生活保護は親や子供と暮らしている場合は、当然一緒に生活保護を受給することになるだろうと想像できますが、それが例えば友人・知人とシェアハウスを利用しているなど、同居人がいる場合はどうなるのでしょうか?
同居人がいる場合は、同居人全員が生活保護世帯にならなければいけないのでしょうか?それとも自分だけ生活保護に加入する、もしくは自分だけ生活保護を受けずに同居人だけ生活保護を受給すると言ったように、世帯を分けることは可能なのか?
気になるところだと思います。
そこで、このページでは、生活保護を申請または受給する際に同居人がいる場合はどういう取り扱いになるのか?
また、世帯を分ける場合は世帯分離という方法を取らなければいけないのですが、世帯分離の要件等について、詳しくご説明します。
原則は同居人も同一世帯と認定する
生活保護を受給する場合、原則としては親、子ども、知人、友人、恋人等関係なく、どういう間柄であっても一緒に暮らしていれば、同一世帯として認定されます。
そのため、同じ家に住んでいる以上、世帯員全員が生活保護を受給するか、世帯員全員が生活保護を受給しないか、のどちらかになります。
つまり、世帯員のうち、1人だけが生活保護を受給しなかったり、逆に1人だけ生活保護を受給すると言った取り扱いは基本的にできません。
同居人の有無は住民票ではなく生活実態で判断される
市役所の場合、選挙権の有無等の判断は基本的に住民票で判断するケースが多いですが、生活保護の場合、同居人がいるかどうかの判断は住民票ではなく、生活実態で判断されます。
例えば住民票では両親と子1人の世帯でも、子どもが住民票を移していないだけで、実態は両親だけで生活しているのであれば、子どもは世帯員としてみなされず、夫婦2人の世帯として認定されます。
同様に住民票では1人世帯でも、実態は恋人と暮らしているのであれば、本人とその恋人の2人世帯として認定されます。
なお、生活実態の把握方法は、訪問調査によって調べます。
生活保護が開始すると担当ケースワーカーが付き、世帯の訪問格付けに沿った定期訪問調査を実施します。
そして、訪問調査の結果、世帯員が増えていたら、その分、必要な生活費が増額するため、最低生活費を見直して、生活保護費を増やしますし、逆に世帯員が減っていたら、その分、必要な生活費が減額するため、生活保護費を減らします。
よくある例としては生活保護受給者が結婚したり、子どもを出産すれば世帯員が増えますし、逆に離婚等をすれば、世帯員が減ります。
このように、訪問調査によって、世帯の状況については、ケースワーカーから常にチェックされています。
同居人が反対したら生活保護の申請はできない
生活保護を申請する場合、同居人全員からの申請が必要なので、同居人のうち誰か1人でも「生活保護を受給したくない!」と言う人がいれば、生活保護を申請することはできません。
生活保護の申請があると、ケースワーカーは、その申請者が生活保護の受給条件を満たすどうかの調査をしなければいけません。
そして、その調査をするには、世帯員全員からの同意書が必要です。
世帯員全員からの同意書がなければ、福祉事務所は金融機関調査等を実施することができないため、その世帯が生活保護の条件を満たすかどうかを調べることはできません。
そのため、同居人の中に1人でも生活保護に反対する人がいると、申請要件を満たさないため、仮に明らかに生活保護の条件を満たす世帯であっても、生活保護を受給することはできません。
なお、これは水際作戦等とは全く意味合いが違うことに気をつけましょう。
福祉事務所が申請拒否をしているわけではなく、申請要件を満たしていないわけなので、申請者側に責任があります。
世帯分離により同居人を除いて生活保護を受給する方法もある
それでは、同じ家に住んでいたら、絶対に全員が生活保護を受給するしかないのか?と言いますと、例外規定もあります。
それが世帯分離です。
世帯分離により同居人を除いて生活保護を受給することも可能です。
ただし、世帯分離の条件は、かなり厳しいです。
- 世帯員のうちに、稼働能力があるにもかかわらず収入を得るための努力をしない等保護の要件を欠く者があるが、他の世帯員が真にやむを得ない事情によって保護を要する状態にある場合
- 要保護者が自己に対し生活保持義務関係にある者がいない世帯に転入した場合であって、同一世帯として認定することが適当でないとき
- 保護を要しない者が被保護世帯に当該世帯員の日常生活の世話を目的として転入した場合であって、同一世帯として認定することが適当でないとき
- 当該要保護者がいわゆる寝たきり老人、重度の心身障害者等で常時の介護又は監視を要する者であるとき
- その者を出身世帯員と同一世帯として認定することが出身世帯員の自立助長を著しく阻害すると認められるとき
