生活保護の受給が開始すると、8つの扶助を受けることができます。
この8つの扶助のうち、医療扶助を利用することで、生活保護受給者は無料で病院を受診することができますが、それには福祉事務所で手続きをする必要があります。
そこで、このページでは、生活保護受給者が病院を受診する場合の流れや手続き方法、その他、注意事項など、生活保護受給者の通院に関するあらゆる疑問にお答えします。
初めての病院受診には医療券が必要
生活保護の受給を開始してから、初めて病院に受診する場合は医療券が必要です。
また、医療券は1度発行されたら、全ての病院に行けるわけではなく、病院ごとに医療券を発行してもらう必要があります。
例えばA病院とB病院に行く場合は、A病院の医療券とB病院の医療券それぞれを発行してもらう必要があります。
医療券の手続き方法は、福祉事務所に行って、担当ケースワーカーに依頼すれば発行してくれます。
医療券を発行するには、
・受診する病院名
・受信する日
が必ず必要になるため、この2点だけは、決めて福祉事務所に行きましょう。
手続き自体は混んでいなければ5分程度で終わります。
そして、発行された医療券を持って病院に行けば無料で受診ができますし、クスリも無料でもらうことができます。
なお、病院を受診する前に福祉事務所に行って、医療券を発行してもらうのが原則ですが、福祉事務所が遠い場合など、直接行けない場合は、病院に行く前に電話で医療券の発行を依頼することも可能です。
病院受診後に福祉事務所に連絡することも可能ですが、この方法が取れるのは、生活保護の証明書を発行している福祉事務所場合に限られます。
福祉事務所によっては、生活保護の証明書を発行していないところもあるため、その場合は、病院側が受診した方が生活保護受給者かどうかを判断することができないため、受診料を請求されてしまいます。
後日、医療券が病院に届いたら、受診料は返還されますが、それまでの期間は自己負担しなければいけないので、その点は注意しましょう。
2回目以降の病院受診は手続き不要
医療券を1度発行した病院であれば、2回目以降の受診は福祉事務所での手続きは不要です。直接病院に行って受診することが可能です。
そのため、うつ病の方やケガをした場合等は定期的な通院が必要ですが、何度も福祉事務所に行って手続きをする必要はなく、最初に1回だけ医療券発行手続きを行えば、後は福祉事務所の方で自動的に医療券を更新するため、特段何もする必要はありません。
長期間病院受診しない場合は再度医療券の発行手続きが必要
1度行った病院に定期的に通う場合は、医療券が自動的に更新されるため、医療券の発行手続きをする必要がありませんが、長期間受診しなかった場合は、医療券の期限が切れるため、同じ病院を受診する場合でも、再度医療券発行手続きが必要です。
例えばA病院を1度受診して、その半年後に再度A病院を受診する場合は、医療券の期限が切れているため、同じA病院を受診する場合でも、再度福祉事務所に行って医療券を発行してもらう必要があります。
休日・夜間等の救急は後日医療券の手続きをすれば良い
土日祝日や夜間など、福祉事務所が閉まっている時や救急で病院に行かなければいけない時があります。
そういう場合は、事前に医療券の発行手続きをすることはできないため、直接病院に行って受診することができます。
後日、福祉事務所があいている時に電話等で、受診日と受診した病院を伝えて医療券を発行してもらえば通常の通院と同様に受診料等は無料になります。
手術・入院をする場合の手続き
病気によっては、手術や入院をする場合があります。
手術に関しては、特にケースワーカーに報告する必要はありません。
その他の治療と同様に、一度医療券を発行していれば、癌などの手術も無料で受けることができます。
しかし、入院する場合は、入院用の医療券に切り替える必要があるためケースワーカーに報告する必要があります。
また、入院する場合は、2つ注意点があります。
1つ目の注意点は、個室代(差額ベット代)については、医療扶助の対象外、つまり自己負担となります。
生活保護受給者には「医療に掛かるお金は全部生活保護費から出るから個室で良いや」と勘違いされている方がいますが、その個室代は全額自己負担になります。
後日、個室代の支払いを病院に免除、もしくは福祉事務所に立替えを依頼しても、病院も福祉事務所もどうすることもできません。
2つ目の注意点は、入院期間が1ヶ月を超えると、毎月支給される生活保護費が減額されます。
入院期間中は食費等が医療扶助から支給されるため、生活保護費のうち、食費等として支払われている生活扶助費が居宅基準から入院基準に変更されます。
複数世帯の場合は、片方が入院しても、片方が居宅のままなら、そこまで毎月の生活保護費は減額されませんが、単身世帯の場合は、劇的に生活保護費が減額されてしまい、場合によっては、返還金まで発生する場合があります。
セカンドオピニオンは受けられない
生活保護受給者は医療券を発行してもらうことで、様々な病院を受診することができますが、1つの科につき1病院しか受診することはできません。
そのため、複数の医者の意見を聞くことを、セカンドオピニオン、サードオピニオンと言いますが、生活保護受給者の場合、このセカンドオピニオン・サードオピニオンは受けることができません。
例えば内科、皮膚科、歯科、耳鼻咽喉科など、複数の病院を受診することはできますが、皮膚科のA病院に通院している場合、同じく皮膚科のB病院を受診することはできません。
総合病院に行きたい場合は、現在通院している病院と同じ科でなければ受診することができます。
例えば現在、整形外科のA病院に通院している場合、総合病院の整形外科を受診することはできませんが、総合病院の泌尿器科を受診することはできます。
病院を変えたい場合の手続きは?
