯(母30歳、子8歳・5歳、地方都市)
- 生活扶助:約12万円
- 母子加算:約2万3,000円
- 児童養育加算:2万5,000円(1万円×2人+5,000円)
- 住宅扶助:4万5,000円(実家賃)
- 合計:約21万3,000円
自分の世帯と比較して、大きく下回っている場合は、ケースワーカーに確認しましょう。


よくある見落とし
1. 児童養育加算の見落とし 2021年に創設された比較的新しい加算です。中学生までの子どもがいる世帯は必ず適用されているか確認してください。

2. 冬季加算の適用漏れ 11月から3月の間、寒冷地では冬季加算が支給されます。通知書に記載されているか確認しましょう。

3. 障害者加算の未申請 障害者手帳を取得したのに、加算の申請をしていないケースがあります。

追加で受けられる一時扶助と支援制度

通常の保護費で賄えない突発的な出費には、一時扶助が利用できます。
一時扶助の種類と内容
1. 家具什器費 生活に必需の家具・家電の購入費用
対象品目
- 冷蔵庫、洗濯機、ガスコンロ
- 炊飯器、電子レンジ
- ベッド、布団
- カーテン、照明器具
支給上限
- 品目ごとに上限あり(冷蔵庫5万円、洗濯機3万円など)
注意点
- 事前申請が必須
- 故障などやむを得ない理由が必要
- 見積書の提出が必要


2. 被服費 就職活動や学校生活に必要な衣類
対象
- 就職活動用のスーツ
- 学校の制服、体操着
- 冬季の防寒着(合理的な範囲)

3. 移送費(引越費用) 転居指導による引越しの費用
支給内容
- 引越業者費用
- 敷金、礼金、仲介手数料
- 不用品処分費(認められる場合)

4. 入学準備金 小学校・中学校・高校入学時の準備費用
支給額
- 小学校入学:約4万円
- 中学校入学:約5万円
- 高校入学:約6万3,000円


5. 出産扶助 出産に必要な費用
支給内容
- 入院助産費用
- 衛生材料費
- 上限:約27万円

生活保護以外の支援制度
1. 社会福祉協議会の支援
緊急小口資金
- 一時的な生活費の貸付(上限10万円)
- 無利子
- 生活保護受給者も利用可能な場合あり
2. フードバンク
- NPO法人等が運営する食料支援
- 無料で食料品を提供
- 社会福祉協議会で紹介してもらえる
3. 子ども食堂
- 無料または低額(100円~300円)で食事提供
- 子どもだけでなく、大人も利用可能な場合あり
4. 無料学習支援
- 生活困窮世帯の子ども向け学習支援
- 塾代の節約になる
5. 衣類・日用品の無料配布会
- 自治体やNPOが開催
- 古着、日用品の無料提供
6. 自治体独自の支援
- 水道料金の減免
- NHK受信料の免除
- 公営住宅の優先入居
- 公共施設利用料の減免

ケースワーカーに効果的に相談する方法

生活が苦しいとき、ケースワーカーへの相談が最も重要です。
相談前の準備
1. 家計簿をつけておく 何にいくら使っているかを具体的に示せると、相談がスムーズです。
記録すべき項目
- 食費
- 光熱水費
- 通信費
- 日用品費
- その他
2. レシートを保管する 大きな支出のレシートは保管しておきましょう。
3. 困っている状況を整理する
- 何が足りないのか
- いつから足りないのか
- どのような工夫をしたか
- 何に困っているのか
効果的な相談の仕方
❌ 良くない相談例 「生活費が足りません。もっとお金をください」
⭕ 良い相談例 「家計簿をつけてみたのですが、食費が月○○円、光熱費が○○円で、どうしても月末に△△円不足します。節約も試みましたが、これ以上どうすればよいか分かりません。何か利用できる制度はありますか?」
効果的な相談のポイント
- 具体的な数字を示す
- 自分なりの努力を伝える
- 何が原因か分析を示す
- どんな支援が必要か明確にする
- 謙虚な姿勢で相談する
ケースワーカーが対応できること
1. 加算の確認・追加 見落としている加算がないか確認し、該当すれば追加してくれます。
2. 一時扶助の案内 家具什器費など、利用できる一時扶助を案内してくれます。
3. 家計指導 家計のやりくり方法をアドバイスしてくれます。
4. 他の支援制度の紹介 フードバンク、子ども食堂など、地域の支援を紹介してくれます。
5. 転居の検討 家賃が高い場合、転居を提案してくれる場合があります。
6. 就労支援 働ける状況であれば、就労支援プログラムを案内してくれます。
ケースワーカーが対応できないこと
保護費の増額 個別の事情による保護費の増額は、原則としてできません。保護費は法律と基準に基づいて算定されます。

