子どもがいる世帯の場合、別れた夫もしくは妻に対して慰謝料や養育費を請求することができます。
では、生活保護受給者の場合、別れた夫もしくは妻に対して慰謝料や養育費を請求することはできるのでしょうか?
また、逆に生活保護受給者が別れた夫もしくは妻から慰謝料や養育費を請求された場合は月々の生活保護費から支払わなければいけないのでしょうか?
気になるところだと思います。
そこで、このページでは、生活保護受給者の慰謝料や養育費の取り扱いについて詳しくご説明したいと思います。
生活保護受給中は慰謝料や養育費をもらわなければいけない
生活保護は最後のセーフティネットと言われていることから、生活保護制度を利用する場合は、老齢、遺族、障害年金や扶養義務者からの援助等、利用できる制度や援助を生活保護よりも優先しなければいけません。
これを「他法他施策優先の原則」と言います。
この「他法他施策優先の原則」があるため、生活保護を受給中もしくは生活保護を申請する方は慰謝料や養育費をもらえる権利があるのであれば、生活保護よりも優先して慰謝料や養育費をもらうように努めなければいけません。
よく別れた夫もしくは妻と裁判をしてまで慰謝料や養育費を請求するのが面倒だからと言う理由で請求権を放棄しようとする方がいますが、この場合、ケースワーカーから指導を受けることになります。
そして、再三再四によるケースワーカーからの指導指示に従わない場合は、生活保護の廃止になる可能性もあるため、慰謝料や養育費は必ず請求しましょう。
請求した結果、別れた夫もしくは妻に支払い能力がない場合や自身に過失があり請求権がないと判明した場合は、それはそれで構いません。
結果はどうであれ、他法他施策優先の原則に従い、少しでも自立できるように行動することが重視されます。
DVなど特別な事情がある場合は慰謝料や養育費を請求しなくて良い
「他法他施策優先の原則」により、生活保護を受給する場合は、別れた夫もしくは妻に対して慰謝料や養育費を請求しなければいけません。
しかし、例外もあります。
それは、夫もしくは妻と別れた原因がDVによるものなど特別な事情がある場合は慰謝料や養育費を請求する権利があっても、請求しなくても良い場合があります。
その理由は、別れた夫もしくは妻からのDVにより、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)等を患った場合、慰謝料や養育費等を請求することで精神疾患の症状が悪化する可能性があるからです。
なお、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)等の症状がない場合は、仮にDVが原因で別れた場合でも、住所秘匿を申し出れば相手に住所を知られずに請求することができるので、慰謝料や養育費を請求しなければいけません。
慰謝料や養育費は収入認定されるため生活保護費は減額される
別れた夫もしくは妻に対して慰謝料や養育費を請求した結果、慰謝料や養育費が支払われるようになった場合の取り扱いですが、2通りあります。
まず、慰謝料や養育費が生活保護の最低生活費を超えている場合は、その慰謝料や養育費だけで生活できることから、生活保護は廃止となります。
次に、慰謝料や養育費が生活保護の最低生活費以下の場合は、生活保護をそのまま継続して受給することができますが、慰謝料や養育費は収入認定され、生活保護費が減額されます。
例えば最低生活費が10万円、毎月振り込まれる慰謝料や養育費が4万円の場合、毎月支給される生活保護費は最低生活費10万円から慰謝料や養育費4万円を差し引いた6万円になります。
最低生活費10万円-慰謝料や養育費4万円=支給額6万円
給料収入の場合は、基礎控除等があるため、生活保護費にプラスして毎月使えるお金が増えますが、慰謝料や養育費の場合は全額収入認定するため、慰謝料や養育費をもらえるようになっても月々に使えるお金は全く変わらないため、生活保護受給者自身には、あまりメリットはありません。
とは言え、生活保護の原資は税金ですし、慰謝料や養育費を請求しなければ生活保護を続けることもできないため、慰謝料や養育費の請求はしなければいけません。
慰謝料や養育費を申告してなかった場合は全額徴収金となる
裁判等の手続きをして、やっとの思いでもらえるようになった慰謝料や養育費を収入認定されたくないからと、ケースワーカーに報告しないあきれた生活保護受給者もいます。
慰謝料や養育費をケースワーカーに申告しなかった場合、不正受給になります。
不正受給となった場合、受け取った慰謝料や養育費は全額徴収金となるため、毎月の生活保護費から少しずつ徴収されてしまいます。
つまり、月々に使える生活費が少なくなってしまいます。
ただでさえ少ない生活保護費から、さらに減額されてしまうようになってしまうため、慰謝料や養育費をもらうようになったら、必ず担当ケースワーカーに報告しましょう。
生活保護受給中は慰謝料や養育費を支払わなくて良い
次に、逆に生活保護受給中に別れた夫もしくは妻から慰謝料や養育費を請求された場合の取り扱いについて、ご説明します。
もしも、生活保護受給中に慰謝料や養育費を請求されたとしても、慰謝料や養育費を支払う必要はありません。
なぜなら、生活保護費は生活する上で必要最低限のお金しか支給されておらず、支払い能力がないからです。
ちなみに、同じ理由で借金の返済や税金の滞納分についても支払う必要はありません。
ただし、慰謝料や養育費を支払う必要がなくなったわけではありません。
生活保護を辞めた場合等は、慰謝料や養育費を支払う必要が出てきます。
あくまで生活保護受給期間中は支払わなくて良いと言うだけなので、注意しましょう。
まとめ
生活保護でも慰謝料や養育費はもらえるのか?また、慰謝料や養育費を請求された場合はどうなるのか?について、ご説明させていただきました。
上記をまとめると
- 生活保護には「他法他施策優先の原則」があるため、別れた夫もしくは妻に対して慰謝料や養育費を請求しなければいけない
- 別れた原因がDV等、特別な事情がある場合は慰謝料や養育費を請求しなくて良い場合もある
- 慰謝料や養育費をもらった場合は全額収入認定され、生活保護費の支給金額が減額される
- 慰謝料や養育費の収入を申告しなかった場合、不正受給となるため、全額徴収金として徴収される
- 慰謝料や養育費を請求されても、生活保護受給中は支払い能力がないため、支払わなくて良い
となります。
その他、生活保護に関する様々な疑問については、下記にまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
https://seikathuhogomanabou.com/category/qa/
コメント