「生活保護の手取りはいくらもらえる?」「家賃込みでどれくらい?」「実際に生活できる金額?」生活保護の申請を検討している方、または受給中の方が最も気になるのが、実際の「手取り額」です。
生活保護の支給額は、世帯の状況(人数、年齢、住んでいる地域など)により大きく異なります。厚生労働省の最新基準(2025年度)では、東京都区部の単身世帯で生活扶助が月約8万円、住宅扶助が月約5万3,700円、合計で月約13万3,700円が標準的な支給額となります。
本記事では、世帯別の具体的な支給額、計算方法、加算制度、さらには実際の生活費の内訳まで、厚生労働省の基準と実務に基づいて徹底解説します。
この記事でわかること
- 生活保護の「手取り」の定義
- 世帯別の具体的な支給額(単身・母子・高齢者など)
- 支給額の計算方法と構成要素
- 加算制度で増える金額
- 地域(級地)による違い
- 実際の生活費の内訳例
生活保護の「手取り」とは

手取りの定義
一般的な「手取り」との違い 会社員の給料では、「手取り」は税金や保険料を引いた後の実際に受け取れる金額を指します。
生活保護の場合 生活保護では、税金や社会保険料の負担がないため、支給される金額がそのまま「手取り」となります。
支給される保護費の種類
生活保護の支給額(手取り)は、以下の扶助の合計です。

1. 生活扶助 食費、被服費、光熱費など、日常生活に必要な費用。

2. 住宅扶助 家賃。

3. その他の扶助
- 教育扶助(義務教育の子どもがいる場合)
- 医療扶助(医療費、無料)
- 介護扶助(介護サービス費、無料)
4. 各種加算
手取りの計算式 手取り = 生活扶助 + 住宅扶助 + 教育扶助 + 各種加算 – 収入認定額
世帯別の具体的な支給額(手取り)

厚生労働省の基準(2025年度)に基づく、世帯別の標準的な支給額を紹介します。
単身世帯(東京都区部、1級地-1)
年齢別の生活扶助
20~40歳の単身者
- 生活扶助:約8万円
- 住宅扶助:5万3,700円(上限)
- 合計:約13万3,700円
60~69歳の高齢単身者
- 生活扶助:約7万5,000円
- 住宅扶助:5万3,700円(上限)
- 合計:約12万8,700円
70歳以上の高齢単身者
- 生活扶助:約7万円
- 住宅扶助:5万3,700円(上限)
- 合計:約12万3,700円
注意点 住宅扶助は実際の家賃額です。上限より安い家賃の場合、その金額のみ支給されます。


母子世帯(東京都区部、母30歳、子8歳・5歳)
支給額の内訳
- 生活扶助:約12万円
- 母子加算:約2万3,000円
- 児童養育加算:2万5,000円(第1子1万円+第2子1万円+3歳未満5,000円)
- 住宅扶助:6万9,800円(上限、2人世帯)
- 合計:約23万7,800円
義務教育費 別途、教育扶助として、学用品費、給食費などが支給されます。

2人世帯(夫婦、東京都区部)
夫婦とも60~69歳
- 生活扶助:約12万円
- 住宅扶助:6万9,800円(上限)
- 合計:約18万9,800円
夫婦とも40~59歳
- 生活扶助:約13万円
- 住宅扶助:6万9,800円(上限)
- 合計:約19万9,800円
3人世帯(夫婦+子1人、東京都区部)
夫35歳、妻30歳、子8歳
- 生活扶助:約16万円
- 児童養育加算:1万円
- 住宅扶助:7万5,000円(上限)
- 合計:約24万5,000円
地方都市の例(2級地-1、例:札幌市)
単身世帯、40歳
- 生活扶助:約7万円
- 住宅扶助:3万6,000円(上限)
- 合計:約10万6,000円
母子世帯(母30歳、子8歳・5歳)
- 生活扶助:約10万5,000円
- 母子加算:約2万1,000円
- 児童養育加算:2万5,000円
- 住宅扶助:4万2,000円(上限、2人世帯)
- 合計:約19万3,000円
最低保護基準の地域(3級地-2、例:地方の小規模自治体)
単身世帯、40歳
- 生活扶助:約6万5,000円
- 住宅扶助:約3万円(上限)
- 合計:約9万5,000円
支給額の計算方法

