教育扶助とは生活保護制度で定められている8種類の扶助の1つです。
教育扶助の項目は広義的には下記のとおり全部で3項目あります。
2.義務教育に伴って必要な通学用品
3.学校給食その他義務教育に伴って必要なもの
教育扶助の趣旨
教育扶助とは義務教育(小学校、中学校)の教育費に充てるための扶助です。
小学生未満の保育園・幼稚園児は対象外です。
また、中学校卒業しても対象外になります。
つまり、高校生・大学生は対象外と言うことになります。
では、生活保護受給者は高校・専門学校・大学に通うことはできないのか?と心配になると思います。
結論から言うと、高校生の教育費については生業扶助から出ます。
生業扶助も教育扶助と同様に8つの扶助の1つで、世帯の収入増加、又は自立を助長する上で必要な費用に充てるための扶助です。
最近は、高校無償化がされるなど、高校も義務教育と同様に必要なものと国が認めています。
また、実際の就職活動においても、高校まで卒業しておかないと、ほとんどの職に就くことができないことから、高校までの教育費は生活保護費から支給されるため、安心してください。
ただし、残念ながら専門学校・大学についての費用は生活保護費からは支給されません。
そのため、専門学校・大学に行きたい場合は奨学金制度を利用したり、アルバイトをして、生活費と学費を稼いで通う必要があります。
教育扶助の支給方法
教育扶助の支給方法は現金支給です。
ただし、教育扶助の中でも、支出する項目によっては、原則は現物支給のものもあります。
しかし、どこの福祉事務所も実際は現金を支給しているので、全て現金支給と考えて問題ありません。
なお、支給日については、毎月の生活保護費に含まれて支給されるものと、一時扶助として追加支給されるものがあります。
教育扶助の金額
教育扶助基準は下記のとおり全部で5項目あり、それぞれの項目に応じた金額が支給されます。
これらの項目は小学校、中学校共通です。
2.教材代
3.学校給食費
4.通学のための交通費
5.学習支援費
福祉事務所によっては上記に加えて6.学級費等が支給されることがあります。
ではそれぞれの項目について説明します。
基準額
基準額とは学用品費(鉛筆やノート等)やその他の教育費(遠足や社会見学等)に充てるために支給されるお金です。
小学校2,600円、中学校5,100円が、それぞれ全国一律で上記の金額が毎月支給されます。
例えば小学生の子供が1人、中学生の子供が2人いる場合、
2,600円×1人+5,100円×2人=12,800円
となるため、毎月の生活保護費に教育扶助として12,800円が上乗せされて支給されています。
教材代
教材代とは学校の教科書等の購入に充てるために支給されるお金です。
学校が指定する正規の教材代が全額支給されます。
そのため、教科書以外にも全児童が必ず購入することになっている副読本的図書、ワークブック、和洋辞典、楽器も支給対象です。
例えば小学校から「新レインボー小学国語辞典 改訂第6版」を購入するように指定があった場合、「新レインボー小学国語辞典 改訂第6版」の教材代は支給されます。
しかし、より専門的な広辞苑とか、英語を習わせたいからと英和辞典を親の判断で購入した場合は教材代は支給されず、自己負担となります。
教材代は基本的に年1回のみ支給されます。
そのため、教科書等を紛失してしまった場合についても、自己負担となります。
支給を受ける場合は実際に購入が必要な教材の見積書又は領収書を福祉事務所に提出する必要があるため、必ず捨てずに取っておきましょう。
学校給食費
学校給食費とは保護者が負担すべき給食費に充てるために支給されるお金です。
学校から請求される給食費全額が毎月支給される生活保護費と一緒に支給されます。
なお、転校した学校の給食費が今まで通っていた学校と異なる場合は転校先の学校に合わせた支給金額に変わります。
例えば、転校前の学校が3,000円、転校後の学校が4,000円の場合は学校給食費は4,000円に増額されます。
逆に転校前の学校が3,000円、転校後の学校が2,000円の場合は学校給食費は2,000円に減額されます。
このように差額を自己負担する心配はありませんし、差額分を別のことに使うこともできません。
通学のための交通費
通学のための交通費とは通学費に充てるために支給されるお金です。
通学に必要な最小限度の額が全額支給されます。
そのため、特急料金等は出ません。
また、電車などの定期券を購入する必要がある場合、最も経済的な6ヶ月定期を購入する必要があります。
1ヶ月定期、3ヶ月定期でも支給されないわけではありませんが、原則は6ヶ月定期のため、6ヶ月定期以外を購入する場合は、担当ケースワーカーに相談する必要がありますので、気をつけましょう。
また、途中で不登校になった場合は返還金が発生する可能性があるため注意が必要です。
例えば2ヶ月間不登校の場合、この2ヶ月分の交通費については、支給する必要がないため、返還金として処理される可能性があります。
なぜなら、生活保護者の中には、定期券を購入した後に、すぐに払い戻しをして、そのお金を別のことに使う人もいるからです。
そのような不正受給を防ぐために、理由はどうであれ、不登校期間が長期に及ぶ場合、支給後の通学費については返還金として処理される可能性があるので気をつけましょう。
学習支援費
学習支援費とは上記2.教材代を除く学習参考書等の購入費や課外のクラブ活動の費用に充てるために支給されるお金です。
以前は部活動等をする子もしない子も関係なく、毎月決まった金額が支給されていましたが、法改正により、年間上限額の範囲内において、必要な都度、申請をすることで、支給されます。
年間上限額は小学校16,000円以内、中学校59,800円以内と定められており、この年間上限額は全国一律となっています。
学級費等
学級費等とは学級費、生徒会費及びPTA会費等に充てるために支給されるお金です。
支給金額は小学校850円以内、中学校770円以内と定められており、全国一律で上記の金額を上限として毎月支給されます。
基準額とは異なり定額支給ではなく、上限金額が定められており、その範囲内での支給になります。
例えば小学校の生徒会費及びPTA会費等が500円の場合は500円が学級費として支給され、生徒会費及びPTA会費等が1,000円の場合は上限の850円が支給されます。
まとめ
生活保護制度で定められている8種類の扶助のうち、教育扶助の基準・金額・対象について、ご紹介させていただきました。
子を持つ親は、我が子が十分に教育を受けることができるのか?非常に気になると思います。
教育扶助では教科書代や交通費など、義務教育を受けるうえで必要最低限の費用が支給されるのはもちろんですが、生活保護を受給していると、遠慮してしまいがちな部活動にかかる費用についても生活保護費として支給されます。
残念ながら塾や習い事の費用は出ませんが、教育扶助によって十分な教育を受けられる環境を用意することはできるので、安心してください。