生活保護受給中でも、ある日突然、生活保護費の支給がとまる「打ち切り」になることがあります。
別途、収入や貯金等の資産があれば、突然、生活保護の支給がとまっても、すぐに生活に困ることはありませんが、生活保護費しかない場合は、打ち切られると、生活できなくなるため、非常に困ると思います。
そこで、このページでは、生活保護が打ち切りになる条件は何か?打ち切りになった後でも生活保護を再度申請・受給することはできるのか?等について、わかりやすくご説明します。
生活保護が打ち切りになる条件
生活保護が打ち切りになる条件は
- 収入が最低生活費を超えた
- 3ヵ月以上生活できる資金ができた
- ケースワーカーの指導指示に従わない
- 居住実態が確認できない
- 警察に逮捕された
上記、5パターンのいずれかに該当した場合、生活保護は打ち切りとなります。
それでは、それぞれの条件について、詳しく見ていきましょう。
収入が最低生活費を超えたら生活保護は打ち切りになる
生活保護は収入があったら受給できないと勘違いされていることが多いですが、実は収入があっても世帯の収入が最低生活費以下であれば生活保護の条件を満たし、生活保護を受給することができます。
そして、生活保護受給者に何かしらの収入がある場合、収入認定をされて、その収入分を減額して生活保護費を支給するんですが、就職や昇進、昇給をしたり、企業年金等が見つかった場合等をきっかけに収入が最低生活費を超える場合があります。
収入が最低生活費を超えたら、生活保護の条件を満たさなくなるため、生活保護は打ち切りとなります。
なお、就職した場合は、環境に馴染めず仕事を辞めてしまう可能性もあるため、すぐには生活保護を廃止せず、3ヵ月程度生活保護を停止して、様子を見てから生活保護を打ち切ります。
また、しばらくの間、働きながら生活保護を受給していた場合、生活保護が打ち切りになるときに就労自立給付金と言ってお祝い金のようなものが支給される可能性があるため、就労自立給付金の申請を忘れずにしておきましょう。
3ヵ月以上生活できる資金ができたら生活保護は打ち切りになる
生活保護受給者は3ヵ月以上生活できるだけの資金ができた場合、生活保護の打ち切りになります。
生活保護受給中に3ヵ月以上生活できるだけの資金が突然できることなんてあるのか?と疑問に思う方が多いと思いますが、実際、よくあります。
例えば親が亡くなって遺産相続した場合、年金の手続きをして、遡及分がまとめて支給された場合、所有している不動産が売却できた場合等に3ヵ月以上生活できるだけの資金ができます。
生活保護は使える資産をすべて活用して、それでも足りない場合に支給されるものなので、3ヵ月以上生活できるだけの資金がある場合は、生活保護は打ち切りになります。
ちなみに、資金が入っても3ヵ月以上も生活できない場合は、生活保護は打ち切りにならず、収入認定され、生活保護費が減額されることになります。
なお、生活保護費を少しずつ貯金して、3ヵ月以上生活できるだけの資金ができた場合の取り扱いは貯金の目的や理由によって変わります。
生活保護のうち、生活扶助に関しては家具・家電が壊れた時の購入費も含まれているため、貯金すること自体は認めらています。
そのため、貯金の目的や理由が明確であれば生活保護費を少しずつ貯めて3ヵ月以上生活できるだけの資金ができても、そのまま所有することが認められます。
しかし、貯金の目的や理由が特にない場合や、貯金の目的や理由が葬儀費用等、生活保護の扶助の対象となるものの場合は、必要のない貯金とみなされるため、収入認定をされてしまい、生活保護費の支給額を減額する形で徴収されてしまいます。
ケースワーカーの指導指示に従わないと生活保護は打ち切りになる
生活保護の受給が開始されると、ケースワーカーがついて、就労指導等、様々な指導指示を受けるようになります。
この指導指示に従わない場合、生活保護は打ち切りになります。
ケースワーカーの言う事なら、どんな理不尽な要求でも受け入れなければいけないのか?と言うと、そんなことはありません。
ケースワーカーが指導指示できる内容は生活保護受給者が経済的・精神的に自立できるためになるもの、達成基準と期限が明確なもの、生活保護受給者だけの行動で目標達成することができるもの、これらすべての条件を満たすものに限られます。
そのため、例えば「部屋の中を常にキレイにしないさい!」「節約しなさい!」と言った指示は基準が不明確ですし、期限もないため、これらの指示に従わないことを理由に生活保護を打ち切ることはできません。
また「3ヶ月以内に就職して働きなさい」と言った指導指示もできません。
なぜなら、就職できるかどうかは生活保護受給者だけの問題ではなく、採用する会社の問題でもあるからです。
実際にケースワーカーができる指示は「1ヶ月以内に病院に行きなさい!」「1ヶ月以内に1回ハローワークに行きなさい!」と言った指導指示に限られます。
そのため、ケースワーカーの指導指示に従わない場合、生活保護の打ち切りになりますが、理不尽な要求に応える必要はありません。
居住実態が確認できない場合に生活保護は打ち切りになる
生活保護はお住まいの地域を管轄する福祉事務所で申請・受給する必要があります。
そのため、居住実態が確認できない場合は、生活保護が打ち切りになります。
居住実態があるかどうかの確認方法についてですが、生活保護の受給が開始されると、世帯の格付けに応じて数ヶ月に1度ケースワーカーが訪問調査を実施します。
この訪問調査によって、居住実態がないと判断された場合に生活保護が打ち切りになります。
では、どのようにして居住実態を確認するのでしょうか?
