「生活保護を受けていると税金はどうなるの?」「生活保護費に税金はかかる?」生活保護を受給している方、またはこれから申請を考えている方にとって、税金の扱いは重要な関心事です。
結論から言うと、生活保護費自体には税金はかかりません。
また、受給者には様々な税制上の優遇措置があります。
しかし、すべての税金が免除されるわけではなく、非課税となる税金と課税される税金があるため、正確な知識が必要です。
本記事では、生活保護と税金の関係について、所得税・住民税・消費税などの扱い、非課税証明書の取得方法、就労した場合の税金、よくある誤解と正しい知識まで、網羅的に解説します。
受給者の方が安心して生活できる実践的な情報をお届けします。
生活保護費に税金はかかるのか?

生活保護費は非課税所得
生活保護費には一切税金がかかりません。
これは所得税法第9条第1項第3号に明記されています。
所得税法第9条(非課税所得) 「次に掲げる所得については、所得税を課さない。 三 生活保護法の規定により支給を受ける保護金品」
つまり、生活保護費として受け取った金額は、所得として計算されず、所得税も住民税もかかりません。
なぜ生活保護費は非課税なのか
生活保護費が非課税とされる理由は、生活保護制度の趣旨にあります。
生活保護法第1条(目的) 「この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」
最低限度の生活を保障するための給付金に税金を課したのでは、保障の意味がなくなってしまいます。そのため、生活保護費は法律で非課税と定められています。

対象となる保護費の種類
以下の生活保護における各種扶助は、すべて非課税所得です。
生活扶助:食費、被服費、光熱費などの日常生活費
住宅扶助:家賃
教育扶助:子どもの義務教育にかかる費用
医療扶助:医療費(現物給付)
介護扶助:介護サービス費用(現物給付)
出産扶助:出産にかかる費用
生業扶助:就労に必要な技能習得費用など
葬祭扶助:葬儀費用
これらすべてが非課税であり、確定申告の必要もありません。
生活保護受給者が非課税になる税金

所得税
生活保護費は非課税所得のため、生活保護のみで生活している場合、所得税は一切かかりません。
ただし、以下の場合は注意が必要です。
就労収入がある場合
生活保護を受けながらアルバイトやパートで働いている場合、その就労収入には通常の所得税がかかります。ただし、年間の給与収入が103万円以下であれば、基礎控除により所得税はかかりません。

年金と併給している場合
老齢年金などを受給しながら、その不足分を生活保護で補っている場合、年金収入には通常の所得税がかかる可能性があります。ただし、公的年金控除があるため、多くの場合は非課税となります。

住民税(市県民税・都道府県民税)
生活保護受給者は、住民税が非課税となります。
これは地方税法第24条の5および第295条に規定されています。
住民税非課税の根拠
- 地方税法第295条第1項:「生活保護法の規定による生活扶助を受けている者」は、住民税を課さない
非課税の内容
- 均等割(一律約5,000円):非課税
- 所得割(所得に応じた金額):非課税
これにより、生活保護受給者は住民税を一切支払う必要がありません。
国民健康保険料
生活保護受給者は、国民健康保険に加入できません。

医療扶助により医療費が全額公費負担されるため、国民健康保険に加入する必要がないからです。

したがって、国民健康保険料の支払いは不要です。
介護保険料
65歳以上の第1号被保険者は、生活保護受給者であっても介護保険に加入しますが、介護保険料は全額免除されます(生活扶助に介護保険料加算が含まれる形で公費負担)。

40歳~64歳の第2号被保険者は、生活保護受給中は国民健康保険に加入しないため、介護保険料の負担もありません。
NHK受信料
NHK受信料は税金ではありませんが、生活保護受給者は全額免除されます。

免除の手続き
- 福祉事務所で「生活保護受給証明書」を発行してもらう
- NHKの窓口に「放送受信料免除申請書」と証明書を提出
- 免除が認められる
固定資産税・都市計画税
生活保護受給者でも、不動産を所有している場合は固定資産税が課税されます。
ただし、以下のようなケースがあります。
持ち家に居住している場合
生活保護法では、資産価値が低く処分するよりも住み続けた方が良いと判断される持ち家については、保有が認められます。この場合、固定資産税は生活保護費(住宅扶助)から支払うことになります。

