生活に困窮して生活保護の利用を考えているものの、「どこに相談すればいいのか」「何を準備すればいいのか」と迷っている方も多いのではないでしょうか。
生活保護の相談は適切な窓口で行うことで、スムーズに手続きを進めることができます。
本記事では、生活保護の相談窓口から具体的な相談の流れ、事前に準備しておくべき書類や情報まで、詳しく解説します。
生活保護の相談について知っておくべき基本

生活に困窮している方にとって、生活保護は重要なセーフティネットです。
しかし、「どこに相談すればいいのか」「何を準備すればいいのか」わからず、一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、生活保護の相談に関するすべての情報を、初めての方でもわかりやすく解説します。
生活保護とは
生活保護は、憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に基づき、生活に困窮している方に対して、その程度に応じて必要な保護を行う制度です。
生活保護の目的
- 最低限度の生活を保障すること
- 自立を助長すること
生活保護は、決して恥ずかしいことではありません。
誰もが困窮に陥る可能性があり、そのための制度として国が用意しているものです。
相談だけでも大丈夫
「相談したら必ず申請しなければならない」と思っている方がいますが、相談だけでも全く問題ありません。
相談の目的
- 生活保護を受けられるか確認する
- 必要な手続きや書類を知る
- 他の支援制度の情報を得る
- 今後の生活設計について助言を受ける
まずは気軽に相談して、自分の状況を整理することが大切です。
相談したからといって、申請を強制されることはありません。
生活保護の相談窓口一覧

生活保護の相談は、様々な窓口で受け付けています。
それぞれの特徴を理解し、自分に合った窓口を選びましょう。
福祉事務所(最も基本的な相談窓口)
福祉事務所とは
福祉事務所は、生活保護の申請・決定を行う公的機関です。市町村に設置されており、生活保護に関する最も基本的な相談窓口となります。

福祉事務所の特徴
- 生活保護の申請を直接受け付けられる
- ケースワーカーが常駐している
- 具体的な手続きの説明が受けられる
- 申請から決定までワンストップで対応
相談方法
- 窓口での対面相談(予約不要の場合が多い)
- 電話での事前相談
- 一部自治体ではオンライン相談も可能
所在地の調べ方
- 市区町村のウェブサイトで検索
- 市役所・区役所の代表電話に問い合わせ
- 「○○市 福祉事務所」でGoogle検索
持参すると良いもの
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 収入がわかる書類(給与明細、年金証書など)
- 預貯金通帳
- 家賃がわかる書類(賃貸契約書など)
- 健康保険証
- 印鑑
市区町村の相談窓口
福祉事務所を設置していない町村では、町村役場が相談窓口となります。
対応内容
- 生活保護の相談受付
- 都道府県の福祉事務所への取り次ぎ
- その他の福祉制度の案内
小規模な自治体では、より親身な対応を受けられる場合もあります。
社会福祉協議会
社会福祉協議会(社協)は、地域の福祉活動を推進する民間団体です。
社協でできること
- 生活保護以外の支援制度の相談
- 生活福祉資金貸付制度の相談
- 家計改善支援
- 福祉事務所への同行支援(地域による)
社協が適しているケース
- まず生活保護以外の支援を検討したい
- 一時的な資金援助で乗り切れる可能性がある
- 家計管理の相談もしたい
生活困窮者自立支援制度の窓口
2015年から始まった生活困窮者自立支援制度の相談窓口も利用できます。
支援内容
- 自立相談支援(包括的な相談)
- 住居確保給付金の申請
- 就労準備支援
- 家計改善支援
- 一時生活支援
窓口の名称例
- 生活・就労支援センター
- くらしサポートセンター
- 生活相談支援センター
- 自立相談支援機関
各自治体で名称が異なるため、市区町村のウェブサイトで確認してください。
NPO法人や支援団体
民間の支援団体も相談窓口として機能しています。
支援団体の特徴
- 夜間や休日も相談できる場合がある
- より柔軟な対応が可能
- 福祉事務所への同行支援
- 生活保護申請のサポート
- 住まいや食料の緊急支援
主な支援団体の例
- NPO法人POSSE(労働・生活相談)
- つくろい東京ファンド(住まいの支援)
- NPO法人自立生活サポートセンター・もやい
- 各地域の生活困窮者支援NPO
インターネットで「○○県 生活保護 支援団体」と検索すると、地域の団体が見つかります。
法テラス(日本司法支援センター)
法的な問題を抱えている場合や、生活保護の申請が却下された場合などに利用できます。
法テラスでできること
- 無料法律相談(収入要件あり)
- 弁護士・司法書士の紹介
- 法的手続きのアドバイス
- 生活保護の審査請求のサポート
連絡先
- サポートダイヤル:0570-078374
- 平日9:00〜21:00、土曜9:00〜17:00
電話相談窓口
直接窓口に行くのが難しい場合、電話相談も利用できます。
主な電話相談窓口
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間無料)
- 生活保護ホットライン(弁護士会などが実施、不定期)
- 各自治体の福祉相談ダイヤル
電話相談で基本的な情報を得てから、対面相談に進むという方法もおすすめです。
生活保護の相談に必要な準備

