貯金があると生活保護を申請できない、もしくは生活保護が廃止になると勘違いされている方が多いですが、生活保護は貯金があっても受給することができます。
と言いますか、むしろ生活保護を申請する時も受給中もある程度の貯金は必要です。
ただし、生活保護の申請時と受給中では貯金の取り扱い方が違いますので、このページでは、それぞれの場合の取り扱いと、貯金の上限額がいくらまで良いのか等について、詳しくご紹介します。
生活保護申請時の貯金の取り扱い
生活保護申請時に世帯の貯金額の合計が最低生活費を超えている場合は申請しても、生活保護は受給できません。
例えば月々の最低生活費が20万円の世帯が40万円の貯金を持っている場合は、生活保護の申請をしたとしても却下になります。
なぜなら、生活保護は自らの資産や能力その他のあらゆるものを活用しても生活が維持できなくなった人に対して支給されるものだからです。
そのため、「まずは貯金を崩して生活しなさい」と相談窓口で言われると思います。
それなら貯金が0円にならないと申請できないのか?と言うと、そういう訳ではありません。
生活保護の申請をすると生活保護の条件を満たしているかどうかの各種調査に最長1ヶ月掛かります。
この調査期間の1ヶ月間は何も支給されないため、調査期間を生活するだけの貯金は所有することが認められています。
※なお、調査の結果、生活保護の受給条件を満たしていた場合は申請日から生活保護受給開始となりますので申請日に遡って医療費を含む生活保護費が最初の支給日に支給されます。
調査期間中の生活費を所有することは認められるため、世帯の貯金額の合計が月々の最低生活費未満の金額になった時に申請すれば却下になりません。
上記の例の場合、最低生活費が20万円のため、貯金額が20万円未満で、その他の生活保護の条件を満たしていれば生活保護の受給が認められます。
ただし、貯金が最低生活費の50%以上ある場合は初回の生活保護支給金額から最低生活費の50%を超える金額については減額されるので注意が必要です。
この場合9万円が収入認定されて初回支給額から減額されます。
翌月以降は貯金額がまだ残っていたとしても収入認定されないので安心してください。
生活保護受給中は貯金できない?
まず、生活保護受給者は貯金することができないと勘違いしている人も多いですが、それは大きな間違いです。
貯金をする目的が明確で正当性があれば貯金をすることは認められます。
少なくとも10万円程度の貯金については、どの世帯であっても認められます。
生活保護の支給金額の中に生活扶助費と言うものがあるんですが、この中には通常予想される生活需要は全て含まれています。
つまり、生活扶助費の中には家電等が故障した場合の費用についても含まれています。
そのため、家電等が故障した場合の費用については、最低限確保しておく必要があると言うことになります。
生活保護費の中に家具什器費って項目があるから、家具・家電が壊れた場合は家具什器費から支給されるんじゃないの?と思っている方もいると思いますが、家具什器費が支給されるのは
・生活保護開始時
・退院又は退所により新たに自活する時
・被災した時
等に限定されています。
上記に該当しない場合は「貯金なんてしていないから、家電が壊れて困っている。」といくら訴えても、その分の金額については、福祉事務所としては既に支給しているため何もできません。
なので、壊れた家電を買い換えるだけの金額については貯金が認められますし、むしろ貯金しておく必要があります。
金額については担当ケースワーカーが判断するため、一概に「これは認められる」とは言えませんが、家具等の他にも、例えば子どもの入学準備金や資格取得費として貯金をしているのであれば認められる場合が多いと思います。
※入学準備金や資格取得費は申請すれば教育扶助又は生業扶助から支給されます。ただし、一時扶助の金額だけでは足りないため、差額分が貯金として認められます。
生活保護の貯金の上限額はいくら?
生活保護の貯金の上限額は明確な決まりはありません。
「○○のため」と言う明確な目的があれば、その目的金額が上限になりますが、それでも最大でも100万円を超えることはできません。
例えば子どもの学費のための貯金であっても、小中学校の間は教育扶助費、高校の間は生業扶助が支給されます。
そして、生活保護世帯の子どもが大学・専門学校に行くことを制限はしていませんが、想定もしていないため、学費のためであっても、上限があります。
そして、なにより「100万円も貯金があるのに生活保護?」と世間の目は見るでしょうから、目的が明確であっても100万円を超えることはできません。
また、よく「葬儀代のための貯金」と言われることがありますが、葬儀代については、生活保護では葬祭扶助があるため、葬儀代のための貯金は認められていません。
葬儀代のための貯金は、生活保護受給者が亡くなった後に葬式をあげる親族にわたるお金、つまり遺産となり、生活保護の趣旨にも合致しないため認められていません。
上限額を超えた貯金額が発覚した場合
上限額を超えた所有が認められない貯金額が発覚した場合の取扱いについてです。
生活保護受給者に対して福祉事務所は金融機関調査を行うことができます。
この調査を定期定に行うことによって、生活保護受給者のお金の流れを全て把握できます。
金融機関を通して貯金をしている場合、その金額まで貯金できた理由が不正受給をしていた訳ではなく、生活保護費を節約して貯めていたことがわかります。
このような場合は、所有が認められる貯金額になるまで、生活保護を支給なし、停止又は廃止になるだけです。
生活保護の不正受給ではないため、返還金や徴収金として全額返還しなければいけないわけではありません。
数ヶ月間、生活保護の支給がなくても生活できるだけの貯金額にならない限り生活保護の廃止にはしないため、大体は支給なし又は停止にして、所有することが認められる貯金額になったら、すぐに再開します。
いわゆるタンス預金のように金融機関を通さず貯金をしている場合、長期に渡って生活保護を受給している場合は、生活保護費を貯めたのだろうと推測することも可能です。
しかし、そうではない場合、生活保護費を節約して貯めたものではなく、最初から隠し持っていた可能性も疑われます。
最初から持っていた又はそう判断された場合は、福祉事務所を騙して生活保護を受給していたことになるので、不正受給となります。
返還金又は徴収金として返還するだけなら、まだ良いですが、最悪の場合、詐欺罪として訴訟を起こされる可能性もあるので、注意が必要です。
まとめ
生活保護受給中でも貯金をすることは大事ですが、タンス貯金のように隠れて貯金をすると発覚した時に色々と面倒なことになります。
母子世帯のように生活保護費が多い世帯は、まだ貯金できますが、それでもそんなに大金を貯金できるわけではないので、そんなに貯金することを気にしなくても大丈夫です。
心配なら担当ケースワーカーに、どれくらいの金額であれば貯金が認められるか聞いてみると良いと思います。
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