「入院することになったが、費用が払えるか不安」「請求書を見て、とても支払える金額ではないと感じた」このような悩みを抱えている方は少なくありません。
実は、入院費が高額になり支払いが困難な場合、市役所を窓口とするさまざまな公的支援制度があります。
この記事では、高額療養費制度から生活保護の医療扶助、無料低額診療事業まで、入院費が払えないときに市役所で相談できる支援を体系的に解説します。
入院費が払えないとき、まず知っておきたい制度

高額療養費制度・限度額適用認定証
医療費が高額になる場合、まず活用したいのが公的医療保険の「高額療養費制度」です。
入院や日帰りの手術など医療費が高額になる(自己負担限度額を超える)ことが分かっているときは、事前に限度額適用認定証(住民税非課税世帯の方は「限度額適用・標準負担額減額認定証」)の交付を受け、医療機関に提示することで、その医療機関での支払いを自己負担限度額までに抑えることができます。
自己負担限度額は年齢や所得によって異なり、月ごとに計算され、医療機関ごと、入院・外来は別計算となります。
なお、マイナンバーカードを保険証として利用している場合は、事前の認定証申請自体が不要になります。マイナ保険証を利用して医療機関等を受診することで、窓口で支払う医療費が自己負担限度額までになり「限度額適用認定証」の提示は不要です。
高額療養費の申請窓口は市役所(国民健康保険の場合)
国民健康保険に加入している方は、この限度額適用認定証や高額療養費の申請窓口が市区町村役場(市役所)の国保年金課などになります。療養を受けた月以前の1年間に3か月以上の高額療養費の支給を受けた場合には、4か月目から「多数回該当」となり、自己負担限度額がさらに軽減される仕組みもあります。
入院時の食事代への配慮
市民税非課税世帯又は低所得2に該当する方が、過去12か月で91日以上の入院となった場合は、食事代がさらに減額される制度もあります(申請月の翌月から適用)。入院が長期化しそうな場合は、この点もあわせて市役所窓口で確認しておくとよいでしょう。
それでも支払いが難しいときに使える公的支援

高額療養費制度を使っても自己負担分の支払いが厳しい場合、次の段階の支援制度を検討しましょう。
生活保護の医療扶助
生活に困窮しており、そもそも医療費を含めた生活費全体の支払いが難しい場合は、生活保護の申請を検討する段階です。


生活保護の「医療扶助」は、生活保護受給者が病気・けがで治療や入院が必要になったとき、医療費を代わりに支払う制度です。

生活保護受給者が窓口でお金を払う必要はなく、福祉事務所が直接医療機関に支払います。

ただし、いくつか注意点があります。医療扶助が使えるのは都道府県・指定都市が指定した「指定医療機関」のみで、自分で勝手に病院を選んで入院すると医療扶助が使えない場合があります。そのため、必ず事前にケースワーカーへ相談し、指定医療機関かどうかを確認してから入院手続きを進める必要があります。


また入院中の食費(1食約460円・1日約1,380円程度)は医療扶助の対象外で自己負担となりますが、生活保護の生活扶助費から充てることが前提とされています。


医療扶助を受けるには福祉事務所への申請が必須です。

医療扶助が決定された場合は、入院・入院外・歯科・調剤等の必要な医療の種類に応じて医療券や調剤券が発行されます。

無料低額診療事業(生活保護を受けられない・受けたくない場合)
「生活保護までは考えていないが、医療費が本当に払えない」という方向けの制度として、無料低額診療事業があります。
無料低額診療事業とは、生計困難者が経済的な理由によって必要な医療を受ける機会を制限されることのないよう、無料または低額な料金で診療を行う事業です。
対象となるのは低所得者、要保護者、ホームレス、DV被害者、人身取引被害者等の生計困難者で、医療保険加入の有無、国籍は問いません。相談先は、当該医療機関に直接相談するほか、福祉事務所や社会福祉協議会に相談する方法もあります。


この制度は生活保護を受けられない・受けたくない方の受け皿としても機能します。無料低額診療事業は生活保護に該当しないけれど医療費が重い人を救済する仕組みです。ただし対象になる人は限られており、「借金など自己責任の困窮」は原則対象外とされています。医療費が払えないと悩んだら、まずは病院の相談室やソーシャルワーカーに相談してみることが第一歩になります。
なお、無料低額診療事業では地方自治体が設置する福祉事務所に相談して減免が認められると、医療費の全額もしくは一部が免除される診察券が発行され、該当する医療機関で医療サービスを受けられます。ただし薬代に関しては無料になることはないため注意が必要です。
制度比較表:入院費が払えないときの支援の選び方

| 制度 | 主な対象 | 窓口 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 高額療養費制度・限度額適用認定証 | 公的医療保険加入者全般 | 市役所(国保)・健保組合等 | 窓口負担を自己負担限度額までに抑える |
| 生活保護(医療扶助) | 生活全般が困窮している世帯 | 福祉事務所 | 医療費が原則自己負担ゼロになる |
| 無料低額診療事業 | 生活保護に該当しないが医療費負担が重い人 | 実施医療機関・福祉事務所・社会福祉協議会 | 診療費の全額または一部が減免される |
入院費が払えないときの相談の進め方

ステップ1:まずは病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談する
多くの病院には、経済的な相談に対応する医療ソーシャルワーカーが在籍しています。入院前・入院中でも、支払いに不安がある時点で早めに相談することが重要です。
ステップ2:市役所の国保年金課で高額療養費・限度額適用認定証を確認する
国民健康保険に加入している場合、自己負担限度額の仕組みを知らずに全額を窓口で支払ってしまうケースがあります。入院が決まった時点で、必ず市役所の窓口で確認しましょう。
ステップ3:生活全体が苦しい場合は福祉事務所へ相談する
医療費だけでなく生活費全体が厳しい場合は、生活保護や無料低額診療事業の利用を福祉事務所に相談しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 入院費が払えないとき、まず市役所の何課に相談すればいいですか?
A. 国民健康保険に加入している方は国保年金課(高額療養費・限度額適用認定証の相談)、生活全般が苦しい場合は福祉事務所(生活保護・無料低額診療事業の相談)が窓口になります。

Q2. 限度額適用認定証は入院後からでも申請できますか?
A. 申請自体は可能ですが、退院後の申請では窓口で一旦全額を支払い、後日高額療養費として払い戻される場合があります。入院が決まった時点で早めに申請するのが望ましいです。
Q3. 生活保護を受けなくても医療費の減免を受けられる制度はありますか?
A. 無料低額診療事業があります。生活保護には該当しないが医療費の負担が重い方向けの制度で、実施医療機関や福祉事務所、社会福祉協議会に相談できます。
Q4. 生活保護受給中の入院費はどこまで無料になりますか?
A. 医療扶助により保険診療内の治療費・入院費は原則自己負担ゼロですが、入院中の食事代は対象外で、生活扶助費から充てることが前提とされています。


まとめ

入院費が払えないと感じたときは、一人で抱え込まず、段階に応じた公的支援を活用しましょう。
まずは高額療養費制度・限度額適用認定証で窓口負担を抑え、それでも厳しい場合は無料低額診療事業、生活全体が困窮している場合は生活保護の医療扶助の利用を検討します。
いずれの制度も、市役所の窓口や福祉事務所、病院の医療ソーシャルワーカーに相談することから始まります。早めの相談が、安心して治療に専念できる環境づくりの第一歩です。


コメント