生活保護の受給を開始すると、様々な制限や義務が発生します。
例えば
・所有してはいけないものがある
・収入申告書を提出しなければいけない
・ケースワーカーによる訪問調査数ヶ月に1回ある
などなど、多数あります。
一度にすべてを説明することはできないので、このページでは、制限のうち、生活保護受給者がしてはいけないことについてご説明します。
ネット上で見ると、しばしば生活保護受給者がして良いことであっても、してはいけないことに含まれていたりするので、何がダメで何が良いのかを理由も含めてキチンと確認していただけたらと思います。
生活保護受給者がしてはいけないこと
はじめに生活保護受給者がしてはいけないことについて、ご説明します。
生活保護受給者がしてはいけないことは
・目的のない貯金・一定金額以上の貯金
・自動車・バイクの所有・利用
・生命保険・医療保険・学資保険への加入
・宝石やブランド品等の高級な装飾品を所有すること
・借金を返済すること
・ケースワーカーの指導指示に従わないこと
以上6点です。
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
目的のない貯金・一定金額以上の貯金
勘違いしていいただきたくないので、最初に説明しますが、生活保護受給者は生活保護費を貯金しなければいけません。
なぜなら毎月支給される生活保護費の中に「生活扶助」が含まているんですが、この生活扶助は通常予想される生活需要のために支給されるものだからです。
この通常予想される生活需要とは、食費、衣料費、光熱費はもちろんですが、家具・家電などが故障した場合の買い替え費用についても生活扶助に含まれています。
そのため、生活保護受給者は毎月支給される生活保護費を家具・家電を買い換えるために目的のない貯金・一定金額以上の貯金は禁止貯金しなければいけません。
しかし、目的のない貯金・一定金額以上の貯金は禁止されています。
目的のない貯金とは、特に何かを購入する目的のないまま貯金をすることだけではなく、生活保護受給者が貯める必要のない資金の貯金も目的のない貯金に含まれます。
例えば
・葬式費用
・病気・怪我に備えた治療費
と言った理由の貯金は認められていません。
なぜなら、生活保護の場合、葬式代は葬祭扶助、治療費は医療扶助から支給されるため、必要ないからです。
そして、貯金額の上限金額ですが、基本的にどの世帯でも10万円以内の貯金は認めれます。
10万円を超える金額については貯金をする理由が必要で、例えば大学・専門学校に進学するための費用など、ケースワーカーから正当な理由があると認められる必要があります。
目的のない貯金・一定金額以上の貯金が見つかった場合は、所有が認められる貯金額になるまで、生活保護を支給なし、停止又は廃止になります。
そして、所有が認められる貯金額になれば、再び申請することで、生活保護を再開することができます。
なお、貯金がある理由が不正受給によるものであった場合は、徴収金となり、福祉事務所に返還する必要があります。
自動車・バイクの所有・利用
生活保護受給者は自動車及びバイクの利用はおろか、所有することも認められていません。
生活保護申請時に所有していた場合、資産価値があれば売却、資産価値がない場合でも処分しなければいけません。
生活保護受給者が自動車・バイクを所有・利用してはいけない根拠として
・自動車・バイクの売却代を生活費に充てられる
・自動車・バイクの維持費が掛かる
・交通事故発生時の補償がない
上記3つの理由から認められていません。
例外として、
・生活保護申請後6ヵ月以内に生活保護脱却が見込まれる場合
・通勤にバイクが必要な場合
上記どちらか一方の条件を満たすことができれば、自動車・バイクの所有・利用を認めてもらうことは可能です。
残念ながら通院や買い物利用に必要でも自動車・バイクの所有・利用は認めらないので気をつけましょう。
もしも、所有・利用していることがバレた場合は、ケースワーカーから指導を受ける事になります。
ケースワーカーからの指導指示は、はじめに口頭で指導され、それでも従わない場合は文章指導となり、最悪の場合は生活保護の廃止となります。
生命保険・医療保険・学資保険への加入
生活保護受給者は生命保険・医療保険・学資保険等の各種保険に加入することが認められていません。
各種保険への加入が認められていない理由は2つあります。
1つ目は、そもそも生活保護受給者は保険に入る必要がないからです。
医療保険に加入する理由は、癌などの大病を患ったときの治療費を確保するために加入すると思いますが、そもそも生活保護受給者は医療扶助により、あらゆる治療をタダで受けることができます。
また、学資保険に関しても同じ理由で、小中学校までの教育費は教育扶助から支給されます。
高校までの教育費は生業扶助から支給されます。
残念ながら大学・専門学校に進学する場合の扶助はありませんが、高校までであれば、毎月の生活保護費の上乗せの他、入学準備金等、別途支給されるため、学費を心配することがありません。
以上の理由から、そもそも各種保険に入る必要がありません。
各種保険への加入が認められていない2つ目の理由は資産形成につながるからです。
生活保護費は健康で文化的な最低限度の生活を送るために支給されるものです。
そのため、生活保護費を資産形成につながるものに使うことは禁止されています。
例えば生活保護費で掛けた生命保険によって、その親族に数千万円もの保険金が入るとしたら、色々とおかしいと思いませんか?
