生活保護の受給が始まると、自立に向けた取り組みをする必要があります。
病気がある人は、まず治療に専念する必要がありますが、病気の状態が軽度の場合や健康な場合は、経済的な自立に向けて就職活動をしなければいけません。
とは言え、いきなり正社員や派遣社員としてバリバリ働くことは難しいため、まずはパート・アルバイトから始めることになります。
しかし、ケースワーカーから働くように指導指示を受けても、働くことに不安を感じている生活保護受給者の方も多いと思います。
そこで、このページでは生活保護受給者がパート・アルバイトをするうえで必要な知識やあらゆる疑問にお答えします。
パート・アルバイトを始めても生活保護は継続できる
生活保護の受給条件は非常にシンプルで「世帯の収入が最低生活費以下であること」です。
そのため、働いて給料収入があったとしても、その世帯の収入が最低生活費以下であれば、働きながら生活保護を受給することは可能です。
当然、パート・アルバイトの収入であれば、最低生活費を超えることは難しいため、パート・アルバイトを始めたからと言って、すぐに生活保護がなくなることはありません。
パート・アルバイトでも収入申告をする必要がある
パート・アルバイトを始めたら、どんなに少額のものでも必ず担当ケースワーカーに収入申告をしましょう。
収入申告をすることで、毎月の生活費が増えると言うメリットがあります。
逆にたとえ少額でも収入申告をしなければ、それは不正受給となるため、ペナルティが発生します。
収入は必ずバレるため、ハッキリ言って隠すデメリットは多数ありますがメリットがはゼロです。
収入申告をすることで毎月の生活費が増える
パート・アルバイト等、働いて得た給料収入は、その他の収入と違い、きちんと収入申告をすれば収入認定額から交通費等の必要経費を差し引くことや各種控除を受けることができます。
給料収入だけ、このような取扱いをする理由は1.勤労に伴う必要経費の補填と2.勤労意欲の増進・自立助長をするためです。
つまり、「働いたってどうせ無駄」と思わせないように、国も考えていると言うことです。
必要経費については、そこまでお得感を感じにくいですが、各種控除については、パート・アルバイト等で働いて得た給料収入があった方が生活保護費のみで生活するよりも、月々に使えるお金も増加するため保護脱却に至らなくても働いた方が絶対にお得です。
最低生活費10万円-(給与収入63,000円-基礎控除20,000円)=57,000円
支給額57,000円+給与収入63,000円=12万円
上記の例の場合、働かない場合と比べて月に使えるお金が20,000円増えます。
特に20代、30代の若い世代の方で、生活保護を受給している人は、生活保護費だけでは日々の生活費が全然足りないと思うので、まずは少額でも良いので、パート・アルバイトを始めるとメリットを実感できると思います。
いくらまで稼ぐことができるのか?
パート・アルバイトで働いて毎月の生活費を増やしたいけど、生活保護を続けたい!と言う方は多いと思います。
そこで問題になるのが「いくらまで稼ぐことができるのか?」ですが、世帯収入が最低生活費以下であれば生活保護を続けることが可能です。
最低生活費は8つある扶助のうち
・生活扶助
・住宅扶助
・教育扶助
・介護扶助
・医療扶助
・生業扶助
に加算額を加えて算出します。
=最低生活費
※生活保護費の扶助には、他にも葬祭扶助、出産扶助がありますが、最低生活費を算出するときには使いません。
そして、最低生活費から児童手当等の収入があれば、それらの収入を引いた金額が毎月の支給日に支給されている生活保護費です。
つまり、毎月支給される生活保護費以内の給料収入であれば、パート・アルバイトで稼いでも生活保護を受け続けることが可能です。
もちろん、夫婦共働きであったとしても同様です。
となるため、上記の場合、世帯の収入が20万円以下なら生活保護に該当します。
世帯の収入で見るため、例えばパート・アルバイトによる収入が夫8万円、妻6万円あっても、
世帯収入14万円<最低生活費20万円
となるので生活保護は継続されます。
パート・アルバイト先には生活保護はバレない
生活保護を受給していることは、できるだけ周りの人に知られたくないので、バレないか心配だと思います。
安心してください。
生活保護受給中であることを自分から話さない限り生活保護受給中であることが会社にバレることはありません。
仮に会社の人が「○○さんは生活保護受給中でしょうか?」と福祉事務所に尋ねてきたとしても、個人情報のため福祉事務所が答えることは絶対にありません。
もしも周りの人が「福祉事務所の人が生活保護って答えた!」と言う人がいても、その反応を見て生活保護を受給しているかどうか判断しようとしているだけなので無視してください。
ただし、給料収入を申告しなかったり、過小申告をするなどの不正受給の疑いが発生した場合、ケースワーカーがパート・アルバイト先に調査に行くことがあります。
そうなると、生活保護を受給中であることが職場の仲間にバレてしまうため、職場の仲間にバレたくないのであれば、絶対に収入申告はキチンとしましょう。
収入申告をしないと不正受給となり返還が必要
パート・アルバイトで得た給料収入の収入申告をしない方が「生活保護費満額+給料収入」になるから、お得なんじゃないの?と悪いことを考える人が中にはいますが、絶対にやめてください。
