「生活保護を受けると車は持てないの?」「貯金があったら申請できない?」「スマホや生命保険はどうなるの?」
生活保護を受給する際に「持てないもの」「持っていてはいけないもの」についての疑問は非常に多く、誤った情報が広まっているケースも少なくありません。実際には「絶対に持てないもの」よりも「原則は禁止だが例外がある」ものの方がはるかに多く、正確なルールを知らないために申請を諦めてしまっている方も多くいます。
本記事では、生活保護受給中に持てないもの・持てるもの・条件次第で認められるものを、根拠とともに徹底的に整理・解説します。
生活保護における「資産保有」の基本的な考え方

最低限度の生活に必要なものは保有できる
生活保護制度は「最低限度の生活を保障しつつ、自立を助けること」を目的としています(生活保護法第1条)。そのため、生活に必要な最低限の資産・財産については、保有が認められています。
「生活保護受給者は何も持ってはいけない」というイメージを持つ方が多いですが、これは正確ではありません。生活保護のルールでは、「活用できる資産はすべて生活費に充てること」が求められているのであって、すべての資産を没収されるわけではありません。
資産の扱いに関する4つの原則
生活保護における資産保有のルールは、以下の4つの原則に基づいて判断されます。
①活用の原則:保有している資産は、まず生活のために活用(売却・換金など)することが求められる。
②最低生活の原則:最低限度の生活を維持するために必要な資産は保有が認められる。
③自立助長の原則:保有することで就労や自立につながる資産は、保有が認められる場合がある。
④個別判断の原則:資産の保有可否は画一的に決まるわけではなく、世帯の状況・地域の実情・個別の事情を踏まえてケースワーカーが判断する。
この「個別判断の原則」が非常に重要で、「原則は禁止だが、事情次第で認められる」ものが多数存在します。
生活保護を受けると「原則として持てないもの」

自動車・バイク(原動機付自転車含む)
生活保護受給中に最も問題になりやすい資産が自動車(バイク・原付を含む)です。


自動車は換金可能な資産であり、維持費(保険料・ガソリン代・車検・駐車場代など)が生活費を圧迫するため、原則として保有は認められません。
自動車が原則禁止とされる主な理由
- 売却すれば生活費に充てられる換金資産である
- 維持費が最低生活費の範囲を超える支出につながる
- 「一般低所得世帯でも所有していない」水準であるとみなされる
ただし、後述するように例外的に保有が認められるケースも数多くあります。
不動産(土地・建物)
土地や建物などの不動産は資産価値が高いため、原則として処分(売却)が求められます。分譲マンション・戸建て住宅・土地などを保有している場合は、売却代金を生活費に充てることが前提となります。
ただし、資産価値が低い・処分が困難・現に住んでいる居住用不動産であるなど、一定の条件のもとでは保有が認められる場合があります。


高額な預貯金・現金
受給者が保有できる預貯金・現金には事実上の上限があります。保護費の約3ヶ月分程度(目安として50万円前後)を超えるような高額の預貯金がある場合、まずその預貯金を生活費に充てることが求められます。

ただし、「最低生活費の半分程度」の預貯金については、緊急時の備えとして認められているのが一般的な運用です。

解約返戻金のある生命保険・積立保険
解約すれば現金(解約返戻金)が戻ってくる積立型の生命保険・養老保険・学資保険などは、原則として解約して保護費に充てることが求められます。
掛け捨て型(解約返戻金がないまたは極めて少額)の生命保険については、保険料が低額であれば保有が認められる場合があります。

株式・投資信託・債券などの有価証券
株式・投資信託・国債などの有価証券は、換金可能な資産として原則売却が求められます。

実は「持てるもの」「条件次第で持てるもの」

持てるもの①:生活必需品・家財道具
日常生活に必要な家財道具・生活用品は保有が認められます。
- テレビ・冷蔵庫・洗濯機・電子レンジなどの家電製品
- 寝具・衣類・食器・調理器具
- パソコン(就労・求職活動・通信手段として)
- スマートフォン・携帯電話(通信手段として)
「生活保護受給者はテレビやスマホを持ってはいけない」というのは誤解です。これらは現代の最低限度の生活に必要な物品として認められています。