生活保護の支給額がどのように計算されるか、詳しく説明します。

生活扶助の計算式
生活扶助 = 第1類費 + 第2類費 + 各種加算
第1類費(個人単位の経費) 食費、被服費など、個人ごとに必要な経費。年齢により金額が異なります。
年齢別の第1類費(東京都区部、1級地-1)
- 0~2歳:約2万2,000円
- 3~5歳:約2万7,000円
- 6~11歳:約3万5,000円
- 12~19歳:約4万3,000円
- 20~40歳:約4万1,000円
- 41~59歳:約3万9,000円
- 60~69歳:約3万7,000円
- 70歳以上:約3万5,000円
第2類費(世帯単位の経費) 光熱費、家具什器費など、世帯全体で必要な経費。世帯人数により金額が異なります。
世帯人数別の第2類費(東京都区部、1級地-1)
- 1人世帯:約4万円
- 2人世帯:約4万5,000円
- 3人世帯:約5万円
- 4人世帯:約5万5,000円
計算例:単身世帯、40歳、東京都区部
- 第1類費:4万1,000円
- 第2類費:4万円
- 生活扶助:約8万1,000円
住宅扶助の上限額
級地・地域・世帯人数により異なる
主要都市の住宅扶助上限額(単身世帯)
- 東京都区部(1級地-1):5万3,700円
- 大阪市(1級地-1):4万2,000円
- 名古屋市(1級地-2):3万9,000円
- 札幌市(2級地-1):3万6,000円
- 福岡市(2級地-1):3万7,000円
2人世帯の上限額(例:東京都区部)
- 6万9,800円
3人以上世帯の上限額(例:東京都区部)
- 7万5,000円
加算制度
特定の条件を満たす場合、以下の加算が支給されます。
1. 母子加算 ひとり親世帯に支給。
金額
- 1人親世帯:約2万1,000円~2万3,000円(子どもの人数による)

2. 障害者加算 障害者手帳を持つ方に支給。
金額
- 1級・2級:約2万6,000円
- 3級:約1万7,000円

3. 児童養育加算 中学生までの子どもがいる世帯に支給。

金額
- 第1子・第2子:各1万円
- 第3子以降:各1万円
- 3歳未満の子:追加5,000円
4. 妊産婦加算 妊娠中または出産後6か月以内の女性に支給。
金額
- 約9,000円

5. 冬季加算 寒冷地で、11月~3月に支給。
金額
- 地域と世帯人数により異なる
- 例:札幌市、単身世帯で月約1万円~1万8,000円

地域(級地)による違い

生活保護の支給額は、住んでいる地域により大きく異なります。
級地制度とは
1級地~3級地 生活費の地域差を考慮し、全国を1級地(生活費が高い)~3級地(生活費が低い)に分類しています。
さらに細分化 各級地は、-1と-2に細分化されています(例:1級地-1、1級地-2)。
級地別の支給額の違い
1級地-1(東京都区部など)
- 単身、40歳:約13万3,700円

1級地-2(横浜市、川崎市など)
- 単身、40歳:約13万円
2級地-1(札幌市、福岡市など)
- 単身、40歳:約10万6,000円

2級地-2(地方の中核市)
- 単身、40歳:約10万円
3級地-1(地方の小都市)
- 単身、40歳:約9万8,000円
3級地-2(地方の小規模自治体)
- 単身、40歳:約9万5,000円
差額 1級地-1と3級地-2では、月約4万円の差があります。

実際の生活費の内訳例

支給された保護費(手取り)で、実際にどのような生活ができるのか、内訳例を紹介します。
単身世帯(東京都区部、40歳、手取り約13万3,700円)
収入
- 生活扶助:8万1,000円
- 住宅扶助:5万3,700円(実家賃5万円と仮定、残り3,700円は生活費に)
- 実質的な生活費:約8万4,700円
支出の内訳
- 家賃:5万円(住宅扶助から)
- 食費:2万5,000円
- 光熱費(電気・ガス・水道):1万円
- 通信費(携帯電話):3,000円
- 日用品費:5,000円
- 交通費:3,000円
- 雑費:5,000円
- 合計:約8万1,000円
- 余剰:約3,000円
医療費・介護費 医療扶助により、医療費は無料です。

母子世帯(東京都区部、母30歳、子8歳・5歳、手取り約23万7,800円)
収入
- 生活扶助:12万円
- 母子加算:2万3,000円
- 児童養育加算:2万5,000円
- 住宅扶助:6万9,800円(実家賃6万5,000円と仮定、残り4,800円は生活費に)
- 教育扶助:約5,000円(学用品費など)
- 実質的な生活費(家賃除く):約17万2,800円
支出の内訳
- 家賃:6万5,000円(住宅扶助から)
- 食費:5万円
- 光熱費:1万5,000円
- 通信費:5,000円
- 日用品費:1万円
- 子どもの教育費:1万円(教育扶助でカバー)
- 交通費:5,000円
- 雑費:1万円
- 合計:約16万円
- 余剰:約1万2,800円
高齢単身世帯(地方都市、70歳、手取り約10万円)
収入
- 生活扶助:6万5,000円
- 住宅扶助:3万5,000円(実家賃3万円と仮定、残り5,000円は生活費に)
- 実質的な生活費:約7万円
支出の内訳
- 家賃:3万円(住宅扶助から)
- 食費:2万円
- 光熱費:8,000円
- 通信費:2,000円
- 日用品費:5,000円
- 交通費:2,000円
- 雑費:5,000円
- 合計:約6万2,000円
- 余剰:約8,000円
収入がある場合の手取り

