生活保護を受給している方、またはこれから申請を検討している方の中には、「基本的な保護費以外に何か加算はあるのか」「自分は加算の対象になるのか」と疑問に思う方も多いでしょう。
生活保護には、個々の事情や状況に応じて基本額に上乗せされる「加算」という制度があります。
本記事では、生活保護の全加算を一覧形式で紹介し、それぞれの対象者、金額、申請方法を具体例とともに詳しく解説します。
生活保護の加算とは

加算制度の基本
生活保護の支給額は、「生活扶助基準額」を基本とし、個別の事情に応じて「加算」が上乗せされる仕組みになっています。

保護費の計算式
生活保護費 = 生活扶助基準額 + 各種加算 + その他扶助(住宅扶助、医療扶助など)
加算は、特定の条件を満たす受給者に対して、追加的な生活費の必要性を認め、基準額に加えて支給されるものです。

加算の法的根拠
加算は、生活保護法第8条第2項に基づき、厚生労働大臣が定める基準によって設定されています。各加算の詳細は「生活保護法による保護の基準」(厚生労働省告示)に規定されています。
加算の種類
生活保護には主に以下の加算があります。
- 妊産婦加算
- 障害者加算
- 介護施設入所者加算
- 在宅患者加算
- 放射線障害者加算
- 児童養育加算
- 母子加算
- 介護保険料加算
- 期末一時扶助(年末の特別加算)
それぞれの詳細を見ていきましょう。
各加算の詳細

1. 妊産婦加算
対象者
- 妊娠中の女性(妊娠届出~出産まで)
- 産後6ヶ月以内の女性
加算額(令和6年度基準参考)
- 妊娠6ヶ月未満:月額約9,130円
- 妊娠6ヶ月以上:月額約13,790円
- 産後6ヶ月以内:月額約8,480円
申請方法
- 妊娠届出書または母子健康手帳のコピーを提出
- 出産後は出生証明書を提出
注意点
- 妊娠の事実を速やかにケースワーカーに報告
- 産後6ヶ月を過ぎると加算終了
- 双子などの多胎妊娠でも加算額は同じ


2. 障害者加算
対象者
身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳のいずれかを持ち、以下の等級に該当する方。
身体障害者
- 1級・2級
- 3級(一部の障害)
精神障害者
- 1級・2級
知的障害者
- 重度(A判定、IQ35以下など)
加算額(令和6年度基準・東京都区部の例)
- 1級:月額約26,810円
- 2級:月額約17,870円
申請方法
- 障害者手帳のコピーを提出
- すでに受給中の場合は、手帳取得後速やかに報告
注意点
- 手帳の等級により加算額が異なる
- 複数の手帳を持っていても、高い方の加算のみ適用
- 手帳の更新時は再提出が必要

3. 介護施設入所者加算
対象者 特別養護老人ホームなど介護施設に入所している方
加算額 施設の種類や居室タイプにより異なります。
- ユニット型個室:月額約6,000円~10,000円程度
- 従来型個室:月額約5,000円~8,000円程度
- 多床室:月額約3,000円~5,000円程度
申請方法
- 入所契約書のコピー
- 施設からの請求書
注意点
- 施設サービス費とは別の加算
- 短期入所(ショートステイ)は対象外
4. 在宅患者加算
対象者 在宅で療養している患者で、以下の条件を満たす方:
- 常時介護を必要とする状態
- 医師の指示により在宅療養している
- 寝たきりまたはこれに準ずる状態
加算額 月額約13,270円程度(自治体により異なる)
申請方法
- 医師の診断書または意見書
- 介護の必要性を証明する書類
注意点
- 継続的な医療・介護が必要な状態であることが条件
- 定期的に状況の確認が行われる
5. 放射線障害者加算
対象者 原子爆弾被爆者で、放射線障害が認められている方
加算額 月額約42,000円程度
申請方法
- 被爆者健康手帳
- 認定疾病医療受給者証
注意点
- 対象者は限定的
- 被爆者援護法による手当との調整あり
6. 児童養育加算
対象者 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの児童を養育している世帯
加算額(令和6年度基準)
- 第1子・第2子:月額約10,190円(3歳未満は約15,290円)
- 第3子以降:月額約6,100円(3歳未満は約9,150円)
申請方法
- 児童の在学証明書(学校に通っている場合)
- 戸籍謄本または住民票
注意点
- 児童扶養手当と併給可能
- 児童が18歳の年度末で加算終了
- 3歳未満は加算額が高い

