生活保護の受給が開始されると、生活保護費の支給が開始されます。
生活保護費と聞くと、毎月支給されるものをイメージすると思いますが、その他にも、必要に応じて追加支給される一時扶助の他、医療費等の各種免除もあります。
また、毎月支給される生活保護費も世帯によって違うように、実は生活保護費は8つの扶助から構成されています。
「とにかく生活保護がもらえたら良いんだ!内訳なんて知らないよ!」と言う方もいるかもしれませんが、どうせ生活保護費をもらえるなら、支給される金額や支払いを免除される金額が多い方が良いと思いませんか?
実はもらえたのにもらえなかった生活保護費、実は支払わなくて良かったのに支払ってしまったもの等があり、知らず知らずのうちに損をしてしまっている生活保護受給者は数多くいます。
そこで、このページでは、生活保護費の8つの扶助の特性・要件・支給内容について詳しくご紹介します。
生活扶助とは
生活扶助とは通常予想される生活需要のために支給されるお金です。
通常予想される生活需要とは、食費、衣料費、光熱費はもちろんですが、家具・家電などが故障した場合の買い替え費用についても生活扶助に含まれています。
そのため、家具・家電を購入するための貯金は生活保護制度上認められています。
生活扶助の金額の算定方法は基準生活費と各種加算を足し合わせて算出します。
基準生活費は1.居宅基準2.入院基準3.救護施設基準4.介護施設基準の4種類ありますが、大抵の方は居宅基準もしくは入院基準に該当します。
各種加算とは、妊娠中、育児中、障害者等は、そうでない方と比較して、より生活費が多くかかるため、それらの差を補うために支給されるものです。
加算については、それぞれの条件に該当すれば、支給されるため、条件に該当すれば複数の加算を同時に受けることができます。
なお、生活扶助の支給方法は現金支給です。
金額の相場としては、居宅基準の場合、1人であれば約7万円、それから1人増えることにより約4万円ずつ増加します。
上記の金額はあくまで目安であり、住む場所に応じて変わる級地基準や各種加算もありますし、人数の増加に応じた逓減率も計算に含まれるため、実際の数字とは異なります。
教育扶助とは
教育扶助とは義務教育(小学校、中学校)の教育費のために支給されるお金です。
小学生未満の保育園・幼稚園児は対象外です。
また、中学校卒業しても対象外になります。
つまり、高校生・大学生は教育扶助の対象外と言うことになります。
※高校生については、下記生業扶助の対象です。
教育扶助の内訳は下記のとおり全部で5項目あり、それぞれの項目に応じた金額が支給されます。
これらの項目は小学校、中学校共通です。
2.教材代(副読本的図書、ワークブック、和洋辞典、楽器等)
3.学校給食費
4.通学のための交通費
5.学習支援費(クラブ活動等)
福祉事務所によっては上記に加えて6.学級費等(学級費、生徒会費及びPTA会費)が支給されることがあります。
なお、教育扶助の支給方法は現金支給です。
上記のとおり教育扶助では、残念ながら塾や習い事の費用は出ませんが、教科書代や交通費などの他、部活動にかかる費用についても支給されるため、何不自由のない学校生活を送ることができます。
住宅扶助とは
住宅扶助とは、生活保護受給者が住む場所を確保するために支給される扶助です。
生活の三大要素である「衣・食・住」の「住」の部分に関するあらゆる費用は住宅扶助の対象となります。
賃貸における家賃や自己所有の物件が借地の上に建っている場合は、その借地代についても支給の対象となります。
その他にも、住宅の修繕に掛かる費用や引っ越しに関する費用についても、この住宅扶助から支給されます。
なお、住宅扶助の支給方法は現金支給です。
この住宅扶助を利用することで、生活保護申請時に住む家のないホームレスの方も、部屋を借りることができ、自立に向けた活動をすることができます。
医療扶助とは
医療扶助とは生活保護受給者が病院で診療を受ける場合の医療費に充てるための扶助です。
医療扶助には、
・同時に複数の病院で同じ科を受診できない
・指定医療機関で受診する必要がある
・病院受診する前に医療券の発行が必要
等の制限がありますが、基本的に国民健康保険の保険給付の対象となるサービスと同じサービスを受けることができます。
つまり、風邪やケガなどの簡易な治療の他、ガン等の大病を患った場合の手術費など、治療に必要なあらゆる医療費は全て医療扶助で賄うことができます。
なお、医療扶助の支給方法は現金支給ではなく現物支給(サービスの提供)です。
「現物支給(サービスの提供)」と言うと、少し難しく感じますが、要するに「タダで医療を受けることができる」と言うことです。
もちろん、診察料だけでなく、施術費もお薬代も全て医療扶助から出るため、全てタダです。
また、原則として医療扶助を利用して整骨院・整体に通うことは出来ませんが、医師から「整骨院・整体に通う必要がある」と意見書をもらえば整骨院・整体に行くことも可能です。
介護扶助とは
介護扶助とは介護保険法における要介護者又は要支援者の介護サービス費に充てるための扶助です。
介護扶助の内容は基本的に介護保険の保険給付の対象となるサービスと同じ内容です。
例えば通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)、訪問介護(ホームヘルプ)の利用料や福祉用具の購入費、住宅改修費等が介護扶助で賄うことができます。
なお、介護扶助の支給方法は現金支給ではなく現物支給(サービスの提供)です。