これらの理由により、生活保護受給者は生命保険・医療保険・学資保険等の各種保険に加入することが認められていません。
宝石やブランド品等の高級な装飾品を所有すること
生活保護受給者は宝石やブランド品等の高級な装飾品を所有は認められていません。
宝石やブランド品等の高級な装飾品には資産価値があるため、もしも所有している場合は、すぐに売却をして生活費に充てなければいけません。
また、生活保護制度が保障しているものは、健康で文化的な最低限度の生活であり、宝石やブランド品等の高級な装飾品はその趣旨とは逸脱するものであることから、生活保護受給者が宝石やブランド品等の高級な装飾品を所有することは認められていません。
借金を返済すること
生活保護受給者が借金を返済することは認められていません。
なぜなら、借金の返済=資産形成をすることだからです。
生活保護受給者は不動産を購入したり、株や投資信託などの投資をしたり、生命保険等の各種保険に加入するなど、資産形成をすることは禁止されています。
そのため、例えば住宅ローンを組んでいる場合は生活保護を受給することはできません。
借金はマイナスの資産ですが、マイナス資産が減る=資産が増えることにつながるため、「借金の取り立てが怖いから」「今月は生活保護費が少し余ったから」など、いかなる理由があっても、生活保護費から借金を返済することは禁止されています。
ケースワーカーの指導指示に従わないこと
生活保護の受給が開始されると、担当ケースワーカーが付きます。
この担当ケースワーカーが生活保護受給者の相談に応じたり、各種調査を行い、生活指導、通院指導、就労指導など、生活保護受給者が精神的にも経済的にも自立できるようにサポートを行います。
生活保護受給者自身も生活保護を受ける以上は、治療に専念する、就職活動を行うなど、様々な義務を負うため、ケースワーカーから受けた様々な指示には必ず従わなければいけません。
もしも、ケースワーカーからの指示に従わなければ、最悪の場合、生活保護を廃止されてしまうため、気をつけましょう。
ただし、生活保護の脱却に明らかに関係のない指示には従う必要はありません。
例えば「お金を持っている人と結婚して早く生活保護を脱却しなさい」等の指示は、確かに生活保護の脱却につながるかもしれませんが、不適切な指導指示です。
このような不適切な指導指示や嫌がらせには従う必要ありませんので、苦情を言って注意してもらいましょう。
生活保護受給者がしてもいいこと
次に生活保護受給者がしても良いのに、なぜかしてはいけないと勘違いされているもについてご説明します。
生活保護受給者がしてはいけないと勘違いされているものは
・不動産を所有すること
・スマートフォンを所有・購入すること
・パソコンを所有・購入すること
・結婚・離婚をすること
・ペットを飼うこと
・パチンコ等のギャンブルをすること
・お酒を購入して飲むこと
・タバコを購入して吸うこと
・クレジットカード・デビットカード・電子マネーの利用
以上9点です。
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
不動産を所有すること
生活保護受給者でも不動産を所有することは可能です。
本来であれば、不動産は資産であるため、売却しなければいけません。
しかし、不動産は高額なため、すぐに売却することはできません。
すぐに売却することができなれば、たとえ数億円の価値のある不動産を所有していたとしても、現金化できないため、生活することができません。
そのため、不動産が売却できた場合は、今までの生活保護費を遡って返還しなければいけませんが、不動産が売却できるまでは所有することができます。
また、その不動産が資産価値が少なく、居住用として住む場合は、売却する必要はなく、そのまま所有して住み続けることが可能です。
なぜなら、住宅扶助を支給する必要がなくなるからです。
アパートやマンション等に住んでいる場合は、毎月の家賃を住宅扶助として支給しなければいけませんが、自宅の場合は家賃を支給する必要がなく、その分、生活保護費の支給を減らすことができるため、所有し、住み続けることが認められています。
なお、親等が亡くなり、不動産を相続した場合も取り扱いは同じです。
スマートフォンを所有・購入すること
生活保護受給者はスマートフォンを所有することはもちろん、生活保護費でスマートフォンを購入することが可能です。
むしろ、就労可能と判断された生活保護受給者に関しては、積極的に購入するように指示します。
なぜなら、就職活動をするうえで携帯電話は必須アイテムだからです。
