「生活に困っているけど、どこに相談すれば分からない」「生活保護まではいかないが、何か支援を受けたい」「仕事も住まいもお金も全部困っているが、一度に相談できる場所はないか」そんな複合的な困りごとを抱えた方の「最初の入口」として機能するのが、生活困窮者自立相談支援事業です。
本記事では、この事業の目的・内容・支援の流れ・利用できる方の条件から、全国の相談窓口の探し方まで、2最新情報をもとに初めて読む方にも分かりやすく解説します。
生活困窮者自立相談支援事業とは何か

一言で言うと
生活困窮者自立相談支援事業を一言で表すなら、「あらゆる生活上の困りごとをワンストップで受け止め、その人専用の支援プランを作って継続的に伴走してくれる無料の相談支援事業」です。


制度の位置づけ
2015年(平成27年)に施行された生活困窮者自立支援制度において、必須事業(全国の自治体が実施義務を負う)として位置づけられている最も重要な事業です。

生活保護はすでに収入・資産が最低生活費を下回っている方向けの「最後のセーフティネット」ですが、自立相談支援事業は、生活保護に至る前の段階で早期に支援する「第二のセーフティネット」として機能します。


制度が生まれた背景
2000年代以降、非正規雇用の拡大・リーマンショック・コロナ禍などを経て、「生活保護には至っていないが、明らかに生活が苦しい」という「制度の狭間」にいる方々が社会問題となりました。
また、従来の支援は仕事はハローワーク・借金は法テラス・住まいは福祉事務所と縦割りになっており、複数の問題を抱える人がたらい回しにされるケースが多発していました。この反省から、複合的な問題をワンストップで受け止めるこの事業が生まれました。
事業の法的根拠と実施主体

法的根拠
生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)第5条第1項に次のように定められています。
「都道府県等は、生活困窮者自立相談支援事業を行うものとする」
「行うものとする」という表現は法律上の義務規定であり、全国のすべての実施主体が実施しなければならない必須事業です。
実施主体の構造
| 実施主体 | 対象地域 |
|---|---|
| 市(特別区・指定都市・中核市含む) | 市内の住民 |
| 都道府県 | 管内の町村部(福祉事務所未設置地域) |
| 委託先(社協・NPO・法人等) | 自治体が民間に業務委託する場合 |
全国に約1,300ヶ所以上の自立相談支援機関が設置されています(厚生労働省調査・2022年度末時点)。
誰が対象か:「困りそう」な段階から利用できる

法律上の対象者
生活困窮者自立支援法第3条では、対象者を次のように定義しています。
「就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」
「おそれのある者」という言葉が重要です。すでに生活が破綻している状態だけでなく、このままでは立ち行かなくなりそうという予兆の段階から利用できます。
対象となる具体的な状況
□ 収入が減少し始め、毎月の支出をまかなうのが難しくなってきた
□ 失業・廃業したばかりで、次の収入が見通せない
□ 家賃の支払いが苦しくなってきた
□ 長期間働いていなくて、どこから始めればいいか分からない
□ 病気・精神的な不調で働けなくなった
□ 引きこもり状態が続いている
□ 多重債務を抱えており、返済が家計を圧迫している
□ 一人で誰にも相談できない状態が続いている
□ 仕事・お金・住まいなど複数の問題が絡み合っている
1つでも当てはまれば、相談する資格があります。
対象外となるのはこんな場合
× 現在、生活保護を受給中の場合
(生活保護の担当ケースワーカーが支援を担当)
ただし、生活保護の受給に至るかどうかの相談は、自立相談支援機関が行うことができます。

支援員の種類と役割

自立相談支援機関には、専門性の異なる3種類の支援員が配置されています。
① 主任相談支援員
チーム全体を統括するリーダー的な役割を担います。
【主任相談支援員の主な役割】
・支援チーム全体のマネジメント
・複雑・困難なケースへの直接対応
・関係機関(行政・医療・法律等)との調整
・支援員の育成・スーパービジョン
② 相談支援員
利用者と最も直接的に関わる、支援の中心的な存在です。
【相談支援員の主な役割】
・初回面談(インテーク)の実施
・状況の総合的なアセスメント(評価)
・自立支援計画の作成・実施
・継続的な伴走支援・定期面談
・各種機関への橋渡し・同行支援
③ 就労支援員
就労に関する専門的な支援を担当します。
【就労支援員の主な役割】
・ハローワークへの同行支援
・履歴書・職務経歴書の作成支援
・求人情報の収集・提供
・面接練習・就労後のフォロー
・就労準備支援事業との連携
支援の流れ:相談から自立まで