7. 母子加算
対象者
- ひとり親世帯(母子世帯または父子世帯)
- 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの児童がいる世帯
加算額(令和6年度基準・東京都区部の例) 児童数により異なります:
- 児童1人:月額約22,790円
- 児童2人:月額約26,420円
- 児童3人以降:1人増えるごとに約1,210円加算
申請方法
- 戸籍謄本(離婚、死別などの事実が確認できるもの)
- ひとり親であることの証明
注意点
- 児童養育加算と併給可能
- 再婚すると加算終了
- 事実婚状態と判断されると加算停止の可能性

8. 介護保険料加算
対象者 65歳以上で介護保険の第1号被保険者
加算額 実際の介護保険料額(上限あり)
- 自治体により異なる
- 一般的に月額約3,000円~8,000円程度
申請方法
- 介護保険料の納付書または決定通知書
注意点
- 介護保険料そのものを補助する加算
- 実費相当額が支給される
- 保険料額の変更時は再申請が必要

9. 期末一時扶助(年末の特別加算)
対象者 生活保護受給者全員(12月1日時点で受給している方)
加算額(令和5年度実績) 世帯人員により異なります。
- 単身世帯:約14,000円
- 2人世帯:約20,000円
- 3人世帯:約25,000円
- 4人世帯:約28,000円
- 5人世帯以上:1人増えるごとに約3,000円加算
支給時期 12月の定例支給日に通常の保護費と一緒に支給
申請方法
- 原則として申請不要(自動的に支給)
注意点
- 年に1回のみの支給
- 年末年始の特別な出費に対応するための加算
- 12月1日時点で受給していないと対象外

冬季加算
対象者
生活保護受給者のうち、寒冷地に居住する世帯(11月〜3月または10月〜4月)
加算額(令和5年度実績)
地域区分(I〜VI区)と世帯人員により異なります。
- I区(最寒冷地)単身世帯: 約23,000円/月
- III区 単身世帯: 約15,000円/月
- VI区(温暖地)単身世帯: 約3,000円/月
- 世帯人員が増えるごとに加算額も増加
支給時期
11月〜3月の各月の定例支給日(地域により10月〜4月)
申請方法
- 原則として申請不要(自動的に支給)
注意点
- 地域の気候条件により加算額が大きく異なる
- 暖房費など冬季の光熱費増加に対応するための加算
- 支給期間中に転居した場合、転居先の地域区分が適用される

加算の重複と併給

併給可能な加算
以下の加算は同時に受給できます。
例1:ひとり親家庭の場合
- 母子加算
- 児童養育加算
- 期末一時扶助
- 冬季加算
例2:高齢障害者の場合
- 障害者加算
- 介護保険料加算
- 期末一時扶助
- 冬季加算
例3:妊娠中のひとり親の場合
- 妊産婦加算
- 母子加算(すでに児童がいる場合)
- 児童養育加算(すでに児童がいる場合)
- 期末一時扶助
- 冬季加算
併給できない加算
以下のように、同じ趣旨の加算は高い方のみ適用されます。
- 障害者加算(複数の手帳を持っている場合、高い等級のみ)
- 在宅患者加算と介護施設入所者加算(同時には受けられない)
加算額の具体例シミュレーション

ケース1:単身高齢障害者(東京都区部)
基本情報
- 70歳、単身世帯
- 身体障害者手帳1級
- 在宅生活
月額支給額の内訳
- 生活扶助基準額(1類+2類):約75,000円
- 障害者加算(1級):約26,810円
- 介護保険料加算:約5,000円(実額)
- 住宅扶助:約53,700円(上限)
- 合計:約160,510円
ケース2:母子世帯2人(子ども7歳)(東京都区部)
基本情報
- 母親35歳、子ども7歳
- ひとり親世帯
月額支給額の内訳
- 生活扶助基準額(母+子):約130,000円
- 母子加算(児童1人):約22,790円
- 児童養育加算(第1子):約10,190円
- 住宅扶助:約64,000円(上限)
- 合計:約226,980円


ケース3:妊娠中の単身女性(東京都区部)
基本情報
- 28歳、単身
- 妊娠7ヶ月
月額支給額の内訳
- 生活扶助基準額:約75,000円
- 妊産婦加算(6ヶ月以上):約13,790円
- 住宅扶助:約53,700円(上限)
- 合計:約142,490円
加算の申請方法と注意点