相談をスムーズに進めるために、事前に準備しておくと良いことがあります。
自分の状況を整理する
相談前に、以下の項目について整理しておきましょう。
1. 収入について
- 給与収入の有無と金額
- 年金の有無と金額
- その他の収入(仕送り、副業など)
- 失業保険の受給状況
2. 資産について
- 預貯金の残高
- 不動産の所有状況
- 自動車の所有
- 生命保険の加入状況
- その他の資産(株式、貴金属など)
3. 家族について
- 同居家族の有無
- 別居家族からの援助可能性
- 扶養義務者の状況
4. 住居について
- 持ち家か賃貸か
- 家賃の金額
- 住宅ローンの有無
5. 健康状態
- 病気や障害の有無
- 通院状況
- 働ける状態かどうか
持参する書類
初回相談では必須ではありませんが、以下の書類があるとスムーズです。
基本的な書類
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)
- 健康保険証
- 印鑑
収入に関する書類
- 給与明細(直近3ヶ月分)
- 源泉徴収票
- 年金証書、年金通知書
- 失業保険受給資格者証
資産に関する書類
- 預貯金通帳(すべての口座)
- 不動産の登記簿謄本(所有している場合)
- 生命保険の証券
- 車検証(自動車を所有している場合)
住居に関する書類
- 賃貸契約書
- 家賃の領収書
- 住宅ローンの返済予定表(持ち家の場合)
その他の書類
- 診断書(病気や障害がある場合)
- 障害者手帳(お持ちの場合)
- 離婚調停中の書類(該当する場合)
すべてを揃える必要はありません。
持っているものだけで構いませんので、気軽に相談してください。
質問したいことをメモする
相談時に聞きたいことをあらかじめメモしておくと、聞き忘れを防げます。
よくある質問例
- 自分は生活保護を受給できる可能性があるか
- 申請から決定までどのくらい時間がかかるか
- 毎月いくら支給されるのか
- 持ち家を手放さないといけないか
- 自動車は処分しなければならないか
- 仕事をしながら受給できるか
- 家族に連絡がいくか
- 借金がある場合はどうなるか
相談から申請、決定までの流れ

生活保護の相談から実際に受給するまでの流れを理解しておきましょう。
ステップ1:初回相談
相談の内容
- 現在の生活状況のヒアリング
- 収入・資産の確認
- 生活保護制度の説明
- 他の支援制度の紹介
- 申請の可否の見通し
初回相談は通常30分〜1時間程度です。
この段階では申請を決める必要はありません。
ステップ2:申請の決断と準備
相談の結果、申請することを決めた場合、必要書類を準備します。
申請に必要な書類(例)
- 生活保護申請書
- 資産申告書
- 収入申告書
- 同意書(金融機関や勤務先への調査の同意)
- 扶養義務者の氏名・住所・連絡先
福祉事務所が書類の書き方を教えてくれますので、心配は不要です。

ステップ3:申請
準備が整ったら、福祉事務所に申請書を提出します。
申請時のポイント
- 申請は口頭でも可能(書類は後から提出でも可)
- 緊急性が高い場合は即日対応も可能
- 申請を拒否されることは違法(水際作戦に注意)
- 申請書の控えを必ず受け取る
厚生労働省の通知により、申請の意思を示した者に対して申請書を交付しないことや、相談段階で追い返すことは禁止されています。

