「生活保護を受けたら月にいくらもらえるのか」は、申請を検討している方にとって最も気になる情報です。
結論から言えば、生活保護の支給額は、住んでいる地域、世帯構成、年齢、住居費などによって大きく異なります。
この記事では、2024年度の最新基準に基づいて、具体的な支給額を詳しく解説します。
生活保護の支給額の基本

最低生活費の考え方
生活保護の支給額は、厚生労働大臣が定める「最低生活費」を基準に決定されます。
最低生活費とは
健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な費用のことです。

以下のような扶助の合計で構成されています。
生活保護の8つの扶助
- 生活扶助:日常生活に必要な費用(食費、光熱費、被服費など)
- 住宅扶助:家賃、地代など
- 教育扶助:義務教育に必要な費用
- 医療扶助:医療費
- 介護扶助:介護サービス費用
- 出産扶助:出産費用
- 生業扶助:就労に必要な費用、高校就学費用
- 葬祭扶助:葬儀費用
このうち、毎月定期的に支給されるのは主に生活扶助と住宅扶助です。


支給額の決まり方
生活保護の支給額は、以下の計算式で決定されます。
支給額 = 最低生活費 - 収入認定額
収入認定額とは
世帯の収入から必要経費を差し引いた金額です。年金、給与、仕送りなどが含まれます。

具体例
- 最低生活費:月15万円
- 収入(年金):月5万円
- 支給額:15万円 – 5万円 = 10万円
収入がゼロの場合は、最低生活費の全額が支給されます。
地域別の生活扶助基準額

生活扶助の基準額は、地域の生活水準の違いを考慮して、1級地から3級地まで分類されています。
級地による違い
全国の市区町村は、物価や生活水準に応じて以下のように分類されています。
1級地(生活費が最も高い地域)
- 1級地-1:東京都区部、横浜市、大阪市など
- 1級地-2:札幌市、仙台市、千葉市、京都市、神戸市、福岡市など
2級地(中間的な地域)
- 2級地-1:さいたま市、川崎市、名古屋市、広島市など
- 2級地-2:地方都市の中心部
3級地(生活費が比較的低い地域)
- 3級地-1:地方の中小都市
- 3級地-2:町村部
級地が高いほど、支給される生活扶助の基準額も高くなります。

単身世帯の生活扶助基準額
2024年度の単身世帯における生活扶助の基準額(第1類+第2類)の目安は以下の通りです。
20〜40歳の単身者
- 1級地-1(東京23区など):約79,230円
- 2級地-1(名古屋市など):約74,630円
- 3級地-2(町村部):約67,310円
41〜59歳の単身者
- 1級地-1:約76,460円
- 2級地-1:約72,050円
- 3級地-2:約65,000円
60〜69歳の単身者
- 1級地-1:約73,690円
- 2級地-1:約69,440円
- 3級地-2:約62,690円
70歳以上の単身者
- 1級地-1:約70,700円
- 2級地-1:約66,610円
- 3級地-2:約60,130円
年齢が高くなるほど基準額が下がるのは、栄養所要量などが異なるためです。
2人以上世帯の生活扶助基準額
世帯人数が増えると、生活扶助の基準額も増加します。
2人世帯(夫婦、親子など)の例(1級地-1)
- 夫婦とも60代:約119,200円
- 40代夫婦:約126,400円
- 母親(35歳)+子ども(8歳):約134,900円
3人世帯の例(1級地-1)
- 夫婦(40代)+子ども(10歳):約171,650円
- 母親(35歳)+子ども2人(8歳、5歳):約183,160円
4人世帯の例(1級地-1)
- 夫婦(40代)+子ども2人(12歳、8歳):約207,470円
世帯人数が多いほど一人当たりの基準額は低くなります。
これは、世帯で生活することによる規模の経済性を考慮しているためです。

