認知症や障害があり、一人暮らしが難しくなった際、グループホームという選択肢があります。
しかし経済的な不安から入居を諦めている方も多いのではないでしょうか。
生活保護を受給している方、またはこれから受給を検討している方でも、条件を満たせばグループホームへの入居は可能です。
本記事では、生活保護受給者がグループホームに入居する際の費用負担、入居条件、申請の流れまで、実践的な情報を分かりやすく解説します。
生活保護受給者はグループホームに入居できるのか?

結論から申し上げると、生活保護を受給していてもグループホームへの入居は可能です。
ただし、グループホームの種類や地域によって費用が異なるため、全てのグループホームに入居できるわけではありません。
グループホームとは?基礎知識を理解する
グループホームには大きく分けて2つの種類があります。
認知症対応型グループホーム
認知症の診断を受けた高齢者が、少人数(通常5~9人)で共同生活を送る介護施設です。家庭的な環境の中で、日常生活の支援を受けながら、認知症の進行を穏やかにすることを目的としています。
障害者グループホーム
知的障害や精神障害、身体障害のある方が、地域で自立した生活を送るための住まいです。世話人や生活支援員のサポートを受けながら、少人数で共同生活を営みます。
どちらのグループホームも、施設というよりは「支援付きの共同住宅」というイメージに近く、入居者の自立性を尊重した運営がなされています。
生活保護でグループホームに入居できる仕組み
生活保護制度には「介護扶助」と「生活扶助」があり、これらを組み合わせることでグループホームの費用をカバーできます。
介護扶助
要介護認定を受けた方の介護サービス費用を支給する制度です。認知症対応型グループホームの場合、介護保険サービスの自己負担分(通常1~3割)が全額支給されます。

生活扶助
日常生活に必要な費用(食費、居住費、光熱費など)を支給する制度です。グループホームの家賃や食費の一部がこの扶助でカバーされます。

住宅扶助
グループホームの家賃部分について、地域の基準額内であれば支給対象となります。

生活保護で入居できるグループホームの種類と特徴

生活保護受給者が現実的に入居を検討できるグループホームについて、詳しく見ていきましょう。
認知症対応型グループホーム
認知症対応型グループホームは、介護保険制度に基づく地域密着型サービスの一つです。
入居条件
- 要支援2または要介護1以上の認定を受けていること
- 認知症の診断を受けていること(医師の診断書が必要)
- 原則として施設と同じ市区町村に住民票があること
- 共同生活が可能な身体状況であること
費用の目安 月額費用は地域や施設によって大きく異なりますが、一般的に以下の範囲です。
- 都市部:月額12万円~18万円程度
- 地方都市:月額9万円~14万円程度
- 郊外・地方:月額7万円~12万円程度
費用の内訳
- 介護サービス費:約2万円~3万円(要介護度により変動)
- 家賃:約3万円~7万円
- 食費:約3万円~5万円
- 光熱費:約1万円~2万円
- 管理費・雑費:約1万円~2万円
生活保護での対応可否 地域の生活保護基準額によりますが、月額12万円~13万円程度までの施設であれば、生活保護の範囲内で入居できる可能性が高いです。都市部の高額な施設は難しいケースが多いため、事前にケースワーカーへの相談が必須です。

障害者グループホーム
障害者グループホームは、障害者総合支援法に基づくサービスで、「共同生活援助」とも呼ばれます。
入居条件
- 障害支援区分の認定を受けていること(多くの場合、区分2以上)
- 身体障害、知的障害、精神障害のいずれかの障害者手帳を持っていること
- 原則として18歳以上であること
- 共同生活が可能であること
費用の目安 障害者グループホームは認知症対応型よりも比較的低額で、月額費用は以下の範囲です。
- 家賃:約3万円~6万円
- 食費:約3万円~4万円
- 光熱費:約1万円~1.5万円
- その他雑費:約0.5万円~1万円
- 合計:月額7万円~12万円程度
生活保護での対応可否 障害者グループホームは比較的費用が抑えられているため、生活保護の範囲内で入居できる施設が多いです。特に、生活保護受給者の受け入れを積極的に行っている事業所も増えています。
障害者グループホームの支援体制
- 介護サービス包括型:常時支援員が配置され、手厚い支援を受けられる
- 外部サービス利用型:外部の居宅介護事業所からサービスを受ける
- 日中サービス支援型:日中も施設内で支援を受けられる
支援体制によって費用が変わるため、自分に必要な支援レベルを見極めることが重要です。
サテライト型グループホーム
サテライト型は、本体のグループホームとは別の場所に設けられた住居で、より自立度の高い方向けの形態です。
特徴
- 1~2人での生活が可能
- 本体施設からの定期的な訪問支援を受ける
- より自立的な生活を送れる
- 費用が本体施設よりやや低額なことが多い
生活保護受給者で、ある程度自立した生活が可能な方には、このサテライト型も選択肢の一つとなります。
生活保護受給者がグループホームに入居する際の費用負担

