生活保護を受給している世帯の高校生やその保護者にとって、学費や進学、アルバイトに関する疑問や不安は尽きません。
この記事では、高校進学時の支援制度、教育扶助の内容、アルバイト収入の扱い、大学進学の方法まで、具体的なデータと実例を交えて詳しく解説します。
生活保護世帯の高校生が知っておくべき基本知識

生活保護と高校進学の関係
生活保護を受給している世帯の子どもも、高校に進学することができます。むしろ、国は生活保護世帯の子どもの高校進学を積極的に支援しています。
平成17年度から、高校就学費用が生活保護の教育扶助の対象に加わり、高校進学がしやすくなりました。現在では、生活保護世帯の高校進学率も全体の進学率に近づいており、約94%程度とされています(厚生労働省調査)。
生活保護を受けているからといって、高校進学を諦める必要は全くありません。適切な制度を利用すれば、経済的な負担を最小限に抑えて高校生活を送ることができます。
教育扶助と生活扶助の違い
生活保護には8つの扶助がありますが、高校生に関係するのは主に「教育扶助」と「生業扶助」です。

教育扶助は、義務教育(小中学校)にかかる費用を支給する制度です。学用品費、学校給食費、通学費などが対象となります。

生業扶助(高等学校等就学費)は、高校就学にかかる費用を支給する制度です。平成17年度から設けられ、入学料、授業料、教材費、通学費などが支給されます。

義務教育ではない高校の費用は、生業扶助の枠組みで支給されることを理解しておきましょう。
高校の種類による違い
高校には様々な種類があり、それぞれで支援の内容が異なります。
全日制高校は、最も一般的な高校で、生業扶助のすべての項目が対象となります。
定時制高校も、全日制と同様に支援対象です。働きながら学ぶ生徒が多く、アルバイトとの両立がしやすい選択肢です。
通信制高校では、基本的な就学費用は支給されますが、スクーリング費用などは自治体により扱いが異なる場合があります。
高等専門学校(高専)は、1年から3年次までは高校相当として支援対象となります。
どの種類の高校を選んでも、基本的な支援は受けられるので、自分に合った学校を選択できます。
高校進学時に支給される費用

入学準備金(入学支度金)
高校入学時には、入学準備金が支給されます。

支給額は、令和5年度の基準で約63,200円です。これは、制服、体操服、上履き、カバン、教科書など、入学時に必要な物品の購入に充てられます。
支給時期として、入学前(2月から3月)に申請し、入学後速やかに支給されます。自治体によっては、入学前の支給も可能です。
申請方法では、ケースワーカーに進学が決まったことを報告し、入学準備金の申請手続きを行います。合格通知のコピーなどが必要です。
入学準備金は返済不要の支給金なので、必ず活用しましょう。
授業料
高校の授業料については、生活保護世帯は実質無料となります。
高等学校等就学支援金制度により、国公立高校の授業料相当額(年間約118,800円)が支給されます。これは生活保護世帯に限らず、所得制限内のすべての世帯が対象です。
生活保護世帯の場合、就学支援金で授業料が賄われるため、生業扶助からの授業料支給はありません(二重支給を避けるため)。
私立高校の場合は、就学支援金に加えて、都道府県独自の授業料減免制度があり、実質無償化されるケースが多いです。
授業料の心配はほぼ不要ですが、入学前に学校や自治体に確認しておくと安心です。
教材費・学用品費
教科書以外の教材や学用品にかかる費用も支給されます。
基準額は、月額5,450円(令和5年度基準、全日制の場合)です。年間で約65,400円となります。
対象となるものとして、副教材、問題集、ノート、筆記用具、実習用品(調理実習材料、美術用品など)、体育用品などがあります。
実費支給の項目では、一部の高額な教材(辞書、電卓、専門科目の機材など)は、実費で別途支給される場合があります。
毎月定額が支給されるため、計画的に使いましょう。
通学費
自宅から高校までの通学にかかる交通費も支給されます。
公共交通機関の定期代が、最も経済的な経路で実費支給されます。バスと電車を併用する場合も、両方の定期代が支給対象です。
自転車通学の場合、自転車購入費や修理費は原則として対象外ですが、公共交通機関がない地域など、やむを得ない場合は認められることがあります。
支給方法として、定期券を購入した領収書をケースワーカーに提出し、後日支給されます。自治体によっては事前支給も可能です。
通学費は全額支給されるため、遠方の学校でも通学できます。

