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生活保護の生業扶助とは?高校進学や資格取得等の自立に向けた費用が支給される

支給関係

生業扶助とは生活保護制度で定められている8種類の扶助の1つです。
「生業扶助」の読み方は「せいぎょうふじょ」と読みます。

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生業扶助の項目は広義的には下記のとおり全部で3項目です。

1.生業に必要な資金、器具又は資料
2.生業に必要な技能の習得
3.就労のために必要なもの
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生業扶助の趣旨

生業扶助とは世帯の収入増加、又は自立を助長する上で必要な費用に充てるための扶助です。

生業扶助基準は下記のとおり全部で4項目あり、それぞれの項目に応じた金額が支給されます。

生業扶助基準
1.生業費
2.技能習得費(高等学校等就学費を除く)
3.高等学校等就学費
4.就職支度費

世帯の収入増加、又は自立を助長する上で必要な費用を生業扶助から支給することから、支給対象が個人事業を営むための費用から、資格を取得するために必要な費用高校受験から卒業までの費用、内定が決まったら仕事に必要なスーツや靴の費用までと、かなり幅広いです。

ただし、専門学校や大学の受験料・学費は残念ながら支給の対象ではありません。

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専門学校や大学に行く人は増えましたが、今でも高校卒業後に就職する人が数多くいます。
自立を助長するための費用は出ますが、生活保護はあくまで最低限度の生活を保障することが目的のため、高校卒業で働く人が多数いる以上、専門学校や大学の費用までは支出することができません。

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支給方法


支給方法は現金支給です。
詳しくは下記で紹介しますが、高等学校等就学費の一部のみ、教育扶助と同様に毎月の生活保護費と一緒に含まれて支給されますが、生業扶助の多くは追加支給で支給されます。

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なお、生業扶助は自立に向けた取り組みをすれば、自動的に支給されるものではありません。
必ず申請が必要となりますので、事前に担当ケースワーカーに相談しましょう。

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生業費

生活保護受給者が小規模な事業を行うために必要な資金等は生業費として支給されます。

生業費の支給金額は原則47,000円以内、やむを得ない事情がある場合は78,000円以内(特別基準)金額を上限として支給されます。
この上限金額は全国一律です。

なお同一世帯に属する2人以上の者から別の事業で、それぞれ申請があった場合その事業をすることが収入増加、又は自立を助長すると判断されれば、それぞれ支給されます。

つまり、世帯ごとに支給されるわけではなく、世帯員ごとに個別に申請・支給が可能です。

しかし、実際の現場において、成功するかどうかわからない事業にお金を出すことは非常に難しいです。
銀行員等のプロでも事業が成功するかどうかを判断するのが難しいのにプロでもないケースワーカーに判断できるわけがありません。

また事業することを許可するより就労指導をした方が、より早く、より確実に収入増加、又は自立助長につながります。

そのため、よほど事業計画書を作り込んで担当ケースワーカーを説得しない限り、生業費はまず支給されないものと考えてください。

技能習得費(高等学校等就学費を除く)

生活保護受給者が就職するために必要とする資格取得・技能習得費用が支給されます。

資格取得費
生活保護受給者が就職するために必要とする資格取得・技能習得費用については、 資格取得費が臨時的に支給されます。 正式名称は技能習得費です。 しかし、技能習得よりも資格取得に利用されることが多いため このページでは資格取得費として説明します。...

1つの資格につき81,000円以内/年です。

資格取得期間が1年を超える場合については、最大で2年間分まで支給されます。

この場合の支給方法は、2年分の162,000円が一度に支給されるわけではなく、それぞれ1年ごとに最大81,000円支給されます。

また、2年目の分については、2年目に再度、生業扶助の申請をする必要があります。

なお、3年目以降については同一資格については支給されないため、毎月支給される生活保護費の中から実費で支払う必要があります。

例えば資格取得に3年掛かる場合、2年分の81,000円×2=162,000円までは生業扶助から支給されますが、3年目の分については、全額自己負担となります。

「年間81,000円が上限だったら、大した資格を取得できないよ…」と思う方もいるかもしれませんが、安心してください。資格取得費については例外もあります。

自立支援プログラムに基づく場合で1年間のうちに複数の資格を習得する必要がある場合は216,000円/年まで支給されます。

また自立助長に資することが確実に見込まれる場合は上限380,000円まで支給されます。
この例外を利用することで自動車運転免許の取得も可能です。

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高等学校等就学費


生業扶助のうち高等学校等就学費では、高校入学から卒業までに必要な学費が支給されます。

高等学校等就学費の項目は下記の通り全部で7項目あります。

1.基本額(月額)
2.学習支援費
3.学級費、生徒会費及びPTA会費等(月額)
4.教材代
5.授業料
6.入学料及び入学考査料
7.入学準備費用(制服代等)
8.通学のための交通費