持てるもの②:スマートフォン・携帯電話
スマートフォン・携帯電話は、生活保護受給中でも保有できます。

就労活動・医療機関への連絡・福祉事務所との連絡など、現代社会において通信手段は生活の必需品とみなされています。ただし、高額な最新機種を購入するための費用を保護費から支出することは認められておらず、月々の通信料も生活扶助の範囲内でやりくりすることが求められます。

格安SIM・格安スマホへの乗り換えは、費用節約の観点からケースワーカーに勧められる場合もあります。
持てるもの③:資産価値の低い自動車(例外規定)
自動車は原則禁止ですが、以下の条件に該当する場合は例外的に保有が認められます。
| 認められる条件 | 具体例 |
|---|---|
| 公共交通が著しく不便な地域 | バス停まで徒歩30分以上、電車が1日数本程度の農村・山間部 |
| 障がい・疾病による通院に必要 | 歩行困難な障がい者が専門医療機関に通院するため |
| 就労維持のために不可欠 | 公共交通では通勤不可能な勤務先への通勤 |
| 障がい者施設への通所 | 障がい者が通所施設に通うために必要な場合 |
都市部では認められにくく、交通インフラが整備されていない地方では認められやすい傾向があります。
持てるもの④:農業・事業用の資産
農業を営む受給者の農機具・漁業者の漁具・自営業者の業務用設備など、就労・収入に直結する生業用資産については、保有が認められる場合があります。
これは「自立助長の原則」に基づくもので、資産を手放すことで就労・収入の機会を失うと判断される場合に適用されます。
持てるもの⑤:少額の掛け捨て保険
解約返戻金がない、または極めて少額の掛け捨て型生命保険・医療保険は、月々の保険料が低額であれば保有が認められることがあります。
目安として、月額保険料が数千円程度の掛け捨て保険は認められるケースが多いです。ただし、保険料の水準・保障内容・世帯の状況によって判断が異なるため、必ずケースワーカーに確認が必要です。
持てるもの⑥:居住用の持ち家(一定条件下)
以下の条件を満たす持ち家については、例外的に保有したまま生活保護を受給できる場合があります。
- 資産価値が低く、売却しても生活保護からの脱却が見込めない
- 住宅ローンが完済されており、維持費が最低生活費を大きく圧迫しない
- 高齢・障がいなどにより転居が著しく困難
ただし、資産価値が高い不動産の場合は売却指導を受けることになります。
「持てないもの」に関する誤解を解く

誤解①:「貯金があると申請できない」
これは誤りです。
少額の貯金があっても生活保護の申請は可能です。ただし、申請後の審査で預貯金残高が確認され、一定額以上の預貯金がある場合はまず自己の資産を使い切ることを求められます。
「貯金がゼロになってから申請しなければならない」という誤解から、申請が遅れてしまうケースが見受けられます。困窮状態になったら、まず相談することが大切です。

誤解②:「スマホ・テレビは持ってはいけない」
これも誤りです。
スマートフォン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機などの生活必需品は保有が認められています。厚生労働省も、これらの家電は現代の最低限度の生活に必要なものとして扱っています。
「贅沢品を持っているのに生活保護を受けているのはおかしい」という偏見がありますが、生活必需品と贅沢品の線引きは外見だけでは判断できません。
誤解③:「保険はすべて解約しなければならない」
これも正確ではありません。
解約返戻金がある積立型保険は原則解約を求められますが、掛け捨て型で解約返戻金がない・または極めて少額の保険は、保険料が低額であれば保有が認められます。
「すべての保険を解約しなければならない」という誤解から、万一の備えを失ってしまうケースもあります。保険の種類・内容を確認したうえで、ケースワーカーに相談しましょう。
誤解④:「パソコンは持ってはいけない」
これも誤りです。
パソコンは就労活動・スキルアップ・行政手続きなどに活用できる現代の生活必需品として、保有が認められています。ただし、高額な最新機種の購入費用を保護費から支出することは認められません。
申告義務と「隠し持つこと」の危険性

