生活保護を受給している方にとって、「打ち切り」は大きな不安要素です。
「どんな場合に打ち切られるのか」「突然打ち切られることはあるのか」「打ち切られた後はどうすればいいのか」といった疑問や心配を抱えている方も多いでしょう。
本記事では、生活保護の打ち切りに関する正確な情報を、法的根拠や具体例を交えながら詳しく解説します。
打ち切りの理由、手続きの流れ、対処法、そして再申請の方法まで、包括的に理解できる内容となっています。

生活保護の打ち切りとは

打ち切り(廃止)の定義
生活保護における「打ち切り」は、正式には「生活保護の廃止」と呼ばれます。

これは、受給者が生活保護を必要としなくなった、または受給要件を満たさなくなったと判断された場合に、保護の支給を停止することを指します。

打ち切りには大きく分けて2つのパターンがあります:
- 適正な廃止:収入増加や資産取得など、正当な理由による廃止
- 不適切な廃止:法的根拠が不十分な廃止
停止と廃止の違い
生活保護には「停止」と「廃止」という2つの措置があり、混同しやすいため区別が重要です。
保護の停止
- 一時的に支給を止める措置
- 保護受給者としての地位は継続
- 状況が変われば再開される
- 例:入院により医療費のみ必要な場合
保護の廃止(打ち切り)
- 完全に保護を終了する措置
- 保護受給者としての地位を失う
- 再度必要になれば新たに申請が必要
- 例:就労により収入が最低生活費を上回った場合

生活保護が打ち切られる主な理由

1. 収入の増加
最も一般的な打ち切り理由は、世帯収入が最低生活費を上回ることです。

具体例
- 就職して安定した収入を得られるようになった
- パート・アルバイトの勤務時間が増えて収入が増加した
- 年金の受給が開始された
- 養育費や仕送りを受けるようになった
注意点 収入が最低生活費をわずかに上回っただけでは、すぐに打ち切りにならないケースもあります。就労に伴う経費控除(勤労控除)が適用されるため、実際の手取り額と最低生活費を慎重に比較する必要があります。



2. 資産の保有・取得
生活保護の要件として、活用できる資産がないことが求められます。
打ち切りとなる資産の例
- 不動産の相続や購入
- まとまった預貯金の保有(地域や世帯状況により異なるが、概ね50万円以上)
- 生命保険の解約返戻金
- 自動車の保有(通勤・通院などで認められている場合を除く)
- 有価証券や貴金属
注意点 相続が発生した場合は、速やかにケースワーカーに報告する必要があります。報告を怠ると不正受給とみなされる可能性があります。


3. 扶養義務者からの援助
親族からの経済的援助が可能になった場合も、打ち切り理由となります。
具体的な状況
- 別居していた子どもが同居し、扶養できるようになった
- 親族から定期的な仕送りを受けられるようになった
- 配偶者の収入が回復した
注意点 扶養義務者に扶養の可能性があるだけでは打ち切り理由にはなりません。実際に援助が行われること、または確実に援助が見込まれることが要件です。


4. 転居による管轄外への移動
別の自治体に転居した場合、転居先の福祉事務所に保護が引き継がれます。
ただし、以下の場合は問題となることがあります。
- 無断での転居
- ケースワーカーの許可なしでの引っ越し
- 生活保護の要件を満たさない地域への転居

5. 不正受給の発覚
以下のような不正が発覚した場合、即時に打ち切りとなる可能性があります。
- 収入を隠していた
- 資産を隠していた
- 虚偽の申告をしていた
- 同居人の存在を隠していた
不正受給の場合、打ち切りだけでなく、返還請求や刑事告発の対象となることもあります。


