「生活保護を受けているが、少しだけお金をタンスに隠している」「タンス預金は福祉事務所にバレないのでは?」「万が一のために現金を手元に置きたい」生活保護受給者の中には、こうした考えから現金を自宅に隠し持つ、いわゆる「タンス預金」をしている方がいらっしゃいます。
しかし、結論から言えば、タンス預金は高確率で発覚します。
福祉事務所には強力な調査権限があり、金融機関の口座だけでなく、自宅への立ち入り調査も可能です。発覚した場合、不正受給とみなされ、保護費の全額返還や刑事罰のリスクがあります。
本記事では、生活保護におけるタンス預金の問題点、福祉事務所の調査権限と方法、発覚時のペナルティ、適正な資産管理の方法まで、法的根拠と実務に基づいて徹底解説します。
この記事でわかること
- タンス預金が禁止されている法的根拠
- 福祉事務所による資産調査の実態と権限
- タンス預金が発覚する主な5つの経路
- 発覚した場合のペナルティ(返還・加算金・刑事罰)
- 生活保護で認められる貯蓄の範囲
- 適正な資産管理と緊急時の備え方
生活保護でタンス預金が禁止されている理由

生活保護制度の基本原則
生活保護法第4条第1項では、以下のように定められています。
「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」
この「資産の活用」という原則により、生活保護を受ける前に、保有している資産はすべて生活費に充てることが求められます。
タンス預金は「隠し資産」
タンス預金とは、銀行口座に預けず、自宅に現金を保管することです。生活保護の文脈では、これは申告していない隠し資産とみなされます。
問題となる理由
- 資産申告義務違反:生活保護法第61条で、受給者は資産状況を届け出る義務がある
- 不正受給の疑い:資産があるのに保護を受けることは、不正受給にあたる可能性
- 制度の趣旨に反する:困窮していないのに保護費を受給することになる
保有できる資産の上限
生活保護では、保有できる資産に上限があります。
現金・預貯金の上限
- 単身世帯:約50万円
- 2人世帯:約80万円
- 3人以上世帯:約100万円
この上限を超える資産(タンス預金を含む)を保有していると、生活保護の対象外となります。
計算に含まれるもの
- 銀行口座の預貯金
- 郵便局の貯金
- 自宅に保管している現金(タンス預金)
- 有価証券(株式、債券など)
つまり、タンス預金も「資産」として計算されるべきものです。

生活保護費の使途制限
生活保護法第60条では、受給者に「支出の節約」を求めています。
生活保護費は、日々の生活を維持するために使うべきものであり、貯蓄することは原則として認められていません。
例外的に貯蓄が認められる場合
- 就労自立給付金の貯蓄
- 子どもの学資保険(一定額まで)
等の目的のない貯蓄、特にタンス預金は認められません。
福祉事務所による資産調査の実態

「タンス預金ならバレないだろう」と考える方もいますが、それは大きな誤解です。
福祉事務所の調査権限
生活保護法第29条では、福祉事務所に強力な調査権限を与えています。
第29条第1項 「保護の実施機関は、保護の決定若しくは実施又は第七十七条若しくは第七十八条の規定による費用の徴収に関して必要があると認めるときは、要保護者の資産及び収入の状況、健康状態その他の事項を調査することができる」
調査できる内容
- 金融機関への照会(預貯金残高、入出金履歴)
- 勤務先への照会(収入状況)
- 生命保険会社への照会(保険契約の有無)
- 自宅への立ち入り調査(居住実態、生活状況)
- 親族への扶養照会
自宅訪問(家庭訪問)の実態
ケースワーカーは、定期的に受給者の自宅を訪問します。
訪問の頻度
- 単身世帯:年2~4回程度
- 高齢者世帯:年1~2回程度
- 母子世帯:年3~4回程度
- 新規受給者:月1回程度(最初の数か月)
訪問時の確認事項
- 居住実態の確認
- 生活状況の確認
- 家具・家電の確認
- 通帳の確認
- 郵便物の確認
- 冷蔵庫の中身(生活状況の把握)
タンス預金の発見 ケースワーカーは、家庭訪問時に以下のような兆候から、タンス預金の存在を疑います。
- 通帳の引き出し額と生活費が合わない
- 収入に見合わない高価な物品がある
- 生活水準が保護費に見合わない
- 頻繁に多額の現金引き出しがある
疑いがある場合、ケースワーカーは「現金はどこに保管していますか?」と直接尋ねることもあります。

