「生活保護を受けているが賃貸物件を借りられるか不安」「審査で落とされるのでは?」「初期費用が払えない」生活保護受給者が賃貸住宅を探す際、こうした不安や疑問を抱く方は非常に多くいらっしゃいます。
実際、生活保護受給者であることを理由に入居を拒否する大家や不動産会社が存在することは事実です。しかし、適切な知識と対応により、生活保護受給者でも賃貸契約を結ぶことは十分に可能です。むしろ、家賃が住宅扶助から確実に支払われるため、大家にとってメリットがあるケースもあります。
本記事では、生活保護受給者の賃貸審査の実態、入居拒否の法的問題、審査に通りやすくする方法、物件探しのコツ、初期費用の支援制度まで、実務経験と法的根拠に基づいて徹底解説します。
この記事でわかること
- 生活保護受給者の賃貸審査の実態
- 入居拒否は違法なのか(法的な位置づけ)
- 審査に通りやすくする5つの方法
- 生活保護受給者向けの物件探しのコツ
- 初期費用の支援制度(転居費用の支給)
- 福祉事務所のサポート内容
生活保護受給者の賃貸審査の実態

審査は一般の人より厳しいのか
結論:ケースバイケース 生活保護受給者だからといって、必ずしも審査が厳しいわけではありません。大家や不動産会社の方針によります。

審査が通りやすい場合
- 家賃が住宅扶助から代理納付される(確実に入金される)
- 福祉事務所が仲介・保証している
- 生活保護受給者の入居実績がある物件
審査が通りにくい場合
- 生活保護受給者に偏見を持つ大家
- 高級物件や人気物件
- 過去に生活保護受給者とのトラブル経験がある大家
審査で見られるポイント
一般の賃貸審査と同様、以下のポイントが確認されます。
1. 家賃の支払能力 生活保護の住宅扶助の範囲内の家賃か確認されます。

2. 身元保証 連帯保証人または保証会社の有無。
3. 入居者の人柄 面談時の態度、言葉遣い、身だしなみ。
4. 過去のトラブル歴 家賃滞納歴、近隣トラブルの有無。
5. 福祉事務所の関与 福祉事務所が転居を支援しているか。
生活保護受給者のメリット
実は、生活保護受給者を歓迎する大家もいます。
メリット1:家賃の確実性 住宅扶助が代理納付されれば、家賃の滞納リスクがほぼゼロです。

メリット2:長期居住の可能性 生活保護受給者は、頻繁に転居しないため、長期的な安定収入が見込めます。
メリット3:福祉事務所のサポート 何か問題があった場合、福祉事務所が間に入ってくれます。
生活保護を理由とした入居拒否は違法か

法律上の規定
明確な禁止規定はない 日本の法律では、生活保護受給者であることを理由とした入居拒否を明確に禁止する規定は、現時点ではありません。
ただし、住宅セーフティネット法(2017年施行)では、住宅確保要配慮者(生活保護受給者を含む)の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度が設けられています。

憲法上の問題
憲法第14条(平等原則) 「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」
生活保護受給者であることを理由とした一律の入居拒否は、この平等原則に反する可能性があります。
憲法第25条(生存権) 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
住居は生活の基盤であり、入居拒否は生存権の侵害とも解釈できます。
実務上の対応
入居拒否は減少傾向 近年、生活保護受給者の入居を受け入れる大家が増えています。
理由は以下の通り。
- 高齢化による空室増加
- 家賃保証の仕組みの理解
- 差別的な対応への社会的批判
不当な拒否への対処 明らかに不当な入居拒否を受けた場合
- 福祉事務所に相談
- 法テラスで弁護士に相談
- 住宅セーフティネット法に基づく相談窓口へ
賃貸審査に通りやすくする5つの方法

生活保護受給者が審査に通る確率を上げるための、具体的な方法を紹介します。
1. 住宅扶助の範囲内の物件を選ぶ
最も重要なポイント 家賃が住宅扶助の上限額以内の物件を選びましょう。
住宅扶助の上限額(2026年現在の目安)