この訪問調査は訪問前に電話連絡をしたりしないので、ある日突然ケースワーカーが訪れることになります。
当然、事前連絡がないことから、病院や就職活動、買い物等に出かけていて、留守にしていることもあります。
そのため、1回や2回訪問調査をした結果、会えなかったからと言う理由で、すぐに生活保護が打ち切りになるわけではありません。
ケースワーカーは訪問時に会えなかった場合、不在通知書と言う書類がポストや玄関の隙間に入れられます。
この不在通知書には、「○月○日○時にお伺いしましたが、不在でした。この不在通知書を確認したら、すぐに福祉事務所までご連絡ください。」と言った内容が書かれています。
この不在通知書の指示に従い、福祉事務所に連絡をした場合は、居住実態ありと判断されるため、訪問時に留守にしていても問題ありません。
この不在通知書の指示に従わず、福祉事務所に連絡をしなかったり、再度、ケースワーカーが訪問した時に、不在通知書がポストまたは玄関にそのまま残っている場合は、居住実態なしと判断されて生活保護が打ち切りになります。
警察に逮捕された場合に生活保護は打ち切りになる
生活保護受給中に警察に逮捕・勾留された場合は、生活保護が打ち切りになります。
「犯罪を犯したんだから生活保護は打ち切りになって当然だ!」と言う考えの方がいますが、犯罪を犯したから生活保護が打ち切りになるわけではありません。
生活保護受給者が警察に逮捕・勾留された場合に生活保護が打ち切りになる理由は、警察に逮捕・勾留されたり、刑務所に入っている間は食事も出る(最低生活は保障されている)からです。
生活保護を受給するにしても、警察のお世話になるにしても、税金で賄われていることに変わりはなく、どちらで出すかが変わるだけなので、国が税金で負担することに変わりはありません。
なお、警察に逮捕・勾留されても、釈放後、出所後については、通常どおり、生活保護の条件を満たせば生活保護の受給を再開することができます。
例えば大麻や覚せい剤等の薬物依存者は、定職に就くことが難しいため、生活保護を受給しますが、クスリを断ち切ることができないため、逮捕と生活保護を繰り返すことになりがちです。
不正受給が発覚しても生活保護は打ち切りにならない
よくネット上では「不正受給をしたら生活保護が打ち切りになる!」と書かれていますが、不正受給をしても生活保護は打ち切りになりません。
不正受給をしたら、生活保護の打ち切りではなく、不正に受領した生活保護費を徴収されることになります。
もちろん、隠れて働いていて、その収入が最低生活費を超えるような場合や不動産等が売却できて、3ヶ月以上生活ができるだけの貯金がある場合は、生活保護を受給する必要がないため、生活保護が廃止になりますが、最低生活費以下の収入・貯金しかない場合は、生活保護は打ち切られず、継続することになります。
なお、不正受給発覚後、生活保護を継続して受給する場合は、毎月の生活保護費から徴収金が引かれるため、返還が終わるまでは、支給金額が減額されます。
ちなみに、よく勘違いされていますが、生活保護の不正受給とは、資産や収入があること等を隠して生活保護を受給することです。
そのため、生活保護受給者が生活保護費をパチンコ等のギャンブルに使っても、不正受給にはなりませんし、若くて健康な人が働けるのにわざと働かなくても不正受給にはなりません。
指導指示に従わなくてもすぐに生活保護は打ち切りにならない
上記で説明したとおり、生活保護受給中はケースワーカーの指導指示に従わなければ生活保護が打ち切られてしまいます。
しかし、ケースワーカーの指導指示に従わないからと言って、すぐに生活保護が打ち切りになるわけではありません。
ケースワーカーが指導指示に従わないことを理由に職権で生活保護を廃止するには、手順を踏まなければいけません。
