「住む場所がないけど、生活保護は受けられるの?」「住所がないと申請できないのでは?」ホームレス状態で困窮している方の多くが、こうした疑問を抱いています。
本記事では、ホームレスの方が生活保護を受けるための具体的な方法から、よくある誤解、支援制度まで詳しく解説します。
結論:ホームレスでも生活保護は受けられる

住所がなくても申請可能
ホームレス状態であっても、生活保護の申請は可能です。

住所不定という理由だけで生活保護を受けられないということはありません。
重要なポイント
- 申請時に住所がなくても申請できる
- 今いる場所の最寄りの福祉事務所で申請可能
- 「現在地主義」により、住民票の場所に関わらず申請できる
ただし、「申請」と「受給」は異なります。
申請時はホームレス状態でも問題ありませんが、実際に生活保護を受給するには、固定の住居を確保する必要があります。
申請から受給までの流れ
生活保護を受けるまでの基本的な流れは以下の通りです。
ステップ1:福祉事務所で申請
ステップ2:住居の確保(簡易宿泊所や施設)
ステップ3:審査・調査(原則14日以内)
ステップ4:生活保護開始決定
ステップ5:必要に応じて賃貸物件へ転居
この流れを理解しておくことで、スムーズに生活保護を受給できます。
生活保護法における「現在地主義」とは

住民票がなくても申請できる法的根拠
生活保護法第19条で定められている「現在地主義」により、住民票の場所に関わらず、今寝泊まりしている場所の最寄りの福祉事務所で申請できます。

現在地主義のポイント
- 住民票のある地域と異なる場所でも申請可能
- 今いる場所を管轄する福祉事務所が申請先
- 公園、路上、ネットカフェなど、どこにいても申請できる
窓口で断られた時の対処法
一部の自治体では、ホームレスという理由だけで申請を受理しない「水際作戦」を行うケースがあります。

窓口で断られた場合の対応
- 「生活保護法第19条の現在地主義に則って申請に来ている」と明確に伝える
- 生活保護に詳しい支援者に同行を依頼する
- ホームレス支援団体や日本弁護士連合会(日弁連)に相談する
- 法テラスの「ホームレスに対する法律援助」制度を利用する
一人で申請した場合の通過率は20〜40%ですが、弁護士などの専門スタッフが同行した場合の通過率は99%にのぼります。
諦めずに適切な支援を求めることが重要です。
ホームレスが生活保護を申請する手順

1. 福祉事務所での事前相談
まずはお住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当窓口に相談に行きましょう。
ホームレスで定まった住所がない場合は、近くの福祉事務所で相談可能です。
福祉事務所での相談内容
- 生活保護制度の説明
- 生活福祉資金の検討
- 各種社会保障施策の活用についての相談
- 申請に必要な書類の案内
2. 必要書類の準備
申請に必要な主な書類は以下の通りです。
基本書類
- 生活保護申請書
- 収入申告書
- 資産申告書
- 扶養義務者に関する申告書
- 銀行口座の閲覧同意書
ホームレスの場合、住所欄には現在地主義で今現在拠点にしている場所を記載すれば問題ありません。
収入が0円の場合は0円または「収入なし」と記入して構いません。
3. 住居の確保
生活保護を受給するには、住居が必要です。
申請から受給開始まで原則14日以内のため、早めに住居を確保する必要があります。
住居確保の選択肢
A. 救護施設・簡易宿泊所(一時的)
- 無料または低額で利用可能
- 住民票登録が可能
- 生活のリズムを整える期間として活用
B. 無料低額宿泊所
- 社会福祉法に基づく施設
- 一時的な住居として利用
- 施設職員による生活支援あり
C. 賃貸物件(受給開始後)
- 生活保護受給後に探すのが一般的
- 住宅扶助の範囲内の物件を選ぶ
- 生活保護対応の不動産業者を利用
申請の時点でホームレスが賃貸物件を借りるのは非常に難しいため、簡易宿泊所に一時的に身を置き、生活保護の受給が開始してから賃貸物件を探すのが現実的です。

4. 審査・調査
申請後、保護決定のために収入・資産等の状況を調査します。
世帯の収入・資産等の状況がわかる資料(通帳の写しや給与明細等)を提出する可能性があります。

調査される主な項目
- 資産の有無(預貯金、土地、車など)
- 収入の状況
- 扶養義務者への扶養照会
- 就労能力の確認
- 健康状態
5. 保護開始決定
審査が通れば、生活保護の開始が決定します。
厚生労働大臣が定める基準に基づく最低生活費から収入を引いた額を、保護費として毎月支給されます。


