2013年3月6日に発刊された朝日新聞の朝刊の記事で生活保護受給中の母親がとりあげられました。
記事の内容としては、生活保護を受給している母子3人世帯の母親が生活が苦しいことを訴えていますが、支給金額は月額29万円もあり、生活費の内訳も被服費に月2万円、習い事や趣味に月4万円も使うなど、働いて稼いでいる一般世帯よりも裕福な生活をしていることから、大炎上しました。
そして、当該新聞記事を見た人たちがツイッターやSNS等で「生活保護を受給すると月額29万円も貰えるのか?」「月29万円はもらいすぎではないのか?」等、様々な意見が出ました。
中には間違った情報も数多く拡散された経緯がありますので、このページでは、
・生活保護を受給すると、いくら貰えるのか?
・生活保護なのに、なぜ手取りで月29万円以上も貰えるのか?
・月29万円以上を一生もらい続けることができるのか?
・月29万円以上もらっているのに、なぜ生活が苦しいと訴えるのか?
・生活保護受給やのお金の使い道について指導はできないのか?
等について、わかりやすくご説明します。
生活保護費の支給金額は世帯によってバラバラ
生活保護の支給金額の具体的事例は毎年厚生労働省で発表されています。
下表は令和3年4月時点のモデル世帯の支給金額の目安です。
生活保護費の支給金額は世帯員の数と住む場所によって変わり、世帯員の数が多い程、また、田舎よりも都会の方に住む方が支給金額が増えます。
その理由は、生活保護では、健康で文化的な最低限度の生活をするうえで必要となる金額を支給するんですが、家族が増えるほど、また、都会に住むほど、物価等が高くなるため最低生活費も増えるからです。
上表でも、単身世帯、夫婦世帯、子どもがいる世帯の順に支給金額が増えており、3級地-2(田舎)から1級地-1(都会)までの順に支給金額が増えていることが見てわかると思います。
生活保護費の内訳についてですが、生活扶助とは、食費や電気・ガス・水道などの光熱費を支払うためのものです。
ちなみに電気代などの光熱費は無料となると思っている方もいますが、電気代などの光熱費は生活保護でも支払わなければいけません。
次に、住宅扶助とはアパートやマンション等の家賃を支払うためのものです。
上表の金額はあくまで家賃の上限金額を示しているだけなので、実際に住宅扶助として支給されるのは上限金額もしくは家賃のどちらか低い金額が支給されます。
上表だと最も支給金額が多い1級地-1の母子3人世帯でも支給金額260,350円しかなく、29万円よりも少ないです。
そのため「実際は29万円も貰えないのか?」と思うかもしれませんが、騙されてはいけません。
生活保護には全部で8つの扶助があります。
上表では、そのうちの2つの扶助しか記載されておらず、他の扶助も加えると実際の支給金額は更に増えます。
子どもが増えれば増えるほど生活保護費は増える
子どもが増えると、その分、食費等が必要になるため、生活扶助の支給金額も増えますが、それとは別に子どもいることによる加算と教育費が別途支給されるようになります。
まず始めに加算についてですが、世帯に子どもがいる場合、児童養育加算がつきます。
児童養育加算は対象児童の年齢と人数によって加算額が変わります。
3歳~小学校卒業までの第1子、第2子 10,190円
3歳~小学校卒業までの第3子以降 11,820円
中学校卒業まで 10,190円
※18歳に達した後、最初の3月31日までの間にある児童を第1子、第2子と数えます。
中学校3年生 第2子 加算額10,190円
中学校1年生 第3子 加算額10,190円
小学校5年生 第4子 加算額11,820円
児童養育加算の支給金額合計32,220円
解説:中学校1年生は第3子ですが、中学生のため10,190円です。
小学校5年生は第3子以降のため11,820円です。
次に教育費ですが、小学校から中学生までの間は教育扶助、高校生の間は生業扶助から教育費が支給されます。
教育扶助・生業扶助により基準額と学級費等として小学生は3,450円、中学生は5,870円、高校生は7,080円が対象となる子ども1人に付き、それぞれ月々の生活保護費に上乗せして支給されます。
また、教材代や給食費は実学が全て支給されますし、制服や体操服、カバン等の購入費として入学準備金、部活動をする場合は学習支援費が別途支給されます。
このように、子どもが増えるごとに、それぞれ上記の教育扶助、生業扶助が付きますし、子どもが成長すると、その分、食費等として支給される生活扶助も増額されます。
妊娠・出産を繰り返す生活保護受給者もいる
子どもを出産すると出産育児一時金として約40万円程度支給されますが、それでも出産費用が足りず、一般世帯の場合は自己負担分が生じます。
しかし、生活保護受給者の場合は、出産費用に掛かる費用は全額出産扶助から支給されます。
妊娠中に妊娠中毒症等の症状により、入院した場合の費用も全て医療扶助から支給されます。
さらに妊娠中については妊婦加算が、出産後については産婦加算も別途月々の生活保護費にプラスして支給されます。
1級地及び2級地 9,130円
3級地 7,760円
【妊娠6ヶ月以上の場合】
1級地及び2級地 13,790円
3級地 11,720円
3級地 7,210円
一般世帯であれば子どもが増えれば増える程、出産費用から大人になるまでの生活費や教育費の負担が増えるため、結婚しても子どもを産まない選択をする家庭が多いですが、生活保護受給者の場合、上記のとおり、出産費用は全額支給されるため、自己負担分は一切なく、それどころか子どもが増えれば増えるほど生活保護費の支給金額も増え、生活が豊かになることから、妊娠・出産を繰り返す生活保護受給者もいます。