住宅扶助の上限額

生活扶助に加えて、住宅扶助(家賃)も支給されます。
地域別・世帯別の住宅扶助上限額
住宅扶助の上限額も、地域と世帯人数によって異なります。
東京都の例
- 単身世帯:53,700円(23区)、46,000円〜(多摩地域)
- 2人世帯:64,000円(23区)
- 3〜5人世帯:69,800円(23区)
大阪府の例
- 単身世帯:40,000円(大阪市)
- 2人世帯:48,000円(大阪市)
- 3〜5人世帯:52,000円(大阪市)
愛知県の例
- 単身世帯:37,000円(名古屋市)
- 2人世帯:44,000円(名古屋市)
- 3〜5人世帯:48,000円(名古屋市)
福岡県の例
- 単身世帯:34,000円(福岡市)
- 2人世帯:41,000円(福岡市)
- 3〜5人世帯:45,000円(福岡市)
持ち家の場合は住宅扶助は支給されませんが、住宅ローンが完済していれば保有が認められることがあります。
具体的な支給額のシミュレーション

実際にどのくらいの金額が支給されるのか、具体的なケースで見ていきましょう。
ケース1:東京都内の単身者(30歳)
世帯状況
- 居住地:東京都23区内
- 年齢:30歳
- 収入:なし
- 賃貸アパート居住
支給額の内訳
- 生活扶助:約79,230円
- 住宅扶助:53,700円(上限)
- 合計:約132,930円
実際に家賃が上限より安い場合(例:45,000円)は、45,000円のみが支給されるため、合計は約124,230円となります。

ケース2:大阪市の高齢単身者(70歳)
世帯状況
- 居住地:大阪市内
- 年齢:70歳
- 年金収入:月5万円
- 賃貸マンション居住
最低生活費の内訳
- 生活扶助:約68,000円
- 住宅扶助:40,000円
- 最低生活費合計:約108,000円
支給額の計算
- 最低生活費:108,000円
- 年金収入:50,000円
- 支給額:58,000円
年金と生活保護費を合わせて、月約108,000円で生活することになります。

ケース3:名古屋市の母子世帯(母35歳、子8歳)
世帯状況
- 居住地:名古屋市内
- 母親:35歳(パートで月5万円の収入)
- 子ども:8歳(小学生)
- 賃貸アパート居住
最低生活費の内訳
- 生活扶助:約128,000円
- 住宅扶助:37,000円
- 児童養育加算:10,190円(中学生未満)
- 母子加算:約24,000円
- 最低生活費合計:約199,190円
支給額の計算
- 最低生活費:199,190円
- パート収入:50,000円
- 基礎控除(働いた分の控除):約15,000円
- 認定収入:50,000円 – 15,000円 = 35,000円
- 支給額:約164,190円
パート収入と生活保護費を合わせて、月約214,190円で生活できます。
働いた分だけ手元に残るお金が増える仕組みです。


ケース4:地方都市の高齢夫婦(夫70歳、妻68歳)
世帯状況
- 居住地:地方都市(2級地-2)
- 夫:70歳
- 妻:68歳
- 年金収入:2人合わせて月10万円
- 持ち家(ローン完済)
最低生活費の内訳
- 生活扶助:約110,000円
- 住宅扶助:0円(持ち家のため)
- 最低生活費合計:約110,000円
支給額の計算
- 最低生活費:110,000円
- 年金収入:100,000円
- 支給額:10,000円
年金と生活保護費を合わせて、月約110,000円で生活します。
持ち家の場合は住宅扶助がない分、総額は低くなります。

ケース5:福岡市の3人家族(夫婦40代、子10歳)
世帯状況
- 居住地:福岡市内
- 夫:42歳(失業中)
- 妻:40歳(パートで月4万円)
- 子:10歳(小学生)
- 賃貸マンション居住
最低生活費の内訳
- 生活扶助:約157,000円
- 住宅扶助:45,000円
- 児童養育加算:10,190円
- 最低生活費合計:約212,190円
支給額の計算
- 最低生活費:212,190円
- パート収入:40,000円
- 基礎控除:約13,000円
- 認定収入:40,000円 – 13,000円 = 27,000円
- 支給額:約185,190円
パート収入と生活保護費を合わせて、月約225,190円で生活できます。
加算される場合の追加支給