ケースワーカーが生活保護を打ち切りにする場合、まずは口頭指導と言って、生活保護受給者に会って、もしくは電話で指導指示を伝えなければいけません。
この口頭指導を2~3回しても生活保護受給者が指導指示に従わない場合に、ケースワーカーは文書指導を行います。
そして、この文書指導に従わない場合に、はじめてケースワーカーは生活保護を打ち切りにすることができます。
そのため、ケースワーカーが指導指示に従わないことを理由に生活保護を打ち切ろうとしても、最短でも2~3ヶ月は期間を要します。
しかも、指導指示の内容に一度でも生活保護受給者が従えば、再び初めから手順を踏まなければいけなくなります。
例えばケースワーカーが就職活動をするよう口頭指導を2~3回行い、文書指導まで進んだとしても、その間にたった一度でも指示に従い、生活保護受給者が就職活動をすれば、同じ指導内容であっても、ケースワーカーは再び口頭指導からしなければいけません。
つまり、生活保護受給者は指導指示に従わなくても、すぐに生活保護が打ち切られることはありませんし、たった一度もでも指導指示に従えばリセットされることから、極端な話、ケースワーカーの指導指示に従わなくても生活保護を受給し続けることができます。
打ち切り後の次の日から生活保護の申請はできる
生活保護を打ち切り後はどうなるのでしょうか?その後、生活保護の再申請をすることは可能なのでしょうか?
結論から言うと、生活保護を打ち切られても次の日から普通に生活保護の再申請が可能です。
収入が最低生活費以上ある場合や3ヶ月以上の資産がある場合は生活保護の条件を満たさないため、再申請をしても、却下になりますが、それ以外の理由であれば、どういう理由で打ち切りになっていても、すぐに生活保護の受給が再開されます。
例えケースワーカーの指導指示に従わなくて生活保護の打ち切りになっても、次の日に再申請すれば、すぐに生活保護は再開されます。
仮に辞退届を出して、自ら望んで辞めた場合でも、次の日からは再申請が可能で、生活保護の条件を満たしていれば、すぐに生活保護が再開されます。
つまり、生活保護受給者は生活保護の打ち切りにあっても、すぐに生活保護が再開されることから、生活保護の打ち切りについて、何ら心配をする必要はありません。
まとめ
生活保護が打ち切りになる条件は何か?打ち切りになった後でも生活保護を再度申請・受給することはできるのか?等について、ご説明させていただきました。
上記をまとめると
- 収入や資産がある場合など、生活保護の条件を満たさなくなった場合は生活保護が打ち切りになる
- ケースワーカーの指導指示に従わない場合に生活保護は打ち切りになるが、打ち切りになるまでには口頭指導、文書指導と手続きが必要であり、また、指導指示の途中で一度でも指示に従えばリセットされることから、指導指示に従わなくても、すぐに生活保護の打ち切りになることはない
- 不在通知書がポストや玄関に入っていた場合にケースワーカーに連絡しなかったり、そのまま放置している場合、居住実態なしと見なされ生活保護が打ち切りになる
- 生活保護受給者が逮捕・勾留された場合、拘置所または刑務所で最低生活に必要なものが支給されるようになるため生活保護が打ち切りになる
- 不正受給をした場合、不正受給した分の生活保護費を徴収されるが、不正受給を理由に生活保護が打ち切りになることはない
- 生活保護の条件を満たす限り、どんな理由で打ち切りになっても次の日に再申請すれば生活保護を再度受給することができる
となります。
その他、生活保護に関する様々な疑問については、下記にまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
https://seikathuhogomanabou.com/category/qa/
コメント