ステップ4:調査
申請後、福祉事務所による調査が行われます。
主な調査内容
- 家庭訪問(生活状況の確認)
- 金融機関への照会(預貯金の確認)
- 生命保険会社への照会
- 年金事務所への照会
- 勤務先への照会(収入の確認)
- 扶養義務者への照会(扶養照会)
扶養照会については、DVや虐待など特別な事情がある場合は省略されることがあります。
事前に相談してください。
ステップ5:決定通知
調査終了後、保護の可否が決定されます。
決定までの期間
- 原則14日以内(最長30日)
- 緊急の場合はより早く決定されることも
決定の種類
- 保護開始決定:生活保護が開始される
- 却下決定:申請が認められない
- 申請の取り下げ:調査の過程で申請を取り下げることも可能
ステップ6:保護の開始
保護開始が決定されると、ケースワーカーが担当につきます。
保護開始後の流れ
- 保護費の支給(原則月1回、口座振込)
- ケースワーカーによる定期訪問(年2〜4回程度)
- 生活状況の報告義務
- 就労支援プログラムへの参加(該当者)


相談する際の心構えと注意点

生活保護の相談をスムーズに進めるために、以下のポイントを押さえておきましょう。
正直に話すことが最も重要
隠してはいけないこと
- 収入の実態
- 資産の状況
- 家族の状況
- 働ける能力
虚偽の申告は不正受給につながり、後々大きな問題となります。
正直に話すことで、適切な支援を受けられます。
「水際作戦」に注意
一部の福祉事務所では、申請を受け付けないようにする「水際作戦」が問題となっています。
水際作戦の例
- 「働けるから受けられない」と追い返される
- 「家族に連絡する」と脅される
- 「まず家族に頼んで」と申請を受け付けない
- 申請書を渡さない
対応方法
- 「申請したい」と明確に意思表示する
- 口頭でも申請は可能
- 申請を拒否された場合、その場で撤回を求める
- 記録を取る(日時、担当者名、言われた内容)
- 支援団体や弁護士に相談する
厚生労働省は「保護の相談に訪れた者に対しては、懇切丁寧に対応すること」と指導しています。
付き添いや同行支援の活用
一人で相談に行くのが不安な場合、付き添いをお願いすることができます。
付き添いができる人
- 家族や友人
- 支援団体のスタッフ
- 弁護士や司法書士
- 民生委員
付き添いがいることで、より落ち着いて相談でき、見落としも防げます。
感情的にならない
生活に困窮している状態では、精神的にも追い詰められていることが多いです。
しかし、窓口では冷静に対応することが大切です。
冷静な対応のために
- 事前に質問事項をメモしておく
- 深呼吸して落ち着く
- わからないことは遠慮せず質問する
- 納得できない説明には「理由を教えてください」と確認
もし不当な対応を受けたと感じたら、その場で上司を呼んでもらうか、後日改めて相談しましょう。
状況別の相談ポイント

様々な状況に応じた相談のポイントを紹介します。
働いている場合
よくある誤解 「働いているから生活保護は受けられない」→これは間違いです。
収入が最低生活費を下回る場合、不足分を生活保護で補うことができます。
これを「補足的な保護」といいます。

相談時のポイント
- 給与明細を持参する
- 就労にかかる経費(交通費など)を説明する
- 勤務形態(正社員、パート、日雇いなど)を伝える

持ち家がある場合
基本的な考え方
持ち家があっても、以下の場合は保有が認められることがあります。
- 住宅の資産価値が低い
- 処分しても相当の金額にならない
- 住宅ローンが完済している
- その住宅に住み続けることが合理的
相談時のポイント
- 不動産の登記簿謄本を持参
- 固定資産税の納税通知書を持参
- 住宅ローンの有無を説明

自動車を所有している場合
原則 自動車の保有は原則として認められませんが、以下の場合は例外があります。
保有が認められる可能性があるケース
- 障害者の通院に必要
- 公共交通機関がない地域での通勤に必要
- 障害者の通勤・通学に必要
- 事業用として必要
相談時のポイント
- なぜ自動車が必要なのか具体的に説明
- 代替手段がないことを説明
- 車検証を持参

借金がある場合
借金があっても生活保護の申請は可能です。
相談時のポイント
- 借入先、借入額、返済額を整理する
- 借金の理由を説明する
- 債務整理の可能性について相談する
生活保護費から借金を返済することは認められていないため、弁護士に相談して債務整理を検討することになります。

