「母子家庭の生活保護受給者はずるい!生活保護費をもらいすぎている!」等の声をよく聞きますが、実際に母子家庭だと生活保護費はいくらもらえるのでしょうか?パート・アルバイトで働くよりも生活保護をもらった方が贅沢な暮らしができるのでしょうか?
また、仮に贅沢な暮らしができるとして、いつまで贅沢な暮らしを続けることができるのでしょうか?リスクはないのでしょうか?母子家庭の実態を知りたい方、母子家庭で生活保護を検討している方は気になるところだと思います。
そこで、このページでは、母子家庭の生活保護支給金額等について、詳しくご説明します。
母子家庭の支給金額
早速ですが、母子家庭の場合、生活保護の支給金額がいくらなのか?を見てみましょう。
生活保護費の正確な数字は各家庭の状況によって異なるため、正確な数字を算出することはできませんが、大体の目安については、厚生労働省が毎年、「生活保護制度の概要」で紹介してくれています。
下記の表を見てください。
見方についてですが、母子3人世帯【30歳・4歳・2歳】の表を見てください。
表の上部「1級地-1」から「3級地-2」まであります。
これは級地基準と言って、生活扶助の金額を決める時に使います。
この級地基準は物価の地域差を考慮するための基準で、東京都などの都心部が「1級地-1」で最も支給金額が高く、そこから田舎になるほど、級地基準の数字が増えるほど、支給金額が下がり、ほとんど人口のない町村だと「3級地-2」となります。
なお、自分の住んでいる市町村の級地が何級地かについては、同じく厚生労働省「生活保護制度における地域差等について」を見たらわかります。少し古いデータですが、級地に変更はないので、そのまま使って大丈夫です。
上記の表から母子3人世帯【30歳・4歳・2歳】の場合、生活扶助と住宅扶助(上限額)を合わせると、少なくとも210,360円、多いと260,350円支給される計算になります。
地域によって異なりますが、母子家庭の場合、毎月21万円~26万円が支給日に支給されます。
もう一度上の表を見てください。
同じ3人世帯でも(夫婦子1人世帯)【33歳、29歳、4歳】の場合は、少ないと181,630円多くても228,560円しか支給されません。
毎月の支給金額に約3万円もの差が出る理由は、児童養育加算と母子加算にあります。
児童養育加算とは、生活保護世帯に子どもがいる場合にプラスされる生活保護費です。
児童養育加算は子どもがいる世帯であれば全世帯が支給される加算で、その子どもが高校を卒業する(18歳に達する日以後の3月31日)まで子ども1人に付き約1万円が追加で支給されます。
母子加算とは、母子または父子家庭の場合にプラスされる生活保護費です。
母子加算は、その子どもが高校を卒業する(18歳に達する日以後の3月31日)まで、もしも子どもに中度の障害がある場合には20歳まで約2万円が追加で支給されます。
母子加算も児童養育加算ほどではありませんが、子どもが1人増えるごとに約3,000円が追加で支給されます。
先程の同じ3人世帯でも「母と子2人の世帯」と「夫婦と子1人の世帯」で約3万円もの差があるのは、子どもの数が1人多いため児童養育加算1万円、母子世帯のため母子加算2万円、合計3万円が追加されるからです。
これだけでも母子世帯の生活保護費は多いと思うかもしれませんが、こんなのは序の口です。
まだまだこんなものじゃありません。
子どもが成長すると更に支給金額が増える
先程の例は子どもが4歳、2歳と未就学児の例のため、月20万円以上支給されていますが、それでも実は少ない金額です。
子どもが成長すると更に生活保護費の支給金額は増えていきます。
子どもが大きくなると、その分、食費も掛かるようになります。
そのため、子どもの成長に応じて生活扶助費が増額されます。
例えば1級地-1の場合、0歳から2歳までの基準額は21,800円ですが、年齢が上がるほど増えていき、12歳以上になると43,910円まで増額されます。
また、小学生・中学生になると、学費が必要になるため、さらに教育扶助が追加で支給されるようになります。
教育扶助では基準額として小学校2,600円、中学校5,100円、また、生徒会費及びPTA会費等の学級費として小学校850円以内、中学校770円以内それぞれ全国一律で上記の金額が毎月支給されます。
その他、教材代、給食費、通学費は実額が全額支給されます。
高校生になると教育扶助はなくなりますが、代わりに生業扶助が追加で支給されるようになります。
教育扶助と項目は一緒で、生業扶助では基準額として5,300円、生徒会費及びPTA会費等の学級費として1,780円それぞれ全国一律で上記の金額が毎月支給されます。
高校になると、給食がなくなるため、給食費の支給はなくなりますが、教材代、通学費は実額が全額支給されます。
上記の教育扶助、生業扶助ともに子ども1人につき追加される金額のため、2人、3人と子どもが増えると2倍、3倍と追加される金額も増えます。
例えば小学生の子供が1人、中学生の子供が1人、高校生の子どもが1人いる場合、基準額は
2,600円×1人+5,100円×1人+5,300円×1人=13,000円
となるため、毎月の生活保護費に教育扶助と生業扶助の基準額として13,000円が上乗せされて支給されます。
「母子世帯ってそんなにもらえるの!?」と驚く方も多いと思いますが、驚くのはまだ早いです。