金融機関への調査
福祉事務所は、金融機関に対して照会を行うことができます。
照会できる情報
- 口座の有無
- 預貯金残高
- 入出金履歴(過去数年分)
- 定期預金、積立の有無
調査のタイミング
- 生活保護申請時
- 定期的な資産調査(年1回程度)
- 不正の疑いがある場合
タンス預金の痕跡 金融機関の調査により、以下のような「タンス預金の痕跡」が発見されることがあります:
- 多額の現金引き出しがあるのに、口座残高がほとんどない
- 引き出した金額の使途が不明
- 収入があったはずなのに、口座に入金がない
これらは、タンス預金の存在を強く示唆します。

マイナンバー制度による資産把握
マイナンバー制度の導入により、福祉事務所の資産調査はより効率的になりました。
マイナンバーで把握できる情報
- 複数の金融機関にまたがる口座情報
- 税務情報(収入、所得)
- 社会保険情報
ただし、現金(タンス預金)はマイナンバーでは直接把握できません。
しかし、上記の情報から「口座にお金がないのに、収入がある」といった矛盾が明らかになり、タンス預金の存在が推測されます。
タンス預金が発覚する主な5つの経路

タンス預金は、以下のような経路で発覚します。
1. 家庭訪問時の発見
発見の瞬間
- ケースワーカーがタンスの中を確認(受給者の同意が前提)
- 現金を数えている様子を目撃
- 多額の現金が部屋に置いてあるのを発見
同意なき捜索は違法 ケースワーカーが受給者の同意なしにタンスを開けることは違法です。ただし、「確認させてください」と依頼し、拒否すると「何か隠しているのでは?」と疑われます。
2. 通帳記録との矛盾
矛盾の例
- 月10万円引き出しているのに、生活費は月5万円程度しかかかっていない計算
- 差額の5万円はどこに消えたのか? → タンス預金の可能性
ケースワーカーは、家計簿や生活状況から「適正な生活費」を把握しているため、矛盾に気づきます。
3. 生活水準との不一致
不審な生活水準
- 保護費では買えないはずの高価な家電(大型テレビ、最新のパソコンなど)
- 新品の高級家具
- 頻繁な外食(近所の人からの情報)
- ブランド品の衣類
これらがあると、「どこからお金が出ているのか?」と疑われます。


4. 匿名通報
第三者からの通報
- 近隣住民からの通報「あの人、生活保護なのに贅沢している」
- 元配偶者や親族からの通報
- 知人からの通報
福祉事務所には、匿名通報が年間相当数寄せられます。通報を受けると、調査が開始されます。

5. 死亡時の遺品整理
最も確実に発覚するタイミング 生活保護受給者が死亡し、遺品整理をする際、タンスの中から多額の現金が発見されることがあります。
その後の対応
- 遺族に対して、不正受給分の返還請求
- 遺産から相殺
このケースでは、受給者本人は罰を受けませんが、遺族が負担を負うことになります。
タンス預金が発覚した場合のペナルティ

タンス預金が発覚すると、非常に重いペナルティが科されます。
1. 生活保護法第63条による返還請求
対象 資力(タンス預金)があるにもかかわらず保護を受けた場合
返還額 タンス預金を保有していた期間に受給した保護費の全額
具体例
- タンス預金:50万円
- 保有期間:1年間
- 月の保護費:13万円
- 返還額:13万円 × 12か月 = 156万円
50万円のタンス預金で、156万円の返還を求められる可能性があります。

2. 生活保護法第78条による費用徴収
対象 不正な手段により保護を受けた場合
徴収額 不正受給した保護費の全額 + 最大40%の加算金
具体例
- 不正受給額:156万円
- 加算金:156万円 × 0.4 = 62.4万円
- 合計徴収額:218.4万円

3. 刑事罰
生活保護法第85条違反 不正な手段により保護を受けた者は、3年以下の懲役または100万円以下の罰金
刑法第246条(詐欺罪) より悪質な場合、詐欺罪で起訴される可能性があり、10年以下の懲役
実際の刑事罰の例
- タンス預金を隠して生活保護を受給
- 不正受給額:数百万円
- 起訴され、執行猶予付き判決または実刑判決