主要都市の例(単身世帯)
- 東京都区部(1級地-1):5万3,700円
- 大阪市(1級地-1):4万2,000円
- 名古屋市(1級地-2):3万9,000円
- 札幌市(1級地-2):3万6,000円
- 福岡市(2級地-1):3万7,000円
世帯人数による違い
- 2人世帯:上限額が高くなる(例:東京都区部で6万9,800円)
- 3人以上世帯:さらに高くなる
上限内の物件を選ぶメリット
- 家賃の全額が住宅扶助で賄える
- 大家にとって安心
- 審査が通りやすい
2. 福祉事務所の転居支援を受ける
転居指導による転居 福祉事務所から転居を指導された場合、以下のメリットがあります。
転居費用の支給
- 引越代
- 敷金(家賃の2か月分まで)
- 礼金(家賃の1か月分まで、自治体による)
- 仲介手数料(家賃の1か月分まで)

福祉事務所の仲介 福祉事務所が不動産会社や大家に連絡し、入居を依頼してくれることがあります。
信頼性の向上 「福祉事務所の支援による転居」という背景があると、大家の信頼度が上がります。
3. 代理納付を利用する
代理納付とは 福祉事務所が、住宅扶助費を直接大家または管理会社に支払う制度です。
メリット
- 家賃滞納のリスクがゼロ
- 大家にとって最も安心
- 審査が通りやすくなる
申請方法 ケースワーカーに「家賃の代理納付をお願いしたい」と申し出るだけです。
注意点 一部の自治体では、代理納付を原則としています。

4. 保証会社を利用する
連帯保証人が不要 保証会社を利用すれば、連帯保証人なしで契約できます。
生活保護受給者向け保証会社 一部の保証会社は、生活保護受給者専門のプランを提供しています。
保証料
- 初回:家賃の30%~50%
- 更新料:年間5,000円~1万円程度
保証料の支払い 転居費用として、福祉事務所から支給される場合があります。
5. 生活保護受給者歓迎の物件を探す
専門の不動産会社 生活保護受給者の入居を専門にサポートする不動産会社があります。
探し方
- インターネットで「生活保護 賃貸 ○○市」で検索
- 福祉事務所に紹介を依頼
- 社会福祉協議会に相談
メリット
- 審査が通りやすい物件を紹介してくれる
- 手続きをサポートしてくれる
- 大家との交渉も代行

生活保護受給者向けの物件探しのコツ

物件選びの基準
1. 家賃は住宅扶助の80%~90%を目安に 上限ギリギリよりも、少し余裕を持った家賃の物件が見つかりやすいです。
例:東京都区部(単身、上限5万3,700円)
- 狙い目:4万5,000円~5万円程度
2. 築年数は気にしすぎない 築古物件は、家賃が安く、大家も柔軟に対応してくれることが多いです。
3. 駅から少し離れた物件 駅近物件は人気が高く、審査も厳しい傾向があります。駅から徒歩15分程度の物件は狙い目です。
4. 1階の物件 1階は人気がやや低く、家賃も安めです。生活保護受給者でも借りやすい傾向があります。
避けるべき物件
1. 高級物件 家賃が高額な物件は、審査が厳しく、生活保護受給者は敬遠されがちです。
2. 新築・築浅物件 新築や築浅物件は、入居者を選ぶ傾向があります。
3. 人気エリア 人気エリアの物件は、申込者が多く、審査で落とされる可能性が高くなります。
不動産会社の選び方
生活保護受給者に理解のある不動産会社を選ぶ
見分け方
- 電話で事前に「生活保護を受けているが、物件を探している」と伝える
- 対応が良い会社を選ぶ
- 露骨に嫌な顔をする会社は避ける
福祉事務所の紹介 ケースワーカーに、生活保護受給者に理解のある不動産会社を紹介してもらいましょう。
初期費用の支援制度

