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生活保護法63条とは?費用返還義務の仕組みと返還額を詳しく解説【2026年最新】

Q&A
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生活保護法第63条は、生活保護受給者が資力があるにもかかわらず保護を受けた場合に、保護費の返還を求める制度です。

本記事では、63条の条文内容、78条との違い、返還額の決定方法、免責の可否まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。

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生活保護法第63条とは

条文の内容

生活保護法第63条(費用返還義務)は、「被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない」と定めています。

63条が適用される趣旨

生活保護制度は、資力のない方に最低限度の生活を保障するものです。

しかし、緊急時には資力の有無を確認する時間がない場合や、すぐには現金化できない資産がある場合があります。

そのような急迫の場合にひとまず保護を行い、資力が活用できる状態になった時点で補足性の原則(法第4条)から、資力の限度で費用の返還を求めるもので、本質的には不当利得返還請求権の性質を有しています。

63条が適用される具体的なケース

1. 資産が現金化された場合

流通性に乏しい不動産など換金困難な資産が保護利用後に現金化された場合が典型例です。

具体例

  • 売却に時間がかかる土地や建物を持っていたが、保護受給中に売却できた
  • 遠方の実家の相続財産が換金できた
  • 処分が困難だった資産を売却できた

2. 年金の遡及受給

各種年金の遡及受給は、63条適用の代表的なケースです。

具体例

  • 障害年金の申請が認められ、申請時に遡って支給された
  • 老齢年金の未支給分が後から支払われた
  • 遺族年金が遡及して支給された
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3. 交通事故の賠償金

交通事故の賠償金、医療給付金など、その当時は収入として申告できない理由があったものも対象となります。

具体例

  • 交通事故の示談金が保護開始前の事故について後から支払われた
  • 労災の給付金が遡及して支払われた
  • 保険金が後日振り込まれた

4. 福祉事務所の計算ミス

福祉事務所の計算ミスによる生活保護費の払いすぎの場合も63条が適用されます。

具体例

  • 福祉事務所が収入を把握せずに保護費を過大に支給した
  • 計算ミスで本来より多い金額が振り込まれた
  • システムエラーで二重支給された

5. 申告漏れ(悪意のない場合)

生活上の変化や収入の増加を申告しなかったことについてやむを得ない理由があった場合や、福祉事務所や生活保護受給者が予想しなかったような収入が後に判明した場合も63条の対象です。

具体例

  • 臨時収入があったが申告を忘れていた
  • 親族からの援助を収入と認識していなかった
  • 副業の収入があったが申告方法がわからなかった

重要な違い これらのケースで悪質性がない場合は63条、悪質な場合は78条が適用されます。

生活保護法63条と78条の違い

根本的な違い

法63条の費用返還義務は、保護利用者に不誠実な行為がなくとも生じうるものであり、不当利得返還請求権の性格を持つ一方、法78条は不正受給の場合に適用されるという違いがあります。

比較表

項目 63条(費用返還義務) 78条(費用徴収)
性質 不当利得返還請求権 不正受給に対する制裁
悪意の有無 悪意なし 悪質・故意
返還額 資力の範囲内 全額
加算金 なし 最大40%上乗せ
控除 自立更生費等の控除あり なし
免責 平成30年10月以降は非免責 非免責

63条が適用される判断基準

63条の返還金によることが妥当な場合として、

  • 生活上の変化や収入の増加を申告しなかったことについてやむを得ない理由があった
  • 福祉事務所や生活保護受給者が予想しなかったような収入が後に判明した
  • 福祉事務所が間違って資力がないと保護を決定したり高額な保護費を支給した

などのケースがあります。

78条が適用される判断基準

78条の徴収金によることが妥当な場合として、

  • 届出又は申告について口頭又は文書による指示をしたにもかかわらずそれに応じなかった
  • 届出又は申告に当たり明らかに作為を加えた
  • 届出又は申告に当たり作為を加えない場合でも福祉事務所が届出又は申告の内容等の不審について説明等を求めたにもかかわらずこれに応じず又は虚偽の説明を行った

などのケースがあります。

返還額の決定方法

返還額の上限

返還額は、当該資力を限度として、受けた保護費の範囲内で決定されることが原則です。

計算式 返還額 = MIN(受けた保護費, 現在の資力)

