生活保護受給者の中にはお金の管理があまり得意ではない方が少なからずいます。
そして、生活保護受給者の中には家賃分のお金を使い込んでしまうケースも多々あります。
もしも、生活保護受給者が家賃分のお金を使い込んでしまい、家賃を滞納したらどうなるのでしょうか?
また、大家さんとしては、生活保護受給者の方に家賃を滞納されないために、できることはあるのでしょうか?家賃滞納分はどこまで請求できるのでしょうか?
気になるところだと思います。
そこで、このページでは、生活保護が家賃滞納したらどうなるのか?また家賃の未払いを防ぐ方法について、わかりやすくご説明します。
家賃は住宅扶助から支給されている
はじめに生活保護受給者の家賃代について、ご説明します。
生活保護費は8つの扶助から構成されています。
そして、8つの扶助の中に住宅扶助と言うものがあり、この住宅扶助がアパートやマンション等の家賃代として支給されています。
しかし、毎月支給される生活保護費の中には住宅扶助の他にも生活扶助や、子どもがいる世帯の場合は教育扶助や生業扶助もまとめて支給されています。
そのため、支給金額決定通知書を見ない限り、支給された金額の内訳についてはわからず、住宅扶助を使い込んでしまい、家賃を滞納してしまう生活保護受給者がいます。
家賃を滞納したら不正受給となり返還が必要
では、住宅扶助を支給している生活保護受給者がお金を別のものに使い込んでしまい、家賃を支払えず家賃滞納したらどうなるのでしょうか?
まず当然として、家賃を滞納したら、大家さんに家賃を支払っていないわけですから、大家さんに家賃を支払わなければいけません。
生活保護受給者が家賃を滞納した場合は、それだけでなく、家賃分として支給された住宅扶助も福祉事務所に対して返還しなければいけません。
つまり、大家さんと福祉事務所から二重に家賃分を請求されてしまうんです。
例えば家賃が4万円のアパートに住んでいる生活保護受給者が家賃を滞納した場合、大家さんに4万円、福祉事務所に4万円、合計8万円も支払わなければいけなくなります。
なぜ家賃を滞納したら大家さんだけでなく、福祉事務所にも返還しなければいけないのか?
その理由は家賃を支払うために支給した住宅扶助を目的外使用しているからです。
住宅扶助など目的が定められた生活保護費を目的外使用をした場合は、不正受給とみなされるため、全額福祉事務所に徴収されてしまいます。
代理納付にすれば家賃滞納を防ぐことができる
住宅扶助扶助を使い込んでしまわない方法として、代理納付と言う方法があります。
代理納付をすることで、福祉事務所が生活保護受給者の代わりに家賃の支払いを行ってくれます。
ただし、生活保護受給者の代わりに払ってくれるとは言え、その費用を福祉事務所が負担してくれるわけではありません。
例えば生活保護費10万円、そのうち住宅扶助として家賃4万円を支給している生活保護受給者の場合、代理納付をすると家賃分の4万円が生活保護受給費から引かれて支給金額は6万円になります。
パッと見、支給金額が減らされて損した気分になるかもしれませんが、代理納付をしなくても、結局は家賃4万円は支払わなくていけないため、月々に使えるお金は6万円と代理納付をしてもしなくても金額は変わりません。
なお、代理納付の手続き方法は生活保護受給者が福祉事務所の窓口に行き、委任状を提出する必要があります。
大家さんだけで福祉事務所に行っても手続きはできないため、代理納付を希望する大家さんは生活保護受給者に代理納付するよう依頼するか、もしくは生活保護受給者と一緒に手続きに来る必要があります。
家賃上限をオーバーしていたり、共益費については代理納付できない
代理納付をしたとしても、もしも生活保護受給者が家賃上限をオーバーしている場合は、家賃上限分までしか代理納付できないため、オーバーした分については、生活保護受給者自身から支払ってもらうしかありません。
例えば家賃上限が4万円の生活保護受給者が42,000円の家賃のアパートを借りている場合、代理納付手続きをすると、4万円については、代理納付できますが、残りの2,000円については、生活保護受給者自身に払ってもらうしかありません。
また、共益費については、家賃ではないため、住宅扶助が支給されず、代理納付ができません。
