「生活困窮者自立支援制度を使いたいけど、デメリットはないの?」「生活保護とどう違うの?」そんな疑問を持っている方は多いはずです。
制度を利用する前に、メリットだけでなくデメリットや注意点をきちんと把握しておくことは、支援を最大限に活かすために不可欠です。
本記事では、生活困窮者自立支援制度の仕組みから、実際に利用した場合のメリット・デメリット、向いている人・向いていない人まで徹底的に解説します。
生活困窮者自立支援制度とは?

生活困窮者自立支援制度は、2015年4月に「生活困窮者自立支援法」に基づき施行された国の制度です。生活保護を受けるに至っていないが、このままでは生活が立ち行かなくなるおそれがある方を、早い段階から包括的にサポートすることを目的としています。


制度の背景と現状
厚生労働省の調査によると、本制度の新規相談受付件数は2021年度に約78万件(コロナ禍の影響)を記録し、コロナ前と比較して約3倍に急増しました。その後も年間25〜30万件前後で推移しており、日本社会において生活困窮が「特別な問題」ではなく「誰にでも起こりうる問題」であることを示しています。
主な支援メニュー(制度の全体像)
| 支援メニュー | 内容 | 必須 or 任意 |
|---|---|---|
| 自立相談支援事業 | 専門員による相談・支援プラン作成 | 必須 |
| 住居確保給付金 | 家賃相当額を最大9ヶ月支給 | 必須 |
| 就労準備支援事業 | 段階的な就労訓練・社会参加支援 | 任意 |
| 家計改善支援事業 | 家計の見直し・再建支援 | 任意 |
| 一時生活支援事業 | 宿泊・食事の提供(ホームレス等) | 任意 |
| 子どもの学習・生活支援 | 生活困窮世帯の子どもへの支援 | 任意 |
「必須」事業は全国の自治体が実施義務を負いますが、「任意」事業は自治体によって実施していない場合があります。これが後述するデメリットの一つにも繋がります。
制度を利用する5つのメリット

メリット①:生活保護より利用のハードルが低い
生活保護は、資産・預貯金・不動産・扶養義務者の有無などを厳しく審査されます。一方、生活困窮者自立支援制度には明確な収入・資産要件がなく、「生活に困窮しているおそれがある」という状態であれば誰でも相談できます。
- 車を持っていても相談可能
- 持ち家があっても相談可能
- 家族に知られずに相談できる(扶養照会なし)
- 外国籍の方も相談可能
「生活保護を申請するほどではないかも…」と躊躇している方にとって、まず気軽に動ける入口として機能します。
メリット②:ワンストップで複合的な問題に対応できる
生活困窮の問題は、多くの場合「仕事がない+家賃が払えない+精神的に不安定+家族関係が崩壊」といった具合に、複数の問題が絡み合っています。
自立相談支援機関では、専任の支援員(プランナー)が個人の状況を丁寧にヒアリングし、就労・住まい・医療・家計・家族関係など複数の課題を一括してプランニングします。ハローワーク、福祉事務所、社会福祉協議会、医療機関など関係機関への同行支援も行っており、「どこに行けばいいか分からない」という方でも安心して利用できます。
メリット③:無料で利用できる
自立相談支援事業・住居確保給付金の相談・就労準備支援など、制度の主要なサービスはすべて無料です。家計が苦しい状況で費用の心配なく利用できる点は、大きな安心材料です。
なお、住居確保給付金は「給付金」であるため、返済不要です(貸付ではありません)。家賃を直接支払うのに必要な原資を、一定期間公費でまかなってもらえます。
メリット④:就労・自立に向けた段階的なサポートがある
「すぐに働ける自信がない」「長期間無職だったので再就職が怖い」という方には、いきなり仕事を探すのではなく、段階的なプログラムが用意されています。
就労準備支援事業では、生活リズムの立て直し→社会参加体験→就労体験→就職活動という段階を踏んで自立を目指します。また、家計改善支援事業では、ファイナンシャルプランナーなどの専門家が家計の収支を一緒に見直し、「稼いでも貯まらない」状態の根本的な改善を支援します。
メリット⑤:子どもへの支援で「貧困の連鎖」を断ち切れる
生活困窮世帯の子どもは、学習機会・進学機会が制限されやすく、親と同じく困窮状態に陥るリスクが高いとされています(「貧困の連鎖」)。
子どもの学習・生活支援事業では、中学生・高校生への学習支援や、生活習慣の形成、進路相談など子ども自身の自立も視野に入れた支援が受けられます。家庭全体を丸ごと支援する姿勢は、この制度の大きな強みです。
知っておきたい4つのデメリット・注意点