- 5の場合で、6か月以上入院又は入所を要する患者等の出身世帯員のうち入院患者等に対し生活保持義務関係にない者が収入を得ており、当該入院患者等と同一世帯として認定することがその者の自立助長を著しく阻害すると認められるとき
- 同一世帯員のいずれかに対し生活保持義務関係にない者が収入を得ている場合であって、結婚、転職等のため1年以内において自立し同一世帯に属さないようになると認められるとき
- 救護施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム若しくは介護老人福祉施設、障害者支援施設又は児童福祉施設(障害児入所施設に限る。)の入所者(障害者支援施設については、重度の障害を有するため入所期間の長期化が見込まれるものに限る。)と出身世帯員とを同一世帯として認定することが適当でない場合
上記でも、かなり内容を省略したものなんですが、わかりにくいと思いますので、非常に簡単に説明すると介護や看病等、よほど特殊な状況でなければ、世帯分離は認められないと言うことです。
実際に世帯分離が認められるケースはほとんどなく、世帯分離が認められるのも下記に紹介する事例でしか、少なくとも私は見たことがありません。
世帯分離が適用されるのは大学等への進学がほとんど
世帯分離が認められるケースの大半は、高校卒業後、就職せずに大学や専門学校等に進学した世帯員を外すためのものが大半です。
本来、生活保護受給者が高校を卒業すると、就職して家族を養わなければいません。
そのため、大学等への進学は、世帯分離の条件のうち「1.世帯員のうちに、稼働能力があるにもかかわらず収入を得るための努力をしない等保護の要件を欠く者があるが、他の世帯員が真にやむを得ない事情によって保護を要する状態にある場合」に該当するため、大学生となる世帯員は世帯分離されます。
世帯分離によって、同じ家で今までどおり一緒に住み続けることができますし、その世帯は継続して生活保護を受給することができますが、大学生1人分の生活保護費は減額されます。
また、その大学生に関しては、生活保護受給者ではないため、医療扶助も適用されないことから、国民健康保険を支払わなければいけませんし、実際に病院に掛かった際にも治療費と薬代を支払わなければいけません。
なお、世帯分離によって生活保護から外れることは悪いことばかりではありません。
世帯分離された人が所有するのであればバイクや自動車の所有も認められることになります。
世帯分離されても年に1回は収入調査が実施される
世帯分離すると、生活保護受給者ではなくなるため、生活保護費もなくなりますし、制限もなくなりますが、同じ家に住んでいる以上、例えば電気・ガス・水道などの公共料金は共同で使用しているため、29条調査の対象になります。
常に調査されるわけではありませんが、少なくとも年に1回は収入調査をされます。
そのため、完全に生活保護から脱却できているわけではありません。
また、その生活ぶりについても、多少の制限はあり、自動車やバイクに乗っても問題はありませんが、あまりにも高級な自動車やバイク、その他装飾品を身に着けているようだと、周りの目もあることから、ケースワーカーから指導が入る場合もあります。
最低生活費を超える収入があれば生活保護世帯に加入させられる
年に1回の収入調査の結果、世帯分離されている人の収入が、その人を生活保護に加入した場合の最低生活費を超える場合は、生活保護世帯に加入させられます。
そして、その収入は給料収入として、収入認定されます。
収入認定されることが嫌で仕事を辞めた場合は、再び世帯分離となり、生活保護から外されます。
このように、世帯分離とは、生活保護受給者側から自由に選択できるものではなく、福祉事務所の都合で生活保護費の支給が少なくなるように調整されるための制度と思ってもらった方が良いです。
たまに「親がお小遣いをくれないから生活保護を申請に来ました」と言う呆れた生活保護の相談を受けることがありますが、そういう理由での世帯分離は残念ながらできません。
まとめ
生活保護における同居人がいる場合の取扱いについて、ご説明させていただきました。
原則としては、生活保護は世帯ごとでの認定となるため、同居人全員で申請をする必要があります。
同居人のうち生活保護を受給したくない人がいる場合は世帯分離と言う方法も取れますが、世帯分離の条件は非常に厳しく、また、世帯分離をするよりも、世帯を離れて別世帯として申請をした方が、生活保護受給者にとっても、福祉事務所にとっても簡単で都合も良いです。
そのため、どうしても自分だけ生活保護を受けたいと思う場合は転居をする、もしくは同居人に転居してもらってから生活保護を申請しましょう。
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