グループホームの費用がどのように生活保護でカバーされるのか、具体的に見ていきましょう。
費用項目ごとの生活保護での対応
介護サービス費(認知症対応型の場合)
介護保険の自己負担分は、介護扶助から全額支給されます。要介護度が高いほど介護サービス費は上がりますが、自己負担はゼロです。
家賃部分
住宅扶助の対象となります。ただし、地域ごとに定められた基準額(上限)があります。
地域別の住宅扶助基準額(単身者の例)
- 東京都区部:53,700円
- 大阪市:42,000円
- 名古屋市:39,000円
- 福岡市:37,000円
- 地方の市町村:30,000円~35,000円程度
グループホームの家賃がこの基準額を超える場合、超過分の支払いが難しくなる可能性があります。
食費
生活扶助の「食費」として支給されます。ただし、グループホームで提供される食事の実費がそのまま全額支給されるわけではなく、生活保護の基準額内での支給となります。
光熱費
生活扶助の一部として支給対象です。個別メーターの場合は実費、共用の場合は定額負担となることが多いです。

その他の雑費
日常生活に必要な雑費(消耗品、理美容代など)は、生活扶助から支給される日常生活費で賄います。
月額費用の具体的なシミュレーション
ケース1:地方都市の認知症対応型グループホーム(要介護3)
- 介護サービス費自己負担分:約2.5万円 → 介護扶助で全額カバー
- 家賃:4万円 → 住宅扶助で全額カバー(基準額内)
- 食費:3.5万円 → 生活扶助で支給
- 光熱費:1.2万円 → 生活扶助で支給
- 雑費:1万円 → 生活扶助で支給
- 月額合計:約12.2万円 → 生活保護の範囲内で入居可能
ケース2:都市部の障害者グループホーム(精神障害)
- サービス費自己負担分:約1.5万円 → 全額支給
- 家賃:5万円 → 住宅扶助で支給(基準額による)
- 食費:3.5万円 → 生活扶助で支給
- 光熱費:1万円 → 生活扶助で支給
- その他:0.8万円 → 生活扶助で支給
- 月額合計:約11.8万円 → 生活保護の範囲内で入居可能

費用が基準額を超える場合の対処法
グループホームの費用が生活保護の基準額を超える場合、以下のような対応が考えられます。
別の施設を探す
最も現実的な方法は、基準額内で入居できる施設を探すことです。同じ地域でも施設によって費用は異なるため、複数の施設を比較検討しましょう。
福祉事務所に相談する
特別な事情がある場合、基準額の特例適用が認められることがあります。例えば、医療機関への通院の必要性、家族との距離、現在の住居からの転居が困難な理由などを説明することで、検討してもらえる可能性があります。

補足給付制度の活用(障害者グループホームの場合)
障害者グループホームには「補足給付」という制度があり、家賃の負担軽減が受けられる場合があります。生活保護受給者は、この制度と合わせて利用することで、より多くの選択肢が広がります。
生活保護受給者がグループホームに入居するまでの流れ

実際にグループホームへの入居を進める際の具体的な手順を説明します。
ステップ1:ケースワーカーへの相談
グループホームへの入居を検討し始めたら、まず担当のケースワーカーに相談することが最も重要です。
相談時に伝えるべき内容
- 現在の健康状態や障害の状況
- 一人暮らしが困難な具体的な理由
- 希望するグループホームのタイプ(認知症対応型か障害者グループホームか)
- 希望する地域や立地条件
ケースワーカーは、入居の必要性を判断し、予算内で入居できる施設の情報提供や、必要な手続きのアドバイスを行います。
ステップ2:必要な認定・診断の取得
認知症対応型グループホームの場合
- 要介護認定の申請(まだ取得していない場合)
- 市区町村の介護保険窓口で申請
- 認定調査と主治医意見書の提出
- 約30日で認定結果が通知される
- 認知症の診断書取得
- かかりつけ医または専門医による診断
- 診断書の作成(施設入居に必要)

