障害年金がもらえるようになったけれど、障害年金の支給金額が少なくて生活が苦しい!生活保護を受給したい!と言う方は多いと思います。
しかし、生活が苦しいからと言って、国から支給されている障害年金を受給しながら、同じく国から支給される生活保護を受給することはできるのか?と疑問に思い、生活保護を申請しようかどうか迷った挙げ句、生活が苦しくても申請せずに我慢している方、辛い思いをしている方、多いのではないでしょうか。
また、生活保護受給中にケースワーカーから「障害年金の手続きをして下さい」と指導指示を受けたけれど、もしも障害年金の受給が開始したらどうなるのか?手続きをしたらメリットがあるのか?気になるところだと思います。
そこで、このページでは、障害年金受給中でも生活保護は受給することができるのか?障害年金と生活保護は両方受け取れることができるのか?生活保護受給中に障害年金の手続きをするメリットは何か?等について、このページでは、わかりやすくご説明します。
生活保護と障害年金は両方もらえる
生活保護と障害年金は両方もらうことができるのでしょうか?
結論から言うと、生活保護と障害年金は両方受給することができます。
生活保護の受給条件に「障害年金を受給していると生活保護を受けることができない」と言う条件はありません。
生活保護の条件はシンプルに「世帯の収入が最低生活費以下であること」のため、障害年金が最低生活費以下であれば、当然障害年金受給中でも生活保護を受給することができます。
ただ、「障害年金と生活保護を両方もらうことができる」と言うと、少しニュアンスが違いまして、厳密に言うと、障害年金の受給権があるのであれば、年金を受給しないと生活保護を受給することができません。
なぜなら、生活保護は「最後のセーフティネット」と呼ばれているように、生活保護制度を利用する場合は、国からの補助金や自己が所有するあらゆる資産(労働力含む)、扶養義務者からの援助等、利用できる制度や援助を生活保護よりも優先しなければいけないからです。
これを「他法他施策優先の原則」と言います。
この「他法他施策優先の原則」があるため、生活保護を受給中もしくは生活保護を申請する方は、障害年金の受給権があるのであれば生活保護よりも優先してをもらうように努めなければいけません。
生活保護費に障害年金が上乗せされるわけではない
上記で生活保護と障害年金の両方受給できると書きましたが、生活保護費に障害年金が上乗せしてもらえるわけではありません。
生活保護受給中は障害年金は収入認定され、障害年金を受給しても最低生活費に足りない分が生活保護費として支給されます。
それでは、具体的に障害年金がどのように収入認定されるのかを見ていきましょう。
生活保護の受給開始後、又は障害年金受給開始後、初めて障害年金が支給された月から収入認定されます。
※障害年金は偶数月の15日に2ヶ月分が1括で支給されますが、生活保護では1ヶ月分ずつ収入認定を行います。
給料収入の場合、基礎控除が付きますが、障害年金の場合は基礎控除等はありません。
一切の控除がないため、障害年金の支給額全額が生活保護費の支給額から減額されます。
ただ、控除は付きませんが、代わりに障害者加算が付くようになります。
生活保護では障害者加算がつくため支給金額は増える
生活保護受給中の方に障害がある場合、障害を抱えているがゆえに生じる特別需要に対応するために障害者加算が支給されます。
障害を抱えているがゆえに生じる特別需要とは、通院時に使うタクシー代などです。
例えば健常者の人であれば少しの距離であれば歩いて行けば良いですが、足が不自由だったり、体が動かない人の場合は、少しの距離でも移動するのが大変なため、その分タクシーの利用が必要になります。
なお、障害者加算で支給されるようになる金額は障害年金の等級や級地等によって異なります。
障害年金2級に該当する場合 17,870円
障害年金2級に該当する場合 16,620円
障害年金2級に該当する場合 15,380円
障害年金2級に該当する場合 14,870円
障害者加算に該当する場合、上記の金額が毎月支給される生活扶助や住宅扶助等に加えて支給されるようになります。
例えば2級地に住んでいて毎月10万円支給されていた生活保護受給者が障害年金1級に該当するようになった場合、障害者加算として24,940円が追加され、毎月の支給金額が124,940円に増額します。
このように、障害者の場合、障害者加算が付くため、障害年金は収入認定されてしまいますが、加算額分、月々に使える生活費は増えます。
生活保護受給中の障害年金遡及分は返還金となる
障害年金の遡及支給とは、本来支給されるべき障害年金が支給されていなかったため、障害年金の支給開始と共に過去の年金分も遡って支給されることを言います。
障害年金は障害があれば自動的にもらえるものではありません。
障害がある方が障害年金の手続きをし、認められることで支給が開始されます。
特に障害年金の受給要件は非常に厳しく、なかなか受給することができないことから、受給要件を満たしていないと思い込み、申請していないことがあるため、遡及支給を受けることが多々あります。
なお、障害年金の申請することで申請日から5年間までなら遡って障害年金を受給することができます。
平成20年4月から平成21年3月までの障害年金は時効により消滅します。
