生活保護を受給しながら子育てをされている方、またはこれから生活保護の申請を検討されている子育て世帯の方にとって、児童手当がどのように扱われるのかは非常に重要な問題です。
「児童手当をもらうと生活保護費が減らされるの?」「いつから収入として計算されるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、生活保護と児童手当の関係について、収入認定の方法や計算例、注意点まで詳しく解説します。ケースワーカーの方にも役立つ実務的な内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。
児童手当とは?生活保護受給者でももらえる制度

児童手当は、中学3年生(15歳到達後の最初の3月31日)までの子どもがいるすべての世帯に支給される国の制度です。
生活保護を受給していても、条件を満たせば児童手当を受け取ることができます。
これは児童扶養手当とは異なり、ひとり親世帯(母子家庭・父子家庭)に限定されていません。

両親が揃っている世帯でも支給対象となります。
児童手当の支給スケジュール
児童手当は年3回、4ヶ月分がまとめて振り込まれます。支給月と対象期間は以下の通りです:
- 2月支給:10月分・11月分・12月分・1月分
- 6月支給:2月分・3月分・4月分・5月分
- 10月支給:6月分・7月分・8月分・9月分
支給日は自治体によって異なりますが、多くの場合10日または15日に振り込まれます。
お住まいの市区町村の支給日を確認しておきましょう。
「何月分」という表現に注意!
児童手当について考える際は、年金と同様に「何月分」という言葉の意味に十分注意が必要です。

例えば「6月分の児童手当」と言った場合、2つの意味が考えられます:
- 6月に支給される児童手当(2月分・3月分・4月分・5月分)
- 10月に支給される児童手当のうち6月対象分
この区別を明確にしないと、収入認定の計算で混乱が生じます。
担当ケースワーカーでさえ混同している場合がありますので、常に「支給月」と「対象月」を明確に区別して会話することが重要です。

生活保護における児童手当の収入認定方法

生活保護を受給している場合、児童手当は収入として扱われ、生活保護費から差し引かれます。
しかし、いつから、どのように収入認定されるのかについては、いくつかのルールがあります。
収入認定が始まるタイミング
児童手当の収入認定は、生活保護開始後、または児童手当受給開始後、初めて児童手当の支給があった月から開始されます。
次の児童手当支給日は6月15日(2月分・3月分・4月分・5月分)の場合、6月から収入認定が開始されます。
3月に生活保護が開始されても、4月・5月はまだ児童手当の支給がないため、収入認定はされません。
6月分からの児童手当は10月15日(6月分・7月分・8月分・9月分)に初めて支給されます。
したがって、10月から収入認定されます。
児童手当の認定請求と受給開始時期
児童手当は、認定請求をした日の属する月の翌月分から支給されます。
例えば、5月に児童手当の認定請求をした場合、6月分から受給権が発生します。
この6月分の児童手当は、10月15日に初めて支給されることになります。
4ヶ月分まとめて支給されても、収入認定は1ヶ月ずつ
児童手当は4ヶ月分が一括で振り込まれますが、生活保護における収入認定は1ヶ月分ずつ分割して行われます。
これは非常に重要なポイントです。
- 2月分15,000円 → 6月の生活保護費から差し引き
- 3月分15,000円 → 7月の生活保護費から差し引き
- 4月分15,000円 → 8月の生活保護費から差し引き
- 5月分15,000円 → 9月の生活保護費から差し引き
このように、一括で支給された児童手当を4ヶ月に分けて収入認定します。
児童手当に控除はない
児童手当の収入認定において、給与収入のような控除はありません。

給与収入の場合は、基礎控除や必要経費控除が認められますが、児童手当は支給額の全額が収入として扱われ、その分だけ生活保護費が減額されます。
最低生活費20万円、3歳未満の子ども1人の場合
最低生活費200,000円 − 児童手当15,000円 = 生活保護支給額185,000円
児童手当の15,000円がそのまま差し引かれ、その月の生活保護費は185,000円となります。
【重要】児童手当の支給額一覧
児童手当は、対象児童の年齢と子どもの人数(第何子か)によって支給額が変わります。
正確な金額を把握することが、適切な収入認定につながります。
年齢・子どもの順序別の支給額
| 対象児童 | 月額支給額 |
|---|---|
| 3歳未満(3歳の誕生月まで) | 15,000円 |
| 3歳〜小学校卒業までの第1子・第2子 | 10,000円 |
| 3歳〜小学校卒業までの第3子以降 | 15,000円 |
| 中学生(中学校卒業まで) | 10,000円 |
「第何子」のカウント方法
児童手当における「第1子」「第2子」「第3子以降」の数え方には、特別なルールがあります。
18歳到達後の最初の3月31日までの間にある児童を含めて数えます。
つまり、高校3年生までの子どもを含めて「第何子」かを判定します。
ただし、18歳を過ぎて最初の3月31日を迎えた後(大学生など)はカウントに含めません。
支給額の具体例
- 高校2年生 → 第1子だが支給対象外(中学卒業済み) 0円
- 中学3年生 → 第2子、中学生 10,000円
- 中学1年生 → 第3子、中学生 10,000円
- 小学5年生 → 第4子(第3子以降)、小学生 15,000円
合計:35,000円/月
解説:中学1年生は第3子ですが、年齢が中学生のため支給額は10,000円です。
小学5年生は第3子以降に該当し、かつ小学生なので15,000円となります。
- 小学4年生 → 第1子、小学生 10,000円
- 2歳 → 第2子だが3歳未満 15,000円
- 0歳 → 第3子、3歳未満 15,000円
合計:40,000円/月
解説:2歳の子は第2子ですが、3歳未満のため15,000円が支給されます。
年齢による金額設定が優先されます。
- 19歳 → カウントに含めない(18歳到達後の最初の3月31日を経過)
- 中学3年生 → 第1子、中学生 10,000円
- 小学6年生 → 第2子、小学生 10,000円
合計:20,000円/月
解説:19歳の大学生は、18歳到達後の最初の3月31日を過ぎているため、第何子かを数える際に含まれません。そのため、中学3年生が第1子、小学6年生が第2子となります。
ケースワーカー必見!児童手当収入認定時の注意点