障害者グループホームの場合
- 障害支援区分の認定申請(まだ取得していない場合)
- 市区町村の障害福祉窓口で申請
- 認定調査を受ける
- 約1~2ヶ月で認定結果が通知される
- 障害者手帳の取得(まだ取得していない場合)
- 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳のいずれか
ステップ3:施設の情報収集と見学
入居可能なグループホームの情報を集めます。
情報収集の方法
- ケースワーカーからの情報提供
- 地域包括支援センターへの相談(高齢者の場合)
- 相談支援事業所への相談(障害者の場合)
- インターネットでの検索
- 自治体の福祉課での情報入手
見学時のチェックポイント
- 月額費用が生活保護の範囲内か
- 生活保護受給者の受け入れ実績があるか
- 施設の雰囲気やスタッフの対応
- 他の入居者の様子
- 医療機関へのアクセス
- 居室の広さや設備
- 食事の内容や質
複数の施設を見学し、比較検討することをおすすめします。
ステップ4:入居申込みと面談
希望する施設が決まったら、入居申込みを行います。
申込みに必要な書類(一般的なケース)
- 入居申込書
- 介護保険証のコピー(認知症対応型の場合)
- 障害者手帳のコピー(障害者グループホームの場合)
- 障害支援区分認定証(障害者グループホームの場合)
- 診断書または医師の意見書
- 生活保護受給証明書
- 本人確認書類
- 健康診断書
入居前面談
施設の管理者や相談員との面談が行われます。本人の状態、生活歴、希望する生活スタイルなどについて話し合い、グループホームでの生活が適切かどうかを判断します。
ステップ5:契約と入居準備
入居が決定したら、正式な契約を結びます。
契約時の重要確認事項
- 月額費用の明細と支払方法
- 生活保護の代理納付が可能か
- サービス内容の詳細
- 退去条件や解約時の手続き
- 医療対応と緊急時の連絡体制
- 個人の持ち物や私物の管理方法
入居準備
- 必要な日用品や衣類の準備
- 引越しの手配
- 住民票の移動手続き(必要な場合)
- 郵便物の転送届
- ケースワーカーへの住所変更報告
生活保護受給者の場合、引越し費用についても福祉事務所に相談することで、転居費用として支給される可能性があります。

生活保護受給者がグループホーム入居で注意すべきポイント

スムーズに入居し、安心して生活を続けるために知っておくべき重要事項をまとめます。
生活保護の支給額と支給方法の変更
グループホームに入居すると、生活保護の支給形態が変わります。

支給額の変更
在宅時と比べて、食費や光熱費が施設から提供されるため、手元に残る日常生活費は少なくなります。月額2万円~3万円程度が、個人的な買い物や娯楽費として支給されることが一般的です。
代理納付制度の活用
グループホームの費用を、福祉事務所から直接施設に支払う「代理納付」制度が利用できます。この制度を利用することで、本人が費用を管理する負担が軽減され、支払い忘れのリスクもなくなります。
医療費と通院の扱い
生活保護受給者は医療扶助により、医療費の自己負担がありません。これはグループホーム入居後も変わりません。
通院時の対応
- 定期通院が必要な場合、施設スタッフの付き添い支援を受けられることが多い
- 医療機関への交通費も、必要性が認められれば医療扶助から支給される
- かかりつけ医を継続できるか、事前に施設側と相談しておく
日常生活での自由度と制約
グループホームは自立支援を目的としており、過度な制約はありませんが、共同生活ならではのルールがあります。
外出について
基本的に自由に外出できますが、安全確保のため事前に行き先を伝えることが一般的です。門限がある施設もあります。
面会について
家族や友人の面会は、施設のルールに従って自由に行えます。感染症対策期間中は制限がある場合もあります。
私物の持ち込み
個室内であれば、ある程度の私物の持ち込みが可能です。ただし、危険物や共同生活に支障をきたすものは制限されます。
他の入居者との関係
共同生活では、他の入居者との関わりが生じます。
プライバシーへの配慮
生活保護を受けていることは個人情報であり、本人が話さない限り他の入居者に知られることはありません。施設スタッフには守秘義務があります。
トラブルへの対応
入居者同士のトラブルが生じた場合は、すぐにスタッフに相談しましょう。スタッフが仲介し、適切に対応してくれます。
退去が必要になるケース
以下のような場合、グループホームからの退去を求められることがあります。
- 医療的ケアが必要になり、施設での対応が困難になった場合
- 暴力行為や著しい迷惑行為があった場合
- 費用の滞納が続いた場合(代理納付制度を利用していればこのリスクは低い)
- 自立度が高まり、グループホームでの支援が不要になった場合(ポジティブな退去)
退去が必要になった場合は、ケースワーカーや相談支援員と相談し、次の住まいを探すことになります。
生活保護とグループホームに関するよくある質問