生活保護受給者に障害年金の遡及支給があった場合、今まで受給してきた生活保護費を返還しなければいけません。
この際に返還の対象となる生活保護費は、8つの扶助の全てに及ぶため、毎月支給されている生活保護費の他、医療扶助や介護扶助等の現物支給による扶助も含まれます。
そのため、大抵の場合、遡及された障害年金は全て返還することになります。
「なぜ過去に受給した生活保護費も返還しなければいけないのか?」「障害年金がもらえるのは自分のおかげなのに返還するのはおかしい!」と思う方は多いでしょうが、生活保護は最低生活費に足りない分だけを支給する制度のため、残念ながら遡及された障害年金は返還しなければいけません。
以前は年金遡及分の一部を自由に使えた
あれ?でも私の時は障害年金の遡及分の全額ではないけど、一部は返還免除となって、家具・家電を購入できたけど?と言う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
確かに以前は障害年金の遡及分の一部を家庭に必要なものを購入するのに自由に使って良いと言う時代がありました。
しかし、上記のとおり、正規の手続きを踏んでいる方がいる中、手続きをしてこなかった人を優先するような取り扱いはおかしいと、不公平だと言うことで、国から今後、一切の返還免除も認めないと通知がありました。
そのため、現在は障害年金の遡及分は問答無用で全額が返還対象となります。
障害年金の遡及分を使い込んだ場合は徴収金となる
「障害年金の遡及分は全額返還しなければいけませんよ!」とケースワーカーが言っているのにも関わらず、障害年金の遡及分が入金されたら、借金の返済やギャンブル、贅沢品等に使い込んでしまう生活保護受給者はいます。
このように障害年金の遡及分を使い込んでしまった場合、生活保護の廃止になったりすることは、まずありませんが、返還金ではなく、徴収金として徴収されるようになります。
どちらもお金を返さなければいけないことに変わりはありませんが、徴収金の場合は不正受給とみなされるため、追加で罰則が付くことがあります。
罰則の内容は、罰則金の追加で各自治体の判断に委ねられますが、最大で不正受給した金額の40%を罰則金として上乗せすることができます。
この場合、不正受給した金額は100万円ですが、更に40万円の罰則金の支払いも追加されます。
そのため、ケースワーカーの指導指示に従い、障害年金の遡及分については、キチンと返還しましょう。
生活保護受給者に障害年金を手続きするメリットはない
生活保護受給者はケースワーカーから「障害年金が受給できるかもしれないので、障害年金の手続きをしてください!」と指導指示を受けますが、ハッキリ言って、生活保護受給者に障害年金を手続きするメリットはありません。
障害年金の手続きには、通常の年金手続きと異なり、如何に生活に支障が出ているのか?等を記入する部分があったり、病院の先生から診断書をもらったりと何かと手間が掛かります。
かと言って、障害年金をもらえるようになっても、遡及分は全て返還しなければいけませんし、障害年金がもらえるようになった分、生活保護費が減額されるようになるため、月々に自由に使える生活費が増えるわけでもありません。
生活保護受給者に障害があると障害者加算が付きますが、この障害者加算は障害者手帳でも良いため、わざわざ障害年金の手続きをしなくても障害者加算は付けてもらえます。
このように、生活保護受給者にとってみれば、障害年金を手続きをするメリットはありません。
しかし、生活保護を受給するには、あらゆる資産を活用しなければいけないため、障害年金の手続きをするメリットはありませんが、ケースワーカーの指導指示に従って、手続きをしなければいけません。
まとめ
生活保護と障害年金は両方もらうことができるのか?障害年金の手続きするメリットはあるのか?について、ご説明させていただきました。
上記をまとめると
- 生活保護と障害年金は両方もらうことができる
- 生活保護費に障害年金が上乗せされるわけではなく、障害年金分、生活保護費が減額される
- 障害がある場合、障害者加算が付くため、加算分、月々に自由に使えるお金は増える
- 障害年金の遡及分がある場合、その遡及分は全額福祉事務所に返還しなければいけない
- 障害年金の遡及分は以前は一部を自由に使えた時期もあったが、現在は公平性の観点から控除は一切認められない
- 障害年金の遡及分を使い込んでしまった場合、生活保護の廃止にはならないが、徴収金となるため、別途罰則金が請求されるようになる可能性がある
- 障害年金の手続きは複雑で、非常に手間が掛かるが、生活保護受給者にとってメリットはない
- 生活保護受給者にメリットがなくても、生活保護を受給する以上、あらゆる資産を活用しなければいけないため、障害年金の手続きはしなければいけない
となります。
その他、生活保護の収入・資産に関する様々な疑問については、下記にまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
https://seikathuhogomanabou.com/category/syunyu/
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