今の時代、連絡がつかない人は就職することが不可能です。
また、ケースワーカーとしても訪問調査等で、いつも自宅にいない生活保護受給者に対して指導したい場合にもスマートフォンがあると非常に便利です。
そのため、スマートフォンは購入してでも所有するべきです。
なお、機種に関しては最新機種であろうと、料金プランも含めて生活保護費の範囲内で生活できるのであれば、特に制限はありません。
パソコンを所有・購入すること
パソコンに関しても、生活保護受給者が所有しても特に問題はありません。
生活用品の所有が認められるか認められないかの基準は当該物品の普及率が当該地域の70%に満たすかどうかで判断されます。
そのため、以前は炊飯器の所有も認めらていませんでしたが、今は認められていますし、パソコンも今はどこの家庭でも当たり前にあるため、所有が認められています。
余程性能が高く、資産価値の高いパソコンであれば売却指導を受けるかもしれませんが、ゲーミングパソコンなど、多少CPUやグラフィックボード等の性能が良いくらいのパソコンであれば、就職活動での活用も見込まれることから、所有を認められます。
結婚・離婚をすること
生活保護受給者は恋愛自由です。
そのため、恋愛の結果、結婚することも可能です。
ただし、結婚する場合は、新たに世帯に入る方を含めて生活保護の条件に該当するかどうかのチェックが必要になるため、ケースワーカーに生活保護の変更申請書を提出する必要があります。
結婚して妊娠・出産することも自由ですし、妊娠・出産した場合は加算もつきます。
逆に離婚することも自由です。
離婚した場合も結婚の時と同様にケースワーカーに生活保護の変更申請書を提出する必要があります。
また、離婚して世帯を出ていく人も生活保護が必要な場合は、生活保護の申請をする必要があります。
要するに、結婚・離婚も自由ですが、どちらの場合も手続きが必要になります。
ペットを飼うこと
生活保護受給者がペットを飼うことに疑問を持たれる方もいますが、生活保護費の使用用途は資産形成をすること以外であれば基本的に自由であるため、生活保護受給者はペットを飼うことができます。
また、精神病を患っている方の場合は、医師からペット等がいた方が良いと指導を受けている方もいるため、多頭飼育崩壊のような事態にならない限りはケースワーカーも特に何も指導も助言もしません。
ただし、生活保護費からペット代に関する扶助は一切ないため、ペットに関するあらゆる費用、例えばエサ代や治療費等は月々の生活保護費から負担しなければいけないため注意が必要です。
パチンコ等のギャンブルをすること
「生活保護を受給してパチンコ等のギャンブルをするとは何事だ!」と言うご指摘は市民の方から、よくいただきます。
生活保護費の原資は皆様が払っている税金のため、お怒りになるのは、わかるんですが、生活保護受給者はパチンコ等のギャンブルをすることが認められています。
なぜなら、生活保護の趣旨は健康で文化的な最低限度の生活の保障だからです。
「文化的な」がポイントで衣食住だけが認められているわけではなく、多少の娯楽をすることも認められています。
そのため、生活保護費をすべてパチンコ等のギャンブルに突っ込んでしまい生活できないような生活保護受給者に対しては、生活指導を行いますが、遊びでする分に関しては特に問題ありません。
中には生活保護費を落としてしまったと嘘をついて再支給して欲しいと相談に来る方がいます。
生活保護の制度上、生活保護費の再支給は可能となっていますが、紛失・盗難の場合は警察に届けるなど、様々な手続きが必要で、実際に再支給をした例はほぼありません。
お酒を購入して飲むこと
生活保護受給者はお酒を購入して飲むことも認められています。
宅飲みでも、外食時に飲むのでも、どちらでも自由にお酒を飲んで大丈夫です。
ただし、アルコール依存症の方や飲んで暴れるような方、医師からお酒を禁止されている方の場合は生活指導の対象となります。
タバコを購入して吸うこと
生活保護受給者はタバコを購入して吸うことが認められています。
タバコは健康被害を引き起こしますが、ギャンブル等と違い、生活できなくなるほどタバコを買いすぎることもなく、お酒のように酔って暴れることもないため、現状、特に制限はありません。
ホストクラブやキャバクラに行くこと
生活保護受給中にホストクラブやキャバクラに行くことは禁止されていません。
「生活保護費でホストクラブやキャバクラに行くとは何事だ!?」
「そもそも生活保護費でホストクラブやキャバクラに行けるのか!?」
