生活保護を申請した時や生活保護受給中は定期的に様々な調査が行われますが、その調査の中に銀行口座を調査する金融機関調査と言うものがあります。
この金融機関調査により、生活保護受給者が所有する銀行口座に現在いくらお金が入っているのか?未申告の入金やおかしな出金がないか?隠し口座は存在しないか?等を福祉事務所は調べています。
しかし、実務においては、口座調査から漏れる銀行口座、つまりは福祉事務所にバレない銀行口座が存在します。
そこで、このページでは、預金調査の目的・方法・範囲、バレない口座とはどういうものなのか?また、隠し口座が見つかった場合の取り扱い等について、詳しくご説明します。
生活保護の口座調査の目的
生活保護受給者の預金口座を調査する目的は資産の有無をチェックするためです。
生活保護の受給条件は非常にシンプルで「世帯の収入が最低生活費以下であること」ただそれだけです。
そのため、資産があっても、収入がなければ、いずれは生活保護を受給することになりますが、先に資産を活用してもらう必要があります。
仮に預貯金等のすぐに現金化できる資産がある場合は、最低生活費以下に減るまでは生活保護の申請を却下する必要がありますし、現在受給中の方の場合は生活保護を停止・廃止にする必要があります。
例えば最低生活費10万円の人が100万円貯金がある場合、貯金が10万円以下になるまで、新規の場合は申請を待ってもらう、受給中の場合は停止・廃止となります。
そして、貯金が最低生活費10万円以下まで減った段階で生活保護の申請受理もしくは生活保護を再開します。
生活保護の口座調査の方法
福祉事務所は生活保護法29条を根拠に金融機関の預金口座を調査することができます。
この銀行口座調査は生活保護申請時に一度調査され、その後も生活保護受給期間中であれば、福祉事務所はいつでも預金調査をすることができます。
とは言え、大抵の福祉事務所は調査漏れがないように、毎年調査する時期を決めており、その時期に一斉に銀行の預金口座調査を行っています。
銀行の預金口座調査の方法は本店等一括照会と言う方法をとっており、福祉事務所は1回の預金調査で調査先の銀行の全支店の預金口座を一括で調査することができます。
例えばみずほ銀行に預金調査を依頼した場合は、みずほ銀行の預金口座であれば、沖縄から北海道まで、全国どこの支店の預金口座であっても貯金残高や入出金記録などあらゆる情報を調べることができます。
生活保護受給者の預金口座をすべて調査できているわけではない
生活保護の預金口座調査の範囲は、ヒットする可能性のある必要最小限の範囲でしか調査しません。
実は、全国にある全ての銀行口座を調べているわけではありません。
行政の仕事ですから、不正受給を防ぐために、全国にある全ての銀行の預金口座を調査することが、本来あるべき姿なのかもしれません。
しかし、むやみやたらに預金調査をすると、福祉事務所も、銀行も疲弊してしまうため、効率を重視して、該当のありそうな銀行にしか預金調査をしません。
具体的には、メガバンクの三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、メガバンク以外ではゆうちょ銀行の他、生活圏内周辺に支店のある地方銀行約10~20行に対して預金調査を実施しています。
本店等一括照会をしているとは言え、農協も含めると1,000近い銀行がある中、調べる銀行数は、たったの10~20行程度のため、バレない口座を持つことは意外と簡単だったりします。
下記では、調査の範囲に外れやすい銀行口座等、全4種類をご紹介します。
インターネットバンキングの預金口座はばれない可能性大
最近よく聞くインターネットバンキング。
近年は生活保護受給者の中でもインターネットバンキングを利用している方が増えてきていると思います。
にも関わらず、インターネットバンキングを調査範囲に含めていない福祉事務所が多数あります。
特に田舎の福祉事務所などは、ICTに疎く、新しいことをしようとすると、猛反対にあうため、バレない可能性が高いです。
実際、私が勤めている福祉事務所では、いまだにインターネットバンキングを調査していませんし、預金調査する気配すらありません。
しかし、都会や先進地と言われる、最先端の業務を行っている福祉事務所の場合はインターネットバンキングの預金口座がバレる可能性が高いため、インターネットバンキングは100%バレない口座と言うわけではありません。