外国籍の場合
永住者、定住者、日本人の配偶者等、特別永住者などの在留資格を持つ外国人は、生活保護に準じた保護を受けられる場合があります。
相談時のポイント
- 在留カードを持参
- 在留資格を確認
- 日本語が不安な場合は通訳の手配を依頼

若年層(20代〜30代)の場合
よくある誤解 「若いから働けと言われる」→必ずしもそうではありません。
病気、障害、介護などの事情で働けない場合は、年齢に関係なく保護を受けられます。
相談時のポイント
- 働けない理由を具体的に説明
- 医師の診断書を持参(病気の場合)
- 求職活動の実績を説明

高齢者の場合
年金だけでは生活できない高齢者の方も多くいます。
相談時のポイント
- 年金証書、年金通知書を持参
- 医療費の支出状況を説明
- 介護の必要性を説明

よくある質問と回答

生活保護の相談に関して、多くの方が抱く疑問にお答えします。
Q1. 相談したら家族に必ず連絡がいきますか?
A. 扶養照会は行われますが、以下のような場合は省略されることがあります。
- DV被害を受けている
- 虐待を受けていた
- 長期間音信不通
- 扶養義務者が生活保護を受給している
- 扶養義務者が70歳以上の高齢者
- 扶養義務者が障害者・病気
事前に事情を説明すれば、配慮してもらえます。


Q2. 相談に行ったら追い返されました。どうすればいいですか?
A. 以下の対応を取ってください。
- 再度訪問し、「正式に申請したい」と明確に伝える
- 口頭でも申請の意思表示をする
- 支援団体に同行を依頼する
- 弁護士に相談する
- 都道府県の監査指導課に相談する
申請権は法律で保障されており、相談段階で追い返すことは違法です。
Q3. 相談に行く服装は何を着ていけばいいですか?
A. 普段着で全く問題ありません。あえて着飾る必要はなく、ありのままの生活状況がわかる服装が適切です。ただし、極端に高価なブランド品などは避けた方が無難です。
Q4. 相談の内容は他人に知られませんか?
A. 福祉事務所には守秘義務があります。相談内容や申請の事実が外部に漏れることはありません。プライバシーは守られますので、安心して相談してください。
Q5. 一度却下されました。再度申請できますか?
A. はい、再申請は可能です。却下の理由を確認し、状況が変われば再度申請できます。また、却下決定に納得できない場合は、都道府県知事に対して審査請求を行うこともできます(決定通知を受けた日から3ヶ月以内)。
Q6. 緊急でお金がなく、今日明日を乗り切れません。
A. 緊急の場合は、以下の対応が可能です。
- 福祉事務所に緊急性を伝える(即日対応の可能性)
- 社会福祉協議会の緊急小口資金を利用
- NPO法人の緊急支援を利用
- 一時生活支援事業の利用
住まいがない場合は、一時生活支援施設への入所も可能です。
まとめ:まずは相談から始めよう

生活保護の相談は、決して恥ずかしいことではありません。
困ったときに利用できる制度があることは、むしろ幸いなことです。
この記事の重要ポイント
- 相談窓口は福祉事務所が基本
- 相談だけでも全く問題ない
- 正直に話すことが最も重要
- 申請を拒否されたら支援団体に相談
- 付き添いや同行支援も活用できる
相談に行く前にすべきこと
- 自分の状況を整理する
- 必要書類を準備する
- 質問事項をメモする
- 最寄りの福祉事務所を調べる
- 不安なら支援団体に連絡する
すぐに相談すべき状況
- 生活費が底をつきそう
- 家賃が払えず退去を迫られている
- 病気で働けず収入がない
- 食べるものがない
- 住む場所がない
これらの状況にある方は、一刻も早く福祉事務所に相談してください。
緊急の場合は、夜間や休日でも対応してもらえる場合があります。
生活保護は、人生の一時的な困難を乗り越え、再び自立した生活を送るための支援制度です。
必要な時に適切に利用し、状況が改善したら自立を目指す、それが制度の本来の姿です。
一人で抱え込まず、まずは相談から始めましょう。
あなたの勇気ある一歩を、多くの支援者がサポートしてくれます。

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