例えば、50万円の保護費を受けていても、現在の資力が30万円しかなければ、返還額は30万円が上限となります。

控除が認められる場合

決定に際しては、世帯の自立助長を考慮して必要額を控除することができるとされています。

控除の例

  • 勤労控除:就労収入がある場合
  • 自立更生費:自立のために必要な費用
  • 必要経費:収入を得るために必要だった経費

全額を返還額とすることが自立を著しく阻害すると認められる場合、勤労控除や自立更生費の控除が認められる場合があり、

また収入認定の際に必要経費として認定される額を控除されることがあります。

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実施機関の裁量

保護の実施機関(福祉事務所)は、個々の事情を考慮して返還額を決定する裁量を持っています。

考慮される事項

  • 世帯の自立更生の状況
  • 返還能力
  • 生活への影響
  • 資力の活用状況

法63条の費用返還義務は、当該世帯の自立更生に資する場合には柔軟に返還免除が認められる性質のものです。

違法な返還決定への対処

実際には福祉事務所がこうした検討を怠って安易に全額の返還決定を行う例が多く、かかる返還決定を違法とする裁判例も多数存在するという現状があります。

返還決定に不服がある場合は、審査請求や訴訟で争うことができます。

返還金の徴収方法

平成30年改正による変化

平成30年10月1日に生活保護法第77条の2が施行となったことにより、債務者本人から申し出があり、かつ生活維持に支障がないと認められる場合には、交付する生活保護費の一部を交付時に徴収金に充てることができるようになりました。

保護費からの天引き

生活保護費を交付する際に、申出書により定めた金額を徴収金として市に収納し、徴収金を差し引いた額を受給者に交付することができるようになったため、納付の遅れや回収漏れを防止できるようになりました。

重要な要件

  • 本人からの申出が必要
  • 生活維持に支障がないこと
  • 強制ではない

国税徴収法による徴収

生活保護法77条の2第2項が、生活保護法63条返還債権を「国税徴収の例により徴収することができる」と規定しているため、滞納した場合は差押えなどの強制徴収が可能です。

ただし、生活保護法77条の2には例外として「徴収することが適当でないときとして厚生労働省令で定めるときを除く」という括弧書きが置かれており、形式的には63条債権に該当するとしてもこの場合には強制徴収ができないものとされています。

この「厚生労働省令で定めるとき」について具体的には同法施行規則22条の3に定められており、保護費が「保護の実施機関の責めに帰すべき事由によつて」支給されて63条債権が生じた場合であるとされています。

分割返還

現年に一括返済できない場合は分割返済が認められます。

返還能力に応じて、月々数千円からの分割返還計画を立てることができます。

保護継続中であれば、保護費の中から少額ずつ返還することも可能です。

破産した場合の扱い

平成30年改正前後での違い

平成30年10月1日以前に支弁された保護費についての生活保護法63条返還債権は自己破産により免責されますが、以後に支弁された保護費については免責されないという重要な変更がありました。

適用時期の判断基準 附則4条は、「生活保護法第77条の2の規定は、この法律の施行の日以後に都道府県又は市町村の長が支弁した保護に要する費用に係る徴収金の徴収について適用する」と規定しており、同法の施行日は平成30年10月1日です。

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非免責債権化の理由

現行法では、生活保護法63条返還債権は、財団債権(又は優先的破産債権)であり非免責債権とされています。

これは、生活保護法77条の2第2項が、生活保護法63条返還債権を「国税徴収の例により徴収することができる」と規定しているからです。

弁護士会の反対意見

札幌弁護士会は、63条返還債権を「国税徴収の例により徴収することができる」ものとする法77条の2及び生活保護費からの天引徴収を可能とする法78条の2の各改正案は、生活保護受給者の生存権を侵害する重大な危険を孕み、自立の助長を目的とする生活保護法の趣旨にも反するとともに、破産法の趣旨及び破産免責制度の根幹に反するものとして強く反対しています。

反対の理由

法63条の費用返還義務は保護利用者に不誠実な行為がなくとも生じうるものであり、苛酷な徴収はそぐわない。免責の効果が及ばないことで、破産しても「マイナスからの再スタート」を余儀なくさせることは、保護利用者の「自立を助長することを目的とする」生活保護制度の基本理念にも、破産法1条の目的にも反すると指摘されています。

死亡した場合の取扱い

相続人への請求

返還通知は行政処分です。

行政処分が効力を発生するためには、被処分者に対する通知が届いていなければなりませんが、返還通知を発送するときは存命しているものと思っていた被処分者が既に死亡していたという場合、死亡者に対する通知は到達の効力は発生しません。

正しい手続き

戸籍により法定相続人を探し出し、同順位の法定相続人に対し、生活保護法第63条による返還通知を行います。この返還通知が相続人に対し到達することにより、相続人に対する返還通知が効力を発生します。

