「生活保護の申請理由は何を書けばいい?」「どんな理由があれば生活保護を受けられるの?」「却下される理由を知りたい」「なぜ生活保護が必要なのか、自分のケースで当てはまるか確認したい」
生活保護の「理由」をめぐる疑問は非常に多岐にわたります。
本記事では、生活保護が必要となる理由・申請に至る主な事情・申請書に書く理由の書き方・却下・廃止される理由まで、あらゆる角度から網羅的に解説します。

生活保護とはどんな制度で、なぜ存在するのか

制度の目的と法的根拠
生活保護は、日本国憲法第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」に基づいて設けられた制度です。生活保護法第1条では「国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」を目的として定めています。
つまり、生活保護が存在する根本的な理由は、どんな事情があっても国民の最低限度の生活を保障するためです。

病気・失業・高齢・障がい・離婚・虐待・DV・天災など、誰にでも起こりうる困難によって生活が成り立たなくなったとき、最後のセーフティネットとして機能する制度です。
生活保護が必要とされる社会的背景
現代日本では、以下のような社会的変化が生活保護の必要性を高めています。
- 非正規雇用の拡大:2020年代において労働者の約4割が非正規雇用であり、病気・解雇などで一気に収入がゼロになるリスクが高い
- 高齢化の進行:年金だけでは生活できない高齢者の増加
- 単身世帯の増加:家族のサポートを受けられない単身者の増加
- 精神疾患・発達障がいの顕在化:就労困難につながるメンタルヘルスの問題の増加
- 相対的貧困率の高さ:OECDのデータによれば、日本の相対的貧困率は先進国の中でも高水準

生活保護が必要になる主な理由・事情

理由①:病気・怪我による就労困難
生活保護受給者の中で最も多い理由の一つが、病気・怪我・障がいによる就労困難です。

厚生労働省の被保護者調査によれば、傷病・障がい者世帯は全受給世帯の約25%を占めます。
具体的な状況例:
- がん・心疾患・脳卒中などの重篤な疾患で長期入院・療養が必要になった
- 交通事故・労働災害による後遺症で働けなくなった
- うつ病・統合失調症・双極性障がいなど精神疾患により就労が困難になった
- 糖尿病・慢性腎臓病などの慢性疾患で医療費が生活費を圧迫している
- 発達障がい(ASD・ADHD)により就労を継続することが困難
病気が理由の場合、医療扶助によって医療費の自己負担もなくなるため、治療に専念しながら生活を維持できます。

理由②:高齢による収入不足
受給世帯の約55%を占める最大のグループが高齢者世帯です。
具体的な状況例:
- 年金受給額が低く(または無年金で)、生活費をまかなえない
- 老齢による身体機能の低下で就労が困難になった
- 医療・介護費用が年金収入を超えてしまっている
- 配偶者の死亡により世帯収入が半減した
- 老後の貯蓄を使い果たし、収入が年金のみになった
日本の国民年金(老齢基礎年金)の平均受給額は月約5〜6万円程度であり、これだけでは都市部での生活が成り立たないケースが多くあります。

理由③:失業・雇用の喪失
突然の失業も、生活保護が必要になる重要な理由の一つです。
具体的な状況例:
- 会社の倒産・リストラで失業し、雇用保険の受給期間が終了した
- 非正規雇用(派遣・パート)で突然の契約打ち切りにあった
- 長期間就職活動を続けているが、就職先が見つからない
- 年齢・健康状態などの理由で再就職が困難な状況にある
- コロナ禍・景気悪化などの社会的要因で働ける場所がなくなった
雇用保険(失業給付)を受給している期間は原則として生活保護の対象外ですが、受給終了後も就職できない場合は申請の対象になります。


理由④:ひとり親(シングルマザー・シングルファーザー)
離婚・死別によってひとり親になったことで生活が困窮するケースは、特に子育て世代に多く見られます。
具体的な状況例:
- 離婚後、養育費が払われず収入が不足している
- 子どもが小さく、フルタイムで働くことができない
- DV被害から逃れて無一文で別居・離婚した
- 配偶者の死亡により収入が途絶えた
- 育児と仕事を一人でこなすことによる心身の疲弊
母子世帯・父子世帯は、母子加算・父子加算・児童養育加算など、ひとり親向けの加算が支給されます。

理由⑤:DV・虐待・家庭崩壊
安全な環境から逃れるために、経済的手段なしに家を出なければならないケースも生活保護が必要な重大な理由です。
具体的な状況例:
- 配偶者からの暴力(DV)から逃げて住む場所・お金がない
- 親からの虐待・ネグレクトを逃れた若年者
- 家族の搾取・経済的DVにより手持ち金がない状態で家を出た
- 外国籍で身元保証人がおらず、日本での生活基盤を持てない
DV被害者は特別な配慮(扶養照会の省略・住所非公開など)のもとで生活保護を申請できます。
理由⑥:多重債務・経済的困窮の悪化
多重債務が積み重なって生活費が確保できなくなるケースもあります。
具体的な状況例:
- 消費者金融・クレジットカードの返済が生活費を圧迫している
- 保証人になったことで多額の債務を負った
- ギャンブル・アルコール依存による借金で生活が破綻した
- 事業の失敗による多額の負債を抱えている
多重債務がある場合でも生活保護の申請は可能です。ただし、保護費で借金を返済することはできないため、法テラスを通じた債務整理(自己破産・個人再生など)と並行して進めることが推奨されます。