学校給食費・修学旅行費
その他の学校関連費用も支給対象となります。
学校給食費は、給食を実施している高校の場合、実費が支給されます。
修学旅行費として、修学旅行の参加費用(上限あり)が支給されます。事前に申請が必要で、旅行の案内が配布されたら早めにケースワーカーに相談しましょう。

クラブ活動費については、原則として支給対象外ですが、学校教育の一環として必須の場合は認められることがあります。

学校指定品では、学校が指定する靴や体操服などは、入学準備金や学用品費の範囲内で購入します。
アルバイトと収入認定

高校生のアルバイト収入の扱い
生活保護世帯の高校生がアルバイトをする場合、収入の扱いに特別なルールがあります。

基本原則として、アルバイト収入は世帯の収入として認定され、生活保護費から差し引かれるのが原則です。

控除制度により、高校生の場合、一定額まで収入認定されず、全額を手元に残せる仕組みがあります。これを「未成年者控除」といいます。

控除額は、月額約28,000円程度(自治体により若干異なる)までは収入認定から控除されます。さらに、勤労控除として一定割合が追加で控除されます。

具体的な計算方法は複雑なため、アルバイトを始める前にケースワーカーに相談することが重要です。

収入認定の具体例
実際の収入認定の仕組みを、具体例で説明します。
例1:月5万円のアルバイト収入がある場合
月収50,000円から、基礎控除28,000円を差し引きます。残り22,000円に対して、勤労控除(約20%から30%)が適用されます。勤労控除を25%とすると、22,000円×0.25=5,500円が追加控除されます。
結果として、50,000円-(28,000円+5,500円)=16,500円が収入認定され、生活保護費から差し引かれます。実質的に33,500円が手元に残る計算です。

例2:月3万円のアルバイト収入がある場合
月収30,000円は、基礎控除28,000円の範囲内なので、ほぼ全額が手元に残ります。わずかに2,000円のみ収入認定され、約28,000円が手元に残ります。
このように、アルバイト収入の大部分を手元に残せる仕組みになっています。
アルバイトをする際の注意点
生活保護世帯の高校生がアルバイトをする際の注意点をまとめます。
事前申告が必須で、アルバイトを始める前に、必ずケースワーカーに報告し、許可を得ます。無申告でアルバイトをすると、不正受給とみなされる恐れがあります。

収入申告として、毎月のアルバイト収入を正確に申告します。給与明細のコピーを提出する必要があります。

学業との両立を考慮し、アルバイトで学業がおろそかになると、ケースワーカーから指導を受けることがあります。成績が著しく低下した場合、アルバイトの制限を求められる可能性もあります。
目的の明確化により、大学進学資金の貯蓄など、アルバイトの目的を明確にすることが望ましいです。
正直に申告し、ルールを守れば、アルバイトで収入を得ることは問題ありません。

進学準備のための貯蓄
高校生のアルバイト収入を、大学進学のために貯蓄することは認められています。
進学準備金の積立として、大学や専門学校への進学を目指す場合、アルバイト収入の一部を「進学準備金」として積み立てることができます。
上限額は、概ね100万円程度まで貯蓄が認められています(自治体により異なる)。
使途の制限により、進学準備金は、入学金、教科書代、一人暮らしの初期費用など、進学に直接関係する費用にのみ使用できます。
申請方法では、進学準備金として貯蓄する旨を、事前にケースワーカーに申告し、承認を得る必要があります。
将来の進学を見据えて、計画的に貯蓄しましょう。

大学・専門学校への進学

生活保護世帯からの進学の現実
生活保護世帯の子どもの大学進学率は、全体と比較して低い水準にあります。
厚生労働省の調査によると、生活保護世帯の子どもの大学・短大進学率は約36%程度で、全世帯の進学率(約58%)と比べて大きな差があります。
この背景には、経済的な理由だけでなく、情報不足や周囲のサポート不足なども影響しています。しかし、適切な制度を活用すれば、進学は十分に可能です。

進学時の世帯分離
生活保護世帯の子どもが大学や専門学校に進学する場合、「世帯分離」という手続きが必要です。
世帯分離とは、同じ住所に住んでいても、生活保護の受給単位を分けることです。子どもが進学すると、その子どもは生活保護の対象から外れます。
理由として、生活保護は「最低限度の生活」を保障する制度であり、大学進学は最低限度の生活に含まれないと解釈されているためです。
実際の影響では、世帯分離後も実家に住み続けることは可能です。親の生活保護は継続され、子どもの分の保護費が減額される形になります。
世帯分離は避けられませんが、それでも進学する道は開かれています。