相続分に応じた請求

同順位の法定相続人が複数いる場合は、返還請求額の総額を記載した上で、当該返還請求を受け取る法定相続人に相続分を記載し、相続分に応じて請求額を記載します。

これは、相続において、法定相続分に相当する債務は、法定相続分に応じて分割して相続されるからです。

返還通知を受けた場合の対応

1. 内容を確認する

まず、返還通知書の内容を丁寧に確認しましょう。

確認すべき項目

  • 返還を求められている理由(63条か78条か)
  • 対象期間
  • 返還額の計算根拠
  • 控除の有無
  • 返還期限

2. 担当ケースワーカーに相談

不明な点があれば、担当ケースワーカーに説明を求めましょう。返還額の計算根拠や控除の可能性について確認することが重要です。

3. 分割返還の相談

一括返還が困難な場合は、分割返還の相談をしましょう。本人からの申出により、生活保護費からの天引きによる分割返還も可能です。

4. 弁護士への相談

以下の場合は、弁護士や法テラスへの相談を検討してください。

  • 返還決定に納得できない
  • 返還額が過大だと思われる
  • 自立更生費の控除が認められていない
  • 福祉事務所のミスによる過払いである

63条返還金の実務上の問題点

発生原因の分析

扶助費の算定誤りが、法第63条の発生原因の件数別では最も多くなっているという実態があります。

生活保護受給者からすると支給を受けた金額は生活費として使ってしまうのが通常であり、後から返還請求を行っても元々資力を喪失しているため、一括で返済することは困難です。

必然的に、返済は分割返済になり未収入金が発生する原因になってしまうという構造的な問題があります。

算定誤りへの対策

算定誤りは支給する側の問題であり、算定誤りの原因分析を十分に行い、支給側の問題により未収入金が発生することの無いようにすべきであると指摘されています。

滞納処分への懸念

国税徴収法に基づく滞納処分が可能となると、返還決定が違法であっても保護の実施機関が裁判所の判断を経ることなく差押えを行えるようになり、預貯金や保有を認められた居住用不動産、通院・通勤のための自動車などに対する差押えが行われるおそれがあるという懸念が指摘されています。

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63条返還金に関するよくある質問

Q1: 返還しないとどうなりますか?

A: 平成30年10月以降の保護費については、国税徴収法による滞納処分(差押え等)が可能となります。また、納付書を発行して金融機関の窓口で納付を行う方法や、本人の申出による保護費からの天引きが行われます。

Q2: 一括で返還できない場合は?

A: 分割返還が認められます。福祉事務所と相談して、返還能力に応じた分割計画を立てることができます。保護継続中であれば、毎月の保護費から少額ずつ返還することも可能です。

Q3: 自立のためにお金を使った場合は?

A: 全額を返還額とすることが自立を著しく阻害すると認められる場合、勤労控除や自立更生費の控除が認められる場合があります。就職活動費用、資格取得費用、通勤用自転車の購入費用などは控除される可能性があります。

Q4: 福祉事務所のミスでも返還が必要ですか?

A: 保護費が「保護の実施機関の責めに帰すべき事由によつて」支給されて63条債権が生じた場合は、強制徴収ができないとされています。ただし、返還義務自体は残る場合があります。

Q5: 返還決定に不服がある場合は?

A: 審査請求や行政訴訟で争うことができます。返還額の決定が違法とされる裁判例も多数存在するため、弁護士や法テラスに相談することをおすすめします。

Q6: 78条との区別はどう判断されますか?

A: 福祉事務所が個別の事情を総合的に判断します。虚偽又は不正が行われた場合には通知のとおりに法第78条による取扱を行う一方、自発的に申し出を行い費用返還を行った場合などは法第63条が適用されます。

まとめ:63条返還金を正しく理解する

生活保護法第63条は、急迫の場合等にひとまず保護を行い、資力が活用できる状態になった時点で補足性の原則から資力の限度で費用の返還を求めるもので、本質的には不当利得返還請求権の性質を有している制度です。

63条返還金の重要ポイント

  • 悪意のない場合に適用される(78条との違い)
  • 返還額は資力の範囲内
  • 自立更生費等の控除が認められる
  • 平成30年10月以降は破産しても免責されない
  • 分割返還が可能
  • 違法な返還決定には争うことができる

困ったときの相談先

  • 担当ケースワーカー
  • 福祉事務所の上司
  • 法テラス(0570-078374)
  • 弁護士会の法律相談
  • 生活保護支援団体

最後に

63条返還金の通知を受けた場合は、一人で抱え込まず、まずは担当ケースワーカーに相談しましょう。

返還額や返還方法について、個々の事情に応じた対応が可能です。

自立に向けて必要な費用であれば控除が認められる可能性もありますので、遠慮なく相談してください。

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