「生活困窮者って、自分のことだろうか」「年収がいくら以下だと生活困窮者になるの?」「支援を受けられる条件は何?」こんな疑問を持っている方は少なくありません。
物価高騰・非正規雇用の拡大・コロナ後の経済停滞など、今の日本では誰もが突然「生活困窮状態」に陥るリスクがあります。実際、厚生労働省の国民生活基礎調査(2022年)によれば、日本の相対的貧困率は15.4%、つまり約6〜7人に1人が貧困線以下の所得水準で暮らしているのが現状です。
この記事では、「生活困窮者の定義」「年収の目安」「支援制度の内容」「相談窓口の使い方」まで、初めて調べる方でも理解できるよう、具体的なデータと制度解説を交えながら網羅的にお伝えします。
生活困窮者とは?法律上の定義をわかりやすく解説

「生活困窮者」という言葉は日常的によく使われますが、法律上は明確に定義されています。
法律による定義
生活困窮者自立支援法(2013年公布・2015年4月施行)の第二条では、生活困窮者について次のように定めています。
【法律の定義】生活困窮者自立支援法 第三条
「現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」
注目すべきポイントは「なるおそれのある者」という表現です。これは「今すぐ食べるものがない」という極限状態でなくても、このまま放置すれば最低限の生活を維持できなくなる可能性がある人も含まれることを意味します。
つまり、生活困窮者支援制度の対象は、すでに限界まで困っている人だけでなく、今の収入・資産・状況が続けば近い将来に困窮するリスクが高い人にも開かれた制度なのです。
「相対的貧困」と「絶対的貧困」の違い
| 用語 | 意味・目安 |
|---|---|
| 絶対的貧困 | 食料・住居など生存に必要な最低限のものを得られない状態。世界的には1日1.9ドル未満が基準。 |
| 相対的貧困 | その社会の平均的な生活水準から大きく下回る状態。日本では等価可処分所得が中央値の半分(貧困線)未満。 |
| 貧困線(2021年) | 等価可処分所得 127万円(厚生労働省 国民生活基礎調査2022年版より) |
| 相対的貧困率(2021年) | 15.4%(約6〜7人に1人) |
日本の生活困窮者支援制度で扱われるのは主に「相対的貧困」です。日本社会において標準的な生活水準を下回り、社会から孤立するリスクが高い状態を指します。
生活困窮者の年収の目安はいくら?貧困線を解説

「年収がいくらなら生活困窮者なの?」という疑問は非常に多く寄せられます。結論からいうと、生活困窮者自立支援制度には明確な年収制限はありません。しかし、いくつかの指標や支援制度ごとの基準が参考になります。
貧困線(相対的貧困の基準)
厚生労働省の「2022年国民生活基礎調査」によると、2021年の日本の「貧困線」(等価可処分所得の中央値の半分)は127万円です。これは年間の手取り収入から税・社会保険料を差し引いた後の金額を世帯人数の平方根で割った「等価可処分所得」で計算されます。
| 世帯構成 | おおよその年収の目安(手取りベース) |
|---|---|
| 単身世帯 | 年収127万円程度以下(月収約10.6万円) |
| 2人世帯(夫婦など) | 年収179万円程度以下(127万×√2) |
| 3人世帯(夫婦+子1人) | 年収220万円程度以下(127万×√3) |
| 4人世帯(夫婦+子2人) | 年収254万円程度以下(127万×√4) |
ただし注意が必要なのは、貧困線はあくまで「相対的貧困の統計的基準」であり、支援を受けられるかどうかの直接の基準ではないという点です。
支援制度ごとの収入基準の例
住居確保給付金など個別の支援制度には、それぞれ収入の目安(基準)が設けられています。例えば「住居確保給付金」の収入要件は、市町村民税の均等割が非課税となる額の12分の1+家賃額が目安です。東京23区の単身世帯ではおおよそ月収13〜15万円程度が目安となります(自治体により異なります)。
また、ワーキングプア(働く貧困層)の実態として、年収200万円以下を一つの目安とする見方もあります。これは非正規雇用者の賃金水準や、生活費をまかなうのが厳しいラインとして民間調査・支援団体が参照することが多い数字です。
年収だけでは判断できない「複合的な困窮」
生活困窮は年収の数字だけで判断できるものではありません。以下の要素が複合的に影響します。
- 家族構成(単身・ひとり親・子どもの人数)
- 住居の有無・家賃の割合(手取りに占める家賃比率が高い場合)
- 健康状態・障害の有無
- 社会的孤立の程度
- 介護や育児など家族の状況
- 借金・ローンの返済状況
例えば、年収150万円の単身者と、年収150万円のひとり親(子ども2人)では、生活の厳しさはまったく異なります。制度も個々の事情を踏まえて判断する仕組みになっています。
生活困窮者自立支援制度とは?6つの支援事業を解説

