生活保護を受給している方にとって、12月は特別な月です。
なぜなら、通常の生活保護費に加えて「期末一時扶助費」という特別な手当が支給されるからです。
「12月の支給額がいつもより多いけど、これは何?」「来月以降も同じ金額がもらえるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、期末一時扶助費の仕組み、支給条件、金額一覧、そして知っておくべき重要な注意点まで詳しく解説します。
特に初めて年越しを迎える受給者の方は、必ず最後までお読みください。
期末一時扶助費(おもち代)とは?正月の支出を補う特別手当

期末一時扶助費は、正式には生活扶助に分類される手当ですが、その性質から一時扶助の一種として扱われます。

期末一時扶助費の目的
期末一時扶助費は、年末年始の特別な支出を補うために支給される越年資金です。
お正月には、通常の月と比べて以下のような特別な出費が発生します
- おせち料理の材料費や購入費
- お年玉(子どもがいる世帯)
- お正月用の食材(お餅、年越しそばなど)
- 新年のご挨拶に関する費用
- 年末年始の交通費(帰省や親族訪問)
これらの出費を通常の生活保護費だけでまかなうのは困難です。
そのため、国は年末年始の文化的な生活を送れるよう、特別に期末一時扶助費を支給しています。
「おもち代」の由来
期末一時扶助費は、生活保護の現場では通称「おもち代」と呼ばれています。正月のお餅を買うためのお金、という意味から来ています。
よくある誤解:1月支給分が遅れるから?
「1月分の支給が遅くなるから、その代わりに12月に支給される」と勘違いしている方がいますが、これは間違いです。
実際には、1月分の生活保護費は12月の最終営業日に支給されるため、むしろ通常より早く受け取ることができます。

期末一時扶助費は、支給時期の調整のためではなく、純粋に年末年始の特別支出を補うための追加手当なのです。
期末一時扶助費の支給条件は?誰がもらえるの?

期末一時扶助費の支給条件は非常にシンプルです。
基本的な支給条件
12月から翌年1月にかけて引き続き生活保護を受ける生活保護受給者全てが対象です。
具体的には:
- 12月1日時点で生活保護を受給している
- 1月も継続して生活保護を受給する予定である
この2つの条件を満たしていれば、自動的に支給されます。
特別な申請は必要ありません。
12月中に生活保護を開始した場合
12月の途中(例えば12月15日)から生活保護を開始した場合でも、期末一時扶助費は全額支給されます。
日割り計算はされず、12月中に保護を受けていれば満額もらえます。
12月中に生活保護が終了する場合
逆に、12月中に生活保護が停止または廃止になった場合は、期末一時扶助費は支給されません。

既に12月分と一緒に支給されていた場合は、後述する通り返還が必要になります。
支給の可否まとめ
- 12月1日から継続受給 → 全額支給
- 12月15日から受給開始 → 全額支給
- 12月20日に廃止 → 支給なし(返還必要)
- 12月31日に停止 → 支給なし(返還必要)
支給日はいつ?12月の生活保護費と一緒に振り込まれる

期末一時扶助費は年に1度、12月に支給されます。
具体的な支給方法
期末一時扶助費は、12月分の定例生活保護費と一緒に同じ口座に振り込まれます。
つまり、12月の振込額は
12月の振込額 = 通常の生活保護費 + 期末一時扶助費
多くの自治体では、12月分の生活保護費は12月1日〜5日頃に支給されます。
詳しい支給日は自治体によって異なるため、下記のページもご確認ください。

通知書での確認方法
支給決定通知書(保護費支給通知書)には、内訳が記載されています:
- 生活扶助:〇〇円
- 住宅扶助:〇〇円
- 期末一時扶助費:〇〇円
- 合計:〇〇円
通知書をよく見れば、期末一時扶助費が含まれていることが確認できます。
期末一時扶助費の支給額一覧【2025年版・級地別】

期末一時扶助費の金額は、お住まいの地域の級地と世帯人数によって異なります。
1級地-1(東京都23区など)
| 世帯人数 | 支給額 |
|---|---|
| 1人 | 13,500円 |
| 2人 | 22,010円 |
| 3人 | 22,680円 |
| 4人 | 25,520円 |
| 5人 | 26,600円 |
| 10人 | 37,260円 |
※6人以上は1人増すごとに1,620円加算されます
1級地-2(横浜市、大阪市など)
| 世帯人数 | 支給額 |
|---|---|
| 1人 | 12,890円 |
| 2人 | 21,010円 |
| 3人 | 21,660円 |
| 4人 | 24,360円 |
※6人以上は1人増すごとに1,550円加算されます
2級地-1(札幌市、千葉市、京都市など)
| 世帯人数 | 支給額 |
|---|---|
| 1人 | 12,280円 |
| 2人 | 20,020円 |
| 3人 | 20,630円 |
| 4人 | 23,210円 |
※6人以上は1人増すごとに1,470円加算されます
2級地-2、3級地-1、3級地-2
地方都市や町村部では、以下のような金額になります:
- 2級地-2(単身):11,680円
- 3級地-1(単身):11,070円
- 3級地-2(単身):10,460円
級地の詳細については、下記のページで詳しく説明しています。