標準的な支援プロセス
【PHASE 1】インテーク(受理・初回面談)
・電話・来所・訪問で最初の接触
・困りごとの概要・緊急性を把握
・30分〜1時間程度
↓
【PHASE 2】アセスメント(状況の総合評価)
・生活状況・就労状況・健康状態・家族関係・
財産・負債・強み・意向などを詳しく把握
・複数回の面談で丁寧に聴き取る
↓
【PHASE 3】支援計画の作成・合意
・本人と一緒に「目標」「支援内容」「役割分担」を決定
・本人の意思を最優先にした計画
↓
【PHASE 4】支援の実施・関係機関との連携
・ハローワーク・法テラス・社協・医療機関等との連絡・調整
・必要に応じて同行支援
・住居確保給付金等の手続きサポート
↓
【PHASE 5】モニタリング・プランの見直し
・定期的な面談で状況確認
・状況変化に応じてプランを修正
↓
【PHASE 6】評価・終結
・目標達成度の評価
・自立後も必要に応じてフォローアップ継続
「相談だけ」でも終了できる
このプロセスは一例であり、相談の内容・目的によって柔軟に対応されます。「相談だけして終わる」「情報を得るだけ」という利用も可能であり、何かを強制されることは一切ありません。
具体的な支援内容:何をしてもらえるか

①状況の整理・見える化
「どこから手をつけていいか分からない」状態の困りごとを、専門の支援員が丁寧に整理します。問題の全体像を「見える化」することで、優先順位と解決策が明確になります。
②各制度・機関への橋渡し
自立相談支援機関は、必要に応じて次の機関への橋渡しを行います。
| 連携先 | 主な連携内容 |
|---|---|
| ハローワーク | 失業給付・求職活動 |
| 社会福祉協議会 | 生活福祉資金の貸付 |
| 法テラス | 債務整理・法的問題 |
| 福祉事務所 | 生活保護の申請 |
| 医療機関 | 精神科・健康相談 |
| 障害者相談支援 | 障害福祉サービスの利用 |
| 地域包括支援センター | 高齢者支援 |
③同行支援
利用者が一人では不安な場面(ハローワークの初回登録・法テラスでの相談・不動産業者との交渉等)に、支援員が同行することがあります。これにより、「一人では足が向かない」窓口へのアクセスが格段に容易になります。
④住居確保給付金の申請サポート
離職・収入減少により家賃の支払いが困難になった場合、住居確保給付金(家賃相当額を最大9ヶ月間給付・返済不要)の申請窓口が自立相談支援機関です。申請書類の準備から手続きまでサポートしてもらえます。

⑤就労準備支援事業との連携(任意事業)
すぐに就労が難しい方には、就労準備支援事業(段階的な就労準備プログラム)との連携が行われます。生活リズムの立て直し→社会参加→就労体験→就職活動という段階を踏んだ支援です。

他の支援事業との連携

生活困窮者自立相談支援事業は、単独で機能するだけでなく、他の支援事業との連携の「ハブ」としても機能します。
生活困窮者自立支援制度内の事業との連携
| 事業名 | 連携内容 |
|---|---|
| 住居確保給付金 | 家賃給付の申請窓口・支援を担当 |
| 就労準備支援事業 | 就労困難な方を就労準備支援につなぐ |
| 家計改善支援事業 | 家計管理に課題がある方を家計専門支援につなぐ |
| 一時生活支援事業 | 住居を失った方に宿泊場所・食事提供をつなぐ |
| 子どもの学習・生活支援 | 困窮家庭の子どもへの支援につなぐ |