進学資金の確保方法
世帯分離後、進学した子ども自身は生活保護を受けられませんが、様々な支援制度があります。
日本学生支援機構の奨学金として、給付型奨学金(返済不要)と貸与型奨学金(返済必要)があります。生活保護世帯は給付型奨学金の対象となりやすく、月額約75,800円(自宅外通学の場合)が支給されます。
授業料減免制度により、令和2年度から始まった「高等教育の修学支援新制度」で、生活保護世帯は授業料が全額免除されます。
アルバイト収入では、世帯分離後は、アルバイト収入を全額自分のために使えます(収入認定の対象外)。
生活福祉資金貸付制度として、社会福祉協議会の貸付制度で、進学に必要な資金を低利または無利子で借りられます。
民間団体の支援により、貧困家庭の子どもを支援する民間団体の奨学金や給付金制度も多数あります。
これらを組み合わせることで、学費と生活費を賄うことが可能です。
一人暮らしの費用
大学進学で一人暮らしをする場合の費用も、支援制度で対応できます。
初期費用として、敷金・礼金、家具・家電の購入費などは、奨学金の初回振込金や、生活福祉資金の貸付で賄えます。
月々の生活費では、給付型奨学金(月額約75,800円)とアルバイト収入で、家賃と生活費を確保します。
節約の工夫により、学生寮や格安のアパート、シェアハウスなどを選ぶことで、生活費を抑えられます。
計画的に準備すれば、一人暮らしでの大学生活も実現できます。
高校生活で利用できる支援制度

高校生等奨学給付金制度
生活保護世帯の高校生を対象とした、都道府県独自の給付金制度があります。
制度の概要として、授業料以外の教育費(教科書、教材、学用品、通学用品、校外活動費など)を支援するため、年額で給付金が支給されます。
支給額(令和5年度の目安)は、全日制・定時制の場合で年額約52,600円(第1子)、通信制の場合で年額約52,100円です。
申請方法により、在籍する高校を通じて申請します。毎年7月頃に案内があるので、忘れずに申請しましょう。
生活保護費との関係として、この給付金は生活保護費からは差し引かれません(収入認定の対象外)。
学校からの案内を見逃さず、必ず申請してください。
就学援助・教育支援制度
その他にも、様々な教育支援制度があります。
塾代助成として、一部の自治体では、生活保護世帯の高校生向けに塾代や予備校代の助成を行っています(例:大阪市、東京都など)。
受験料の支援により、大学受験の検定料(受験料)について、生活保護の生業扶助から支給される場合があります。
PC・タブレット貸与では、オンライン授業に対応するため、端末を無償で貸し出す自治体もあります。

学習支援事業として、生活困窮者自立支援法に基づく学習支援で、無料の学習塾や家庭教師が利用できます。
自治体の福祉課や教育委員会に問い合わせて、利用できる制度を確認しましょう。
民間団体の支援
公的制度以外にも、民間団体による支援があります。
給付型奨学金として、あしなが育英会、交通遺児育英会、その他多数の財団が、返済不要の奨学金を提供しています。
学習支援により、NPO法人が運営する無料学習塾や、オンライン学習支援サービスがあります。
食事支援では、子ども食堂やフードバンクなど、食事や食材を無料または低額で提供する取り組みがあります。
相談窓口として、子どもの貧困対策に取り組むNPOが、進学相談や生活相談に応じています。
インターネットで検索したり、学校の先生に相談したりして、情報を集めましょう。
高校中退を防ぐために