アルバイトや年金など、収入がある場合の手取り計算を説明します。


収入認定と基礎控除
収入認定 収入がある場合、その金額が保護費から差し引かれます。

基礎控除 ただし、就労収入には「基礎控除」があり、一定額は手元に残ります。
基礎控除額(月収別)
- 月収2万円以下:約1万5,000円
- 月収2万~3万円:約1万8,000円
- 月収5万円:約2万3,000円
- 月収8万円:約2万6,000円
計算例:月収5万円の就労収入がある単身者(東京都区部、40歳)
保護費(収入がない場合)
- 生活扶助+住宅扶助:13万3,700円
就労収入
- 月収:5万円
- 基礎控除:約2万3,000円
- 必要経費(交通費など):約5,000円
- 収入認定額:5万円 – 2万3,000円 – 5,000円 = 2万2,000円

実際の手取り
- 保護費:13万3,700円 – 2万2,000円 = 11万1,700円
- 就労収入:5万円
- 合計手取り:16万1,700円
就労により、約2万8,000円(基礎控除+必要経費)が手元に多く残ります。
よくある質問(Q&A)

Q1: 生活保護の手取りは、働いている人と比べてどうですか?
A: 最低賃金で働く場合と比較すると、同程度またはやや少ない金額です。例えば、東京都の最低賃金(1,163円、2024年)でフルタイム(月160時間)働くと、手取りは約15万円程度です。生活保護の単身世帯(東京都区部)の手取り約13万3,700円は、これより少ないですが、医療費が無料などの利点があります。
Q2: 手取りは毎月変わりますか?
A: 基本的には毎月同額です。ただし、収入の変動、世帯構成の変化、加算の追加・削除(冬季加算など)により、変動することがあります。

Q3: 手取りを増やす方法はありますか?
A: 就労により収入を得ることが最も確実です。基礎控除により、就労収入の一部が手元に残ります。また、該当する加算(母子加算、障害者加算など)が適用されているか確認してください。

Q4: 地方と都市部、どちらが生活しやすいですか?
A: 一概には言えません。都市部は手取りが多いですが、物価も高いです。地方は手取りが少ないですが、物価も安い傾向があります。ただし、級地による差は物価差を完全には反映していないため、都市部の方がやや生活しやすい傾向があります。
Q5: 子どもが18歳になったら、手取りはどうなりますか?
A: 児童養育加算(中学生まで)は終了します。高校生であれば、教育扶助が支給されます。18歳(高校卒業)を超えると、独立した世帯とみなされるか、世帯分離が行われ、手取りが減少します。

Q6: 年金を受給していますが、生活保護の手取りはどうなりますか?
A: 年金額が保護費より少ない場合、差額が支給されます。例えば、保護費が月13万円、年金が月6万円の場合、差額の7万円が保護費として支給され、合計手取りは13万円です。


Q7: 手取りの中から貯金してもいいですか?
A: 原則として、生活保護費は日々の生活維持のためのものであり、貯金は認められていません。ただし、就労自立給付金(就労収入の一部を貯蓄)など、例外的に認められる貯蓄もあります。


Q8: 手取りが少なすぎて生活できません。増額してもらえますか?
A: 生活保護の支給額は、法律と基準に基づいて算定されます。個別の事情による増額は原則としてできません。ただし、該当する加算が適用されているか確認し、一時扶助制度(突発的な出費)やフードバンクなどの支援を活用してください。

まとめ:生活保護の手取りは世帯により大きく異なる

本記事の重要なポイントをまとめます。
手取りの定義
- 支給される保護費の合計
- 税金・社会保険料の負担なし
世帯別の手取り(東京都区部)
- 単身、40歳:約13万3,700円
- 母子(母30歳、子8歳・5歳):約23万7,800円
- 高齢単身、70歳:約12万3,700円
- 夫婦、60~69歳:約18万9,800円
計算方法
- 生活扶助(第1類費+第2類費+加算)
- 住宅扶助
- その他の扶助
加算制度
- 母子加算、障害者加算、児童養育加算、冬季加算など
地域(級地)による違い
- 1級地-1(東京都区部)と3級地-2(地方小規模自治体)で約4万円の差
実際の生活費
- 食費、光熱費、通信費、日用品費など
- 医療費は無料
就労収入がある場合
- 基礎控除により一部が手元に残る
- 就労により総手取りが増加
最後に
生活保護の手取りは、世帯の状況(人数、年齢、地域など)により大きく異なります。最も重要なのは、自分の世帯に適用される支給額を正確に把握することです。
支給額について不明な点がある場合、または該当する加算が適用されていない可能性がある場合は、ケースワーカーに確認してください。
生活保護は、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度です。適切に活用し、生活を立て直し、可能であれば自立を目指しましょう。

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