理由⑦:住居の喪失(ホームレス・住所不定)
住む場所を失った方も生活保護の対象です。「住所がないと申請できない」と思われがちですが、それは誤りです。
具体的な状況例:
- 家賃滞納で退去を求められ、行き場がなくなった
- ネットカフェ・友人宅を転々とする不安定居住の状態
- 長期ホームレス状態からの生活再建を目指している
- 災害・火災により住居を失った
住所不定の場合は「現在地保護」の原則に基づき、現在いる場所を管轄する福祉事務所に申請できます。

申請書に書く「申請理由」の書き方

申請理由欄には何を書けばいいか
生活保護の申請書には「申請の理由」を記入する欄があります。初めての申請では何を書けばいいか迷う方が多いですが、基本的なルールは正直に、具体的に、現在の困窮状況を書くことです。
上手に書く必要はありません。「なぜ生活が成り立たなくなったのか」「何が困っているのか」を率直に書いてください。

申請理由の書き方の例
【例①:病気による就労困難の場合】 「昨年○月、○○(病名)と診断され、現在も通院・投薬中です。病状により就労が困難な状態が続いており、貯蓄も底をつきました。医療費・生活費ともにまかなえなくなったため申請します。」
【例②:失業による収入喪失の場合】 「○年○月に勤務先の倒産により失業しました。雇用保険の受給期間が終了した○月以降も就職先が見つからず、現在収入がゼロの状態です。貯蓄も残りわずかとなり、生活の維持が困難になったため申請します。」
【例③:高齢・年金不足の場合】 「現在○歳で、老齢年金(月額約○円)のみが収入です。医療費・家賃・生活費をまかなうには不足しており、生活が困窮しています。就労は体力的に困難な状況のため申請します。」
【例④:ひとり親・養育費未払いの場合】 「○年○月に離婚し、子ども○人を育てています。養育費の取り決めをしましたが支払われておらず、パート収入のみでは家賃・生活費・教育費をまかなえない状況です。申請します。」
申請理由を書く際の注意点
- 嘘を書かない:虚偽の申告は不正受給となり、厳しいペナルティが課されます
- 詳しく書きすぎる必要はない:箇条書き・簡潔な文章で構いません
- 書き方がわからなければケースワーカーに相談:窓口でサポートしてもらえます
- 書類が揃っていなくても申請は受理される:申請書を出すことが最優先です

生活保護が却下される主な理由

却下理由①:収入・資産が最低生活費を上回る
収入(就労収入・年金・各種給付金など)と資産(預貯金・不動産・保険解約返戻金など)の合計が、世帯の最低生活費を上回る場合は保護が受けられません。

「収入があるから申請できない」と思い込んでいる方も多いですが、収入が最低生活費を下回っていれば差額分の保護費が支給されます。少額の収入があっても申請できる場合があります。
却下理由②:資産の活用が不十分
換金可能な資産(高額の預貯金・資産価値のある不動産・解約返戻金のある保険など)を保有している場合、まずそれを生活費に充てることが求められます。資産を活用せずに申請した場合は却下・または処分指導を受けることがあります。

却下理由③:稼働能力の不活用
働ける状態にあるにもかかわらず、就労活動を行っていない・就労の意思が認められないと判断された場合は却下されることがあります。
ただし、「働ける」かどうかの判断は病気・障がい・年齢・育児・介護などの事情を総合的に考慮して行われます。「働けない理由」を正直にケースワーカーに伝えることが重要です。
却下理由④:扶養義務者による扶養が可能
親・兄弟姉妹などの扶養義務者が十分な援助を行える状況にある場合は、その援助を先に受けることが求められます。ただし、扶養義務者に扶養能力がない・DV・虐待など扶養が困難な事情がある場合は申請が進められます。


却下理由⑤:他の制度・給付の未活用
年金・雇用保険・障害給付・各種手当など、他の制度で受けられる給付を先に活用することが原則です。これらを申請していない・受け取っていない場合は、先にそちらの手続きをするよう指導されることがあります。

生活保護が廃止・停止される主な理由

廃止・停止の理由①:収入増加による自立
就労・年金増額・相続などにより収入が最低生活費を上回るようになった場合、保護が廃止されます。これは制度本来の目的(自立の助長)が達成された望ましい状態です。


廃止・停止の理由②:資産の取得
遺産相続・保険満期などによって多額の資産を得た場合、その資産を生活費に充てることが求められ、使い切るまでの間は保護が停止・廃止される場合があります。