基本的な生活扶助に加えて、特定の条件を満たす場合に加算が支給されます。
各種加算の内容と金額
1. 障害者加算
- 障害の程度により:月22,990円〜39,810円(地域による)
- 対象:身体障害者手帳1〜3級、療育手帳、精神障害者手帳などをお持ちの方

2. 母子加算
- ひとり親世帯に支給:月約20,000円〜24,000円
- 対象:母子世帯または父子世帯

3. 児童養育加算
- 子ども1人につき:月10,190円(中学生まで)、月10,190円(高校生等)
- 対象:子どもを養育している世帯

4. 介護施設入所者加算
- 入所している場合:月12,200円程度
- 対象:特別養護老人ホームなどに入所している方
5. 在宅患者加算
- 長期療養中の場合:月13,270円程度
- 対象:在宅で療養している方
6. 妊産婦加算
- 妊娠中または出産後の場合:月9,130円程度
- 対象:妊産婦


7. 冬季加算(期間限定)
- 寒冷地で冬季の暖房費用として:月数千円〜2万円程度
- 対象:11月〜3月(地域による)
- 地域と世帯人数により金額が異なる

加算を含む支給額の例
例:東京都の母子世帯(母35歳、障害児8歳)
- 生活扶助:約134,900円
- 住宅扶助:53,700円
- 母子加算:約24,000円
- 児童養育加算:10,190円
- 障害者加算(子):約26,810円
- 合計:約249,600円
複数の加算が適用される場合、支給額は大幅に増加します。
その他の扶助と一時金

毎月の定期的な支給以外にも、必要に応じて支給される扶助があります。
医療扶助
生活保護受給者は、医療費の自己負担がありません。
医療扶助の範囲
- 診察費
- 薬代
- 入院費
- 手術費
- 歯科治療費
- 通院のための交通費(必要と認められる場合)
指定医療機関で受診する必要がありますが、ほとんどの医療機関が指定を受けています。

介護扶助
要介護認定を受けた方は、介護サービスの自己負担分が支給されます。
介護扶助の範囲
- 居宅介護サービス
- 施設介護サービス
- 福祉用具の購入・レンタル
- 住宅改修費

教育扶助
義務教育に必要な費用が支給されます。
教育扶助の内容
- 学用品費:月額2,600円(小学生)、月額5,100円(中学生)
- 給食費:実費
- 教材費:実費
- 通学用品費:実費

生業扶助(高等学校等就学費)
高校生がいる世帯には、高校就学のための費用が支給されます。
高校就学費の内容
- 基本額:月額5,450円
- 教材費、学用品費:実費
- 通学費:実費
- 入学料、入学考査料:実費

一時扶助
特別な需要がある場合に、一時金として支給されるものもあります。
一時扶助の例
- 出産扶助:約30万円以内
- 葬祭扶助:約20万円程度
- 転居費用:敷金、礼金、引越し代(転居が認められた場合)
- 家具什器費:家具、家電の購入費(最小限)
- 被服費:冠婚葬祭用の衣服など(必要と認められる場合)
収入がある場合の計算方法

働きながら生活保護を受給する場合、収入の一部は控除されます。
勤労控除(基礎控除)
就労収入がある場合、以下の基礎控除が適用されます。
基礎控除額の計算式(2024年度)
| 収入額 | 控除額 |
|---|---|
| 〜20,000円 | 16,240円 |
| 20,001円〜32,000円 | 収入 × 60% + 8,240円 |
| 32,001円〜55,000円 | 収入 × 50% + 11,440円 |
| 55,001円〜 | 収入 × 40% + 22,940円 |
具体例:月収5万円の場合
- 収入:50,000円
- 基礎控除:50,000円 × 50% + 11,440円 = 36,440円
- 認定収入:50,000円 – 36,440円 = 13,560円
つまり、5万円稼いでも、約36,440円は控除されるため、生活保護費の減額は約13,560円のみです。
働いた分だけ手元に残るお金が増える仕組みになっています。