デメリット①:自治体によってサービス内容に大きな差がある
前述の通り、就労準備支援・家計改善支援・一時生活支援などは「任意事業」であり、実施するかどうかは各自治体の判断に委ねられています。
2022年度の調査では、就労準備支援事業の実施率は全自治体の約72%、家計改善支援事業は約69%にとどまっています。 ——厚生労働省「生活困窮者自立支援制度の実施状況」
つまり、約3割の自治体では、就労準備支援や家計改善支援を受けられない可能性があります。地方の小規模自治体ほど未実施のケースが多く、居住地によって受けられる支援に格差が生じています。
対策: お住まいの市区町村窓口に事前に「どの事業が実施されていますか?」と確認しましょう。実施していない場合でも、近隣自治体や都道府県の機関を紹介してもらえることがあります。
デメリット②:現金給付は「住居確保給付金」のみで、生活費は原則もらえない
生活保護は、生活費・住宅費・医療費・介護費など幅広い扶助が「給付金」として支給されますが、生活困窮者自立支援制度で現金給付されるのは住居確保給付金(家賃相当額)のみです。
生活費そのものが底をついている状態では、この制度だけでは即座の解決にならない場合があります。緊急の生活費が必要な場合は、社会福祉協議会の緊急小口資金(最大10万円)や総合支援資金と組み合わせて活用する必要があります。
対策: 自立相談支援機関に相談すると、状況に応じて複数の制度を組み合わせたプランを提案してもらえます。「この制度だけで解決しようとしない」ことが重要です。
デメリット③:支援が「相談・サポート」中心で、即効性に限界がある
生活困窮者自立支援制度は、中長期的な自立を目指す設計になっているため、「今日お金がない」「明日家を出なければならない」という緊急性の高い状況には、即応しきれない面があります。
就労準備支援事業は数週間〜数ヶ月単位のプログラムであり、相談からプラン作成・支援開始まで一定の時間がかかります。また、支援員の人員が限られているため、相談の予約が取りにくい自治体もあります。
対策: 急を要する場合は、まず電話で状況を伝えましょう。「今日住む場所がない」「食べ物がない」といった緊急事態は、優先的に対応してもらえます。また、夜間・休日は「よりそいホットライン(0120-279-338)」が24時間対応しています。
デメリット④:利用には「本人の積極的な意思」が前提となる
この制度は、本人が自立に向けた意思を持って取り組むことを前提として設計されています。支援員が伴走してくれますが、あくまで主役は利用者本人です。
精神疾患・依存症・引きこもりなど、本人が支援を求めることが困難な状態の場合、制度の恩恵を十分に受けられないケースがあります。家族や支援者が代わりに相談窓口へ赴き、本人への働きかけを支援してもらうことが必要になる場面もあります。
また、就労支援においては「働く意欲があること」が求められるため、心身の状態が整っていない段階では、まず医療・精神的サポートを優先することも重要です。
生活保護との違いと使い分け

生活困窮者自立支援制度と生活保護は、よく混同されますが、目的・対象・内容が大きく異なります。
| 比較項目 | 生活困窮者自立支援制度 | 生活保護 |
|---|---|---|
| 対象 | 困窮するおそれがある人 | 最低生活費を下回る収入・資産の人 |
| 資産要件 | なし(柔軟) | あり(原則として資産活用が必要) |
| 扶養照会 | なし | あり(一部省略可) |
| 現金給付 | 住居確保給付金のみ | 生活・住宅・医療・教育など多岐 |
| 医療費 | カバーなし | 医療扶助で無料 |
| 自動車保有 | 可能 | 原則不可(例外あり) |
| 目的 | 自立・就労の促進 | 最低生活の保障 |
使い分けの基本的な考え方
- まだ収入・資産に余裕があり、就労・生活再建の意欲がある → 生活困窮者自立支援制度
- 収入・資産が最低生活費を下回っている or 就労が困難な健康状態 → 生活保護