資産・収入はすべて申告義務がある
生活保護法第61条では、受給者に対して「収入・支出その他生活の状況について変動があったときは、速やかに保護の実施機関に届け出なければならない」と定めています。
これは、資産(車・保険・預貯金など)についても同様です。受給後に車を購入した・保険に加入した・親族から遺産を受け取ったなど、資産状況に変化が生じた場合は必ず申告する必要があります。

申告しない場合のリスク
保護費の返還:不正受給と判断された場合、過去に受け取った保護費の全額または一部を返還するよう求められます。

保護の廃止・停止:悪質なケースでは、生活保護が廃止または停止されます。

刑事罰の可能性:生活保護法第85条では、不正な手段によって保護を受けた場合に3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される規定があります。
「黙っていればわからない」と思いがちですが、福祉事務所は定期的に資産調査(金融機関への照会・不動産登記の確認など)を行っています。発覚した際のリスクは非常に大きいため、疑問な点はすべてケースワーカーに正直に相談することが最善です。

持てないものに関する手続きと相談の流れ

ステップ1:現在保有している資産を整理する
申請前または受給中に、以下の資産を一覧にして把握しましょう。
- 預貯金(銀行口座・ゆうちょ銀行・証券口座)
- 不動産(土地・建物の有無・登記状況)
- 自動車・バイク(所有名義・車種・年式)
- 生命保険・医療保険(解約返戻金の有無・保険料)
- 有価証券(株式・投資信託など)
- その他の資産(貴金属・骨董品・農機具など)
ステップ2:ケースワーカーへの申告・相談
保有資産をケースワーカーに正直に申告し、「どれを処分すべきか」「どれは保有できるか」を確認します。
「これを持っていたら申請できないかも」という不安から資産を隠すのではなく、正直に申告したうえで相談することが最も安全で確実な方法です。

ステップ3:必要に応じて資産の処分手続きを進める
処分を求められた資産については、福祉事務所の指導に従い、売却・解約の手続きを進めます。自動車の売却・保険の解約などは、手続きに時間がかかる場合があるため、早めに動くことが重要です。
よくある疑問Q&A:生活保護で持てないものについて

Q. 申請前に車を売却しないと申請できませんか?
申請自体は受け付けてもらえます。ただし、審査の中で車の処分を条件とされる場合があります。売却を完了してから受給が開始されるケースが多いため、事前にケースワーカーに相談しておくとスムーズです。
Q. 家族名義の車を使用している場合はどうなりますか?
同居家族名義の車は、世帯の資産として把握されます。使用状況・世帯の事情によって判断が異なりますが、正直に申告することが重要です。

Q. 学資保険は解約しなければなりませんか?
子どものための学資保険であっても、解約返戻金がある場合は原則解約を求められます。ただし、子どもの教育・将来への影響を考慮して、個別に判断されるケースもあります。ケースワーカーに事情を詳しく説明してみましょう。
Q. ペット(犬・猫など)は飼えますか?
ペットの飼育自体が禁止されているわけではありません。ただし、ペットフード代・医療費(動物病院)などは生活保護費から支出することは基本的に認められません。生活費の範囲内でやりくりすることが条件です。

Q. 宝くじや競馬などで当選・収入があった場合は?
宝くじの当選金や公営ギャンブルの払い戻しなども、収入として申告する義務があります。当選額によっては収入認定され、保護費が減額・停止される場合があります。


まとめ:「持てないもの」の正確な理解で申請をためらわないために

本記事のポイントを整理します。
- 生活保護受給中に「絶対に持てないもの」は限られており、多くは「原則禁止だが例外がある」
- 自動車・高額不動産・積立保険・有価証券は原則処分が求められるが、就労・医療・地域事情など条件次第で例外が認められる
- スマホ・テレビ・パソコン・掛け捨て保険などは持てる。「何も持ってはいけない」は誤解
- 資産・収入の変化はすべて申告義務がある。隠し持つことは不正受給につながる
- 不明な点はすべてケースワーカーへ正直に相談することが最善
最後に
「車があるから申請できない」「貯金があるから申請できない」という誤解から、必要な支援を受けられないままでいる方が少なくありません。制度の正確なルールを理解したうえで、困ったときは遠慮せず福祉事務所の窓口に相談してください。生活保護はあなたが権利として受け取れる制度です。

コメント