毎月支給されるもの、申請することで支給されるものがあり、高校生活に必要なお金は大抵支給されます。

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部活動に打ち込むことも可能です。

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ただし、支給される金額は公立高校に通うための費用しか支給されないため、私立高校に通う場合、差額分については、毎月の生活保護費から自己負担が必要となります。

就職支度費

就職の確定した生活保護受給者が、就職のため直接必要とするスーツや靴等の
購入費用については、就職支度費が臨時的に支給されます。

雇用形態は問われませんが、基本的に社会保険に加入する必要があります。

パート・アルバイトでも社会保険に加入する場合もあるため、
パート・アルバイトだから支給の要件を満たさないわけではありません。

支給金額は32,000円以内です。
通勤費については、別途必要最小限度の実費が支給されます。

就職が決まると就職支度費が支給されます。
就職の決まった生活保護受給者が、就職のため直接必要とするスーツや靴等の 購入費用については、就職支度費が臨時的に支給されます。 また、初任給が支給されるまでの通勤費についても、就職支度費から支給されます。 ちなみに… 就職支度費は生業扶助に...

就職したらすぐに生活保護廃止になるわけではない


就職が決まった=生活保護の廃止
と勘違いしている方が多いですが、就職が決まっても、すぐに生活保護が廃止になるわけではありません。

Q 「生活保護の廃止」「生活保護の停止」「支給なし」って違うの?
Q  「生活保護の廃止」「生活保護の停止」「支給なし」って違うの? A  どれも月々の生活保護費の支給はありませんが全く違います。 毎月1日の生活保護費の支給がないところは共通していますが 「生活保護の廃止」「生活保護の停止」「支給なし」で...

生活保護の受給条件は世帯収入が最低生活費を超えていることです。

生活保護の最低生活費とはいくら?最低生活費の計算方法は?
よく生活保護制度の中で、「最低生活費」と言う単語を聞くと思います。 それもそのはず、生活保護の条件が「世帯の収入が最低生活費以下であること」なので、最低生活費が非常に重要な指標となります。 しかし、ケースワークの現場でも、実際によく使う言葉...

収入があっても最低生活費未満の収入であれば、生活保護の条件を満たすため、継続して生活保護を受給することが可能です。

生活保護の条件はたった1つ!
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「生活保護を受けながら仕事はできない!」 「生活保護受給中は働いたら駄目!」 「働きだしたら生活保護がすぐに廃止させられる!」 と言ったデマを時々信じている方がいらっしゃいますが、それらはハッキリ言って嘘です。 生活保護を受けながら仕事はで...

また、収入の取り扱いについても、給与収入については、控除額があるため、毎月支給される生活保護費そのものは減額されますが、毎月の生活費(給与収入+生活保護費)は増額されるため、働くことは生活保護受給者にとってメリットはあっても、デメリットはありません。

生活保護における給料収入の取り扱いは?収入申告しないとどうなる?
生活保護受給中に給与収入を得た場合の取扱いについて詳しく説明しています。
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Q  ボーナス(賞与)も収入申告しないといけないの? A  ボーナス(賞与)も収入申告する必要があります。 月々の給与収入は申告していても ボーナス(賞与)は申告していないケースがあります。 なぜなら、ボーナス(賞与)は臨時的な収入であるか...

まとめ


生活保護制度で定められている8種類の扶助のうち、生業扶助について、ご紹介させていただきました。

生活保護では、意外と知られていませんが、上記のとおり、高校の学費や資格取得費など自立を助長するための費用が出ます。

また、就職が決まればスーツ等の就職支度費も支給されます。

その他にも生活保護では、プロによる就労支援や就労自立給付金など、様々な支援も利用することができます。

就労意欲喚起等支援事業
「就労意欲喚起等支援事業とは就労意欲の喚起を図るための支援を 民間職業紹介事業者等に委託して実施し、既存の就労支援策と併せて 生活保護受給者の更なる就労支援策の充実を図る事業です。」 (厚生労働省のHPより抜粋) 今までは就労指導についても...
就労自立給付金が創設されました。
平成26年7月1日から就労自立給付金が創設されました。 簡単に言うと 就労して生活保護を脱却したら、お金を支給する制度です!! 趣旨 生活保護受給中は固定資産税、国民健康保険料、国民年金保険料、介護保険料等が免除されています。 しかし、生活...

生活保護を脱却できるほどの収入が得られなくても、働いた分、毎月使えるお金は増えるため、自立に向けて生業扶助を活用することをオススメします。

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