生活保護は他法他施策優先の原則があるため、介護保険に加入中であれば、介護保険が優先されますが、どちらにせよ生活保護受給者であれば介護扶助によりタダで介護サービスを受けることができます。
ただし、普通に利用している限り自己負担はありませんが、保険対象外のサービスを利用した場合や介護保険における支給限度額を超えたサービスを利用した場合は、自己負担分が出てしまいますので気をつけましょう。
出産扶助とは
出産扶助とは生活保護受給中の方が妊娠しても安心して出産できるように、出産に掛かるあらゆる費用に充てるために支給される扶助です。
例えば生活保護受給開始前に妊娠した方が生活保護の受給開始後に出産する場合にも出産扶助は支給されますし、生活保護受給中の方が妊娠しても出産扶助は支給されます。
つまり、出産時期に生活保護を受給していればどのような方でも、出産扶助は支給されます。
そのため、「妊娠したけど、お金はどうしたら良いの?」と金銭面で悩む必要は全くありません。
ちなみに人工妊娠中絶の費用は生活保護費から支給はされません。
例外として、死産の場合や妊娠4ヶ月以上の妊婦が人工中絶をした場合に正常分娩と同様に助産師による分娩介助その他の世話が行われた場合については、必要な範囲内において出産扶助が適用されますが、極々稀です。
自己都合での人工中絶費用は相手男性側に請求するか、自身の毎月支給される生活保護費から負担するしかありませんので、その点は気をつけましょう。
なお、出産扶助の支給方法は現金支給ですが、実質は現物支給(サービスの提供)です。
出産扶助の出産扶助基準は下記のとおり全部で3項目あります。
2.出産に伴う入院費
3.衛生材料費
3項目それぞれに設定されている基準額の合計金額が出産扶助の支給金額となります。
1.基準額+2.出産に伴う入院費+3.衛生材料費=出産扶助の支給金額
それぞれの出産扶助基準には、上限金額のみが定められており、実際に出産にかかった費用のみが支給されます。
だいたい通常の出産費用では約45万円が出産扶助として支給されます。
生業扶助とは
生業扶助とは世帯の収入増加、又は自立を助長する上で必要な費用に充てるための扶助です。
世帯の収入増加、又は自立を助長する上で必要な費用を生業扶助から支給することから、支給対象が個人事業を営むための費用から、資格を取得するために必要な費用、高校受験から卒業までの費用、内定が決まったら仕事に必要なスーツや靴の費用までと、かなり幅広いです。
なお、生業扶助の支給方法は現金支給です。
生業扶助基準は下記のとおり全部で4項目あり、それぞれの項目に応じた金額が支給されます。
2.技能習得費(高等学校等就学費を除く)
3.高等学校等就学費
4.就職支度費
ちなみに、技能習得費に関しては例外を利用することで自動車運転免許の取得も可能です。
また、教育扶助では対象とならなかった高校生の学費等についても生業扶助から支給されます。
ただし、支給される金額は公立高校に通うための費用しか支給されないため、私立高校に通う場合、差額分については、毎月の生活保護費から自己負担が必要となります。
専門学校や大学の受験料・学費についても残念ながら支給の対象ではありません。
それから、就職が決まった=生活保護の廃止と勘違いしている方が多いですが、就職が決まっても、すぐに生活保護が廃止になるわけではありません。
生活保護の受給条件は世帯収入が最低生活費を超えていることです。
収入があっても最低生活費未満の収入であれば、生活保護の条件を満たすため、継続して生活保護を受給することが可能です。
また、収入の取り扱いについても、給与収入については、控除額があるため、毎月支給される生活保護費そのものは減額されますが、毎月の生活費(給与収入+生活保護費)は増額されます。
働くことは生活保護受給者にとってメリットはあっても、デメリットはありません。
葬祭扶助とは
葬祭扶助とは死亡した方の最低限の葬祭に必要な費用に充てるための費用です。
生活保護受給者が亡くなった場合や生活保護受給者が喪主となった場合でも、最低限度のお葬式ができる費用が生活保護費から支給されます。
ただし、生活保護受給者が亡くなった場合も想定されていることから、支給対象者が親族等にも及ぶため他の扶助と異なり、少し特殊な取り扱いとなっています。
なお、支給方法は現金支給ですが、最低限の葬祭費に実際にかかった費用を現金で支給するだけなので、その性質は現物支給に近いです。
葬祭扶助の注意点は2点あり、1点目は葬儀を行う前に必ず申請が必要と言う点です。
葬儀を行った後であれば、それが無理に借金等をして掻き集めたお金であったとしても葬儀を行う資力があったと判断されるため、支給対象となりません。
2点目は最低限度の葬儀を行った場合に、その葬儀に掛かった費用のみが支給されると言う点です。
例えば葬祭扶助費から20万円支給されるから、自分達で30万円負担すれば50万円の葬儀ができる!わけではありません。
この場合、葬祭扶助費は一切支給されず、葬儀にかかった費用50万円全額を自己負担しなければいけません。
このように葬祭扶助を葬儀代の一部を補填するような使い方はできません。
生活保護全般に言えることですが、生活保護は国の制度です。
後で市役所の窓口に来て、葬祭扶助を支給してくれとゴネても、市職員にはどうすることもできません。
葬祭扶助を利用する際には、上記2点を気をつけましょう。
まとめ
以上、生活保護の8つの扶助について、ご紹介させていただきました。
生活保護の支給は、どれも必ず上記8つの扶助のどれかに該当します。
それぞれの扶助の詳細や金額については、それぞれのリンク先を確認してみてください。
コメント