廃止・停止の理由③:申告義務違反・不正受給
収入や資産の申告漏れが発覚した場合、または意図的な虚偽申告が判明した場合は保護が廃止・停止され、過払い分の返還・徴収が行われます。


廃止・停止の理由④:所在不明・長期入院
受給者の所在が確認できなくなった場合や、長期入院により生活扶助の必要がなくなった場合は、保護が停止されることがあります。


廃止決定に不服がある場合
保護の廃止決定に納得できない場合は、決定を知った日から3ヶ月以内に都道府県知事への審査請求(不服申立て)が可能です。法テラスの弁護士に相談しながら対応することをお勧めします。
「なぜ生活保護を受けることをためらうのか」——申請しない理由の問題

受けられるのに申請しない人が非常に多い
研究者の推計によれば、日本の生活保護の捕捉率(受給資格者のうち実際に受給している割合)は15〜20%程度にとどまり、先進国の中で最低水準です。ドイツ(約60%)・フランス(約90%超)と比べると、日本の低さは際立っています。
申請しない理由として多いもの
①「恥ずかしい・世間体が悪い」というスティグマ 「生活保護を受けることは恥だ」という価値観から、必要な支援を受けることを拒む方が多くいます。しかし生活保護は権利であり、恥ずかしいことではありません。

②「扶養照会が嫌だ・家族に知られたくない」 親・兄弟姉妹への扶養照会を恐れて申請しない方が多くいます。2021年の通知改正で扶養照会の運用が見直され、扶養が期待できない場合は省略できることが明確化されました。


③「自分には受ける資格がないと思っている」 「まだ若い・働ける体がある・資産がある」という思い込みから申請しない方が多くいます。病気・障がい・育児・介護など、就労困難な事情があれば申請の対象になります。
④「申請が難しそう・手続きが面倒」 書類の準備・窓口への相談など、手続きへの心理的障壁から申請を先送りにするケースがあります。支援団体・NPOの同行支援を活用することで、手続きがスムーズになります。
「なぜ申請しなかったのか」の悲劇
申請をためらった結果、最悪の事態に至るケースが後を絶ちません。生活保護を受けられる状態にあったにもかかわらず、餓死・孤独死・自殺に至った事例が各地で報告されています。
「申請する理由が十分あるか」を考えすぎる前に、まず相談することが最も重要です。相談しただけで申請が強制されることはありません。

生活保護の申請理由に関するよくある疑問Q&A

Q. 「精神的につらい」は申請理由になりますか?
精神疾患(うつ病・適応障がい・統合失調症など)によって就労・日常生活が困難になっている場合は、十分な申請理由になります。医療機関での診断書があれば、状況をより明確に伝えられます。
Q. 「借金がある」は申請理由になりますか?
借金があること自体は申請理由になりません。ただし、借金の返済によって生活費が確保できなくなっている状態は、生活困窮の理由として申請の対象となります。債務整理(自己破産・個人再生)と並行して進めることが多く、法テラスへの相談を推奨します。
Q. 申請理由が「特になし」でも申請できますか?
理由がなくても申請できますが、「なぜ生活が困窮しているのか」の説明がないと審査が進みにくくなります。病気・失業・高齢など、何らかの困窮の事情を正直に伝えることが審査をスムーズにします。
Q. 「働く意欲がない」は申請理由として認められますか?
単純に「働く意欲がない」だけでは認められません。ただし、長期ひきこもり・精神疾患・社会的孤立など、就労意欲の喪失につながる背景がある場合は個別に判断されます。一人で抱え込まず、まず相談することが大切です。

Q. 自分が申請できる理由があるかどうか、どうやって確認しますか?
福祉事務所の窓口に相談することが最も確実です。「申請できるかどうかわからないが、生活が苦しい」と伝えるだけで、ケースワーカーが状況を聞き取り、申請の可否を判断します。支援団体・法テラスへの相談も活用できます。
まとめ:生活保護が必要な理由は多様で、誰にでも起こりうる

本記事のポイントを整理します。
- 生活保護が必要になる理由は病気・高齢・失業・ひとり親・DV・多重債務・住居喪失など多岐にわたる
- 受給者の約80%は高齢者・傷病者・障がい者であり、「怠けている」という偏見は事実と異なる
- 申請書の「申請理由」には正直に・具体的に・現在の困窮状況を書けばよい
- 却下される理由は収入・資産が最低生活費を超える・資産の未活用・稼働能力の不活用など
- 捕捉率が15〜20%と異常に低い日本では、受けられるのに申請しない人が大多数
- 申請をためらう理由(スティグマ・扶養照会への恐れ・資格がないという誤解)は、正しい知識で解消できる
- 「申請できる理由があるか」を一人で判断せず、まず窓口・支援団体に相談することが最善
最後に
困窮に陥る理由は誰にでも起こりうることです。「自分が申請していいのだろうか」と悩む前に、まず相談してください。生活保護はあなたが権利として使える制度です。

コメント