と様々な疑問があると思いますが、生活保護受給中でもホストクラブやキャバクラに行くことは可能です。
なぜなら生活保護費に使用用途の制限はないからです。
そのため、上記の通り生活保護費はパチンコ、お酒、タバコに使えますし、同様にホストクラブやキャバクラに行くことも可能です。
ただし、支給金額は限られているため、生活保護費だけで頻繁にホストクラブやキャバクラに行くことは難しいです。
借金をすること
生活保護のしてはいけないことに借金の返済が挙げられていますが、借金をすること自体は認められています。
借金すること自体は認められていますが、生活費を借りることはオススメしません。
まず、生活保護受給者と言うことで、普通の銀行や消費者金融はお金を貸してくれません。
結果、貸してくれるのは違法の闇金業者だけです。
闇金業者から借金をした生活保護受給者は元金は少しでも、暴利のため、毎月の生活保護費の半分近くを利子だけで取られてしまい、生活ができなくなります。
生活保護制度は最後のセーフティネットのため、生活保護費で生活できなくなると、もうどうしようもありません。
また、借金も収入のため、収入認定されて生活保護費が減額されてしまいます。
例えば最低生活費が10万円の生活保護受給者が3万円借り入れた場合、収入認定により、生活保護費が3万円減額され、生活保護費の支給金額が7万円に減額されます。
では、何のために借金をすることを認めているのか?と言うと、教育費のためです。
生活保護費から小学校から高校まで入学準備金は支給されますが、足りない場合に教育支援資金を借りることができます。
また、大学・専門学校に進学する場合に、奨学金を借りることもできます。
このように、教育に関する資金が借りられるように生活保護受給者に借金をすることが認められています。
クレジットカード・デビットカード・電子マネーの利用
生活保護受給者はクレジットカード、デビットカード、電子マネーを利用することが可能です。
なお、クレジットカードについては、生活保護上は使っても問題はありませんが、生活保護受給者に利用を認めるかどうかはクレジットカードを発行する会社の判断に委ねられます。
自己申告しない限り、クレジットカード発行会社は生活保護受給者かどうかを判断する術を持たないため、生活保護受給開始前に発行したクレジットカードに関しては滞納等をしない限り問題なく利用することができます。
ただし、ブラックリストに載っていたり、生活保護受給開始後に新規でクレジットカードを発行する場合は条件を満たさないため、クレジットカードを利用するのは難しいかもしれません。
生活保護受給者への罰則
生活保護受給者がしてはいけないことをした場合の罰則は生活保護の停止または廃止です。
生活保護受給者がしてはいけないことをしたからと言って、すぐに生活保護の支給がストップするわけではないため、安心してください。
はじめにケースワーカーから改善するように口頭指導が2~3回されます。
その次に「○月○日までに○○を改善しなければ生活保護を停止または廃止する」と言った内容の文書指導がされます。
それでも期日までに改善されない場合にはじめて生活保護が停止・廃止となります。
指導指示に従わない場合に生活保護が停止または廃止になるだけで、それ以外には特に罰則はありません。
例えば「改善されるまで生活保護費を減額される」と言った罰則等はありません。
まとめ
生活保護受給者がしてはいけないことは
・目的のない貯金・一定金額以上の貯金
・自動車・バイクの所有・利用
・生命保険・医療保険・学資保険への加入
・宝石やブランド品等の高級な装飾品を所有すること
・借金を返済すること
・ケースワーカーの指導指示に従わないこと
以上6点です。
そして、生活保護受給者がしてはいけないと勘違いされているものは
・不動産を所有すること
・スマートフォンを所有・購入すること
・パソコンを所有・購入すること
・結婚・離婚をすること
・ペットを飼うこと
・パチンコ等のギャンブルをすること
・お酒を購入して飲むこと
・タバコを購入して吸うこと
・クレジットカード・デビットカード・電子マネーの利用
以上9点です。
生活保護受給者がしてはいけないことをした場合、指導指示が実施され、最悪の場合、生活保護の停止または廃止となるため、注意しましょう。
どちらかわからない場合でも、ケースワーカーから特に指導指示が出ないのであれば、問題ないと言うことなので、何も言われないのであれば、特に気にする必要はありません。
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