6. 指導指示違反
福祉事務所からの指導や指示に従わない場合も、打ち切り理由となります。
指導指示の例
- 就労活動を行うよう指示されたが、正当な理由なく従わない
- 健康診断や医療機関の受診を拒否する
- ケースワーカーの訪問調査を繰り返し拒否する
- 家計簿の提出など、求められた書類を提出しない
重要なポイント ただし、病気や障害など正当な理由がある場合は考慮されます。指導に従えない事情がある場合は、ケースワーカーに誠実に説明することが重要です。


打ち切りの手続きと流れ

事前通知の原則
生活保護法では、保護の廃止には事前通知が必要とされています。
突然、何の予告もなく打ち切られることは原則としてありません。
標準的な流れ
- 廃止の予告
- ケースワーカーから口頭または文書で通知
- 廃止の理由の説明
- おおむね1~2ヶ月前に通知されることが多い
- 調査・確認期間
- 収入状況の確認
- 資産調査
- 本人への聞き取り
- 正式な廃止決定
- 福祉事務所長による決定
- 書面による通知(廃止決定通知書)
- 理由の明記
- 廃止の実施
- 指定された日から保護費の支給停止
- 医療券などの使用不可
廃止決定通知書の内容
廃止決定通知書には、以下の内容が記載されます。
- 廃止の年月日
- 廃止の理由(法的根拠を含む)
- 不服がある場合の審査請求の方法
- 審査請求の期限(通知を受けた日の翌日から3ヶ月以内)
この通知書は重要な書類なので、必ず保管してください。
緊急廃止のケース
例外的に、以下のような場合は即時廃止となることがあります。
- 本人が辞退届を提出した
- 所在不明になった
- 死亡した
- 明らかな不正受給が判明した

打ち切りに納得できない場合の対処法

1. ケースワーカーに説明を求める
まず、廃止の理由について詳しい説明を求めましょう。誤解や事実誤認があれば、正確な情報を伝えることで決定が変わる可能性があります。
確認すべき点
- 廃止の具体的な理由
- 根拠となる法律や基準
- 収入や資産の計算方法
- 考慮されていない事情はないか
2. 審査請求の手続き
廃止決定に不服がある場合、都道府県知事に対して審査請求ができます。
審査請求の流れ
- 請求書の作成
- 廃止決定通知を受けた日の翌日から3ヶ月以内
- 福祉事務所または都道府県庁で様式を入手
- 不服の理由を具体的に記載
- 請求書の提出
- 福祉事務所経由で提出
- 郵送も可能
- 審理
- 都道府県の審査会による審理
- 必要に応じて本人からの聞き取り
- 裁決
- 認容(廃止決定の取り消し)
- 棄却(廃止決定の維持)
審査請求中の生活
審査請求を行っても、原則として保護は打ち切られたままです。生活に困窮する場合は、生活福祉資金貸付制度などの利用を検討します。
3. 再審査請求と行政訴訟
審査請求で納得できない結果だった場合
- 再審査請求:厚生労働大臣に対して請求
- 行政訴訟:裁判所に処分の取り消しを求める
これらの手続きは専門的なので、弁護士への相談をおすすめします。
4. 支援団体・弁護士への相談
以下のような専門家や団体に相談できます。
法テラス
- 経済的に余裕のない方への法律相談
- 弁護士費用の立替制度
生活保護問題対策全国会議
- 生活保護に関する専門的な支援
- 弁護士の紹介
地域の法律事務所
- 生活保護事件に詳しい弁護士
- 無料相談を実施している事務所も
打ち切り後の生活と再申請

