「生活保護って、どんな人がもらえるの?」「自分は対象になるのかな?」
そんな疑問を持つ方は多いはずです。生活保護は”特別な人だけ”の制度ではありません。一定の条件を満たせば、誰でも申請・受給できる国民の権利です。
この記事では、受給対象となる人の特徴・条件・具体例をわかりやすく解説します。

生活保護とはどんな制度か?基本をおさらい

生活保護は、生活に困窮するすべての国民が最低限度の生活を営めるよう保障するための国の制度です(生活保護法第1条)。病気・失業・高齢・障害など、さまざまな理由で生活が成り立たなくなった人を支えるセーフティネットとして機能しています。
支給される保護費は、国が定めた「最低生活費」と受給者の収入との差額です。たとえば最低生活費が13万円で、収入が3万円しかない場合は、差額の10万円が保護費として支給されます。

2024年時点の統計(厚生労働省「被保護者調査」より)では、全国で約202万人が生活保護を受給しており、受給世帯数は約165万世帯に上ります。これは決して少数ではなく、100人に約1.6人が受給している計算です。
生活保護を受けられるのはどんな人?4つの要件

生活保護の受給には、以下の4つの要件すべてを満たしているか審査されます。ただし、これらはあくまで原則であり、個別の事情によって柔軟に対応されます。

要件①:資産の活用(資産要件)
利用できる資産がある場合は、まずそれを生活費に充てることが求められます。
- 預貯金:生活費として使い切っている、またはほぼない状態
- 不動産:居住用の土地・家屋は原則として保有したまま受給可能(売却が難しい場合など)
- 自動車:原則は処分が求められるが、地方在住・通勤や通院に不可欠な場合は認められることがある
- 保険:解約返戻金が少額の場合は保有が認められるケースもある
ポイント: 「少しでも貯金があると受けられない」と思い込んでいる人が多いですが、生活保護申請時の貯金は「ゼロ」である必要はありません。生活費1か月分程度の貯金は認められるケースが多いです。
要件②:能力の活用(稼働能力要件)
働ける状態にある人は、その能力を最大限活用することが求められます。ただし、「働ける=保護対象外」ではありません。
- 求職活動を行っているが就職できない
- 病気・障害・介護などの理由で就労が困難
- パートタイムなどで働いているが収入が最低生活費に届かない
このような場合は保護の対象になります。


要件③:扶養義務者による扶養(扶養要件)
両親・兄弟姉妹など扶養義務のある親族からの援助を受けられない状況にある必要があります。

扶養義務者への照会(連絡)は福祉事務所が行いますが、扶養ができないと判断されれば保護申請は進められます。DVや虐待などの事情がある場合は、扶養照会が省略されることもあります。


「親に連絡がいくのが嫌で申請をためらっている」という方は少なくありませんが、扶養照会はあくまで「援助できますか?」という確認であり、強制的に援助させるものではありません。

要件④:他の制度の活用(補足性の原則)
生活保護は「最後のセーフティネット」です。以下のような他の支援制度をまず活用することが原則とされています。
| 優先して使うべき制度 | 対象者の例 |
|---|---|
| 雇用保険(失業給付) | 失業した会社員 |
| 傷病手当金 | 病気・けがで休職中の方 |
| 障害年金・老齢年金 | 障害者・高齢者 |
| 児童扶養手当 | ひとり親家庭 |
| 住居確保給付金 | 家賃が払えなくなった方 |
これらを受け取っていても収入が最低生活費を下回る場合は、生活保護を申請できます。
実際に受給しているのはどんな人?統計データで見る受給者の実態

厚生労働省の調査によると、生活保護受給世帯の内訳は以下のとおりです(2024年度概算)。
| 世帯類型 | 割合 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 高齢者世帯 | 約55% | 年金だけでは生活できない65歳以上 |
| 傷病・障害者世帯 | 約24% | 病気や障害で就労が困難な人 |
| 母子世帯 | 約5% | 離婚・死別などによるひとり親家庭 |
| その他の世帯 | 約16% | 失業者・DV被害者など |
このデータからわかるように、生活保護の受給者の約8割は、高齢・病気・障害など「働きたくても働けない事情」を抱えた人々です。「怠けて保護を受けている」というイメージは実態とかけ離れています。

生活保護を受けやすい具体的なケース

ケース1:高齢で年金が少ない・無年金の人
国民年金の満額(2024年度:月額約68,000円)でも、都市部では最低生活費に届かないケースが多くあります。特に、無年金・低年金の高齢者は受給対象になりやすい状況にあります。
ケース2:病気やケガで働けなくなった人
突然の病気・入院・長期療養などで収入が途絶えた場合も対象です。傷病手当金(最長1年6か月)を受け取り終えた後も回復していない場合は、生活保護に切り替えるケースがよくあります。

ケース3:精神疾患・発達障害のある人
うつ病・統合失調症・双極性障害・発達障害(ASD・ADHDなど)を抱えて就労が困難な人も受給対象です。障害者手帳の有無は問われません。
ケース4:DV被害を受けて逃げてきた人
配偶者からのDVを受けてシェルターや一時保護所に避難した場合、住所不定の状態でも申請が可能です。DV加害者への扶養照会も省略できます。
ケース5:ひとり親(シングルマザー・シングルファーザー)
養育費が入らない、就労収入が少ない、子どもが小さくてフルタイムで働けないなど、さまざまな事情で生活が苦しいひとり親家庭は、母子加算・児童扶養手当との併用も含めて保護の対象になります。