借金の肩代わり 借金の返済費用を保護費から支給することはできません。

贅沢品の購入費 生活に必需でない物品の購入費は支給されません。
月末まで保護費を持たせる家計管理術

実践的な家計管理の方法を紹介します。
1. 封筒式家計管理法
方法 保護費を受け取ったら、すぐに用途別の封筒に分けます。
封筒の種類
- 光熱費用(約1万円~1万5,000円)
- 食費用(約2万5,000円~3万円)
- 日用品費用(約5,000円)
- 通信費用(約3,000円~5,000円)
- 予備費(残り全額)
ルール
- 各封筒から決められた金額以上は使わない
- 封筒間の融通は極力しない
- 余ったお金は翌月に繰り越す
2. 家賃の代理納付を利用
代理納付とは 福祉事務所が直接大家や管理会社に家賃を支払う制度です。
メリット
- 家賃の使い込みを防げる
- 家賃滞納のリスクがなくなる
- 手元に残る金額が明確になる
申請方法 ケースワーカーに「家賃の代理納付をお願いしたい」と申し出るだけです。

3. 1週間単位の予算管理
方法 月の予算を4~5週間で割り、週単位で管理します。
例:食費月3万円の場合
- 1週間あたり:7,500円
- 1日あたり:約1,000円
ルール
- 1週間で7,500円以内に抑える
- 使わなかった分は次週に繰り越せる
- 週の途中で予算オーバーしたら、残り日数で調整
4. 固定費の見直し
優先的に見直すべき固定費
携帯電話代
- 大手キャリア(月7,000円~1万円)→格安SIM(月1,000円~3,000円)
- 削減額:月5,000円~7,000円

電気・ガス
- 新電力への切り替え
- 削減額:月500円~1,000円
不要なサブスクリプション
- 動画配信サービス、音楽配信サービスなど
- 削減額:月1,000円~2,000円
5. 食費の節約テクニック
買い物の工夫
- スーパーの特売日を把握(火曜・水曜が多い)
- 夕方の値引き品を狙う(半額シール)
- まとめ買いで単価を下げる
- 業務スーパーの活用
調理の工夫
- 作り置きおかずで時間と費用を節約
- 冷凍保存を活用
- 安価で栄養価の高い食材(もやし、豆腐、納豆、卵、鶏むね肉)
- 1食あたりの予算を決める(300円以内など)
無駄をなくす
- 賞味期限を確認してから買う
- 冷蔵庫の中身を把握してから買い物
- 献立を決めてから買う
6. 光熱費の節約
電気代
- LED電球への交換
- エアコンのフィルター掃除(月1回)
- 設定温度の見直し(夏28度、冬20度)
- 待機電力のカット(使わない家電のコンセントを抜く)
ガス代
- 給湯温度を下げる(42度→40度)
- 追い焚きより足し湯
- 鍋底の水滴を拭いてから火にかける
水道代
- 節水シャワーヘッド
- 食器洗いは桶にためて
- 洗濯は まとめ洗い
7. 日用品費の節約
100円ショップの活用 多くの日用品が100円で購入できます。
詰め替え用の購入 シャンプー、洗剤などは詰め替え用が割安です。
代用品の活用
- 重曹、クエン酸で掃除(専用洗剤より安い)
- 新聞紙で窓拭き
生活保護費の増額は可能か?

