生活保護を受給する場合、様々な制限が掛かります。
その中に生活保護受給者が住む住宅の家賃上限と言うものがあります。
そこで、このページでは、
- 生活保護の家賃上限はいくらなのか?
- 生活保護の家賃上限をオーバーしていても生活保護の申請はできるのか?
- 生活保護受給中に家賃がオーバーしてしまった場合、どのような取り扱いになるのか?
- 生活保護の家賃上限をオーバーしていも住み続ける方法はあるのか?
等について、わかりやすくご説明します。
住宅扶助の支給上限金額が家賃上限
生活保護費は8つの扶助から構成されています。
この8つの扶助の中に住宅扶助と言うものがあります。
住宅扶助は生活保護受給者が住む場所を確保するために支給される扶助で、賃貸における家賃や自己所有の物件が借地の上に建っている場合は、その借地代、住宅の修繕に掛かる費用、引っ越しに関する費用が支給されます。
そのうち、賃貸における家賃として毎月支給される住宅扶助の支給上限金額が家賃上限となります。
ちなみに、毎月支給される生活保護費の中には、生活扶助、住宅扶助の他、子どもがいる場合は教育扶助、生業扶助など、様々な扶助の合計金額が支給されています。
自身の生活保護費の内訳が知りたい場合は、毎月もしくは支給金額に変更があった場合に発行される支給金額決定通知書に内訳が記載されているので、そちらを見てみてください。
生活保護の家賃上限は地域・世帯人数によって異なる
では、家賃として毎月支給される住宅扶助の支給上限金額はいくらか?についてですが、地域・世帯人数によって異なります。
下の表を見てください。
この表は厚生労働省が公表している世帯別・地域別の生活保護費の支給金額の具体例です。
まず地域についてですが、地域によって級地を1級地-1から3級地-2まで設定されています。
わかりやすく言うと1級地-1が最も都会で家賃上限が高く、3級地-2が最も田舎で家賃上限が低く設定されています。
ただし注意点として、級地は同じ1級地-1でも、住宅扶助の上限金額は各自治体によって違います。
例えば隣り合うA市とB市が同じ2級地-2の級地であっても、A市は家賃上限が35,000円までなのに対し、B市は家賃上限が32,000円までと言うことがあります。
また、世帯人数によっても住宅扶助の上限金額が変わり、世帯人数が増えるほど、家賃上限が高くなります。
ただし、世帯人数が1人増えるごとに、住宅扶助の上限金額がいくら増えるのか?についても自治体ごとによって設定が異なりますし、自治体の中には世帯人数が5人以上でないと住宅扶助の上限金額は変わらない自治体もあります。
そのため、自身が住んでいる自治体の住宅扶助の上限金額が知りたい場合はケースワーカーに聞くしか方法がありません。
家賃上限がオーバーしていても生活保護を申請できる
生活保護の受給条件は「世帯の収入が最低生活費以下であること」ただそれだけです。
そのため、現在住んでいる住宅の家賃が住宅扶助の支給上限金額をオーバーしていても生活保護を申請することは可能です。
生活保護の家賃上限をオーバーしているからと言う理由で生活保護の申請が却下されることはないので、申請時に今住んでいる住宅の家賃等について心配する必要は特にありません。
ただし、生活保護の受給が開始すると、家賃上限をオーバーしているため、ケースワーカーから指導指示を受けることになります。
生活保護受給開始後は家賃上限以内の家に住む必要がある
生活保護受給者が高級住宅に住んでいると、一般世帯から反感を買われてしまいます。
そのため、生活保護受給が開始されると、住宅扶助の上限金額内の家賃の家に住むようにケースワーカーから指導指示を受けることになります。
その時の対処法として下記の2通りあります。
- 住宅扶助の上限金額内の家賃の家に引っ越しをする方法
- 大家さんに交渉して住宅扶助の上限金額内の家賃に減額してもらう方法
それぞれの対処法について、下記でより具体的にご説明します。
生活保護から引っ越し費用は全額支給される
転居する場合に一番困るのが、敷金、礼金、引っ越し費用です。
ですが、安心してください。
敷金、礼金等も含む、あらゆる引っ越しに掛かる費用は生活保護費から支給されます。
生活保護では、敷金等の引っ越し費用を支給して良い事例として、18事例が挙げられており、そのうちのいずれかに該当する場合、引っ越し等の費用を全額支給して良いことになっています。
その中に