4. 保護の停止または廃止
即座の保護廃止 タンス預金が発覚すると、その時点で生活保護は廃止されます。
理由 資産があるため、「生活に困窮している」という要件を満たさない。

5. 社会的信用の喪失
記録の残存 不正受給の記録は福祉事務所に残ります。
再申請の困難 タンス預金を使い切った後に再度生活保護を申請しても、過去の不正受給歴から審査が非常に厳しくなります。
生活保護で認められる貯蓄の範囲

「一切の貯蓄が認められない」わけではありません。例外的に認められる貯蓄もあります。
1. 就労自立給付金の貯蓄
制度の概要 就労により収入を得た場合、その収入の一部を貯蓄できる制度です。
貯蓄できる金額 就労収入から基礎控除後の金額の一部(最大10万円程度)
目的 生活保護から自立する際の準備金として貯蓄することが認められています。
条件
- ケースワーカーに申告
- 専用の通帳で管理
- 自立時に支給


2. 学資保険
認められる範囲 子どもの将来の教育費のための学資保険は、一定額まで認められます。
上限 一般的に、返戻金が50万円程度まで

3. 冠婚葬祭費の積立
認められる範囲 親族の結婚式や葬儀に参列するための費用を、合理的な範囲で積み立てることが認められる場合があります。
条件
- 事前にケースワーカーに相談
- 合理的な金額(数万円程度)
- 透明性のある管理
4. 緊急時の予備費
法律や規則で明確に定められているわけではありませんが、実務上、数万円程度の予備費を手元に置くことは黙認されることがあります。
ただし
- 多額(10万円以上)は認められない
- 申告が前提
- タンス預金ではなく、通帳で管理すべき
適正な資産管理の方法

タンス預金に頼らず、適正に資産を管理する方法を紹介します。
1. すべての資産を申告する
最も重要な原則 隠さず、すべての資産をケースワーカーに申告することが最も重要です。
申告すべき資産
- 銀行口座の預貯金
- 現金(手元に置いている現金も)
- 生命保険の解約返戻金
- 株式などの有価証券
- 貴金属、美術品(高価なもの)
2. 透明性のある通帳管理
手元に置いておきたい現金も、銀行口座に預け、通帳で管理しましょう。
メリット
- 透明性が高い
- ケースワーカーに見せられる
- 盗難・紛失のリスクが低い
3. 家計簿をつける
家計簿をつけることで、お金の流れが明確になります。
家計簿があれば、ケースワーカーに対して「○○のために△△円使った」と説明でき、不審に思われません。
4. 緊急時の備えはケースワーカーに相談
「突然の出費に備えたい」という気持ちは理解できます。ケースワーカーに正直に相談しましょう。
代替策の提案
- 一時扶助の制度説明
- 社会福祉協議会の緊急小口資金
- 家族・親族からの援助の可能性

5. 一時扶助制度を活用
家電の故障、冠婚葬祭など、突発的な出費には一時扶助制度があります。
対象となる費用
- 家具什器費(家電の買い替え)
- 葬祭費
- 入学準備金
タンス預金をするのではなく、必要なときに一時扶助を申請しましょう。



タンス預金に関するよくある誤解

誤解1:「少額ならバレない」
事実 少額でも、矛盾があれば発覚します。5万円、10万円でも、通帳記録や生活状況から推測されます。
誤解2:「現金だからマイナンバーでは把握できない」
事実 確かに現金そのものは把握できませんが、口座からの引き出し記録や収入との矛盾から、タンス預金の存在が推測されます。
誤解3:「家庭訪問で見つからなければ大丈夫」
事実 家庭訪問で見つからなくても、他の経路(通帳記録、匿名通報、死亡時)で発覚します。
誤解4:「就労収入の一部を隠しても分からない」
事実 就労先に照会が行われるため、収入額は把握されます。申告額と実際の収入が異なれば、差額がタンス預金になっていると疑われます。


誤解5:「死んだ後なら問題ない」
事実 死後に発覚しても、遺族に返還請求が行われます。遺族に迷惑をかけることになります。
よくある質問(Q&A)

