生活保護受給中に様々な理由でお金が足りなくなることがあると思います。
例えば
- 支給される生活保護費が少なすぎて足りなくなった
- 子どもの入学準備等の必要経費にお金が掛かりすぎて足りなくなった
- 生活保護費を紛失した若しくは盗難にあった
- パチンコ等の遊興費に使い込んでしまって足りなくなってしまった
等の理由で「生活保護費が足りなくなった」と相談を受けることが多々あります。
では、生活保護費が足りなくなった場合はどうしたら良いのでしょうか?
次の支給日まで待つしかないのでしょうか?借金をするしかないのでしょうか?実は、申請する事で一時金が別途支給されることもあります。
そこで、このページでは、生活保護費はそもそも十分に支給されているのか?また、生活保護費が足りない場合はどうすればいいのか?その対処法等について詳しくご説明します。
生活保護費は足りないほど少ないのか?
生活保護では毎月最低生活に必要な費用が支給されていますが、この支給金額が多いのか、少ないのかは一概には言えません。
なぜなら生活保護費の支給金額は住む地域、世帯員の人数・年齢によって異なるからです。
上表は厚生労働省が公表している各世帯の支給金額の目安です。
例えば母子世帯の場合は、毎月の支給金額は約20万円もあります。
また、上表には計上されていませんが、子どもが小学生から高校生までの間は別途教育扶助、生業扶助が支給されており実際は更に多くの金額が支給されています。
そのため、子どもがいる間はテレビ等でも生活保護の問題点として挙げられているように、働いている人よりも、むしろ贅沢な生活を送っている人がいるのも事実です。
しかし、単身世帯の場合は毎月の支給金額が約10万円のため、生活する事はできますが、そんなに余裕のある生活はできません。
とは言え、生活保護の受給が開始されることで無料になるものもありますし、生活保護費の中には食費の他、趣味等に使えるお金も含まれているため、どの世帯であっても足りなくなるほど生活保護費が少ないわけではありません。
物価高・消費増税になったら生活保護費は見直される
「物価高になった場合や消費税が増税されたら生活保護費が足りなくなるのでは?」と心配される方が多いと思いますが、安心して下さい。
物価高や消費増税になった場合、生活保護費の支給金額は増額されます。
逆に物価が下がった場合等は生活保護費も減額されますが、毎年、景気等の動向によって生活保護費の支給金額も見直されます。
そのため、景気や税制度の改正によって生活保護費が足りなくなるような事も、まずありません。
申請することで一時金が出る場合もある
生活保護受給者が自立に向けた活動をしようとした場合、福祉事務所に申請する事で毎月の定例支給とは別に一時金が支給される事があります。
具体的には
- 就職に関する費用
- 資格取得に関する費用
- 学校・通学に関する費用
など、生活保護からの脱却に役立つものであれば生活保護から支給される可能性があります。
それでは、それぞれの詳しい内容についてご説明します。
就職活動に関する費用
就職に関する費用で生活保護から支給される一時金は
- 就労活動促進費
- 就職支度費
があります。
就労活動促進費とは、就職活動をするうえで必要な電話代や面接会場までの交通費等の支援をするものです。
支給金額は毎月5千円で最長1年間支給してもらう事ができます、
就職支度費とは、就職活動をするうえで必要なスーツや靴等の購入費用を支援するものです。
支給金額は32,000円を上限とする、実際に掛かった購入費全額支給されます。
ちなみに就職したからと言って、すぐに生活保護が廃止になるわけではありません。
最低生活費以内の収入であれば生活保護は廃止にならず、しかも給料収入については基礎控除等の控除がつくため、毎月使えるお金も増えます。
働ける健康状態の方は働いた方が断然お得のため、上記支援金を使ってお仕事を探しましょう!