減免制度の活用
多くの自治体では、生活保護受給者に対して固定資産税の減免制度を設けています。減免率は自治体によって異なりますが、50%~100%(全額免除)のケースが多いです。
手続き方法:
自治体の税務課に「固定資産税減免申請書」を提出します。必要書類は生活保護受給証明書などです。
自動車税・軽自動車税
原則として、生活保護受給者は自動車を保有できません(処分指導される)。

ただし、以下の例外があります。
自動車保有が認められるケース
- 障害者が通勤・通院に使用する場合
- 公共交通機関がない地域で通勤に必要な場合
- 事業用車両(自営業者)
このような例外的に自動車保有が認められた場合でも、自動車税・軽自動車税は通常通り課税されます。
税金は生活保護費から支払うことになります。

ただし、一部の自治体では、生活保護受給者に対する自動車税の減免制度を設けている場合もあります。
生活保護受給者が課税される税金

消費税
消費税は課税されます。
生活保護受給者であっても、買い物をすれば消費税を支払う必要があります。
これは、消費税が「消費行為」に対して課される間接税であり、所得の有無や種類に関係なく課税されるためです。
消費税の扱い
生活保護費の算定には、消費税分も考慮されています。つまり、生活保護費は「消費税込み」の金額で計算されているため、実質的な不利益はないとされています。
印紙税
契約書や領収書などに貼る印紙税は、生活保護受給者でも必要に応じて支払います。
ただし、日常生活で印紙税が必要となるケースはほとんどありません。
相続税・贈与税
生活保護受給者が相続や贈与を受けた場合、相続税や贈与税は通常通り課税されます。

ただし、相続や贈与により一定額以上の資産を取得した場合、生活保護の要件を満たさなくなり、保護が廃止される可能性があります。
基礎控除額
- 相続税:3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数
- 贈与税:年間110万円
これらの基礎控除内であれば、税金はかかりません。
たばこ税・酒税
たばこ税や酒税は、商品の価格に含まれているため、購入すれば自動的に負担することになります。消費税と同様、特別な免除はありません。


非課税証明書の取得と使い道

非課税証明書とは
非課税証明書(所得証明書、課税証明書とも呼ばれる)は、住民税が非課税であることを証明する公的書類です。
生活保護受給者は、この非課税証明書を取得することで、様々な減免制度を利用できます。
非課税証明書の取得方法
取得場所
- 住民登録のある市区町村の税務課、市民課窓口
- 一部の自治体ではコンビニ交付も可能
必要なもの
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 手数料(200円~400円程度、自治体によって異なる)
手数料の免除
多くの自治体では、生活保護受給者は非課税証明書の発行手数料が免除されます。窓口で生活保護受給証明書を提示してください。
非課税証明書の使い道
非課税証明書は、以下のような場面で必要になります。
公営住宅の申し込み: 入居資格の確認や家賃の算定に使用
保育料の減免: 保育園の保育料は非課税世帯で無料または大幅減額
医療費の減免: 一部の医療機関や自治体の医療費助成制度の申請
奨学金の申請: 給付型奨学金の申請時に所得証明として必要
各種減免申請: NHK受信料、携帯電話料金、上下水道料金などの減免申請
就労した場合の税金の扱い

就労収入と生活保護の関係
生活保護を受けながら働くことは可能であり、むしろ自立支援の観点から推奨されています。

就労収入の扱い
- 就労収入を福祉事務所に申告
- 基礎控除(収入に応じた一定額)を差し引く
- 残額を「収入認定」として生活保護費から減額
基礎控除の例
- 月収3万円:基礎控除約1.5万円 → 収入認定1.5万円
- 月収5万円:基礎控除約2万円 → 収入認定3万円
- 月収10万円:基礎控除約3万円 → 収入認定7万円