新規就労控除
新たに就労を開始した場合、最初の6ヶ月間は追加の控除があります。
新規就労控除の金額
- 月額11,600円(6ヶ月間)
これにより、就労開始のインセンティブが高まります。
その他の必要経費控除
就労に必要な経費も控除されます。
控除される必要経費
- 通勤交通費:実費
- 制服代、作業着代
- 職場での昼食代(一定額)
- 社会保険料
よくある質問と回答

生活保護の支給額について、多くの方から寄せられる質問にお答えします。
Q1. 毎月同じ金額が支給されますか?
A. いいえ、以下のような場合に支給額が変動します。
- 収入が変動した場合
- 世帯構成が変わった場合(出産、死亡など)
- 転居して家賃が変わった場合
- 加算の条件が変わった場合(障害認定など)
- 冬季加算の期間(11月〜3月)
変化があった場合は、必ずケースワーカーに報告してください。

Q2. 支給日はいつですか?
A. 自治体により異なりますが、一般的に以下のタイミングです。
- 毎月1日〜5日の間
- 口座振込の場合が多い
- 土日祝日の場合は前倒しまたは後ろ倒し
初回の支給は、保護開始決定後になるため、申請から支給まで1〜2ヶ月かかることがあります。

Q3. 生活保護費から貯金はできますか?
A. 一定の条件下で、合理的な目的のための貯蓄は認められます。
- 就労による自立のための準備資金
- 子どもの進学費用
- 緊急時の備え
ただし、無断で高額な貯金をすると問題になります。必ずケースワーカーに相談してください。

Q4. 支給額は毎年変わりますか?
A. 生活扶助の基準額は、毎年4月に改定されることがあります。物価の変動などを考慮して調整されます。近年は据え置きまたは微減傾向にあります。
Q5. 最低生活費より少ない収入でも申請できますか?
A. はい、収入が最低生活費を下回る場合、不足分を生活保護で補うことができます。これを「補足的な保護」といいます。働きながら受給することも可能です。

Q6. 他の手当(児童手当など)は収入に含まれますか?
A. はい、以下のような手当は収入として認定されます。
- 児童手当
- 児童扶養手当
- 障害年金
- 遺族年金
ただし、これらの手当と生活保護を合わせて最低生活費が保障されます。
まとめ:自分のケースを確認しよう

生活保護の支給額は、様々な要因によって決定されます。
支給額を決める主な要因
- 居住地(級地区分)
- 世帯人数と構成
- 年齢
- 住居費(家賃)
- 障害や病気の有無
- 子どもの有無
- 現在の収入
おおよその目安
- 単身世帯:月13万円〜15万円(都市部)
- 母子世帯(母+子1人):月19万円〜22万円(都市部)
- 夫婦世帯:月17万円〜19万円(都市部)
- 3人世帯:月21万円〜24万円(都市部)
ただし、これはあくまで目安です。正確な金額は、福祉事務所に相談して確認してください。
支給額を確認する方法
- お住まいの自治体の級地区分を調べる
- 福祉事務所に相談する
- 世帯構成と収入を整理する
- シミュレーションをしてもらう
生活保護は、憲法で保障された権利です。
生活に困窮している場合は、遠慮せず福祉事務所に相談してください。

支給額や受給の可否について、具体的にシミュレーションしてもらえます。
また、生活保護は一時的なセーフティネットとして活用し、状況が改善したら自立を目指すことが制度の目的です。
就労支援プログラムなども活用しながら、段階的な自立を目指しましょう。


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