賃貸契約には、初期費用(敷金、礼金、仲介手数料など)が必要ですが、生活保護受給者には支援制度があります。
転居費用の支給
対象となる転居 以下のような理由で転居する場合、転居費用が支給されます。
- 現在の家賃が住宅扶助の上限を超えている
- 病気や障害により、現在の住居が適さない
- 就職により、職場に近い場所への転居が必要
- DV等から避難する必要がある
- 老朽化や取り壊しにより、退去を求められた
支給される費用
1. 敷金
- 上限:新居の家賃の2か月分
2. 礼金
- 上限:新居の家賃の1か月分(自治体により異なる、支給されない自治体もある)
3. 仲介手数料
- 上限:新居の家賃の1か月分
4. 引越代
- 実費(見積もりに基づく)
5. 火災保険料
- 実費(2年分で1万5,000円~2万円程度)
6. 保証料
- 保証会社利用時の初回保証料
7. 鍵交換費用
- 実費(1万円~2万円程度)
合計の目安(東京都区部、単身世帯、家賃5万円の場合)
- 敷金:10万円(2か月分)
- 礼金:0円(自治体により支給されない場合)
- 仲介手数料:5万5,000円(家賃の1か月分+消費税)
- 引越代:3万円~5万円
- 火災保険料:1万5,000円
- 保証料:2万5,000円(家賃の50%)
- 鍵交換:1万5,000円
- 合計:24万円~27万円

転居費用支給の手続き
ステップ1:ケースワーカーに相談 転居の必要性をケースワーカーに相談します。
ステップ2:転居承認を得る 福祉事務所から転居の承認を得ます。
ステップ3:物件探し 住宅扶助の範囲内の物件を探します。
ステップ4:見積もりの取得
- 不動産会社から初期費用の見積もりを取得
- 引越業者から引越代の見積もりを取得
ステップ5:見積もりの提出 福祉事務所に見積もりを提出し、承認を得ます。
ステップ6:契約 承認後、賃貸契約を結びます。
ステップ7:支払い
- 代理納付:福祉事務所から直接、不動産会社や引越業者に支払われる
- または、一旦立て替えて後日精算
自己都合の転居の場合
原則:自己負担 福祉事務所の指導によらない、自己都合の転居の場合、初期費用は原則として自己負担です。
例外 やむを得ない事情がある場合、ケースワーカーに相談すれば、支給が認められることもあります。
福祉事務所のサポート内容

福祉事務所は、生活保護受給者の住宅探しを様々な形でサポートします。
1. 不動産会社の紹介
生活保護受給者に理解のある不動産会社 ケースワーカーは、地域の不動産会社の情報を持っており、受給者に理解のある会社を紹介してくれます。
2. 大家との交渉
入居依頼 ケースワーワーカーが、不動産会社や大家に連絡し、入居を依頼してくれることがあります。
代理納付の説明 家賃が確実に支払われる代理納付の仕組みを説明し、大家の不安を解消します。
3. 転居費用の支給
前述の通り、転居費用を支給してくれます。
4. 契約書の確認
不利な条項のチェック 賃貸契約書に不利な条項がないか、ケースワーカーが確認してくれることがあります。
相談を推奨する条項
- 高額な原状回復費用
- 不当な禁止事項
- 短期解約違約金

5. 住宅扶助の上限確認
上限額の案内 自分の世帯に適用される住宅扶助の上限額を教えてくれます。
6. 住宅セーフティネット制度の案内
住宅確保要配慮者専用住宅 住宅セーフティネット法に基づく、要配慮者向けの賃貸住宅を案内してくれることがあります。
賃貸契約時の注意点

契約書をよく読む
重要な確認事項
- 家賃、共益費(管理費)
- 敷金、礼金
- 契約期間
- 更新料
- 原状回復費用の負担
- 禁止事項(ペット、楽器、同居人など)
- 短期解約違約金
不明点はケースワーカーに相談 契約内容で不明な点があれば、ケースワーワーカーに相談してください。
住宅扶助の範囲を確認
家賃+共益費が上限内か 住宅扶助の上限額は、家賃と共益費(管理費)の合計です。
例:東京都区部(単身、上限5万3,700円)
- 家賃:5万円
- 共益費:5,000円
- 合計:5万5,000円
- 上限超過:1,300円(自己負担)
代理納付の手続き
契約時に申し出る 賃貸契約を結ぶ際、代理納付を利用することをケースワーカーと不動産会社に伝えます。
必要な情報
- 大家または管理会社の口座情報
- 振込先名義
入居後の報告
福祉事務所への報告 入居後、速やかに新住所をケースワーカーに報告します。
よくある質問(Q&A)

