「生活保護を受けているが県外に引っ越したい」「実家がある県に戻りたい」「県外引っ越しの費用は出る?」生活保護受給者の県外引っ越しに関する疑問は数多くあります。
結論から言えば、生活保護を受給していても県外への引っ越しは可能です。 日本国憲法第22条で「居住・移転の自由」が保障されており、生活保護受給者も例外ではありません。
生活保護を受給していても県外へ引っ越しすることが可能なのは、日本国憲法第22条『何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。』によって、国民が等しく引っ越しをすることが可能であるからです。
ただし、必ずケースワーカーに事前相談し、許可を得る必要があります。 無断で引っ越すと生活保護が廃止される可能性があります。また、引っ越し費用が支給されるかどうかは、引っ越しの理由により異なります。
本記事では、県外引っ越しの可否、必要な手続き、費用支給の条件、移管手続きの流れ、注意点まで、厚生労働省の実施要領と2026年最新情報に基づいて徹底解説します。
この記事でわかること
- 県外引っ越しが可能な法的根拠
- 引っ越し費用が支給される条件
- 県外引っ越しの手続きの流れ(6ステップ)
- 福祉事務所間の移管手続き
- 支給額が変わる可能性
- よくある質問と回答
生活保護受給者の県外引っ越しは可能——憲法で保障された権利

憲法第22条——居住・移転の自由
日本国憲法第22条で『居住・移転の自由』がすべての国民に保障されているからです。これは生活保護を受けている人も例外ではなく、どこに住むかを自分で決める権利があります。
ただし事前相談と許可が必須
生活保護世帯の場合は管轄する福祉事務所が変わるため、勝手に県外へ引っ越すことはできません。県外へ引っ越しする場合は、必ず担当のケースワーカーに相談しましょう。

無断で引っ越した場合のリスク もし黙って引っ越しをすると、引っ越し費用が支給されないどころか、生活に余裕があると判断され、生活保護を廃止される可能性もあります。


引っ越し費用が支給される条件

県外引っ越しの場合でも、一定の条件を満たせば引っ越し費用が住宅扶助から支給されます。

費用が支給される主な条件(18項目)
厚生労働省の実施要領では、以下のいずれかに該当する場合、引っ越し費用が支給されます。
①住宅に関する問題
- 火災等の災害により現住居が消滅、または居住にたえない状態になった場合
- 老朽または破損により居住にたえない状態になった場合
- 著しく狭い、または劣悪で、明らかに居住にたえない場合
- 家賃の値上げや立ち退き要求により現在の住居に住み続けることができない場合
②健康上の理由
- 病気の治療にとって環境条件が悪い場合
- 高齢者や身体障害者がいる場合に設備構造が居住に適さない場合
③就労・自立のため
- 現在の居住地が就労の場所から遠距離にあり、通勤が著しく困難で、就労の場所の附近に転居することが世帯の収入の増加、健康の維持等世帯の自立助長に特に効果的に役立つと認められる場合


④その他の事情
- DV・虐待等により緊急に転居が必要な場合
- 不当な行為(居室の提供以外のサービス利用の強要、著しく高額な共益費の請求など)が行われている場合
- 入院患者が実施機関の指導に基づいて退院する際に帰住する住居がない場合
- 無料低額宿泊所等から居宅生活に移行する場合

自己都合の引っ越しは費用支給なし
「もっと新しい家に引越したい」「より利便性の高い場所に引っ越したい」等の理由では転居にかかる費用は支給されません。
ただし、自己都合でも引っ越し自体は可能です。その場合は全額自己負担となります。

支給される費用と自己負担費用

支給される費用
「生活保護受給中に支給される引っ越し費用」として、以下が含まれます。
①敷金・礼金 新居の契約に必要な敷金・礼金が上限内で支給されます。
②引っ越し業者への運搬費用 複数の引っ越し業者から見積もりを取り、最も安い見積額が全額支給されます。
③仲介手数料
④火災保険料
支給されない費用(自己負担)
①原状回復費用 旧居を退去する際、原状回復にかかる費用は原則として全額自己負担になります。旧居の入居時に敷金を支払っている場合は、退去時に原状回復費用として相殺されるほか、場合によっては敷金が返還されると収入とみなされます。


②共益費・管理費 「住宅扶助費用として支給されるのは、『家賃』のみであり、『共益費/管理費』は住宅扶助費用としては支給されず、生活費として支給される生活扶助費から支払う必要があります。

県外引っ越しの手続きの流れ(6ステップ)

ステップ1:ケースワーカーに相談
引っ越しを考え始めたら、まず最初にすべきこと、そして最も重要なことは、担当のケースワーカーに相談し、許可を得ることです。自己判断で物件を探し始めたり、契約したりすることは絶対に避けてください。
ステップ2:許可の取得
引っ越しの理由を説明し、福祉事務所から許可を得ます。費用支給の対象となるかもこの段階で判断されます。
ステップ3:転居先の福祉事務所への問い合わせ
引っ越し前に、担当ケースワーカーや転居先の自治体へ問い合わせ、自分は続けて生活保護が受給できる条件にあるのかを確認しましょう。

ステップ4:物件探し・契約
住宅扶助の上限内の物件を探します。
転居可能な物件の条件として、生活保護の住宅扶助費用の限度内に収める必要があります。

注意点 不動産業者によっては、生活保護受給者の物件を取り扱っていないところもあるので、先ずは、生活保護を受給していることを伝え、生活保護受給者が入居可能な物件を探して貰いましょう。