Q1: 生活保護を受けていることを施設や他の入居者に知られたくないのですが?
A: 施設側には支払い方法の関係で生活保護受給の事実を伝える必要がありますが、施設スタッフには守秘義務があり、他の入居者に漏らされることはありません。また、代理納付制度を利用すれば、支払い場面で他の入居者と区別されることもありません。生活保護受給者を積極的に受け入れている施設では、特別視されることなく普通に生活できます。
Q2: 年金や障害年金を受給していても生活保護でグループホームに入れますか?
A: はい、可能です。年金収入や障害年金がある場合、その金額を差し引いた不足分が生活保護として支給されます。例えば、障害基礎年金2級(月額約6.5万円)を受給していて、グループホームの費用が月額11万円の場合、差額の約4.5万円が生活保護から支給される仕組みです。

Q3: 家族と同居していましたが、グループホームに入居すると家族も生活保護を受けられなくなりますか?
A: いいえ、本人がグループホームに入居しても、家族の生活保護には基本的に影響しません。生活保護は世帯単位で計算されますが、本人が転居することで世帯が分離されるため、それぞれの世帯で別々に生活保護の受給が認められます。ただし、詳細はケースワーカーに確認してください。

Q4: 認知症が進行して医療的ケアが必要になった場合、どうなりますか?
A: 認知症対応型グループホームでは、ある程度の医療的ケアに対応できますが、常時医療管理が必要になった場合は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などへの転所が必要になることがあります。ただし、看護師が配置されているグループホームでは、比較的重度の状態でも対応可能な場合があります。転所が必要になった場合も、ケースワーカーや相談員がサポートしてくれます。

Q5: 障害者グループホームから一般のアパートへ移ることはできますか?
A: はい、可能です。グループホームで生活スキルを身につけ、一人暮らしができる状態になれば、一般住宅への移行を支援してもらえます。これは「地域移行支援」と呼ばれ、相談支援事業所がサポートします。生活保護を受給しながら一般住宅で生活することもでき、その場合は住宅扶助と生活扶助を受けながら自立した生活を送れます。
Q6: 生活保護を受けながらグループホームに入居している間、働くことはできますか?
A: 障害者グループホームの入居者であれば、就労継続支援B型事業所や一般就労で働くことが可能です。収入があった場合、その金額に応じて生活保護の支給額が調整されます(収入の一部は手元に残せる「勤労控除」の仕組みがあります)。認知症対応型グループホームの場合は、要介護状態のため一般的に就労は困難ですが、軽作業やレクリエーション活動に参加することは可能です。


まとめ:生活保護でも安心してグループホームへの入居を検討しよう

生活保護を受給していても、適切な施設を選び、正しい手続きを踏めばグループホームへの入居は十分に可能です。
重要ポイントの再確認
生活保護の介護扶助、生活扶助、住宅扶助を組み合わせることで、認知症対応型グループホームや障害者グループホームへの入居が現実的な選択肢となります。
月額費用は地域や施設によって異なりますが、12万円~13万円程度までの施設であれば、多くの地域で生活保護の範囲内で対応可能です。
手続きの第一歩は、必ず担当のケースワーカーへの相談から始めてください。要介護認定や障害支援区分の取得、施設選び、入居申込みと、段階を踏んで進めていきます。
最後に
グループホームへの入居を検討している方は、以下の行動から始めましょう。
- 担当のケースワーカーに相談し、入居の可能性を確認する
- 必要な認定(要介護認定または障害支援区分認定)を受ける
- 地域包括支援センターや相談支援事業所で情報収集する
- 実際に施設を見学し、雰囲気や費用を確認する
- 複数の施設を比較検討し、自分に合った施設を選ぶ
一人暮らしが不安になった時、グループホームという選択肢があることを知っておくことは重要です。経済的な理由で諦める必要はありません。生活保護制度を適切に活用すれば、安心して生活できる環境を確保できます。
認知症や障害があっても、尊厳ある生活を送る権利があります。一人で悩まず、専門家に相談しながら、最適な生活の場を見つけていきましょう。グループホームでの新しい生活が、あなたにとって安心できる居場所となることを願っています。

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