「生活保護受給者は引っ越しができない」と勘違いしている方が多数いますが、そんな事はありません。
実は、生活保護受給者でも引っ越しをする事はできます。
しかも、引っ越しができるどころか、ホームレスなど安定した住居のない場合や転居が必要と認められた場合には、引っ越しに必要な費用(引越し代や敷金等)が生活保護から支給されます。
そこで、このページでは、生活保護受給中の方が引っ越しをする場合の条件や方法、支給金額はどうなるのか?引っ越しを2回以上する場合も生活保護から引越し費用が支給されるのか?等、生活保護の引っ越し費用に関する疑問について、わかりやすくご説明します。
生活保護費から引っ越し費用が支給されるための要件
生活保護費から引越し費用を支給してもらうには、下記の条件の何れか1つに該当する必要があります。
- 入院患者が実施機関の指導に基いて退院するに際し帰住する住居がない場合
- 実施機関の指導に基づき、現在支払われている家賃又は間代よりも低額な住居に転居する場合
- 土地収用法、都市計画法等の定めるところにより立退きを強制され、転居を必要とする場合
- 退職等により社宅等から転居する場合
- 法令又は管理者の指示により社会福祉施設等から退所する際し帰住する住居がない場合
(当該退所が施設入所の目的を達したことによる場合に限る。) - 宿所提供施設、無料低額宿泊所等を一時的な起居の場として利用している場合であって
居宅生活ができると認められる場合 - 現在の居住地が就労の場所から遠距離にあり、通勤が著しく困難であって、当該就労の場所の附近に転居することが、世帯の収入の増加、当該就労者の健康の維持等世帯の自立助長に特に効果的に役立つと認められる場合
- 火災等の災害により現住居が消滅し、又は、居住にたえない状態になったと認められる場合
- 老朽又は破損により居住にたえない状態になったと認められる場合
- 世帯人員からみて著しく狭隘であると認められる場合
- 病気療養上著しく環境条件が悪いと認められる場合又は身体障害者がいる場合であって
設備構造が居住に適さないと認められる場合 - 住居が確保できないため、親戚、知人宅等に一時的に寄宿していた者が転居する場合
- 家主が相当の理由をもって立退きを要求し、又は借家契約の更新の拒絶若しくは解約の申入れを行ったことにより、やむを得ず転居する場合
- 離婚(事実婚の解消を含む。)により新たに住居を必要とする場合
- 高齢者、身体障害者等が扶養義務者の日常的介護を受けるため、扶養義務者の住居の近隣に転居する場合または、双方が被保護者であって、扶養義務者が日常的介護のために高齢者、身体障害者等の住居の近隣に転居する場合
- 被保護者の状態等を考慮の上、適切な法定施設に入居する場合で、やむを得ない場合
上記のとおり、全部で16通りの条件がありますが、実際によく使われる引っ越し理由は4つ程度です。
最も引っ越し費用が必要な理由によく使われるのは上表2番目の住宅扶助の上限額よりも家賃がオーバーしている場合です。
次に引っ越し費用が必要な理由に使われるのは、上表7番目の勤務先付近に引っ越しをする場合と、15番目と16番目の高齢者等が日常的な介護をしてもらうために扶養義務者である親族に近く、もしくは老人ホーム等に引っ越しをする場合です。
その他の引っ越し費用が出る条件は元々家がないとか、火災等によって家がなくなった場合等のため、現在アパート・マンションを借りている方が引っ越しをしたい場合は、上記4つのどれかに該当するようにケースワーカーと相談するのが引っ越しの近道です。
引っ越し費用の対象範囲と支給金額
生活保護費から引っ越し費用を支給する場合の対象範囲は引っ越し業者に支払う引っ越し代に加えて大家さんに支払う敷金・礼金等も支給されます。
つまり、引っ越しに関するあらゆる費用が生活保護費から支給されます。
引っ越し代と敷金等で算定方法が異なるので、それぞれの算定方法について、下記わかりやすくご説明します。
引っ越し代
引っ越し代については、引っ越しに掛かった費用全額が支給されます。
引越し費用の算定方法としては、引っ越し業者2、3社から見積もりを取り、その中で最も安い金額が支給されます。
B社の引っ越し見積額7万円
この場合、A社の引っ越し見積額の方が安いため、引っ越し費用として生活保護費から6万円が支給されます。
なお、どこの引っ越し業者から見積りを取らなければならないと言う決まりはないため、自身で引っ越し業者を探して、見積りをとる必要があります。
最近では、↓のように一括で引っ越し費用の見積りをしてくれるサイトもあるため、このようなサイトを活用して引っ越し費用の見積りを取るのも1つの方法だと思います。
ちなみに…
生活保護費用から支給される引っ越し費用については、上限額はありません。
仮に引っ越し費用が高額になったとしても、引っ越し掛かる費用全額が支給されます。
敷金・礼金等
引っ越しをする場合、日本では慣習として引っ越し先の大家さんに対して敷金・礼金・鍵交換・クリーニン代等(以下では敷金・礼金等)を支払わなければいけません。
この敷金・礼金等も生活保護費では支給される。
ただし、敷金・礼金等については、上記の引っ越し費用と異なり、上限額があります。
敷金・礼金等の算定方法は、住宅扶助基準の上限金額×1.3×3=敷金等の上限額です。
住宅扶助基準の上限金額は福祉事務所によって異なるため、各市町村ごとで敷金・礼金等の上限額も異なります。
この場合、最大で11万7千円が支給されます。
例えば敷金・礼金等の金額が10万円であれば、上限額以内のため10万円全額が支給されます。
敷金・礼金等の金額が12万円であれば、敷金・礼金等の上限額11万7千円が支給され、差額の3千円は手出しが必要になります。
ちなみに…
敷金・礼金等の上限額が福祉事務所によって異なりますが、それは現在住んでいる市町村の福祉事務所基準なのか?それとも転居先の市町村の福祉事務所基準なのか?どちらの福祉事務所の上限額になるのか?と疑問に思ったのではないでしょうか?