申請の基本的な流れ
ステップ1:対象となる加算の確認 自分がどの加算の対象になるか、ケースワーカーに相談します。
ステップ2:必要書類の準備 各加算に必要な証明書類を準備します。
- 障害者手帳
- 母子健康手帳
- 診断書
- 戸籍謄本
- 在学証明書 など
ステップ3:申請書の提出 福祉事務所に申請書と必要書類を提出します。
ステップ4:審査 福祉事務所で申請内容を審査します。
ステップ5:決定通知 加算が認められると、次回の支給から反映されます。
申請時の注意点
1. タイミングが重要 加算の対象となったら、速やかに申請しましょう。遡及して支給されない場合があります。
例
- 障害者手帳を取得したら即座に報告
- 妊娠が判明したら早めに報告
- 子どもが生まれたらすぐに報告
2. 継続的な報告 状況の変化は必ず報告が必要です。
- 障害の等級が変わった
- 子どもが18歳の年度末を迎えた
- 再婚した
- 出産した
3. 証明書類の更新 手帳や証明書の有効期限がある場合、更新時に再提出が必要です。
4. 不正受給のリスク 該当しなくなった加算を受け続けると、不正受給となります。
- 返還請求
- 保護の停止・廃止
- 刑事告発の可能性


よくある申請漏れ
以下の加算は見落とされがちなので注意しましょう。
児童養育加算
- 子どもがいる世帯は自動的に適用されるとは限らない
- 在学証明書の提出を忘れると加算されない場合も
介護保険料加算
- 65歳になったら自動的に加算されるわけではない
- 納付書を提出する必要がある
妊産婦加算
- 妊娠を報告しないと加算されない
- 母子健康手帳の提示が必要
加算に関するよくある質問

Q: 加算は申請しないと受けられませんか?
A: 基本的には申請が必要です。ケースワーカーが状況を把握していれば案内されることもありますが、自分から申告する方が確実です。
Q: 過去に遡って加算を受けられますか?
A: 原則として、申請日からの支給となります。ただし、やむを得ない事情がある場合は遡及が認められることもあります。早めの申請が重要です。

Q: 加算を受けると生活扶助が減りますか?
A: いいえ。加算は生活扶助基準額に上乗せされるもので、基準額が減ることはありません。

Q: 複数の加算を同時に受けられますか?
A: はい。該当する加算はすべて併給できます(一部例外を除く)。
Q: 障害者手帳を申請中ですが、加算は受けられますか?
A: 手帳が交付されてからの適用となります。申請中の段階では加算されません。
Q: 児童が高校を卒業したら加算はどうなりますか?
A: 18歳の年度末(3月31日)で児童養育加算と母子加算は終了します。速やかにケースワーカーに報告してください。

Q: 期末一時扶助は何に使わなければいけませんか?
A: 使途に制限はありません。年末年始の特別な出費(年賀状、正月用品など)に充てることが想定されていますが、自由に使えます。
加算を最大限活用するためのアドバイス

1. 定期的な見直し
生活状況は変化します。定期的に自分が対象となる加算がないか確認しましょう。
- 年齢の節目(40歳、65歳など)
- 家族構成の変化
- 健康状態の変化
- 子どもの成長

2. ケースワーカーとの良好なコミュニケーション
加算の情報は、ケースワーカーとの対話から得られることが多いです。
- 定期訪問時に相談
- 状況変化を正直に報告
- 不明点は遠慮なく質問
3. 制度改正の情報収集
加算の基準額や要件は年度ごとに改正されることがあります。
- 福祉事務所からの通知を確認
- 支援団体の情報をチェック
- ケースワーカーに最新情報を確認
4. 証明書類の整理
必要な証明書類は常に手元に準備しておきましょう。
- 障害者手帳
- 母子健康手帳
- 戸籍謄本
- 在学証明書
- 医師の診断書
コピーを取って保管しておくと便利です。
まとめ

生活保護の加算制度は、受給者の個別の事情や必要性に応じて、基本的な保護費に上乗せする重要な仕組みです。
主な加算のまとめ
| 加算名 | 対象者 | 月額(目安) |
|---|---|---|
| 妊産婦加算 | 妊娠中・産後6ヶ月 | 約9,000円~14,000円 |
| 障害者加算 | 障害者手帳1級・2級等 | 約18,000円~27,000円 |
| 児童養育加算 | 18歳以下の児童養育 | 約6,000円~15,000円 |
| 母子加算 | ひとり親世帯 | 約23,000円~ |
| 介護保険料加算 | 65歳以上 | 実費相当額 |
| 期末一時扶助 | 全受給者(年1回) | 約14,000円~ |
| 冬季加算 | 全受給者(11月〜3月または10月〜4月) | 約3,000円~ |
重要なポイント
- 該当する加算は必ず申請する
- 状況変化は速やかに報告する
- 複数の加算を併給できる
- 遡及適用されない場合があるので早めの申請が重要
- 不明点はケースワーカーに相談
加算を適切に活用することで、より安定した生活を送ることができます。自分がどの加算の対象になるか確認し、遠慮なく申請しましょう。

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