「生活困窮者自立支援制度」は、2015年4月から全国で運用が始まった、生活保護の一歩手前の人々を包括的に支援する公的制度です。「第二のセーフティネット」とも呼ばれ、生活保護制度(第三のネット)と社会保険・雇用保険(第一のネット)の間を埋める重要な位置づけです。


必須事業(すべての自治体で実施)
① 自立相談支援事業
制度の「入り口」となる相談窓口です。専門の支援員が話を聞き、一人ひとりの状況に合わせた「支援プラン」を作成します。収入・就労・住居・家族・健康など複合的な問題を整理し、必要な支援につなぎます。相談に際して収入や資産の要件はなく、「困っているかもしれない」と感じたら誰でも相談できます。
② 住居確保給付金
離職・廃業または収入の大幅な減少などにより住居を失うおそれがある方に対して、一定期間(原則3ヶ月、最長9ヶ月)家賃相当額を支給する制度です。支給は本人ではなく家主へ直接行われます。収入・資産・求職活動などの要件があります。
任意事業(自治体の判断で実施)
③ 就労準備支援事業
すぐに就職が難しい方を対象に、6ヶ月〜1年間にわたって生活リズムの改善・就労への基礎力向上・職場体験などを支援します。長期間の引きこもり・社会的孤立がある方にも対応します。
④ 就労訓練事業(中間的就労)
一般就労への移行が難しい方が、支援を受けながら少しずつ働く経験を積める「中間的就労」の場を提供します。社会福祉法人・NPO法人・民間企業などが厚生労働省の認定を受けて実施します。
⑤ 家計改善支援事業
家計の収支を「見える化」し、家計管理のアドバイスや債務整理の支援を行います。滞納が積み重なっている・借金の整理ができていないなどの問題を一緒に解決します。
⑥ 子どもの学習・生活支援事業
生活困窮世帯の子どもを対象に、学習支援(塾に相当するサポート)や生活習慣・進路相談などを行います。「貧困の連鎖」を断ち切るために重要な事業です。
⑦ 2024年改正のポイント
2024年(令和6年)の生活困窮者自立支援法改正では、生活保護受給者も自立支援制度の対象に加えられるなど、支援対象・支援内容が拡充されました。より幅広い人が切れ目なく支援を受けられる体制が整えられています。
生活困窮者が置かれる現状と原因

なぜ今、生活困窮者が増えているのでしょうか。背景を理解することで、困窮は「自己責任」ではなく「社会的な構造問題」であることがわかります。
増加する生活困窮相談の件数
厚生労働省の資料によれば、自立相談支援事業への新規相談件数はコロナ禍の2020年度に大幅に増加し、その後も高水準を維持しています。物価高騰・電気代の上昇・食費の増大などが続く中、「働いていても生活が苦しい」ワーキングプア層の相談が増えているのが特徴です。
生活困窮の主な原因
- 非正規雇用・低賃金労働:アルバイト・派遣社員など非正規の割合が約4割に達し、収入が不安定
- 傷病・障害:突然の病気やけがで働けなくなり収入が途絶える
- 家族の介護・育児:ひとり親や介護者は就労時間が制限され収入が低くなりやすい
- 社会的孤立:人間関係が希薄で助けを求められず、困窮が深刻化
- 多重債務:借金の返済が収入を圧迫し、生活費が不足する
- メンタルヘルスの問題:うつ病・不安障害などで就労継続が困難
NPO法人日本もったいない食品センターの2024年度調査では、支援を申請した単身世帯の等価可処分所得は平均約139万円で、うち約半数(520世帯/1,084世帯)が貧困線(127万円)以下でした。ひとり親世帯では平均約123万円と、さらに厳しい状況が示されています。
生活困窮者支援の相談窓口と申請の流れ