生活圏外の地方銀行の預金口座はばれない
生活圏外の地方銀行の預金口座は、余程のことがない限りバレません。
例えば沖縄県で生活保護を受けている人が北海道にある北海道銀行の預金口座に100万円を持っていたとしても、まず間違いなく調査をしないため、バレません。
ただし、相談事や訪問時に担当ケースワーカーに対して「以前北海道に住んでいた」とか「親戚が北海道に住んでいる」などの情報を与えると、「北海道の銀行も念の為調べてみよう」と言うことになり、預金口座調査をされてしまうため気をつけましょう。
保護世帯員以外の名義の預金口座はばれない
100%バレない口座があるとすれば、それは保護世帯員以外の名義の預金口座は絶対にバレません。
なぜなら、口座の調査権は原則として、生活保護受給者にしか及びませんし、仮に保護世帯員以外の名義の預金口座にお金が入っていたとしても、名義が違うため、返還金・徴収金として回収することもできません。
例えば両親や兄弟の使わない預金口座を生活保護受給者が使っていたとしても、福祉事務所は手も足も出ません。
タンス貯金はばれない
意外とタンス貯金もバレません。
担当ケースワーカーは定期的に訪問調査をすることができますが、生活保護受給者の家に許可なく入ることはできませんし、家捜しなんてもってのほかです。
福祉事務所は調査権を持っているとは言え、意外と権限が弱く、名ばかりの調査権のため、タンスの中まで見ることはできません。
そのため、銀行の預金口座に預けず、タンス預金をすると言うのも一つの手です。
隠し口座がバレたときの取り扱い
もしも隠し口座が調査等によりバレてしまった場合の取り扱いはどうなるのか?についてですが、その貯金が生活保護受給開始前のものなのか?それとも生活保護受給開始後のものなのか?によって取り扱いが変わります。
生活保護受給開始前の貯金の取り扱い
生活保護を申請する時に貯金があることを申告せずに所有することは申告義務違反です。
最悪の場合は、詐欺罪で起訴されてしまいます。
詐欺罪までいかなくても、生活保護受給開始前の貯金については、すべて徴収金として取り扱われます。
例えば、生活保護受給開始前に口座に30万円が入っていた場合、既に生活保護費として支払いを受けた金額が30万円を超えている場合は、30万円全額徴収金となり、生活保護費として支払いを受けた金額が30万円未満であれば、支払いを受けた金額が徴収金となります。
仮に徴収金として、返還した後に最低生活費以上の貯金が残った場合は、生活保護が廃止となります。
例えば、生活保護受給開始前に口座に100万円入っていて、生活保護費として20万円の支給を受けていた場合、20万円を徴収金として返還した後も貯金が80万円も残っているため、最低生活費以下の貯金額になるまでは生活保護は廃止となります。
生活保護受給開始後の貯金の取り扱い
生活保護受給開始後の貯金については、特に罰則等はありません。
実は毎月の生活保護費に含まれている生活扶助費には家電等の買い換え費用も含まれています。
そのため、生活保護受給者は貯金してはいけないと勘違いされている方が多いですが、実は貯金しても良いですし、むしろ貯金していなければいけません。
目的のない貯金や目的があっても100万円近く預金口座に貯まっていると、さすがに最低生活費以下になるまで生活保護は停止されてしまいますが、基本的には貯金は認められていますし、停止になるほど貯金ができる人はいないため、特に心配する必要はありません。
なお、貯金の目的を聞かれた場合に「葬式代」と答えるのはNGです。
生活保護受給者の場合、葬祭扶助があるため、葬式代を目的とした貯金は認められておらず、生活保護を停止されてしまうため、必ず「冷蔵庫等の家電を買い換えるため」と答えましょう。
ばれない口座を持つ必要はない
生活保護の調査でばれない口座についてご紹介しましたが、バレない口座を持つメリットは、せいぜい最初の申請時くらいしかありません。
詐欺罪で訴えられるリスクを考えると、むしろデメリットしかありません。
口座を隠す方法を考えるよりも貯金が認められているんですから、堂々貯金をした方が良いです。
扶養義務者からの仕送りについても、食品等の現物でもらうか、直接現金でもらうか、遠方なら現金書留で送ってもらえば福祉事務所にバレることもありません。
そのため、ばれない口座を持つ必要は特にありません。
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