Q1: 生活保護を受けていることを隠して契約できますか?
A: できません。また、隠すべきではありません。家賃の支払い方法(住宅扶助、代理納付)を説明する必要があり、隠すことは不可能です。正直に伝え、代理納付などの仕組みで大家の信頼を得る方が、審査に通りやすくなります。
Q2: 審査で何度も落ちています。どうすればいいですか?
A: 以下を試してください。
(1)福祉事務所に相談し、不動産会社を紹介してもらう
(2)住宅扶助の上限額より低い家賃の物件を探す
(3)代理納付を利用することを強調する
(4)生活保護受給者歓迎の物件を探す
それでも難しい場合、法テラスで弁護士に相談してください。
Q3: 連帯保証人がいません。契約できますか?
A: はい、保証会社を利用すれば契約できます。保証料は転居費用として支給される場合があります。ケースワーカーに相談してください。
Q4: ペット可の物件は借りられますか?
A: 生活保護受給者でもペット可物件を借りることは可能です。ただし、ペット可物件は家賃が高めで、審査も厳しい傾向があります。ペットの飼育が生活に必要な理由(盲導犬、セラピー犬など)があれば、ケースワーカーに相談してください。

Q5: 初期費用を一旦立て替える必要がありますか?
A: 福祉事務所の転居支援による場合、代理納付により直接支払われることが多いです。ただし、自治体や状況により、一旦立て替えて後日精算する場合もあります。立て替えが困難な場合は、ケースワーカーに相談してください。
Q6: 家賃が住宅扶助の上限を超える物件は絶対に借りられませんか?
A: 絶対ではありませんが、推奨されません。超過分は自己負担となり、生活扶助費から支払うことになります。例えば、上限5万3,700円のところ、家賃6万円の物件を借りると、毎月6,300円を自己負担することになり、生活が苦しくなります。

Q7: 審査に通った後、生活保護を受給することを伝えてもいいですか?
A: いいえ。契約前に必ず伝える必要があります。契約後に伝えると、虚偽申告とみなされ、契約解除や退去を求められるリスクがあります。
Q8: シェアハウスは借りられますか?
A: 生活保護では、原則として個室(独立した生活空間)が必要です。シェアハウスは、個室があり、鍵がかかるなど一定の条件を満たせば認められる場合がありますが、多くの自治体では認められません。ケースワーカーに確認してください。

まとめ:生活保護受給者でも適切な対応で賃貸契約は可能

本記事の重要なポイントをまとめます。
賃貸審査の実態
- 生活保護受給者だから必ず審査に落ちるわけではない
- 代理納付により家賃が確実なため、歓迎する大家もいる
- 福祉事務所のサポートが大きな助けになる
入居拒否の法的問題
- 明確な禁止規定はないが、憲法上の問題がある
- 不当な拒否には、福祉事務所や弁護士に相談
審査に通りやすくする5つの方法
- 住宅扶助の範囲内の物件を選ぶ
- 福祉事務所の転居支援を受ける
- 代理納付を利用する
- 保証会社を利用する
- 生活保護受給者歓迎の物件を探す
物件探しのコツ
- 家賃は上限の80%~90%を目安に
- 築古、駅から少し離れた、1階の物件が狙い目
- 生活保護受給者に理解のある不動産会社を選ぶ
初期費用の支援
- 転居費用として、敷金、礼金、仲介手数料、引越代などが支給される
- 合計20万円~30万円程度
- 転居指導による転居が条件
福祉事務所のサポート
- 不動産会社の紹介
- 大家との交渉
- 転居費用の支給
- 契約書の確認
最後に
生活保護を受けているからといって、賃貸住宅を借りられないわけではありません。確かに、偏見を持つ大家や不動産会社は存在しますが、適切な対応により、審査に通る可能性は十分にあります。
重要なのは、以下の点です。
- 正直に伝える:生活保護を受けていることを隠さず、正直に伝える
- 代理納付を強調:家賃が確実に支払われることをアピール
- 福祉事務所のサポートを活用:ケースワーカーに積極的に相談
- 適切な物件を選ぶ:住宅扶助の範囲内、審査が通りやすい物件を選ぶ
何度も審査に落ちて諦めかけている方も、諦めないでください。福祉事務所、法テラス、住宅セーフティネット制度の相談窓口など、支援してくれる機関があります。
適切な住居は、健康で文化的な生活の基盤です。あなたにも、安心して暮らせる住まいを見つける権利があります。一人で抱え込まず、周囲のサポートを活用して、新しい生活のスタートを切りましょう。

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