資格取得に関する費用
資格取得に関する費用で生活保護から支給される一時金は
- 技能習得費
があります。
技能習得費とは、就職するために必要とする資格取得・技能習得にかかる費用を支援するものです。
支給金額は1つの資格につき年間81,000円、最長2年間を上限とする実際に掛かった費用が全額支給されます。
また、非常に稀なケースになりますが、この技能習得費を活用して普通自動車運転免許を取得する事ができる場合もあります。
学校・通学に関する費用
学校・通学に関する費用で生活保護から支給される一時金は
- 入学準備金
- 学習支援費
- 被服費
があります。
入学準備金とは、学生服や通学用カバン、ランドセル、体操服など、入学準備に必要な費用を支援するものです。
支給金額は小学校、中学校、高校で、それぞれ上限金額が定められており、その上限以内であれば全額支給されます。
学費支援費とは、ユニフォーム等の部活動に要する費用のほか、合宿や大会等への参加にかかる交通費及び宿泊費が支給されます。
支給金額は年間59,000円を上限とする実際に掛かった費用が全額支給されます。
被服費とは、児童の成長に伴い着れなくなった学生服や体操服の買い替えに必要な費用を支援するものです。
支給金額は14,000円を上限とする実際に掛かった費用が全額支給されます。
奨学金に関しては生活保護受給中でも借りることができる
生活保護受給者は原則として借金をする事ができません。
なぜなら債権者が生活保護受給者に対して借金の取り立てをする事は禁じられており、また生活保護受給者も生活保護費を借金返済に充てる事は禁止されているからです。
また、もう一つのデメリットとして、生活保護受給者が借金をした場合、その借りたお金も収入認定されてしまいます。
つまり当月の生活費は借金額5万円+支給額5万円=10万円となり
借金してもしなくても1ヶ月の生活費は10万円です。
借金をしない場合:1ヶ月の生活費10万円
借金をした場合: 1ヶ月の生活費10万円、債務額5万円
となり1ヶ月の生活費は、どちらも10万円なのにも関わらず借金をした場合は5万円と、その利子分だけ返済しなければいけないため損をすることになります。
以上のことから、生活保護受給者は原則として借金する事ができませんし、借金をするメリットもありません。
しかし、その借金が奨学金であればケースワーカーに相談する事で借りる事ができます。
なお、生活保護では、高校までの費用は手厚く支給されるため、公立高校に通う場合は、奨学金を使う事はありません。
しかし、私立の高校に通う場合は、生活保護だけでは足りないため、奨学金を借りる事になります。
また専門学校や大学に進学する場合も奨学金を借りる事ができます。
ただし、専門学校や大学の学費は生活保護費から一切支給されませんし、その子が仮に同居していたとしても、高校卒業後は生活保護からは外されてしまうため注意が必要です。
紛失しても生活保護費が再支給されることはない
生活保護費を紛失してしまったり、使い込んでしまった場合、どれだけ生活が苦しくても再支給される事はありません。
実際に私が受けた事例として、本当はパチンコ等のギャンブルで使い込んでしまったのに「生活保護費を紛失したので再支給して欲しい。」と相談に来られる呆れた受給者もいましたが当然、再支給はされませんでした。
生活保護費がなくなったら、どういう理由であれ、原則として次の支給日まで耐えるしかありません。
生活保護の制度上は紛失・盗難された場合に生活保護費を再支給する事ができるようにはなっています。
しかし、紛失・盗難された場合も警察に被害届を出すなど、各種手続きを行わなければいけませんし、次の支給日が来れば再支給する必要がない事から、少なくとも私が知る限りでは、生活保護費を再支給した事例はありません。
そのため、生活保護費をなくしたら、どういう理由であれ、まず再支給される事はないと思っていた方が確実です。
親族や友人、知人からの支援は注意が必要
生活費がどうしても足りない時はあると思います。
本当に困ったときに親族や友人、知人に支援を頼む事は良い事だと思います。
しかし、親族や友人、知人に支援を求める場合は注意が必要です。
なぜなら現金で支援をしてもらった場合、その支援された金額は収入認定しなければいけないからです。
もちろん、生活保護費をなくしてしまい、生活できないから支援を受けてると言う事情はよくわかるんですが、生活保護の制度上は収入認定をして、返還してもらう必要があります。
そのため、親族や友人、知人から支援をしてもらう場合は、食料等の現物による支援をしてもらうか、銀行口座を通さずに直接現金を渡してもらいましょう。
闇金業者等からの借金はダメ、絶対
生活保護費が足りなくなり、親族や友人、知人等からの支援も見込めない場合でも絶対に闇金業者から借金をしてはいけません。
なぜなら、一度でも闇金業者から借金をしてしまうと、常に生活保護費が足りない状態になってしまうからです。
闇金業者から借金をした場合の利子は様々ですが、トイチ(10日に1割)以上になります。
例えば10万円借りた場合、1ヶ月後には利子だけで3万円も返さなければいけません。
しかも3万円返しても元金は1円も減らないため、毎月3万円を闇金業者に返し続けなければいけません。
単身世帯の支給額が約10万円、家賃を引いたら6万円程度しか残りません。
そこからさらに毎月闇金業者に3万円も引かれたら、たった3万円しか残らないため、それこそ生活費が足りません。
「どうにかしてほしい!」と行政に相談しても生活保護は最後のセーフティーネットであり、それより下の制度はないため、どうする事もできません。
抜け出すには生活保護受給者自身が警察に届け出るしか方法は残されていませんが、闇金業者からの報復が、余程怖いようで生活保護受給者の大半は高い利子を払い続けることになります。
そのため、どれだけ生活費が足りなくて苦しくても闇金業者から借金をしては絶対にいけません。
まとめ
生活保護費はそもそも十分に支給されているのか?また、生活保護費が足りない場合はどうすればいいのか?その対処法等について、ご説明させていただきました。
上記をまとめると
- 単身世帯の生活保護費は少なめだが、それでも趣味等に使えるお金も含まれていることから普通に生活をするうえでは足りなくなることはない
- 生活保護費の支給金額は物価高や消費増税、景気の変動等があれば見直される
- 生活保護受給者が自立に向けた活動をしようとした場合、一時金が支給されることがある
- 生活保護受給中は原則借金をすることができないが、奨学金についてはケースワーカーに相談することで借りることができる
- 生活保護の制度上は紛失・盗難にあった場合は再支給できることになっているが、実際に再支給されることは、まずない
- 親族や友人、知人からの支援を受ける場合は現物による支援もしくは口座を介さず直接現金でもらわないと収入認定される危険性がある
- 闇金は利子の支払いだけで毎月数万円も取られ、生活できなくなってしまうため闇金業者から絶対にお金を借りてはいけない
となります。
その他、生活保護に関する様々な疑問については、下記にまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
https://seikathuhogomanabou.com/category/qa/
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