パート・アルバイトで得た給料収入の収入申告をしなければ、どれだけ少額であっても生活保護の不正受給となります。
生活保護の不正受給となった場合、基礎控除等の各種控除を受けることができますが、徴収金となった場合、各種控除は一切受けることができません。
毎月キチンとパート・アルバイトで得た給料収入を申請していれば、給料全額が控除され、6ヶ月で90,000円も生活保護費に加えて生活することができます。
しかし、未申告であれば、各種控除は一切受けられず、パート・アルバイトで得た90,000円全額を徴収金として、返還しなければいけません。
このように、不正受給になると損をするため、パート・アルバイトをしたら収入申告するべきです。
「いやいやバレなければ、大丈夫!!」と思ったら大間違いです。
ケースワーカーは生活保護法第29条を根拠に年間の収入について調査をする権限があります。
そして、毎年必ず収入調査をしていますので、パート・アルバイトをしていることを隠そうと思っても必ずバレます。
100%バレるため、パート・アルバイトをしていることを隠すだけ無駄ですし、損をするだけなので、パート・アルバイトを始めたら必ず申告しましょう。
また、不正受給の疑いがあればパート・アルバイト先にも調査が行くため、生活保護を受給中であることが職場の仲間にバレてしまいます。
そうなると働きづらくもなるため、収入申告は必ずしましょう。
高校生のパート・アルバイトも収入申告の対象
高校生(未成年者)のパート・アルバイト代は家に入れさせずに全てお小遣いにしている家庭が多いため、「高校生(未成年者)が一生懸命働いたバイト代を収入認定するなんておかしい!」と言われることが多々ありますが、それは自立している家庭の話です。
生活保護は親だけが受けているわけではありません。
世帯員全員が生活保護受給者です。
高校生に限らず、中学生も小学生も未就学児もそうです。
生まれてきたばかりの子どもも全員生活保護受給者です。
そして、世帯員全員で生活保護から脱却できるように(自立できるように)努力する必要があります。
そのため高校生(未成年者)のパート・アルバイト代も収入申告する必要があります。
生活保護法上、高校生のパート・アルバイト代も収入申告しなければいけませんが、代わりに優遇措置として、高校生(未成年者)がパート・アルバイトをした場合は、特別な控除があります。
それは、「未成年者控除」です。
まずは、大人がパート・アルバイトで働いた事例を見てましょう。
最低生活費10万円-(給与収入63,000円-基礎控除20,000円)=57,000円
支給額57,000円+給与収入63,000円=12万円
上記のように基礎控除がある分、働かない場合と比べて月に使えるお金が20,000円増えます。
そして、もしも、上記の例で働いたのが高校生(未成年)の場合の事例を見てみましょう。
支給額68,600円+給与収入63,000円=131,600円
基礎控除に加えて未成年者控除が加わるため月に使えるお金が31,600円増えます。
このように、高校生(未成年)がパート・アルバイトで働いた分を考慮するような仕組みになっています。
ただし、高校生(未成年)がパート・アルバイトに関しても収入申告をしなければ不正受給となり、基礎控除も未成年者控除もつかず、パート・アルバイトで稼いだ金額全額を返還しなければいけなくなります。
そのため、高校生(未成年)であろうと、生活保護を受給している以上は必ず収入申告をする必要があります。
特に高校生(未成年)のパート・アルバイトは申告を忘れがちなので、くれぐれも注意しましょう。
厚生年金・健康保険に加入した場合の取り扱いは?
生活保護受給中は厚生年金や健康保険に加入できないと勘違いしている方がいますが安心してください。
生活保護受給中でも厚生年金や健康保険に加入することはできます。
生活保護受給中に加入できないのは、生命保険や学資保険です。
そして、パート・アルバイトで厚生年金や健康保険に加入できるほど条件の良い職場は、なかなかありませんが、もしも加入できるのであれば、ぜひ加入しましょう。
厚生年金や健康保険に加入した場合は、その保険料等を支払わなければいけませんが、収入申告をすれば、それらの保険料等は必要経費として控除されます。
つまり、生活保護費が減らされることはないので、生活保護受給者が損をすることは一切ありません。
厚生年金や健康保険に入るメリットについてですが、生活保護脱却後に享受できるものの方が多いですが、生活保護受給中でも入院した場合等、自己負担が発生するような場合に健康保険が約に立つ場合があります。
まとめ
生活保護受給者がパート・アルバイトした場合の収入の取り扱いや注意点等について、ご紹介させていただきました。
少しでも給料収入があれば、毎月使えるお金も増えて、生活が豊かになるため、ぜひ検討してみてください。
それと、高校生のパート・アルバイトの未申告で、全額徴収金となる事例は漫画でも取り上げられる本当に多いです。
世帯主も、一生懸命働いた高校生も、ケースワーカーも、みんな嫌な気持ちになってしまいますので、収入申告は忘れないようにしましょう。
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