担当ケースワーカーの方々にとって、児童手当の収入認定は慎重に扱うべき事項です。
認定漏れや認定ミスがあると、後から返還金が発生し、受給者に大きな負担をかけることになります。
1. 子どもの誕生日による支給額の変更
最も注意すべきポイントは、子どもの誕生日による支給額の変動です。
- 3歳の誕生月:15,000円 → 10,000円(または15,000円)に変更
- 小学校卒業後の4月:10,000円または15,000円 → 10,000円に変更
- 中学校卒業後の4月:10,000円 → 0円(支給終了)
これらの変更時期を見逃すと、収入認定額が誤ったままとなり、後から調整が必要になります。
2. 兄弟姉妹の年齢による「第何子」の変動
18歳到達後の最初の3月31日を過ぎた兄姉がいる場合、翌年度から下の子どもたちの「第何子」が繰り上がります。
これにより支給額が変わる可能性があります。
3. 新たに子どもが生まれた場合
世帯に新しい子どもが生まれると
- 新しい子の児童手当が追加される
- 既存の子どもの「第何子」が変更される可能性がある
- 支給額が変動する可能性がある
出生届と同時に児童手当の認定請求がなされるため、情報共有を確実に行いましょう。
4. 定期的な確認の重要性
児童手当の支給月(2月・6月・10月)の前後には、必ず以下を確認しましょう:
- 対象児童の年齢と人数
- 正確な支給額
- 収入認定の計算が正しく行われているか
確認を怠ると、数ヶ月後に大きな返還金が発生し、受給者の生活に深刻な影響を与える可能性があります。
よくある質問(Q&A)

Q1. 児童手当を受け取ると、生活保護は打ち切られますか?
A:いいえ、打ち切られません。児童手当は収入として認定され、その分だけ生活保護費が減額されるだけです。児童手当だけで生活保護の最低生活費を超えることはほとんどないため、生活保護は継続します。
Q2. 児童手当の振込通知をケースワーカーに報告する必要はありますか?
A:はい、必要です。生活保護を受給している場合、すべての収入について福祉事務所に報告する義務があります。児童手当が振り込まれたら、速やかに担当ケースワーカーに連絡しましょう。
Q3. 児童手当の使い道は制限されますか?
A:生活保護制度上、児童手当の使い道に特別な制限はありません。ただし、収入として認定されるため、実質的には生活保護費の一部として生活費に充てることになります。
Q4. 過去に遡って児童手当が支給された場合はどうなりますか?
A:遡及して支給された児童手当も収入として認定されます。該当する月に遡って収入認定が行われ、生活保護費の返還が必要になる場合があります。
まとめ:児童手当と生活保護の適切な理解が大切

生活保護を受給しながら児童手当を受け取ることは、制度上認められています。
しかし、収入認定のルールを正しく理解していないと、思わぬトラブルや返還金の発生につながる可能性があります。

本記事のポイント:
- 児童手当は4ヶ月分まとめて支給されるが、収入認定は1ヶ月ずつ
- 初回支給月から収入認定が開始される
- 控除はなく、全額が収入として扱われる
- 子どもの年齢や人数によって支給額が変わる
- 「第何子」のカウント方法に注意が必要
- 誕生日や進学による支給額の変更に注意
受給者の方は、児童手当の支給があったら必ず担当ケースワーカーに報告してください。
ケースワーカーの方は、対象児童の年齢変化や家族構成の変更を定期的にチェックし、適切な収入認定を心がけてください。
不明な点があれば、お住まいの地域の福祉事務所や担当ケースワーカーに遠慮なく相談しましょう。
正しい知識と適切な手続きで、安心して制度を利用することができます。