毎月支給される生活保護費の項目は以上ですが、申請することによって、別途追加で支給されるものも多数あります。
高校までの入学準備金や部活動の費用は別途支給される
母子世帯に限りませんが、子どもがいる生活保護受給者の場合、申請することで、別途支給される生活保護費が多数あります。
例えばランドセル、制服、体操服、通学用かばん等、入学準備に必要なものを購入する費用として入学準備金が支給されます。
入学準備金は小学校64,300円以内、中学校81,000円以内、高校87,900円以内まで支給されます。
また、子どもが小学校4年生になったら、体操服等を買い換えるための費用として、被服費が1人当たり14,000円以内まで支給されます。
部活動やクラブ活動に必要な費用も生活保護費から学習支援費として支給され、年間上限額は小学校16,000円以内、中学校59,800円以内、高校生は84,600円以内まで支給されます。
上記のように、毎月支給される生活保護費とは別に追加で費用が必要な場合は、申請することで、別途支給してもらうことが可能です。
その他、生活保護費には8つの扶助があり、それのいずれかに該当すれば、毎月の支給額が増加もしくは別途追加でお金が支給されます。
医療は全てタダで受けることができる
子どもはよく風邪を引いたり、ケガをしたりしますが、それらの通院費・治療費・クスリ代も生活保護の場合は全て医療扶助が適用されるため、タダで受けることができます。
もちろん、親の医療費についても、全て無料で受けることができます。
注意点としては、受けられる医療は国民健康保険が適用されるものでなければいけないことと、指定医療機関でないといけないところです。
とは言え、大抵の治療は国民健康保険が適用されますし、病院さえ選ばなければどの科の治療も受けることができます。
入院時の個室ベッド代は生活保護費から出ないため、自己負担になってしまうくらいで、基本あらゆる医療をタダで受けることができます。
もちろん癌等の手術や人工透析の費用も全てタダです。
働くと更に月に使えるお金が増える
生活保護は働きながらでも受給することができます。
しかも、給料収入は、その他の収入と違い、きちんと収入申告をすれば収入認定額から交通費等の必要経費を差し引くことや各種控除を受けることができます。
最低生活費20万円-(給料収入63,000円-基礎控除20,000円)=157,000円
支給額157,000円+給与収入63,000円=22万円
となり、月に使えるお金が20,000円増えます。
このように、給料収入が増えれば、増えるほど、基礎控除も増えるため、より毎月の生活が豊かになります。
たった1ヶ月でも、この基礎控除は適用されるため、短期でパート・アルバイトをして、すぐに辞めることも可能です。
贅沢な暮らしができるのは子どもが高校卒業するまで
上記のように、母子家庭に支給される生活保護費はかなり手厚いので、ハッキリ言って、同年代の人(女性・男性含む)が働いて稼ぐよりも、多くのお金をもらうことができます。
実際に生活保護を受給しながら、かなり贅沢な暮らしをしている母子家庭だってあります。
「それならシングルマザーやシングルファーザーは全員生活保護を受給した方が良いのではないか?」と言うのも一理あると思います。
しかし、そんな生活も長続きはしません。
そうです。子どもたちが高校を卒業してしまうと、その子どもたちは家を出たり、世帯分離となり、生活保護世帯から外れてしまいます。
すると、今まで母子世帯だったのに、突然、単身世帯になってしまいます。
もう一度、「生活保護制度の概要」を見てみましょう。
上記表の高齢者単身世帯【68歳】を見てみてください。
生活扶助と住宅扶助(上限額)を合わせても、少ないと98,300円、多くても131,680円しか支給されません。
一時期は30万円くらいを自由に使えて、贅沢な暮らしができるかもしれませんが、子どもたちがいなくなると、3分の1の10万円で1ヶ月を過ごさないといけなくなります。
そんな生活が嫌で子どもを作ろうと奔走する生活保護受給者もいますが、さすがに限界があります。
一度上げてしまった生活水準は中々落とすことができないため、一時期はすごく贅沢ができて、良い思いをするかもしれませんが、自立に向けた努力をしていないと、最終的には辛い思いをする羽目になります。
まとめ
母子家庭の生活保護費について、ご紹介させていただきました。
毎月支給される生活保護費だけでも20万円!?と驚いた方も多いと思いますが、それとは別に入学準備金等が別途支給されますし、医療費もタダなので、母子家庭の生活保護受給者はもらいすぎた!と思った方が多いのではないでしょうか。
確かに母子家庭の生活保護受給者への支援は自立を妨げるくらい多すぎるのかもしれません。
実際に、それが原因で働く努力をしなかった結果、子ども達がいなくなってからの生活保護費のあまりの少なさに愕然とする方が多数います。
生活水準を下げることができず、闇金業者からお金を借りてしまったりして、利子の返済だけで、ただでさえ少ない生活保護費が更に少なくなってしまうこともあります。
新たに仕事を探そうと思っても、40歳近くまで一切働いたことない人が就職するのは並大抵のことではありません。
母子家庭で生活保護を受給している方は、取り返しがつかなくなる前に、自立に向けた取り組みをしましょう。
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