ステップ5:引っ越し業者の手配と見積もり
複数の引っ越し業者から見積もりを取り、最も安い業者を選びます。見積書はすべて福祉事務所に提出します。
下記のサイトを使えば一度の手続きで一括して見積りが取れるので便利です。
ステップ6:移管手続き
引っ越しをする場合、現住所での生活保護を廃止してから、新住所で新たに生活保護申請をすることになります。実際は福祉事務所間で移管手続きを行うので、生活保護の受給は引き継がれます。
移管手続きの期間 引っ越し後、担当のケースワーカーが転居確認の訪問をし、新居がある住所の福祉事務所で新たに生活保護申請をすることになります。手続きには2〜3ヶ月かかりますがその間は旧住所での生活保護が継続するので安心してくださいね。


県外引っ越しで支給額が変わる可能性

級地による支給額の違い
生活保護費は、地域や世帯人数等によって金額が異なります。そのため、県外へ引っ越しすると生活費や家賃上限が変動する可能性がありますので、注意しなければなりません。

主要都市の支給額の違い(単身世帯・65歳未満)
| 地域(級地) | 生活扶助 | 住宅扶助 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 東京23区(1級地-1) | 76,420円 | 53,700円 | 130,120円 |
| 大阪市(1級地-1) | 76,420円 | 42,000円 | 118,420円 |
| 名古屋市(1級地-2) | 73,180円 | 42,000円 | 115,180円 |
| 福岡市(2級地-1) | 71,990円 | 37,000円 | 108,990円 |
県外への転出など管轄する福祉事務所をまたいで引っ越しする場合、自治体によって生活保護の条件や支給額が若干異なるため、引っ越し前と全く同じ受給額を受け取ることができるとは限りません。事前によく確認してから引っ越しを決めるようにしましょう。

県外引っ越しの注意点

①必ず事前にケースワーカーに相談
ケースワーカーの許可がないまま引っ越すと、たとえ条件を満たしていても引っ越し費用が支給されません。また、最悪の場合は生活に余裕があると見なされて生活保護の受給がストップしてしまうリスクもあるため気をつけましょう。
②移管手続き中の医療
手続きの途中に病院に行きたい場合は旧住所の福祉事務所で医療券を用意してもらいましょう。

③各種手続きの再申請
国民年金やNHK受信料の免除手続き、水道・下水道料金の減免手続きなどは新住所の役所で新たに手続きをする必要があります。



④転居先で受給が認められない可能性
生活保護の条件は、全国どこでも同じですが、状況によっては転居地での生活保護が認められない場合もあります。

よくある質問(Q&A)

Q1:県外引っ越しはできますか?
A: はい、できます。日本国憲法第22条で居住・移転の自由が保障されており、生活保護受給者も県外に引っ越すことが可能です。ただし、必ず事前にケースワーカーに相談し、許可を得る必要があります。
Q2:引っ越し費用は支給されますか?
A: 引っ越しの理由によります。火災・老朽化・DV・就労など厚生労働省が定める18項目の条件のいずれかに該当すれば、敷金・礼金・引っ越し業者費用が支給されます。自己都合の場合は全額自己負担です。

Q3:県外引っ越しで支給額は変わりますか?
A: 変わる可能性があります。生活保護費は級地(地域区分)により異なるため、引っ越し先の級地が低ければ支給額が減少します。事前に転居先の福祉事務所に確認してください。

Q4:引っ越し後、生活保護は継続できますか?
A: はい、移管手続きにより継続できます。福祉事務所間で情報を引き継ぐため、引っ越し後も生活保護を受け続けられます。手続きには2〜3ヶ月かかりますが、その間は旧住所での保護が継続します。
Q5:無断で引っ越したらどうなりますか?
A: 生活保護が廃止される可能性があります。無断引っ越しは「生活に余裕がある」と判断され、受給資格を失うリスクがあります。必ず事前相談と許可を得てください。
Q6:実家がある県に戻りたいのですが可能ですか?
A: 可能です。ただし、実家に戻る理由(親の介護、健康上の理由など)を明確に説明し、ケースワーカーの許可を得る必要があります。実家に同居する家族がいる場合、世帯分離が認められるかも確認してください。

Q7:引っ越し先の住宅扶助の上限はどうやって確認しますか?
A: 転居先の福祉事務所に問い合わせるか、担当ケースワーカー経由で確認できます。厚生労働省の公式資料でも級地別の上限額が公開されています。


Q8:県外引っ越しの移管手続きはどれくらいかかりますか?
A: 通常2〜3ヶ月かかります。その間は旧住所での生活保護が継続するため、保護費の支給が途切れることはありません。
まとめ:県外引っ越しは可能——必ず事前相談と許可を得よう

県外引っ越しの可否
- 可能(憲法第22条で保障)
- ただし事前にケースワーカーに相談・許可が必須
- 無断で引っ越すと廃止のリスク
費用支給の条件
- 火災・老朽化・DV・就労など18項目のいずれかに該当
- 自己都合の場合は全額自己負担
- 敷金・礼金・引っ越し業者費用が支給対象
手続きの流れ(6ステップ)
- ケースワーカーに相談
- 許可の取得
- 転居先の福祉事務所への問い合わせ
- 物件探し・契約
- 引っ越し業者の手配と見積もり
- 移管手続き(2〜3ヶ月)
注意点
- 支給額が変わる可能性(級地の違い)
- 移管手続き中も保護は継続
- 医療券は旧住所の福祉事務所で発行
- 各種手続きは新住所で再申請
最後に
県外引っ越しは憲法で保障された権利であり、生活保護受給者も自由に行使できます。ただし、福祉事務所の管轄が変わるため、必ず事前にケースワーカーに相談し、正しい手続きを踏むことが重要です。
困ったときは一人で抱え込まず、担当ケースワーカーや法テラスに相談しましょう。

コメント