どこに相談すればいい?
- 市区町村の福祉課・生活支援課
- 社会福祉協議会
- NPO法人・社会福祉法人が運営する自立相談支援機関
- よりそいホットライン(電話:0120-279-338)
- 生活困窮者自立支援制度の相談窓口(厚生労働省ウェブサイトで検索可能)
相談から支援までのステップ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| STEP 1:相談 | 窓口を訪問または電話・オンラインで相談。「困っていること」を話すだけでOK |
| STEP 2:アセスメント | 支援員が生活・就労・健康・家族などの状況を一緒に整理する |
| STEP 3:支援プラン作成 | 個人の状況に合わせた具体的な支援計画を作成 |
| STEP 4:支援実施 | 就労支援・住居確保・家計改善など必要な支援を受ける |
| STEP 5:モニタリング | 定期的に状況を確認し、プランを調整しながら自立に向けて継続支援 |
相談のハードルを下げるポイント
「まだそんなに困っていないから」と迷う必要はありません。早めに相談するほど選択肢が広がります。相談時に資産や収入の証明書類は必須ではなく、「困っているかもしれない」という段階から利用できます。
生活保護との違いは?生活困窮者支援との関係

| 比較項目 | 生活困窮者自立支援制度 | 生活保護制度 |
|---|---|---|
| 対象 | 生活保護に至る前の「おそれのある者」 | 最低生活費を下回る収入・資産の者 |
| 収入基準 | 明確な基準なし(制度ごとに異なる) | 最低生活費未満が要件 |
| 支援内容 | 就労・家計・住居・学習など包括的支援 | 生活費の現金給付が中心 |
| 申請先 | 市区町村の自立相談支援機関 | 福祉事務所 |
| 扶養照会 | なし | 原則あり(家族への確認) |
2024年の法改正以降は、生活保護受給者も自立支援制度のサービス(就労訓練・家計改善など)を受けられるようになり、制度間の連携が強化されています。
よくある疑問(Q&A)

Q1. 働いていても生活困窮者支援を受けられる?
はい、受けられます。働いていても収入が少なく生活が苦しい「ワーキングプア」の方も支援対象です。「働いているから申請できない」という思い込みは誤りです。
Q2. 賃貸アパートの家賃が払えなくなりそうなとき
住居確保給付金が利用できる可能性があります。離職・廃業後2年以内、または収入が大幅に減少している方が対象で、一定期間(原則3ヶ月)家賃が補助されます。まず自立相談支援機関に連絡してください。
Q3. 相談したら必ず生活保護になるの?
なりません。相談の結果、状況に合った支援(就労支援・給付金・家計相談など)が提案されます。生活保護はあくまで最終的な手段であり、自立に向けたサポートが優先されます。

Q4. 家族に知られずに相談できる?
基本的に相談内容は秘密が守られます。生活困窮者自立支援制度には生活保護のような「扶養照会」(家族への連絡義務)はありません。一人で抱え込まず、まず相談してみましょう。
Q5. 外国籍の人は利用できる?
外国籍の方でも、在留資格があれば生活困窮者自立支援制度の相談窓口を利用できます。自治体によって対応言語は異なりますが、通訳・翻訳サービスを提供している窓口も増えています。
まとめ:生活困窮は「早めの相談」が最大の対策

- 生活困窮者とは「最低限度の生活を維持できなくなるおそれのある人」(生活困窮者自立支援法の定義)
- 年収の目安は「相対的貧困線127万円(等価可処分所得)」が参考になるが、制度の明確な年収制限はない
- 日本の相対的貧困率は15.4%(約6〜7人に1人)で、ひとり親世帯では44.5%にのぼる
- 生活困窮者自立支援制度では、相談・住居・就労・家計・子育てなど包括的な支援が受けられる
- 相談に収入証明は不要。「困っているかもしれない」と感じたら早めに窓口へ
相談窓口まとめ
- 市区町村の福祉課・生活支援課
- 社会福祉協議会
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
- 生活困窮者自立支援制度 相談窓口:厚生労働省HPで検索
生活困窮は決して「自己責任」ではなく、社会的・構造的な要因によって誰もがなりうる状況です。支援制度は「あなたのために」設けられたものです。一人で抱え込まず、専門家に頼ることが自立への最初の一歩です。

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