実施機関の指導に基づき、現在支払われている家賃又は間代よりも低額な住居に転居する場合
と明示されているため、住宅扶助の家賃上限をオーバしている住宅からケースワーカーの指示により上限内の住宅に転居する場合は、全額生活保護費から支給されます。
ちなみに、18項目のうちのいずれかに該当すれば、2回目以降の引っ越し費用についても生活保護費から支給してもらうことが可能です。
大家と上手に価格交渉をする方法
大家さんに価格交渉する場合にはコツがあります。
まずはシンプルに「今の家賃のままだと引っ越しをしないといけないから、住宅扶助の上限金額まで家賃を下げて欲しい」と伝えましょう。
人気の高い部屋の場合は、断られることもありますが、意外と値下げ交渉に応じてくれます。
また、値下げに応じてくれない場合は、あまりオススメしませんが、家賃を下げる代わりに共益費に代えてもらう方法があります。
例えば住宅扶助の家賃上限が40,000円の場合、家賃42,000円だとオーバーするため指導対象になりますが、家賃40,000円、共益費2,000円として契約すれば、家賃は上限以内のため、指導対象となりません。
共益費は住宅扶助の対象とならないため、このような方法で家賃を住宅扶助の上限内におさめることが可能です。
ただし、共益費については、毎月の生活保護費から自己負担しなければいけないため上げすぎに注意しましょう。
なお、余談ですが、住宅扶助の上限に満たない家賃と共益費を支払っている場合、逆に共益費を家賃に代えてもらうことで住宅扶助の支給金額を増やす方法もあります。
例えば住宅扶助の家賃上限が40,000円の場合、、家賃38,000円、共益費2,000円支払っている場合、家賃を40,000円にしてもらえば、住宅扶助の支給金額が38,000円から40,000円に増え、自己負担がなくなります。
このような交渉方法もあるので、覚えておきましょう。
生活保護の家賃上限がオーバーしていても住み続ける方法
引っ越しもしたくないし、大家さんが価格交渉に応じてくれない場合もあると思います。
そのような場合は、転居先を探すフリさえしていれば家賃上限がオーバーしていても住み続けることができます。
全ての国民は憲法第2条第1項で居住・移転の自由が認められています。
居住・移転の自由とは、全ての国民が持っているどこに住むのかを自由に決める権利のことです。
この居住・移転の自由により、ケースワーカーは生活保護受給者に対して転居するように指導をすることはできますが、住む場所を決めたり、転居する期限を定めることができません。
そのため、生活保護受給者は生活保護を受給している以上、転居先を探さなければいけませんが、転居先を探してさえいれば、良い物件がないことを理由に家賃上限をオーバーしていても住み続けることが可能です。
ただし、家賃上限をオーバーしている分については、本来食費や電気代等に充てる生活扶助等から支出しなければいけません。
例えば家賃上限が40,000円の場合、45,000円の家賃の住宅に住んでいると、40,000円分は住宅扶助から支給されますが、残りの5,000円については、月々の生活費から負担しなければいけません。
このように、家賃上限をオーバーしている分、月々に使えるお金は減ってしまうため、転居費用を出してもらって家賃上限内の家に住む方がお得だと思います。
まとめ
生活保護の家賃上限がオーバーしている場合の取扱いはどうなるのか?について、ご説明させていただきました。
上記をまとめると
- 住宅扶助の上限金額が生活保護の家賃上限
- 住宅扶助の上限金額は地域・世帯人数によって変わるため、自治体に聞かないとわからない
- 家賃上限をオーバーしていても生活保護は受給できる
- 家賃上限をオーバーしている場合は引っ越しをするか、家賃交渉をする必要がある
- 家賃上限をオーバーしている場合、敷金・礼金等の引っ越し費用は全額生活保護費から支給される
- 家賃上限をオーバーしていても転居先を探すフリさえしていれば住み続けることができる
となります。
その他、生活保護に関する様々な疑問については、下記にまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
https://seikathuhogomanabou.com/category/qa/
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