ケース6:失業・ホームレス状態の人
住所不定でも「現在地保護」として申請できます。住所がないことは申請の障壁にはなりません。

「働けるから無理」は誤解!意外と知られていない対象者

働いているのに収入が少ない人(ワーキングプア)
アルバイト・パートタイムなど非正規雇用で働いていても、月収が最低生活費を下回る場合は保護申請が可能です。働きながら保護を受けることを「就労収入がある受給」といいます。就労収入は全額差し引かれるわけではなく、一定額を「控除」として認められるため、働くインセンティブが保たれています。

外国籍の人
永住者・定住者・日本人の配偶者など、一定の在留資格を持つ外国籍の人は、人道的配慮から生活保護(準用)を受けられる場合があります(法律上の受給権はありませんが、行政措置として対応)。

若い人・20代・30代
「若いから働けるはず」と思い込んで申請をためらう方もいますが、精神疾患・障害・DV被害・ひとり親などの事情があれば年齢は問われません。実際に20〜40代の受給者も一定数存在します。

生活保護を受けられない人・受けにくい人の条件

以下に当てはまる場合は、保護の対象外となる可能性があります。ただし、ケースによって判断が異なるため、まず相談することが重要です。
- 収入・資産が最低生活費を上回っている場合
- 扶養義務者(親・兄弟など)が十分な援助を行える場合
- 活用していない高額資産(複数の不動産・高額な車など)がある場合
- 生活保護目的での入国が疑われる外国籍の方(在留資格によって判断が異なる)
「断られた=終わり」ではありません。申請を一度断られた場合でも、審査請求(不服申し立て)を行うことができます。NPO・弁護士・社会福祉士などの支援者に相談しながら再申請するケースも多くあります。

申請前に知っておきたいこと:4つの扶助と支給額の目安

生活保護の支給は「扶助」という形で行われ、種類によって現金・現物(サービス)で提供されます。

| 扶助の種類 | 内容 | 支給形式 |
|---|---|---|
| 生活扶助 | 食費・光熱費・日用品など日常生活費 | 現金 |
| 住宅扶助 | 家賃・地代の実費補助 | 現金(上限あり) |
| 医療扶助 | 医療費の全額負担 | 現物(窓口負担ゼロ) |
| 介護扶助 | 介護サービス費の全額負担 | 現物 |
| 教育扶助 | 義務教育の学用品・給食費など | 現金 |
| 出産扶助 | 分娩費用の補助 | 現金 |
| 生業扶助 | 就労に必要な技能習得費・高校就学費 | 現金 |
| 葬祭扶助 | 葬儀費用の補助 | 現金 |
支給額の目安(東京23区・単身世帯の場合)
- 生活扶助:約73,000円
- 住宅扶助:上限53,700円
- 医療扶助:実費全額(国が医療機関へ直接支払い)
- 合計:約12〜13万円程度
地域・世帯人数・年齢によって金額は異なります。子どもがいる場合は「児童養育加算」、母子家庭は「母子加算」が上乗せされます。

申請の流れと相談窓口

STEP1:福祉事務所に相談・申請する
お住まいの市区町村の福祉事務所(市は「市福祉事務所」、町村は都道府県の「福祉事務所」)に出向き、生活保護の申請を行います。


重要: 相談に行っただけでは申請になりません。「申請したい」と明確に意思を伝え、申請書を提出した日が申請日になります。窓口での「水際作戦」(申請させないよう誘導すること)は違法ですが、実際に起きているケースもあるため、必要であれば支援者や弁護士の同行も有効です。

STEP2:審査・調査(14日以内が原則)
申請後、福祉事務所は以下の調査を行います。
- 資産調査(預貯金・不動産・車など)
- 収入調査(給与・年金・仕送りなど)
- 扶養義務者への照会
- 健康状態の確認(医師の診断書が必要な場合も)
決定は原則14日以内(特別な事情がある場合は最長30日)に決まります。

STEP3:保護決定・受給開始
保護が決定すると、担当ケースワーカーが割り当てられます。保護費は毎月、指定口座への振込か窓口受け取りで支給されます。

まとめ:生活保護は「困ったすべての人」のための権利

この記事のポイントを整理します。
- 生活保護は高齢・障害・疾病・ひとり親・DV被害・失業など、さまざまな事情を抱えた人が対象
- 受給者の約8割は「働きたくても働けない」事情がある
- 働いていても・若くても・外国籍でも、条件を満たせば申請できる
- 申請に必要なのは「収入・資産が最低生活費を下回っていること」
- 扶養照会は強制援助ではなく、DV等の事情がある場合は省略も可能
- 断られても審査請求・再申請ができる
最後に
「自分には関係ない」と思っていた方も、いざというときに制度を知っているかどうかが、生活の崩壊を防ぐ分岐点になります。困ったときは一人で抱え込まず、まず福祉事務所か支援機関に相談することが最初の一歩です。

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