Q1: 手元に5万円の現金を置いておきたいのですが、ダメですか?
A: 明確に「ダメ」とは言えませんが、推奨されません。5万円であっても、申告せずに保管していれば「隠し資産」とみなされる可能性があります。どうしても手元に置きたい場合は、ケースワーカーに「緊急時のために数万円を手元に置きたい」と相談してください。ただし、銀行口座に預けて通帳で管理する方が透明性が高く、問題になりにくいです。
Q2: 家庭訪問で「タンスを見せてください」と言われたら、拒否できますか?
A: 法的には、受給者の同意なしにタンスを開けることはできません。しかし、拒否すると「何か隠しているのでは?」と強く疑われ、より厳しい調査が行われる可能性があります。隠すものがなければ、協力する方が良いでしょう。
Q3: タンス預金が見つかったら、必ず刑事罰を受けますか?
A: 必ずしも刑事罰を受けるわけではありません。悪質性や金額によります。少額で、初犯であれば、保護費の返還のみで済む場合もあります。ただし、高額(数百万円)や常習性がある場合は、刑事告発される可能性が高まります。
Q4: 親族からもらったお金を隠していました。これもタンス預金ですか?
A: はい、親族からもらったお金も「収入」であり、申告する必要があります。申告せずに隠していれば、タンス預金(隠し資産)とみなされます。親族からの援助があった場合は、必ずケースワーカーに報告してください。


Q5: タンス預金をしていますが、今からでも申告すれば許されますか?
A: 自主的に申告すれば、悪質性が低いと判断され、刑事罰は免れる可能性があります。ただし、保護費の返還は求められます。一刻も早くケースワーカーに正直に申告することを強く推奨します。
Q6: ケースワーカーに「貯金はありますか?」と聞かれ、嘘をつきました。後から正直に言えば許されますか?
A: 嘘をついた後でも、正直に訂正すれば、悪質性は低いと判断される可能性があります。しかし、調査で発覚する前に自主申告することが重要です。できるだけ早く訂正してください。
Q7: 就労自立給付金として貯めたお金は、タンス預金とは違いますか?
A: 就労自立給付金として正式に認められて貯めたお金は、タンス預金ではありません。ただし、専用の通帳で管理し、ケースワーカーに定期的に報告する必要があります。無断でタンスに保管すると、問題になる可能性があります。
Q8: 友人に預けているお金もバレますか?
A: 友人に預けている場合でも、「自分の資産」であることに変わりはありません。友人の口座への入金記録から発覚する可能性があります。また、友人との関係が悪化した場合、友人から福祉事務所に通報されるリスクもあります。
まとめ:タンス預金は高リスク・ノーリターン 正直な申告が最善の道

本記事の重要なポイントをまとめます。
タンス預金が禁止される理由
- 資産活用の原則に反する
- 申告義務違反
- 不正受給にあたる可能性
発覚する経路
- 家庭訪問時の発見
- 通帳記録との矛盾
- 生活水準との不一致
- 匿名通報
- 死亡時の遺品整理
発覚時のペナルティ
- 保護費の全額返還
- 最大40%の加算金
- 刑事罰(3年以下の懲役または100万円以下の罰金)
- 保護の廃止
- 社会的信用の喪失
認められる貯蓄
- 就労自立給付金の貯蓄
- 学資保険
- 冠婚葬祭費の積立(合理的範囲)
適正な資産管理
- すべての資産を申告
- 通帳で透明性高く管理
- 家計簿をつける
- 緊急時の備えはケースワーカーに相談
- 一時扶助制度を活用
最後に
タンス預金は、一時的に「バレないかもしれない」と思えても、長期的には高確率で発覚します。発覚した場合のペナルティは非常に重く、保護費の全額返還、加算金、さらには刑事罰のリスクがあります。
「万が一のために少しでもお金を貯めたい」という気持ちは理解できます。しかし、タンス預金という方法は、リスクが高すぎます。
正直にケースワーカーに相談すれば、就労自立給付金、一時扶助、社会福祉協議会の支援など、正当な方法で備えることができます。
生活保護は、あなたの「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための制度です。この制度を適切に利用するためには、正直で透明性のある資産管理が不可欠です。
タンス預金をしている方、またはこれから始めようと考えている方は、今すぐその考えを改めてください。正直な申告が、結局は最も安心で、最善の道です。

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