武見敬三厚生労働相が令和6年1月11日、困窮世帯の子どもの支援強化を盛り込んだ生活保護法などの改正案を月内に開会予定の通常国会に提出する方針を示しました。
そこで、このページでは、改正案の主な内容についてご説明します。
生活保護世帯の子どもの進路選びの助言などの事業を新設
今回の改正案では、生活保護世帯の子どもの進路選びの助言などの事業を新設すると発表がありました。
しかし、生活保護世帯の子どもが大学に進学することは、ほぼありません。
それに、そもそも生活保護制度そのものが高校卒業後は、世帯を抜けて働くことを想定した制度です。
なので、どういう事業を想定しているのか具体的な話が出てきていないので、不明ですが、いわゆる「どこの大学や専門学校に行くか?」と言った進路相談をする事業ではないと思われます。
武見敬三厚生労働相が、東京都内で学習支援活動などを視察後、「(NPOなどが)生活困窮者や子どもたちを助けることがしやすいように、行政でバックアップしていく」と述べた、とのことなので、恐らく学習支援をする事業と予想されます。
なぜなら、事実として、生活保護世帯の子どもは、学習意欲が非常に低く、学校の勉強についていけていない児童が大半だからです。
その原因は「生活保護費では、塾に通わせることができないからでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、実際は、子どもがいる生活保護世帯は、一般的な子どもがいる世帯と同じか、それ以上に自由に使えるお金があります。
そのため、生活保護世帯の子どもの学力が低いのは、お金の問題ではなく、家庭に問題があると思われます。
実際、生活保護世帯の子どもは生活保護受給者になる確率が非常に高いことから、「将来自分も生活保護を受ければ良いや」と言う考えがあるのだと思います。
もちろん、生活保護世帯であっても、成績が非常に優秀な子どももいます。
そういう世帯は、親が働いていたり、子どもの教育に熱心だったりするので、そういう意味でも子どもの学力向上の鍵は家庭にあると思います
そのため、新制度で第三者が介入して、学習支援をしたり、仕事をすることの意義や喜び等を教えることは、生活保護の脱却につながる可能性があると思われます。
生活保護受給者からすると「面倒な制度だな」と思うかもしれません。
しかし、日本の経済動向は悪く、人口減により、税収も右肩下がりになることから、未来永劫、今のまま生活保護を受けられるわけではありません。
将来、必ず生活保護費の支給金額が下がるか、生活保護の受給条件が厳しくなります。
そのため、面倒と思う心はグッと堪えて、使えるものは使った方が賢い選択だと思います。
高校卒業後に就職する際の新生活支援
今回の改正案では、高校卒業後、すぐに就職する場合は、新生活支援も盛り込むとの発表がありました。
新生活支援と言う名称から、恐らく、生活に必要な家具や家電、小物の購入費を支給するものだと予想されます。
なぜなら、既に現行制度でも、就職が決まった生活保護受給者には、様々な支援があるからです。
例えば就職の決まった生活保護受給者には、就職のため直接必要とするスーツや靴等の購入費用を支援する就職支度費が支給されます。
就労して、生活保護を脱却できた場合、税・保険料・医療費負担を緩和するため、生活保護脱却後の不安定な生活を支えるため、就労自立給付金が支給されます。
就職先が自宅から遠い場合は、転居費用も敷金・礼金を含め全額支給されます。
現行制度でも、家具什器費の支給はありますが、支給できるのは、刑務所からの出所後等、非常に限定的な場合のみですし、支給対象となる物品も限られていることから、使いにくい扶助になっています。
そのため、今回の改正案では、恐らく、支援ができていてない炊飯器、冷蔵庫、洗濯機等の生活家電や布団類、食器類等の生活用品の購入費を支援するものになると予想されます。
無料低額宿泊所届け出義務違反者への罰則
厚生労働省は、生活困窮者らが一時入居できる無料低額宿泊所について、義務付けられている自治体への届け出をせずに運営した事業者に対し、罰則を設ける検討に入ったとの発表がありました。
無料低額宿泊所とは、生活の苦しい人が無料または安価で利用できる施設のことです。
2020年9月時点で全国に608カ所あり、1万6397人の利用者のうち生活保護受給者が9割超で65歳以上の高齢者が約半数を占めています。
就職するにも生活保護を受給するにも住所が必要なので、無料低額宿泊所を運営している団体は、本来はホームレスの方等に住む場所を提供し、最終的には自立まで支援する事を目標にしています。
しかし、中には生活保護受給者らを劣悪な環境に住まわせ、利用料として保護費を搾取する、いわゆる「貧困ビジネス」を行っている団体があります。
今回の改正は、この貧困ビジネスの拡大を防ぐのが狙いだと予想されます。
しかし、罰金等、何らかの罰則を設けるにしても、かなり厳しいものでない限り意味がないと思いますし、福祉事務所に無料低額宿泊所かどうかを調査する権限がない以上、「届け出義務違反だ!」と告発することは、不可能なのではないか?と思います。
そのため、法律で罰則はできるけど、実際は罰則を適用することができない形骸化した改正になる可能性が高いのではないかと予想されます。
住居確保給付金に転居費用を追加
住居確保給付金に転居費用を追加するとの発表がありました。
住居確保給付金とは、生活困窮者自立支援法を根拠とした給付金で、市区町村ごとに定める額を上限に実際の家賃額を仕事を失い、生活保護を受給するほどではないが、生活に困窮している人に対して、原則3か月間(延長は2回まで最大9か月間)支給する制度です。
今までは、家賃だけの支給だったため、地元に帰れば仕事があるのに帰省することができず、泣く泣く生活保護の申請をしていた人もいましたが、今回の改正により、転居費用も出るようになれば、地元で生活を立て直すことができるようになります。
そのため、転居費用を出す条件は、恐らく生活保護の転居費用を支出する条件をベースに作られると思いますが、地元に帰ることも条件に組み込まれるのではないかと予想されます。
税金を使う以上、残念ながら、どこでも好きに引っ越しができるような制度設計にはならないと思われます。
まとめ
令和6年1月11日に発表された生活保護法などの改正案について、ご紹介しました。
法律が改正されることで、条件が厳しくなったり、支援が減って、不利益を被ることもありますが、今回の改正案はすべて、新規事業を増やす、支援を手厚くすると言った、生活困窮者及び生活保護受給者にとって、プラスの内容のものばかりでした。
みんながみんな利益を享受できるわけではありませんが、少なくともマイナス要素は一切ないため、ニュースを見て不安になる方もいらっしゃるかもしれませんが、何も心配はいりません。
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