「生活保護を受けているけど、好きな人と一緒に住みたい」「同棲したらすぐに保護が打ち切られるの?」
そんな不安を抱えている方は少なくありません。この記事では、生活保護と同棲の関係を法律・制度の観点からわかりやすく解説します。

生活保護と同棲の基本的な関係

生活保護は、生活に困窮するすべての国民に対して、最低限度の生活を保障するための制度です(生活保護法第1条)。

支給額は「最低生活費」と受給者の収入の差分で計算されるため、一緒に生活するパートナーの収入や資産が影響を与えることがあります。

ここで重要になるのが「世帯」という概念です。生活保護は個人ではなく世帯単位で審査・支給されます。同棲相手と同じ住所に住み、生計を共にしていると判断された場合、二人は「同一世帯」とみなされ、相手の収入が合算されます。

つまり、同棲=必ずしも即時打ち切り、ではありません。しかし、状況によっては保護費が減額・停止になるケースが十分あり得ます。
同棲すると生活保護が打ち切られる理由

世帯収入が最低生活費を超える場合
生活保護の支給条件は、「世帯の収入が最低生活費を下回っていること」です。同棲相手が安定した収入(正社員・アルバイトなど)を持っている場合、二人の世帯収入合計が最低生活費を上回ると、保護費はゼロ=廃止となります。


具体例
- 受給者(単身)の最低生活費:約13万円(東京23区・1級地の目安)
- 同棲相手の月収:18万円
この場合、世帯収入18万円>最低生活費(2人分)約19〜20万円、となりケースによっては減額、あるいは廃止となる可能性があります。


資産や扶養能力が認定される場合
同棲相手に十分な資産(預貯金・不動産など)がある場合、扶養義務に準ずる形で保護が廃止・減額されることがあります。法律上、内縁関係(事実婚)は配偶者と同等の扶養義務が発生するケースもあります。


同棲と「世帯」の考え方:ここが最重要ポイント

「同居」と「同一世帯」は違う
法律上、同じ住所に住んでいても、必ずしも「同一世帯」とは認定されません。福祉事務所が世帯認定をする際には、以下の要素を総合的に判断します。
| 判断要素 | 同一世帯とみなされやすい状況 |
|---|---|
| 住所・居所 | 同じ住所に住民票がある |
| 生計の共同 | 家賃・食費・光熱費を共同で負担している |
| 生活の一体性 | 毎日同じ場所で寝食を共にしている |
| 関係性 | 恋人・内縁関係・事実婚状態にある |
すべてが当てはまる場合は、同一世帯とみなされる可能性が非常に高いです。
「住所だけ同じ」では認められない
よくある誤解として、「住民票を移さなければ大丈夫」と思っている方がいます。しかし、福祉事務所はケースワーカーによる家庭訪問・近隣調査・郵便物の確認などを通じて実態を把握しています。住民票の有無だけで判断するわけではありません。


同棲がバレるケースとその仕組み

ケースワーカーによる定期訪問
生活保護受給者の自宅には、ケースワーカー(福祉事務所の担当者)が年数回〜月1回程度の頻度で訪問します。このとき、部屋に見知らぬ人の荷物・衣類・生活用品があれば、同棲が発覚するリスクがあります。
近隣住民や管理組合からの情報提供
マンションの管理人や近隣住民から「最近、別の人が頻繁に出入りしている」といった情報が福祉事務所に寄せられることがあります。
郵便物・公共料金明細の確認
同棲相手の郵便物が届いていたり、電気・ガスの使用量が明らかに一人分を超えている場合も、生活実態の変化として注目されることがあります。
マイナンバー制度による情報連携
近年はマイナンバーを通じた行政情報の連携が進んでいます。住民票の異動・税の申告情報・社会保険の加入状況などが把握されやすくなっており、虚偽申告はリスクが高まっています。

生活保護中に同棲・結婚を考えている場合の正しい対処法

ステップ1:必ず事前に福祉事務所に相談する
最も重要なことは、「黙って同棲を始めない」ことです。生活保護受給中は、収入・住居・家族状況の変化を速やかに福祉事務所に届け出る義務があります(生活保護法第61条)。
無申告で同棲を続けた場合、不正受給と認定され、受給した保護費の返還を求められる可能性があります。場合によっては刑事罰(詐欺罪)の対象になることも。


