生活保護受給者の中には親名義の不動産に住んでいる方がいます。
この場合、生活保護受給者は親名義の不動産に住み続けることはできるのか?引っ越さなければいけないのか?
また、不動産の名義は親のままでも実際は親が亡くなっている、もしくは亡くなってしまった場合はどうなるのか?
それらの疑問について、このページでは、詳しくご紹介します。
親が生きている場合
親が生きているのであれば、話は簡単です。
親が住み続けて良いと言うのであれば、そのまま住み続けることが可能です。
何も問題はありません。
ただし、余程資産価値の高い不動産、例えば月に数十万円もするような高級マンション等の場合は、担当ケースワーカーの判断に依りますが、世間の目もあるので、引っ越しをする必要があるのではないか?と思われます。
住み続けることができるが住宅扶助の支給はない
現在、親名義の家に住んでいるのであれば、そのまま住み続けることは可能です。
また、現在契約している住宅から親名義の不動産へ引っ越すことも可能です。
ただし、その場合は、住宅扶助の支給はありません。
通常、賃貸の不動産に住んでいれば、毎月の家賃が発生するため、その家賃分が住宅扶助として毎月支給される生活保護費に含まれて支給されます。
しかし、その不動産が親名義の不動産の場合は、住宅扶助が支給されません。
なぜなら親族には扶養義務があるからです。
民法第877条には
「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」
と定められています。
また、生活保護法第4条第2項には
「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、
すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」
と定められています。
このように、親に限らず、兄弟等の親族には扶養義務があり、親族から援助が受けられるのであれば、それを優先します。
親名義の不動産に住むと言うことは、親が住む場所を提供してくれている、つまり、家賃は必要ないと判断されるので、結果、住宅扶助は支給されません。
「親族だって生活が掛かっているんだから、家賃を支給するべきだ!」と言う意見も確かにあります。
しかし、生活保護費は税金です。
世間の目がありますので、家賃収入が必要なのであれば、変に邪推されないためにも、一般の方に貸し出すべきです。
親が亡くなっている、もしくは亡くなった場合
親が亡くなっているけど、不動産の名義は親のまま、もしくは親が亡くなってしまった場合の取り扱いは、少し複雑になります。
権利関係により、取り扱いが変わってきます。
相続の手続きが必要
まず最初にしなければいけないのが相続の手続きです。
被相続人同士で話し合って、遺産分割協議をする必要があります。
遺産は借金などの負債も含まれているため、一概には言えませんが、負債よりも純資産が多い場合、つまり何かしら+の資産が手に入る可能性がある場合は、どれだけ手続き面倒であっても、生活保護の要件として、「資産の活用」があるため、生活保護受給者は財産を取りにいかなければいけません。
例えば遺言書に「兄弟に全部相続させる」と記載があっても、相続人には遺留分を請求する権利があるため、遺留分の請求をしなければいけません。
そして、遺産分割協議によって、誰が何を相続したかによって、取り扱いが変わります。
生活保護受給者本人が家・土地を相続した場合
生活保護受給者が居住用の家・土地を相続した場合、余程、資産価値が高い場合は売却しなければいけませんが、そうでないならば、そのまま住み続けることが可能です。
居住用とは別に家・土地を相続した場合は、資産があるから生活保護は廃止になるの?と不安になる方もいるかもしれませんが、安心してください。
家・土地があっても、生活保護の受給を継続できます。
生活保護の条件は「世帯の収入が最低生活費以下であること」です。
仮に家・土地等の不動産の資産価値が1億円だとしても、現金化できなければ、食料等を購入することができず、生活に困ってしまいます。
そのため、家・土地等の不動産があるからと言って、すぐに生活保護が廃止されるわけではありません。
家・土地等の不動産を相続した場合は、すぐに売却手続きをしなければいけませんが、資産価値の高い不動産を相続した場合でも売却できるまでは生活保護を受給し続けることができます。
ただし、家・土地等の不動産が売却できた場合は、その不動産を取得した日からの生活保護費は遡って返還しなければいけません。
例えば、12月1日に土地を相続し、その土地が3月31日に1,000万円で売却できた場合、12月から3月までの生活保護費は返還する必要があります。また、この場合は売却代金の残りが多いため生活保護は廃止となります。
上記の例で、もしも土地の売却金額が50万円の場合は、50万円を上限として、12月から3月までの生活保護費は返還する必要がありますが、土地の売却代金が残らないため、生活保護は廃止とならず、そのまま継続となります。
兄弟・姉妹が家・土地を相続した場合
現在住んでいる住宅を兄弟等の親族が相続した場合は、その相続した親族の判断によって異なります。
もしも、そのまま住むことを許可してくるのであれば、上記の親が生きている場合と同じで住宅扶助の支給はありませんが、そのまま住み続けることができます。
もしも、相続した親族が「出てってくれ!」と言うのであれば、引っ越しをするしかありません。
しかし、その場合は生活保護費から引っ越し費用は出ません。
生活保護受給者もしくは相続した親族が引っ越し費用を負担する必要がありますが、大抵、生活保護受給者は貯金もなく、また、引っ越しをしてもらいたいのは、その親族の方であることから、その親族が引っ越し費用全額を負担することになります。
現金を相続した場合
余談になりますが、現金を相続した場合の話も触れておきます。
相続した金額が高額で半年以上生活ができる見込みがある場合は生活保護は廃止となります。
相続した金額が少額で半年以内に再び生活保護を開始することが見込まれる場合は、生活保護費の停止をするなど、毎月の支給金額の調整は入りますが、生活保護を継続することができます。
なお、遺産分割協議などにより、相続に時間がかかった場合は返還金が発生します。
相続の場合は親が亡くなった日から資力が発生したとみなされるため、死亡日から相続が完了するまでの間に支給された生活保護費については、返還が必要となります。
例えば6月1日に親がなくなった場合は6月1日が資力発生日となり、実際に相続したのが9月30日であれば6月~9月までの間に支給された生活保護費については、返還金の対象となります。
まとめ
生活保護受給者が親名義の家に住んでいる場合の取扱いについてご紹介させていただきました。
親族名義の不動産に住んでいる場合は、住宅扶助の支払いはありませんが、不動産の名義人が他人であろうと、親族であろうと、関係なく、そのまま住み続けることができます。
また、今住んでいるアパート等から親族名義の不動産に引っ越す場合は、引っ越し費用も生活保護費から出ます。
親族名義の不動産から一般の不動産に引っ越した場合は、再び住宅扶助は支給されるようになりますが、その場合の引っ越し費用は生活保護費からは支給されませんので、その点だけは注意しましょう。
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