外部機関との連携
行政機関(ハローワーク・福祉事務所等)との連携はもちろん、医療機関・弁護士・司法書士・地域のNPO等との幅広いネットワークを活かした支援が行われます。
実施状況と地域格差の実態

全国の相談実績
厚生労働省の統計によると、2022年度の自立相談支援事業の新規相談受付件数は約27万件にのぼります(コロナ禍の2021年度は約78万件と過去最多)。相談件数の多さは、この事業が社会的に必要とされていることを示しています。
地域格差の問題
自立相談支援事業は全国必須事業ですが、実施の質・規模には地域差があります。
- 都市部:支援員が複数配置されており、専門性が高い。相談の予約が取りにくいケースもある
- 地方・町村部:都道府県が代行して実施することが多く、専門人材が不足している自治体もある
- 任意事業の格差:就労準備支援・家計改善支援等の任意事業は全国の約7割程度しか実施されていない
委託先によるサービスの多様性
実施主体(自治体)が社会福祉協議会・NPO・一般社団法人等に委託している場合、窓口の名称・場所・雰囲気が異なります。「くらしのサポートセンター」「生活自立支援センター」「わくわく総合相談窓口」など、各地域で独自の名称がつけられていることがあります。
利用できる窓口の探し方

方法①:市区町村の代表番号に電話する
最も確実な方法です。「生活について困っていることがあり、相談したい」と伝えれば、担当窓口に案内してもらえます。
方法②:厚生労働省の窓口検索を使う
厚生労働省の公式サイト「生活困窮者自立支援制度 相談窓口検索」では、都道府県・市区町村名から近くの相談窓口を検索できます。
方法③:よりそいホットラインに電話する
どこに相談すればいいか分からない場合は、よりそいホットライン(0120-279-338・24時間)に電話することで、適切な窓口を案内してもらえます。
窓口名称の例
自治体によって名称が異なるため、次のような名前で検索することも有効です。
・「〇〇市 生活困窮 相談」
・「〇〇市 くらしの相談」
・「〇〇市 自立支援センター」
・「〇〇市 生活自立支援機関」
・「〇〇市 生活サポートセンター」
よくある質問(FAQ)

Q. 相談したら、強制的に何かやらされますか?
A. いいえ。相談の内容・支援プランはすべて本人の意思を尊重した上で決定されます。相談だけして帰ることも、途中で利用をやめることも自由です。
Q. 守秘義務はありますか?相談したことが職場や家族に知られますか?
A. 相談内容には守秘義務があり、本人の同意なく第三者に開示することはありません。
Q. 書類や資料がなくても相談できますか?
A. はい。資料・書類が何もない状態でも相談できます。初回面談では「今どんな状況なのか」を話すだけでOKです。
Q. 外国籍でも相談できますか?
A. はい、相談は可能です。多言語対応している窓口も増えています。ただし、一部の給付金等については在留資格によって利用できないものがあります。窓口でご確認ください。

Q. 家族の代わりに相談することはできますか?
A. はい。本人が来所できない場合でも、家族・支援者が代わりに来所して状況を伝えることはできます。本人の同意のもと、一緒に来所することも歓迎されます。
まとめ:「相談するだけ」から始めていい

生活困窮者自立相談支援事業について、重要なポイントを整理します。
事業の核心
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 位置づけ | 生活困窮者自立支援制度の必須事業・全国実施 |
| 対象 | 困窮するおそれがある段階から誰でも利用可能 |
| 費用 | 無料 |
| 支援スタイル | 個別プランによる伴走型・ワンストップ支援 |
| 強み | 複合的な問題を一括して受け止め、各機関への橋渡しも行う |
今日からできること
① 市区町村の代表番号に電話し、
「生活のことで相談したい」と伝える
② または、よりそいホットライン(0120-279-338)に電話し、
近くの相談窓口を教えてもらう
③ 初回相談では「今困っていることを話すだけ」でOK
書類・準備は一切不要
「困っているけど、こんなことで相談していいのか」という遠慮は不要です。この事業は、そういった方のためにこそ存在しています。
今日この記事を読んだことを、行動のきっかけにしてください。
今すぐ相談できる窓口
- お住まいの市区町村の自立相談支援機関(平日9時〜17時)
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)

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