まずやること:
- 担当ケースワーカーに「同棲を考えている」と事前相談
- 相手の収入・資産状況を正直に伝える
- 世帯認定の見通しについてアドバイスをもらう
ステップ2:相手の収入・資産を正確に把握する
同棲・事実婚となると、相手の収入が世帯収入に合算されます。以下のポイントを確認しましょう。
- 月収はいくらか?(手取りベースで確認)
- 預貯金・資産はあるか?
- 勤務形態は?(正社員・派遣・アルバイト)
これらをもとに、福祉事務所が「最低生活費を上回るか」を試算します。
ステップ3:入籍・同一世帯登録前に収入見通しを立てる
「保護が廃止になっても生活できるか?」を、入籍・同居前に現実的に試算することが大切です。
もし相手の収入が不安定であったり、受給者自身に就労阻害要因(障害・疾病など)がある場合は、一時的な保護廃止後も再申請が可能なケースがあります。生活が困窮した場合は、再度申請することを躊躇わないでください。

相談窓口と利用できる支援制度

生活保護の相談・申請
- お住まいの市区町村の福祉事務所(または社会福祉事務所)
- 申請は「申請書を提出した日」から保護開始の検討が始まります


生活困窮者自立支援制度
生活保護に至る前の段階で相談できる窓口です。家計改善支援・就労準備支援なども受けられます。
- 各市区町村の**「自立相談支援機関」**に相談
法テラス(法律相談)
不正受給の疑いをかけられた、返還請求を受けたなど、法的な問題に発展した場合は法テラスの無料法律相談を活用しましょう。
- 電話:0570-078374(平日9:00〜21:00、土曜9:00〜17:00)
生活保護問題対策全国会議
生活保護の権利擁護に取り組むNPO・弁護士団体が連携した相談窓口も存在します。
よくあるケース別Q&A

Q1:彼氏(彼女)が無職でも同棲すると保護は打ち切られる?
A:必ずしも打ち切られるわけではありません。 相手が無職・無収入の場合、世帯の最低生活費に対して収入が変わらないため、保護が継続される可能性があります。ただし、相手の状況も審査対象となるため、二人分の最低生活費と合算した金額で再計算されます。

Q2:住民票を移さずに同棲すればバレない?
A:バレる可能性は十分あります。 前述のとおり、ケースワーカーの訪問や近隣情報、公共料金などから実態は把握されます。住民票を移さないことは「証拠隠滅」と受け取られ、悪質な不正受給とみなされるリスクが高まります。
Q3:外国籍のパートナーとの同棲はどうなる?
A:基本的に同じルールが適用されます。 相手の在留資格・収入・生計の共同状況などを踏まえ、同一世帯として判断されます。在留資格によっては扶養の届け出が必要になる場合もあります。

Q4:同棲→保護廃止になったあと、再申請はできる?
A:できます。 生活保護は「現在の生活困窮状況」をもとに審査されます。同棲相手の離別・収入喪失・関係解消などにより再び困窮した場合は、改めて申請することが可能です。過去に受給していたことは、再申請の妨げにはなりません。
Q5:同棲相手がDVをしている場合は?
A:すぐに支援機関に相談してください。 DV被害がある場合は、生活保護の問題よりも身の安全の確保が最優先です。配偶者暴力相談支援センター(各都道府県設置)や女性相談センター、または「DV相談ナビ(#8008)」にご相談ください。DVが認定された場合、世帯分離・別居を前提とした生活保護適用が可能です。
まとめ:同棲は「隠す」のではなく「相談する」が正解

生活保護を受けながら同棲・パートナーと生活を共にすることは、必ずしも禁止されているわけではありません。しかし、黙って始めることは不正受給につながる重大なリスクがあります。
この記事のポイントを整理します:
- 生活保護は世帯単位で審査されるため、同棲相手の収入・資産が影響する
- 世帯収入が最低生活費を超えると保護費の減額・廃止になる
- 同棲の事実はケースワーカーの訪問・近隣情報・マイナンバー連携で把握されやすい
- 無申告の同棲は不正受給とみなされ、返還請求や刑事罰のリスクがある
- 同棲を考えたら必ず事前にケースワーカーに相談すること
- 保護が廃止になっても、再び困窮した場合は再申請が可能
最後に
生活保護は国民の権利です。制度を正しく理解し、正直に申告・相談することが、自分自身を守る最善の方法です。「どうせ打ち切られる」と諦めず、まずは担当ケースワーカーに相談することをおすすめします。

コメント