共益費についても、生活保護受給者自身から支払ってもらうしかありません。
そのため、賃貸料が家賃上限より低く設定している場合、本来は共益費として支払ってもらう分を家賃に上乗せして契約し、代理納付してもらっている大家さんもいます。
生活保護受給開始前の家賃滞納分は請求できない
生活保護を受給開始前に滞納した家賃については、残念ながらどうしようもありません。
生活保護受給開始後であれば上記でご紹介した代理納付と言う方法で家賃滞納を防ぐことができますが、生活保護申請前の分については、どうすることもできません。
なぜなら生活保護で支給される生活保護費は健康で文化的な最低限度の生活を送る分しかないからです。
通常、家賃の滞納分や借金などの債権がある場合、債権者は債務者に対して取り立てを行うことができますが、残念ながら生活保護費は取り立てを行うことができません。
そのため、生活保護脱却後にしか家賃の滞納分を請求するか、もしくは、法的に取り立てることはできませんが、本人の意思で滞納分を支払うのは自由のため、関係を築いて支払ってもらう方法しかありません。
大家希望による立ち退きや各種トラブルに役所は介入できない
家賃の滞納分を支払わないことから、生活保護受給者に退去してもらおうとして、大家さんが福祉事務所に「家賃を滞納しているから退去させろ!」「福祉事務所から退去費用を出せ!」等と怒鳴り込んで来る方がたまにいますが、生活保護受給者を退去させる場合も一般世帯の方と同様に賃貸借契約書に基づいて退去してもらうしかありません。
なぜなら生活保護受給者は生活保護を受給しているだけで、権利等は普通の人と何ら変わらないからです。
生活保護受給者には憲法第22条で居住・移転の自由が認められていることから、生活保護を受給していると言うだけで強制退去はもちろんできませんし、福祉事務所に文句を言っても、ケースワーカーが強制退去させることもできません。
また、大家の都合で退去してもらう場合、今住んでいる人たちに対して退去費用を支給しますが、この退去費用も生活保護受給者に対して大家が支払わなければいけません。
生活保護受給者はどうしても転居が必要な場合は住宅扶助から転居費用が支給されます。
しかし、転居費用が支給されるのには条件を満たさなければいけません。
大家都合による転居の場合は転居費用を支給する条件には該当せず、社会通念上、大家が負担すべき費用であるため、福祉事務所から転居費用は一切支給されません。
その他、騒音問題や近隣住民とのイザコザ等の各種トラブルについても、あくまで賃貸人と賃借人、生活保護受給者と近隣の人との対立関係であることから、福祉事務所は一切介入することはありませんし、そもそも民民間のトラブルに役所が介入することはできません。
このように、大家さんは生活保護受給者にアパートやマンションを貸す場合は「福祉事務所が最終的に責任を取ってくれるだろう」と高をくくっていると、痛い目にあうため、一般世帯に貸す時と同じリスクがあると理解して貸しましょう。
まとめ
生活保護が家賃滞納したらどうなるのか?また、家賃未払いを防ぐ方法等について、ご説明させていただきました。
上記をまとめると
- 生活保護受給者の家賃は住宅扶助から支給されている
- 家賃を滞納したら不正受給と見なされ、大家さんにだけでなく福祉事務所にも家賃分のお金を返還しなければいけない
- 代理納付の申請をすることで、家賃の滞納を防ぐことができる
- 家賃上限をオーバーした分と共益費は代理納付することができないため、生活保護受給者が支払うしかない
- 生活保護受給開始前の滞納分については、生活保護脱却後もしくは本人の意思で返済してもらうしかない
- 生活保護受給者であっても、一般世帯と同様、各種トラブルは本人や大家が解決しなければならず、役所は一切関与しない
となります。
その他、生活保護に関する様々な疑問については、下記にまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
https://seikathuhogomanabou.com/category/qa/
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