答えは…上限額の高い方の福祉事務所の上限額を支給してもらうことができます。
引っ越し費用の支給方法
生活保護の8つの扶助のうち、引っ越し費用は住宅扶助から支給されます。
生活保護費から引っ越し費用が支給される場合、追加支給と言う方法で支給されます。
追加支給とは、毎月決められた日に支給される生活保護費とは別の日に必要に応じて支給する方法です。
引っ越し費用については、原則、生活保護受給者に直接支給しますが、例外として、委任状を出せば、福祉事務所から直接引越し業者に引っ越し費用を、大家さんに敷金・礼金を代理納付することも可能です。
なぜ代理納付をするのか?と言いますと、もしも支給された引っ越し費用を紛失したり、別のものに使い込んでしまった場合等は、再支給は、もちろんありませんし、紛失等が理由で引っ越し自体が取りやめになれば、引っ越し費用として支給されたお金は不正受給とみなされ全額返還金又は徴収金として返さなくてはなりません。
そのため、できれば福祉事務所から直接引っ越し業者に引っ越し費用を、大家さんに敷金等を代理納付してもらった方が確実でオススメです。
引っ越し費用は2回目以降も支給してもらえるのか
上記のとおり、引っ越し費用を支給後に紛失したり、別の用途に使い込んでしまった場合は、引っ越し費用が再支給されることはありません。
しかし、1度、引っ越し費用を支給されたら、次の転居の時には引っ越し費用は支給されないのか?と言うと、そんなことはありません。
2回目、3回目であろうと引っ越し費用が支給される条件に該当すれば、何度でも引っ越し費用が支給されます。
そのため、生活保護受給中に2回、3回と引っ越しをした人は実際にいます。
もちろん、「近所の人が嫌」「もっと便利なところに住みたい」と言ったワガママな理由で引っ越し費用を支給してもらうのは如何なものかと思いますが、きちんとした理由があるのであれば2回目、3回目と引っ越し費用を支給してもらうのは特に問題ありません。
引っ越し費用について相談する時の注意点
支給の要件が16通りもあるため、比較的簡単に転居費用を出してもらえると思うかもしれませんが、実際は上記条件に該当することは非常に難しいです。
また、逆に引っ越し費用が支給できる条件がキッチリと明記されているため、上記条件以外での引っ越し費用の支給は絶対に認められません。
そのため、担当ケースワーカーに引っ越し費用を出して欲しいと相談しても、なかなか、出してもらえません。
引っ越し費用の支給には条件があるが自腹なら引っ越しは自由にできる
生活保護費から引っ越し費用を支給してもらうには、上記で紹介した16通りある引っ越し費用を支給してもらうための条件のいずれか1つを満たす費用があります。
しかし、それはあくまで引っ越し費用が支給されるための条件です。
福祉事務所に引っ越し費用の支給を求めず、生活保護受給者が自腹で引っ越し費用を出すなら自由に引っ越しをすることができます。
具体的には毎月支給される生活保護費を貯金していく方法の他、大家から転居を求められた場合は大家に引っ越し費用を請求することができますし、先日支給された新型コロナウイルス関連の給付金を活用する方法もあります。
このように、生活保護費から引っ越し費用を支給してもらわず、自腹で引っ越し費用を出す場合は自由に引っ越しをすることはできます。
しかし、引っ越し後も生活保護を支給してもらう場合は、必ず担当ケースワーカーに引っ越し先の住所等について、引っ越しをする前に報告しておきましょう。
まとめ
生活保護では引っ越し費用が出るのか?また、いくらまで引っ越し費用が支給されるのか?敷金・礼金等はどうなるのか?について、ご説明させていただきました。
上記をまとめると
- 16通りある条件のいずれかを満たせば生活保護費から引っ越し費用が支給される
- 引っ越し業者に支払う引っ越し費用については、上限額はなく、費用全額が支給される
- 敷金・礼金等は各自治体で設定されている住宅扶助基準の上限金額×1.3×3を上限に支給される
- 引っ越し費用は毎月の支給日とは別日に追加支給と言う方法で支給される
- 引っ越し費用を紛失してしまったり、別の用途に使った場合は不正受給となり、全額返還しなければならなくなるため、福祉事務所に代理納付をしてもらった方が良い
- 引っ越し費用の支給条件に該当すれば2回目、3回目と引っ越し費用を支給してもらうことができる
- 引っ越し費用の支給条件は明文化されていることから、一切の融通がきかない
- 引っ越し費用を出してもらわなければ生活保護受給者は自由に引っ越しをすることができる
となります。
その他、生活保護の支給に関する様々な疑問については、下記にまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
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