「保護費を増やしてもらうことはできないのか?」という疑問について説明します。
原則として個別の増額は不可
生活保護費は、生活保護法と厚生労働大臣の定める基準に基づいて算定されます。個別の事情による増額は、原則としてできません。
増額される可能性があるケース
1. 世帯構成の変化
- 子どもが生まれた
- 同居家族が増えた

2. 加算要件を満たした
- 障害者手帳を取得した
- ひとり親になった
- 妊娠した
3. 転居により級地が変わった
- 低い級地から高い級地に転居(保護費増額)
- ただし、転居には福祉事務所の承認が必要
4. 基準の改定
- 年度ごとに保護基準が見直される
- 物価上昇などにより増額されることがある

生活保護基準の引き下げの影響
近年の動向
- 2013年~2015年:平均6.5%減
- 2018年:最大5%減
基準の引き下げにより、以前より保護費が減少している可能性があります。
よくある質問(Q&A)

Q1: 月末になるといつもお金が足りなくなります。どうすればいいですか?
A: まず家計簿をつけて、何にいくら使っているか把握しましょう。その上でケースワーカーに相談してください。封筒式家計管理法や週単位の予算管理を試してみることをお勧めします。また、フードバンクなどの支援を活用することも検討してください。

Q2: 冷蔵庫が壊れましたが、買い替える余裕がありません。
A: 家具什器費の一時扶助を利用できます。ケースワーカーに「冷蔵庫が故障して使えない。家具什器費を申請したい」と相談してください。事前申請が必要なので、購入前に必ず相談しましょう。
Q3: 借金の返済があり、生活費が足りません。
A: 生活保護費を借金返済に充てることは原則として認められていません。法テラスで債務整理(自己破産、個人再生など)の相談をすることをお勧めします。ケースワーカーにも相談し、適切な対応を取りましょう。

Q4: 保護費が少なすぎると思います。不服を申し立てることはできますか?
A: はい、可能です。保護決定に不服がある場合、都道府県知事に対して審査請求ができます(決定を知った日から3か月以内)。ただし、まずはケースワーカーに保護費の算定根拠を確認し、誤りがないか確認することをお勧めします。
Q5: 働いて収入を得たら、保護費が減ってしまいますか?
A: 就労収入があると、基礎控除と勤労控除が適用され、一部が手元に残ります。例えば月収8万円なら、約2万6,000円+必要経費が手元に残ります。就労により総収入は増えるので、生活は楽になります。


Q6: 食費が足りません。フードバンクはどこで利用できますか?
A: 社会福祉協議会またはケースワーカーに問い合わせると、地域のフードバンクを紹介してもらえます。多くのフードバンクは無料で食料を提供しています。
Q7: 家賃が高くて生活費が圧迫されています。引っ越すべきですか?
A: 家賃が住宅扶助の上限を超えている場合、転居を検討する価値があります。ケースワーカーに相談すれば、転居指導により引越費用(敷金・礼金・引越代)が支給される可能性があります。

Q8: 保護費を貯金してはいけないのですか?
A: 原則として、生活保護費の貯蓄は認められていません。ただし、就労自立給付金の貯蓄、子どもの学資保険等は例外的に認められます。

まとめ:生活保護が足りない場合は一人で悩まず相談を

本記事の重要なポイントをまとめます。
保護費が足りない主な原因
- 本来受け取れる加算の未適用
- 家賃が住宅扶助の上限超過
- 光熱費・通信費が高額
- 食費の使い方が非効率
- 想定外の出費
まず確認すべきこと
- 保護決定通知書で保護費が適正か確認
- 加算の見落としがないかチェック
- 家賃が住宅扶助内か確認
利用できる追加支援
- 一時扶助(家具什器費、被服費、移送費など)
- フードバンク
- 子ども食堂
- 自治体独自の支援制度
効果的な家計管理
- 封筒式管理法
- 家賃の代理納付
- 1週間単位の予算管理
- 固定費の見直し
- 食費・光熱費の節約
重要な心構え
- 一人で抱え込まない
- ケースワーカーに正直に相談
- 利用できる制度をすべて活用
- 計画的な家計管理
- 就労による収入増も検討
最後に
生活保護費が足りないと感じることは、決して恥ずかしいことではありません。最低限度の生活を保障する制度であっても、様々な事情で不足を感じることはあります。
大切なのは、一人で悩まず、ケースワーカーや支援団体に相談することです。利用できる制度はすべて活用し、家計管理の工夫も取り入れることで、生活は改善できる可能性があります。
また、可能であれば就労による収入増も検討してください。生活保護には就労支援プログラムがあり、就労により少しずつ自立に近づくことができます。
あなたの生活が少しでも楽になるよう、まずはケースワーカーに相談してみてください。


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