シングルになると更に支給金額が増える
生活保護受給者の場合、シングルマザー・シングルファザーになると、母子加算が付いて支給金額が増えます。
そして、母子加算の支給金額は子どもの人数と住む場所によって変わります。
児童が2人の場合に加える額 3,900円
児童が3人以上1人増えるごとに加える額 2,340円
児童が2人の場合に加える額 3,600円
児童が3人以上1人増えるごとに加える額 2,200円
児童が2人の場合に加える額 3,300円
児童が3人以上1人増えるごとに加える額 2,000円
先程の最低生活保障水準の具体的事例をもう一度見てみましょう。
上表を見て明らかなとおり、同じ3人世帯でも夫婦子一人世帯の方が大人が多い分、食費等は掛かるはずなのに、母子3人世帯の方が支給金額が3万円以上も多くなります。
このようにシングルマザー・シングルファザーになると支給金額が増えることから、中にはわざと離婚する生活保護受給者もいます。
子どもが高校卒業をすると生活保護費が激減する
子どもの数が増えれば増えるほど支給金額が増えることから、新聞記事で取り上げられた母子家庭のように生活保護でも月29万円以上もらえるようになります。
そのため、一生懸命まじめに働くよりも、生活保護を受給した方がはるかに楽と言えます。
しかし、月29万円以上の支給金額が、ずっと続くわけではありません。
子どもが高校を卒業すると、就職せずに大学や専門学校に進学したとしても、生活保護を脱却することになるため、生活保護費の支給金額が激減します。
先程の最低生活保障水準の具体的事例をもう一度見てみましょう。
最終的には子どもたちが全員生活保護を脱却し、夫婦の場合は上記の高齢者夫婦世帯、シングルマザー・シングルファザーの場合は上記の高齢者単身世帯となります。
特にシングルマザー、シングルファザーの場合、落差が激しく、子どもがいる間は月29万円以上もらえてても、最終的には支給金額が131,680円と半分以下まで下がります。
一度上げてしまった生活水準を下げることは容易ではないため、生活保護費の使い方には注意が必要です。
生活保護受給者は本気で月29万円でも少ないと思っている
手取り月29万円以上と言うことは額面金額だと月37万円以上になるため、かなりの高給取りと言えます。
つまり、生活保護費が月29万円以上も、もらえている世帯は、贅沢な生活ができるくらいの金額が支給されていると言えます。
しかし、新聞記事で取り上げられた母子家庭の母親が月29万円もらっているのに生活が苦しいと訴えているように、生活保護受給者は冗談やネタとかではなく、本気で月29万円でも少ない金額しか支給されていないと思っています。
実際に私も、月に29万円近く支給されている母子世帯の方から「こんな金額だと生活ができない。もっと生活保護費を増やして欲しい」と相談を受けたことが何度もあります。
その理由は、生活保護受給者の多くは働いた経験がほとんどないことから、正社員や公務員は、もっとたくさんの給料をもらっていて、もっと贅沢をしていると勘違いしているからです。
実際は月に手取りで29万円以上も貰える一般世帯は少なく、かなり裕福な生活ができているのに、残念ながら、それに気づいていない世帯が大多数を占めています。
お金の使い道について助言はできるが指導はできない
子どもがいる間は月29万円以上も貰えて贅沢な生活ができますが、最終的には夫婦2人世帯もしくは単身世帯となり、生活保護費が10万円程度になることから、生活保護受給者に対してケースワーカーは、お金の使い道について指導するべきです。
ましてや増額された支給金額は子どもの教育費のためのお金なので、お酒やタバコ、パチンコ等のギャンブルに浪費しているようであれば注意するべきです。
しかし、生活保護費の使い道は生活保護受給者が自由に決められることになっているため、ケースワーカーはお金の使い道について助言はできても指導指示をすることはできません。
結果、生活保護受給者の子どもは教育を十分に受けることができず、大人になって新たな生活保護受給者となる負の連鎖が続き、親の方も一度上げてしまった生活水準を下げることができず、闇金等から借金をしてしまい、ただでさえ少ない生活保護費を闇金の利子の返済に充てる等の悲惨な生活を送ることになってしまいます。
まとめ
生活保護受給者は月額29万円も貰えるのか?また29万円以上もらっても苦しいと訴える理由等について、ご説明させていただきました。
上記をまとめると
- 生活保護の支給金額は世帯数と住む場所によって変わる
- 世帯数が増えるほど、都会に住むほど支給金額が増える
- 子どもが増えれば増えるほど、教育扶助、生業扶助、児童養育加算が付くため支給金額も増える
- 離婚等をしてシングルマザー・シングルファザーになると母子加算がついて支給金額が増える
- 月29万円以上もらえる世帯もあるが、もらえる期間は子どもたちが高校卒業するまで
- 生活保護受給者自身は冗談やネタとかではなく、本気で月29万円でも少ないと思っている
- 生活保護費は生活保護受給者が自由に使えるため、ケースワーカーはお金の使い道について助言はできても指導はできない
- 月29万円以上あっても最終的には支給金額が月10万円程度にまで激減するため、生活水準を上げすぎないように注意が必要
となります。
その他、生活保護に関する様々な疑問については、下記にまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
https://seikathuhogomanabou.com/category/qa/
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