打ち切り後に利用できる制度
生活保護が打ち切られた後も、他の社会保障制度を利用できる場合があります。
生活困窮者自立支援制度
- 住居確保給付金(家賃補助)
- 就労準備支援
- 家計改善支援
- 一時生活支援
社会福祉協議会の貸付制度
- 生活福祉資金貸付
- 緊急小口資金
- 総合支援資金
国民健康保険
- 生活保護廃止後は国民健康保険に加入
- 保険料の減免制度もあり
生活保護の再申請
打ち切り後、再び生活に困窮した場合は、改めて生活保護を申請できます。
再申請のポイント
- 状況の変化を明確に説明
- 前回廃止後、どのように状況が変わったか
- 収入が減少した理由
- 資産がなくなった経緯
- 必要書類の準備
- 収入証明(給与明細、年金通知など)
- 預貯金通帳のコピー
- 賃貸契約書
- 医師の診断書(病気の場合)
- 前回の廃止理由との関係
- 前回が適正廃止だった場合、新たな申請が認められやすい
- 不正受給で廃止された場合、厳格な審査がある
再申請の審査期間 初回申請と同様、原則14日以内(最長30日以内)に決定されます。
就労自立給付金の活用
就労により生活保護が廃止される場合、「就労自立給付金」を受け取れることがあります。
支給要件
- 安定した就労により保護廃止となった
- 保護受給中に就労していた期間がある
- 申請日が廃止日から2年以内
支給額 保護受給中に収入認定された就労収入額の範囲内で、単身世帯で最大10万円程度
この制度を活用することで、保護廃止後の生活の立ち上がりを支援できます。

打ち切りを防ぐための心構え

1. 誠実な報告を心がける
生活保護を適正に受給し続けるために最も重要なのは、誠実な報告です。
報告すべき事項
- 収入の変化(アルバイト収入、臨時収入など)
- 資産の変化(相続、預貯金の増加など)
- 世帯構成の変更(同居人の出入りなど)
- 住所の変更
- 就労状況の変化
報告のタイミング 変化が生じたら速やかに、遅くとも次回の定期報告時には必ず報告しましょう。

2. ケースワーカーとの良好な関係
ケースワーカーは、受給者の自立を支援するパートナーです。
良好な関係を築くポイント
- 訪問調査には協力的に対応する
- 指導や助言を真摯に受け止める
- 困ったことは早めに相談する
- 約束や期限は守る
3. 自立に向けた努力
生活保護の目的は「自立の助長」です。可能な範囲で自立に向けた努力をすることが重要です。
具体的な行動
- 健康管理に努める
- 就労可能であれば求職活動を行う
- 職業訓練やスキルアップに取り組む
- 家計管理を適切に行う
4. 制度の正しい理解
生活保護制度を正しく理解することで、不要なトラブルを避けられます。
- 権利と義務を理解する
- 制度の変更や新しい施策を把握する
- 不明点はケースワーカーに質問する
よくある質問

Q: 収入が少し増えただけで打ち切られますか?
A: 勤労控除があるため、働いて収入が増えてもすぐには打ち切られません。収入が最低生活費を継続的に上回る状態になった場合に廃止が検討されます。
Q: 打ち切りの予告なしに突然廃止されることはありますか?
A: 原則として事前通知があります。ただし、所在不明や明らかな不正受給の場合は例外的に即時廃止となることがあります。
Q: 一度打ち切られたら二度と受給できませんか?
A: そんなことはありません。再び生活に困窮した場合は、改めて申請できます。前回が適正な廃止であれば、新たな申請も公正に審査されます。
Q: 審査請求すると不利になりませんか?
A: 審査請求は法律で認められた権利であり、請求したことで不利益を受けることはありません。
まとめ

生活保護の打ち切りは、受給者にとって大きな転機となります。
しかし、適切な知識と対処法を持っていれば、不当な打ち切りを防いだり、打ち切り後の生活を立て直したりすることができます。
重要なポイント
- 打ち切りには明確な法的根拠が必要
- 事前通知が原則で、突然の廃止は稀
- 不服がある場合は審査請求が可能
- 誠実な報告とケースワーカーとの協力関係が重要
- 打ち切り後も再申請や他の支援制度がある
最後に
生活保護は「最後のセーフティネット」です。
本当に困ったときには遠慮なく利用し、状況が改善したら自立を目指す。そうした適切な利用が、制度の本来の趣旨に沿った形です。


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