中退の現状と原因
生活保護世帯の高校生は、中退率が一般世帯より高い傾向があります。
中退の主な理由として、経済的困難(アルバイトとの両立困難、学費負担)、学業不振(学習の遅れ、授業についていけない)、人間関係の問題(いじめ、孤立)、家庭の事情(家族の介護、精神的サポート不足)などがあります。
支援の重要性により、早期に適切な支援につなげることで、中退を防げるケースが多いです。
学校・ケースワーカーとの連携
中退を防ぐには、周囲のサポートが不可欠です。
担任教師への相談として、困ったことがあれば、早めに担任教師に相談しましょう。経済的な問題、学習の遅れ、人間関係の悩みなど、何でも話せる関係を作ることが大切です。
スクールカウンセラーの活用により、心の悩みや家庭の問題については、スクールカウンセラーに相談できます。秘密は守られるので、安心して話せます。
ケースワーカーへの報告では、学校生活で困っていることを、ケースワーカーにも伝えましょう。場合によっては、学習支援や他の福祉サービスにつなげてもらえます。
スクールソーシャルワーカーは、学校と福祉をつなぐ専門職です。配置されている学校では、積極的に相談しましょう。
一人で抱え込まず、周囲に助けを求めることが重要です。
学習支援の活用
学業面でのつまずきを早期に解消することも、中退防止に有効です。
無料学習塾として、自治体やNPOが運営する無料の学習支援教室を活用しましょう。個別指導や少人数指導で、わからないところを丁寧に教えてもらえます。
オンライン学習により、スタディサプリなど、低額または無料で利用できるオンライン学習サービスもあります。
学校の補習では、学校が実施する補習授業や夏期講習に積極的に参加しましょう。
図書館の活用により、自習スペースとして図書館を活用し、静かな環境で勉強できます。
学習の遅れは早めに取り戻すことが大切です。
よくある質問と回答

生活保護を受けていることを学校に知られたくない
生活保護受給の事実は、個人情報として保護されています。
学校への通知として、基本的に、生活保護を受けていることが学校に通知されることはありません。ただし、就学援助の申請など、学校を通じて行う手続きがある場合は、担当教員が知る可能性があります。
秘密保持義務により、学校の教職員には守秘義務があり、むやみに他の生徒や保護者に話すことはありません。
自分から話す必要はないため、クラスメイトに自分から話す必要は全くありません。ただし、信頼できる友人には話すことで、理解と支援を得られることもあります。
無理に隠す必要もありませんが、自分の判断で開示するかどうかを決められます。
高校卒業後、すぐに働く場合は?
高校卒業後に就職する場合、生活保護からの自立が期待されます。
就労による自立として、安定した収入を得られる仕事に就けば、生活保護から脱却できます。自立支援金など、自立を後押しする制度もあります。
収入が少ない場合、就職しても収入が最低生活費を下回る場合は、引き続き生活保護を受けながら働くこともできます(就労収入の一部が控除されます)。

世帯の状況によるため、本人が就職しても、親が高齢や病気で働けない場合は、世帯として生活保護を継続することもあります。
ケースワーカーと相談しながら、自立に向けた計画を立てましょう。
親が生活保護を受けているだけで、自分は受けていない場合は?
生活保護は世帯単位で受給するため、同じ世帯に住んでいれば、高校生も受給者となります。
世帯員としての受給により、親が生活保護を受けている世帯の高校生は、世帯の一員として保護を受けています(個別に受給証を持つわけではありません)。
支援制度の対象として、この記事で紹介した支援制度は、生活保護世帯の高校生すべてが対象です。
不明な点があれば、ケースワーカーに確認しましょう。

まとめ:高校生活を充実させるために

生活保護世帯の高校生について、重要なポイントをまとめます。
高校進学は可能であり、支援制度が充実しています。入学準備金(約63,200円)、授業料(実質無料)、教材費(月額5,450円)、通学費(実費支給)、修学旅行費などが支給されます。高校進学率は約94%で、諦める必要はありません。
アルバイトも可能で、月額約28,000円までは収入認定されず、手元に残せます。事前申告と毎月の収入申告が必須です。進学準備金として100万円程度まで貯蓄できます。
大学進学の道も開かれており、世帯分離が必要だが、進学は可能です。給付型奨学金、授業料減免、生活福祉資金などの支援があります。計画的に準備すれば、一人暮らしでの進学も実現できます。
様々な支援制度として、高校生等奨学給付金(年額約52,600円)、無料学習塾、塾代助成(一部自治体)、民間団体の支援などが利用できます。
大切なことは、一人で悩まず、周囲に相談することです。ケースワーカー、担任教師、スクールカウンセラーなどに、困ったことがあれば早めに相談しましょう。制度を知り、積極的に活用することで、充実した高校生活を送り、夢を実現できます。
最後に
生活保護を受けているという事実は、あなたの価値や可能性を決めるものではありません。適切な支援を受けながら、自分の目標に向かって努力することが大切です。
多くの支援制度があることを知り、前向きに高校生活を送ってください。あなたの未来は、あなた自身の努力と選択で切り開けます。この記事が、その一助となることを願っています。

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