1つの科につき1病院しか受診することはできませんが、福祉事務所で手続きをすることで病院を変えることは可能です。
例えばうつ病で精神科のA病院に通っていたが、先生が合わず、別の精神科のB病院を受診したい場合は福祉事務所に行ってA病院の医療券を停止し、新たにB病院の医療券を発行してもらうことで、病院を変えることはできます。
あくまで同時期に同科の複数の病院に受診することができないだけで、受診する病院は自由に変更することができます。
病院は指定医療機関に限定される
生活保護受給者が受診できる病院は指定医療機関に限定されます。
ほとんどの病院は指定医療機関になっているので、大抵の病院は受診することができますが、中には指定医療機関に入っていない病院もあります。
指定医療機関に入っていない病院については、医療扶助が利用できないため、もし受診する場合は治療費全額を自己負担で支払う必要があります。
「絶対にこの病院を受診したいから3割負担してでも行く!」と言われる方がたまにいますが、残念ながら生活保護受給者の場合は3割負担ではなく、10割負担です。
医療費が3割負担になるのは、国民健康保険や健康保険に加入している場合です。
生活保護受給者は医療扶助があるため、国民健康保険にも健康保険にも加入していません。
そのため、医療扶助が適用できない病院を受診する場合は、医療費負担は3割ではなく、10割負担となるため、実質的に指定医療機関しか受診することはできません。
先進医療は受けられない
生活保護の医療扶助の適用される治療行為の範囲は国民健康保険の保険給付の対象となるサービスと同じ内容です。
そのため、高度先進医療など、国民健康保険の保険給付対象外となるサービスは受けることができません。
なお、生活保護受給者は生命保険に加入することができないため、高度先進医療を保険で賄うと言うこともできません。
病院側が受診を嫌がる場合がある
生活保護受給者を診察するかどうかは、病院側の裁量に委ねられています。
そのため、生活保護受給者が受診したいと願っても、病院側が受診したくない、と受診を嫌がられたら、諦めるしかありません。
生活保護受給者の中には病院で暴れたり、医師や看護師に暴言を吐いたり、薬の用法用量を守らない方がいます。
そういう方の情報はブラックリストに載り、共有されますので、受診拒否される場合があります。
また、以前、別の生活保護受給者から、嫌なことをされたため、生活保護受給者全般に対して悪い印象を持たれている場合もあります。
それが原因で、何もしていないのに、医師や看護師から嫌な態度を取られることもあるかもしれません。
「私は何もしていないのになんで!?」と思うかもしれませんが、何度も通院していたら、自然と人間関係ができますので、最初は辛いかもしれませんが、割り切りましょう。
まとめ
生活保護受給者が病院を受診する場合の流れや手続き方法、その他、注意事項などについて、詳しくご紹介させていただきました。
初めて受診をする場合、一度福祉事務所で手続きをしないといけないため、最初は面倒だと思いますが、すぐに慣れると思います。
また、手続きを忘れて受診をしても、後から手続きをすれば良いため、そこまで神経質になる必要はありません。
入院する場合は、個室代(差額ベッド代)が出ないことと、入院期間が1ヶ月を超えると生活保護費が減るので、そこだけ注意しておけば、特に心配はありませんので、ご安心下さい。
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