年収103万円の壁
生活保護受給者が就労する場合、給与所得控除55万円+基礎控除48万円=103万円までの年収であれば、所得税はかかりません。
具体例: 月収8万円 × 12ヶ月 = 年収96万円 → 所得税0円、住民税0円(生活保護受給者のため)
ただし、年収が103万円を超えると所得税が発生します。
住民税の扱い
生活保護受給中は、就労収入があっても住民税は非課税です。
生活保護から自立し、保護が廃止された後も、一定期間(通常は廃止翌年度)は住民税が非課税となることがあります。

確定申告は必要か
生活保護費のみの場合
確定申告は不要です。生活保護費は非課税所得のため、申告する所得がありません。
就労収入がある場合
- 給与収入のみで、年末調整を受けていれば確定申告は不要
- 複数の勤務先から給与を受けている場合は確定申告が必要
- 医療費控除などを受ける場合は確定申告をすることで還付を受けられる可能性
年金収入がある場合
公的年金のみで年間400万円以下、かつ他の所得が20万円以下であれば、確定申告は不要です。
よくある誤解と正しい知識

誤解1:生活保護を受けると一生税金を払わなくていい
正しい知識: 生活保護受給「中」は多くの税金が非課税ですが、保護から自立して収入を得るようになれば、通常通り税金を納める必要があります。
また、消費税など一部の税金は、受給中でも支払っています。
誤解2:生活保護費をもらっているのに税金を払うのはおかしい
正しい知識: 生活保護費自体に税金はかかりませんが、消費税のように「消費行為」に課される税金は、誰でも平等に負担します。これは、生活保護費の算定に消費税分も含まれているためです。
誤解3:就労したら全額税金で取られる
正しい知識: 就労収入には基礎控除があり、収入の一部は手元に残ります。また、所得税は年収103万円まで非課税、住民税は生活保護受給中は全額非課税です。
具体例: 月収5万円の場合
- 基礎控除:約2万円
- 収入認定:3万円(この分だけ保護費が減額)
- 手元に残る:約2万円プラス
誤解4:生活保護を受けると固定資産税も免除される
正しい知識: 固定資産税は原則として課税されます。ただし、多くの自治体で減免制度があるため、申請すれば減免または免除される可能性があります。自動的に免除されるわけではないので、必ず申請が必要です。
誤解5:生活保護費で貯金すると脱税になる
正しい知識: 生活保護費を貯金すること自体は、一定の範囲内であれば問題ありません(目安として生活保護費の0.5ヶ月分程度)。ただし、過度に貯蓄すると資産認定され、保護が減額または廃止される可能性があります。これは税金の問題ではなく、生活保護の要件の問題です。

生活保護と税金に関する特例措置

災害被災者に対する特例
災害により被害を受けた生活保護受給者には、以下の特例があります。
税金の減免・猶予
- 固定資産税の減免
- 住民税の減免(すでに非課税だが、災害前に課税されていた場合)
生活保護費の特別支給
- 災害時の被服費、家具什器費などの一時扶助
医療費控除との関係
生活保護受給者は医療扶助により医療費が全額公費負担されるため、自己負担がありません。
したがって、医療費控除を受ける必要もありません。
ただし、就労収入があり所得税が発生する場合で、医療扶助の対象外の医療費(自由診療など)を支払った場合は、医療費控除の対象となる可能性があります。

障害者控除・寡婦(夫)控除
生活保護受給者でも、以下の控除を受けられる場合があります。
障害者控除
障害者手帳を持っている場合、所得税・住民税の計算で障害者控除が適用されます(生活保護受給中は住民税非課税のため関係ありませんが、自立後に影響)。
寡婦(夫)控除
配偶者と死別または離婚し、扶養親族がいる場合などに適用されます。
これらの控除は、就労収入があり所得税が発生する場合や、保護から自立した後に重要になります。
生活保護から自立した後の税金