ご自身の地域が何級地かは、担当ケースワーカーに確認してください。

【重要】知らないと損する!期末一時扶助費の2つの注意点

期末一時扶助費について、必ず知っておくべき重要な注意点が2つあります。
注意点1:1月以降の支給額は元に戻る
最も多いトラブルが、「12月の支給額が1月以降も続くと勘違いしてしまう」ケースです。
期末一時扶助費は毎月の生活保護費と一緒に振り込まれるため、特別手当が含まれていることに気づきにくいのです。
12月の支給額:15万円(通常12万円+期末一時扶助費3万円)
受給者の思い込み:「これからずっと15万円もらえる!」
実際:1月からは通常の12万円に戻る
結果:使いすぎて1月の生活が苦しくなる
ケースワーカーからのアドバイス
担当ケースワーカーは、初めて年を越す生活保護受給者に対しては、以下をしっかり説明しましょう:
- 12月の支給額が多いのは期末一時扶助費が含まれているため
- 1月からは通常の金額に戻ること
- 計画的に使う必要があること
事前説明がないと、1月に「支給額が減った!」というクレームにつながります。
注意点2:12月中の廃止・停止で返還が必要

12月中に生活保護が停止または廃止になった場合、既に受け取った期末一時扶助費は返還金として返す必要があります。

なぜ返還が必要なのか?
12月分の生活保護費(期末一時扶助費を含む)は、通常12月1日〜5日に支給されます。
例えば12月20日に廃止になった場合
- 12月5日に12月分+期末一時扶助費を受け取り済み
- 12月20日に廃止決定
- しかし期末一時扶助費の支給条件(12月〜1月継続受給)を満たさない
- よって期末一時扶助費は返還対象となる
返還額の計算例
月々の生活保護費:120,000円
期末一時扶助費:13,500円
廃止日:12月16日
返還額の内訳:
①通常の生活保護費の日割り返還
1日あたり:120,000円÷31日=3,871円
12月16日〜31日の16日間:3,871円×16日=61,936円
②期末一時扶助費の全額返還
13,500円
合計返還額:75,436円
通常月の廃止と比べて、期末一時扶助費分だけ返還額が多くなります。
既に使ってしまっている場合、返還が非常に苦しくなるため、12月中の廃止・停止が見込まれる場合は、期末一時扶助費を使わないよう注意が必要です。
期末一時扶助費を賢く使う3つのポイント

せっかく支給される期末一時扶助費、賢く活用しましょう。
1. 年末年始の特別出費に充てる
本来の目的通り、以下の支出に使いましょう:
- おせち料理の材料や購入費
- お正月用の食材(お餅、年越しそばなど)
- 子どものお年玉(親族の子どもへのお返しなど)
- 年末年始の挨拶用品
2. 一部を1月の生活費に回す
全額を12月に使い切らず、一部を1月の生活費として残しておくのも賢い方法です。

年末年始は何かと出費が多く、1月の生活が苦しくなりがちです。
計画的に使いましょう。
3. 必要な物品の購入に充てる
冬物衣類や暖房器具など、必要な物を購入するのも良いでしょう。
ただし、衝動買いは避けましょう。
よくある質問(Q&A)

Q1. 期末一時扶助費は申請が必要ですか?
A:いいえ、申請は不要です。条件を満たしていれば、自動的に12月分の生活保護費と一緒に支給されます。
Q2. 期末一時扶助費だけもらって、通常の生活保護費を辞退できますか?
A:できません。期末一時扶助費は生活保護費の一部であり、単独で受け取ることはできません。
Q3. 12月15日から生活保護を開始した場合、日割り計算されますか?
A:期末一時扶助費は日割り計算されず、全額支給されます。ただし、通常の生活保護費は日割り計算されます。
Q4. 支給額が思っていたより少ないのですが?
A:お住まいの地域の級地によって金額が異なります。担当ケースワーカーに確認してください。
Q5. 期末一時扶助費の使い道は制限されますか?
A:いいえ、使い道に制限はありません。ただし、本来の目的である年末年始の支出に充てることが推奨されます。
まとめ:期末一時扶助費を正しく理解して年越しを

期末一時扶助費(おもち代)は、生活保護受給者が文化的な年末年始を過ごせるよう配慮された制度です。
本記事のポイント:
- 期末一時扶助費は年末年始の特別支出を補う手当
- 12月から1月にかけて継続受給する全員が対象
- 12月分の生活保護費と一緒に自動的に支給される
- 金額は級地と世帯人数で決まる(単身で約1〜1.4万円)
- 1月からは通常の金額に戻るので計画的に使う
- 12月中に廃止・停止になると返還が必要
特に重要なのは、「12月だけの特別手当である」ことをしっかり認識することです。
1月以降も同じ金額が続くと勘違いしないよう、注意してください。
初めて期末一時扶助費を受け取る方、不明な点がある方は、担当ケースワーカーに遠慮なく質問しましょう。
正しく理解して、良い年末年始をお過ごしください。