なお、両制度は併用できません。生活保護受給者は、生活困窮者自立支援制度の対象外となります。ただし、支援制度を利用しながら状況が改善しない場合は、生活保護申請へ移行することが推奨されます。


こんな人に向いている/向いていない

向いている人
- 収入が減少し始めたが、まだ生活保護の水準には至っていない
- 仕事を失ったが、再就職への意欲・可能性がある
- 家賃の支払いに困っており、一時的な支援で立て直せそう
- 家計管理が苦手で、お金の使い方を根本から見直したい
- 子どもの学習環境・進学を何とかしたい
- 複数の問題を抱えており、どこから手をつければいいか分からない
向いていない(他の制度を優先すべき)人
- すでに収入・資産が最低生活費を大幅に下回っている → 生活保護を優先
- 精神疾患・重篤な疾病で就労どころではない → 医療機関・障害福祉サービスを優先
- 多重債務・自己破産が必要な状況 → 法テラスを優先
- DV・虐待などの緊急の身の危険がある → 配偶者暴力相談支援センター・警察を優先
「どちらに該当するか分からない」場合こそ、まず自立相談支援機関に相談することが最善策です。支援員が状況を見極め、最適な制度や機関を案内してくれます。
デメリットを補う活用術

デメリットを踏まえたうえで、制度を最大限に活かすための実践的なポイントをまとめます。
① 複数の制度・機関を組み合わせる
この制度単独ではなく、ハローワーク・社会福祉協議会・法テラス・フードバンクなどと並行して活用することが重要です。支援員に「他に使える制度はありますか?」と積極的に質問しましょう。
② 支援を受ける前に「自分の状況を整理する」
相談をスムーズに進めるために、事前に以下を整理しておくと効果的です。
- 月収・月支出の概算
- 滞納状況(家賃・光熱費・ローンなど)
- 健康状態・就労可否
- 家族構成・緊急連絡先
③ 支援員との信頼関係を築く
制度の効果は、支援員との関係性に大きく左右されます。「言いにくいこと」も含めて正直に話すことで、より適切な支援プランが作られます。担当者と合わない場合は、変更を申し出ることも可能です。
④ 「就労だけが自立ではない」と理解する
この制度は就労・自立を目指すものですが、就労が困難な状態であれば、「社会参加」「生活の安定」を目標にした段階的な支援も可能です。焦らず、自分のペースで進めることが長期的な自立につながります。
よくある質問(FAQ)

Q. 一度相談したら、必ず支援を受け続けないといけない?
A. いいえ。相談だけして終了することも、途中で支援を中断することも可能です。すべて本人の意思が尊重されます。
Q. 住居確保給付金は何ヶ月もらえる?
A. 原則3ヶ月で、条件を満たせば最大9ヶ月まで延長できます。支給額は家賃の実費(上限あり)で、お住まいの地域の生活保護基準の住宅扶助額が上限となります。


Q. 就労準備支援事業は、働いたことがない人でも参加できる?
A. はい。むしろ、長期間就労から離れていた方や、社会生活に困難を感じる方を主な対象としています。「挨拶の練習」「生活リズムの立て直し」から始めるプログラムもあります。
Q. 申請から支援開始まで、どのくらいかかる?
A. 相談の予約から初回面談まで数日〜1〜2週間程度、支援プランの確定まで数回の面談を要するのが一般的です。緊急性が高い場合は、その旨を電話で最初に伝えてください。
まとめ:制度のメリット・デメリットを理解して賢く活用しよう

生活困窮者自立支援制度のメリット・デメリットを整理します。
メリット(5つ)
- 利用のハードルが低く、気軽に相談できる
- ワンストップで複合的な問題に対応できる
- 主要サービスはすべて無料・返済不要
- 段階的な就労・自立支援がある
- 子どもへの支援で貧困の連鎖を断ち切れる
デメリット(4つ)
- 自治体によってサービス内容に格差がある
- 現金給付は住居確保給付金のみ
- 中長期支援が中心で、即効性に限界がある
- 本人の積極的な意思が必要
どんな制度にも「万能」はありません。大切なのは、デメリットを正しく理解した上で、他の制度・機関と組み合わせながら活用することです。
一人で悩んでいる時間が長いほど、状況は悪化します。この記事を読んだ今日、まず一本電話してみてください。


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