調査権限があるのでは?
福祉事務所は生活保護法第29条を根拠に資産及び収入等について
関係機関に対して調査する権限があります。
「調査権限」と言われると警察が行うような強制捜査ができる
イメージをお持ちの方もいると思います。
官公署等に対しては回答義務のある調査ができるようになったので、
ある程度の強制力はあります。
※詳しくは福祉事務所の調査権限が拡大されました
を見てください。
しかし、官公署等以外に対しては、いまだに回答義務のある調査ができません。
関係機関に対して「○○について回答して下さい」と
お願いすることができる権利があるだけです。
そのため、調査をしても「個人情報のためお答えできません。」と
突き返されることがあります。
突き返されるくらいなら、まだ対応されている方かもしれません。
無視されることも、しばしばあります。
そんな調査権限意味あるの?と疑問に思うかもしれませんが、
この調査権限がなければ、そもそも、調査をした段階で相手方から訴えられてしまいます。
そのため不十分ではありますが必要な権限です。
では、実際に調査権限がないことで不正受給の発覚が遅れる例を2つ紹介します。
保険会社に対する調査
生活保護受給者が加入している保険の保険金が支払われる場合や交通事故の被害者になり
加害者が加入している保険から保険金が支払われる場合に振込日や振込金額について保険調査を行います。
加入の有無については回答してくれることが多いですが、実際に加入している保険の内容であったり
支払われる保険金の振込日や金額等については、個人情報保護が徹底しているため情報提供してくれないことが
多々あります。
(加入している側とすれば、それだけ個人情報が保護されているので、安心ではあるんですが(汗))
振込日や金額等を事前に知ることができれば、振込日に保険金全額を返還させることができますが
それができないので、返還させる準備が整った頃には、既に消費されていて返還できないなんてことがよく起こります。
勤務先に対する調査
生活保護受給者が隠れて働いていることが判明した場合、勤務先に対して勤務開始時期や月々の給与等について
収入調査を行います。
大抵の場合、調査に応じてくれますが、会社によっては全く情報提供してくれないことがあります。
勤務開始時期や月々の給与を知ることができれば返還額は、その時までで済みますが
それができないので、月々の給与分だけ返還額が増額します。
また不正受給が発覚した時点までの給与収入は勤労控除は受けられませんが、その後については
収入申告をすれば、勤労控除が受けられます。
発覚が送れた分だけ生活保護法の趣旨に反しますし、何よりも生活保護受給者本人が損をしてしまいます。
最終的に不正受給は発覚します
保険会社の例だと金融機関調査、勤務先の例だと税務担当課に対して行う収入調査によって
最終的に不正受給は発覚します。
最終的に不正受給が発覚するのは良いことですが、そこがまた厄介なところでもありまして、
「当社が調査に応じなくても、別の調査でわかるから良いでしょう。」
と言われてしまい、中々調査に応じてもらえない原因にもなっています。
結果、対応が後手後手に回ってしまい、不正受給の温床になっているのが現状です。
不正受給を最小限に防ぐには、全ての関係機関に対して回答義務のある調査ができるようになるべきだと思います。