保護廃止後の税金の扱い
生活保護から自立し、保護が廃止された後は、通常通り税金を納める必要があります。
所得税
- 就職した月から源泉徴収が始まる
- 年末調整または確定申告で精算
住民税
- 保護廃止の翌年6月から課税開始
- 前年の所得に基づいて計算される
国民健康保険料(または社会保険料)
- 就職先で社会保険に加入する場合は、給与から天引き
- 自営業などの場合は、国民健康保険に加入し保険料を支払う
保護廃止後の経過措置
生活保護から自立した場合、急激な負担増を避けるため、一部の自治体では以下のような経過措置を設けています。
国民健康保険料の減免: 保護廃止後2年間、保険料が減免される制度(自治体による)
住民税の減免: 保護廃止後1年間、住民税が減免される制度(自治体による)
固定資産税の継続減免: 保護廃止後も一定期間、固定資産税の減免が継続される場合(自治体による)
自立後の家計管理
保護廃止後は、税金や社会保険料の負担が増えるため、計画的な家計管理が重要です。
想定すべき支出増
- 所得税・住民税:年収300万円で年間約20万円
- 国民健康保険料:年間約30万円(年収300万円の場合、自治体により異なる)
- 国民年金保険料:年間約20万円
合計で年間約70万円(月額約5.8万円)の負担増となります。
よくある質問(FAQ)

Q1:生活保護費には税金がかかりますか?
A:いいえ、生活保護費自体には一切税金がかかりません。所得税法で非課税所得と定められており、確定申告の必要もありません。
Q2:生活保護を受けていると住民税も払わなくていいのですか?
A:はい、生活保護受給者は地方税法により住民税が全額非課税となります。均等割も所得割も課税されません。
Q3:消費税は免除されますか?
A:いいえ、消費税は買い物をすれば誰でも支払います。ただし、生活保護費の算定には消費税分も考慮されているため、実質的な不利益はないとされています。
Q4:生活保護を受けながらアルバイトをしていますが、税金は払う必要がありますか?
A:就労収入が年間103万円以下であれば所得税はかかりません。住民税は生活保護受給中は非課税です。ただし、就労収入は福祉事務所に申告し、収入認定される必要があります。

Q5:固定資産税の減免を受けるにはどうすればいいですか?
A:自治体の税務課に「固定資産税減免申請書」を提出します。生活保護受給証明書が必要です。減免率は自治体によって異なるため、詳細は税務課に確認してください。
Q6:生活保護を受けていると、相続税も免除されますか?
A:いいえ、相続税は通常通り課税されます。ただし、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)内であれば税金はかかりません。また、相続により資産を取得すると、生活保護が廃止される可能性があります。
Q7:NHK受信料は払わなくてもいいのですか?
A:生活保護受給者は全額免除されます。ただし、自動的に免除されるわけではなく、福祉事務所で証明書を発行してもらい、NHKに申請する必要があります。
Q8:生活保護から自立したら、すぐに税金を払うのですか?
A:所得税は就職した月から源泉徴収されます。住民税は前年の所得に基づくため、保護廃止の翌年6月から課税されます。一部の自治体では、自立後の経過措置として減免制度を設けています。
まとめ:生活保護と税金の正しい理解を

重要ポイントの再確認
生活保護費自体には税金はかからず、所得税法で非課税所得と定められています。確定申告の必要もありません。
住民税は全額非課税で、均等割も所得割も課税されません。これは地方税法で明確に規定されています。
消費税など一部の税金は支払いますが、生活保護費の算定に考慮されているため、実質的な不利益はありません。
固定資産税は原則課税されますが、多くの自治体で減免制度があります。必ず申請手続きが必要です。
就労収入がある場合は基礎控除後に収入認定され、所得税は年収103万円まで非課税、住民税は受給中は全額非課税です。
最後に
生活保護と税金の関係を正しく理解することで、不安なく生活保護制度を利用し、自立に向けた就労活動にも前向きに取り組むことができます。
税金に関して不明な点や疑問があれば、担当ケースワーカーや自治体の税務課に相談してください。また、税理士会が実施している無料税務相談なども活用できます。正しい知識を持って、安心して生活保護制度を利用しましょう。


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