受給できる金額と扶助の内容

8つの扶助制度
生活保護には、8種類の扶助があります。
1. 生活扶助 日常生活に必要な費用(食費、光熱費、被服費など)
2. 住宅扶助 家賃、地代、住宅維持費など
3. 教育扶助 義務教育に必要な費用
4. 医療扶助 医療サービスの費用(医療費は全額支給)
5. 介護扶助 介護サービスの費用
6. 出産扶助 出産費用
7. 生業扶助 就労に必要な技能習得費用など
8. 葬祭扶助 葬祭費用
ホームレスの方が主に受給するのは、生活扶助と住宅扶助です。


具体的な受給額
東京23区で生活保護を受ける単身者の場合、おおよそ13万円ほど受給できます。
内訳例(東京23区・単身者)
- 生活扶助:約80,000円
- 住宅扶助:約53,700円(上限)
- 合計:約133,700円
地域による違い 生活保護費は、お住まいの地域や世帯人数によって異なります。都市部ほど金額が高く、地方は低めに設定されています。

引越し費用と家具家電費
ホームレスだった方が生活保護を受給できた場合、現在拠点としている場所から住居への引っ越し費用や引っ越し先での新生活に必要となる家具家電などの費用は、一定の条件を1つでも満たすことで支給されます。

支給対象となる主な条件
- 実施機関の指導に基づいて退院する際、帰住する住居がない場合
- 住宅が確保できないため、親戚や知人宅に一時的に寄宿していた者が転居する場合
- 施設を退所する際、帰住する住居がない場合
家具什器費 生活必需品の冷蔵庫、洗濯機などを購入するための「家具什器費」が支給されます。購入対象の家具家電は自治体によって異なる場合があります。

ホームレスが生活保護を受けない理由

制度を知らない・誤解している
厚生労働省の調査によると、生活保護制度を利用しない理由として「制度を知らない」は3.3%、「制度を知っているが自分は利用できないと思っている」が52.6%と、全体の半数以上を占めています。
よくある誤解
- 「住所がないと申請できない」
- 「働ける人は受けられない」
- 「障害者のための制度だ」
- 「路上から申請はできない」
これらはすべて誤解です。
正しい情報を知れば、申請できる可能性があります。
「制度を利用したくない」という心理
調査では「制度を利用したくない」が最も多い理由でした。
その背景には、自立したいという気持ちや、国に頼りたくないというプライドがあります。
具体的な理由
- 「路上で生活することにはもう慣れっこで、まだ受ける理由が見つからない」
- 「生きているんだからわざわざ国に頭なんか下げたくない」
- 「廃品回収などで自活できている」
- 「今の場所に馴染んでいる」
年齢層が低いほど、アパートに住んで就活したいという傾向にありますが、高齢層では「今のままでいい」とする人が65歳以上で41.1%もいます。
窓口での拒否体験
ホームレスが住所がないという理由で、生活保護を断られる事例は日本各地で起こっています。
一度断られた経験から、「申請しても無駄だ」と諦めてしまう方も少なくありません。
家族に知られたくない
生活保護申請時には扶養照会が行われます。

扶養照会とは親族に対して「申請者を援助できないか」を確認する手続きのことです。
照会を避けたい理由
- 虐待された経験があり、居場所を知られたくない
- 家族に心配をかけたくない
- 受給申請を地元で家族に知られると迷惑がかかる
近年は、DVや虐待のケースでは扶養照会を省略できる運用になっています。
施設生活への抵抗
生活保護受給後は支援施設へ入所することが多いですが、その施設の生活環境、特に衛生面が劣悪であったり、相部屋で規則が厳しいなどが理由で拒否する方もいます。
施設生活の懸念点
- 多人数での相部屋
- 厳しい規則
- プライバシーの制限
- 集団生活のストレス
ただし、現在は本人の意思が尊重され、施設ではなくアパートでの生活を選択することも可能です。
生活保護以外の支援制度

1. ホームレス自立支援制度
ホームレス自立支援事業は、路上生活者の自立を目指すための支援制度です。
具体的な制度は自治体次第で異なります。
主な支援内容
- 巡回相談事業
- 自立支援センターの設置
- 医師による健康相談
- 就労支援
自立支援センターの特徴
- 就労意欲のある路上生活者や失業で住む場所がなくなった方に対して、無料で衣食住の提供を行いつつ就労支援をする場所です
- 入居期間:原則3ヶ月(最大6ヶ月まで延長可能)
- 債務や未払い賃金の相談も可能
2. 生活困窮者自立支援制度
生活困窮者自立支援制度では、個別に支援プランを作成し、就職に向けた活動を条件に一定期間家賃相当額が支給される住宅確保給付金などがあります。
主な支援
- 自立相談支援事業:支援員が相談者と一緒に支援プランを作成
- 住宅確保給付金:家賃相当額を一定期間支給
- 就労準備支援
- 家計改善支援
3. 臨時特例つなぎ資金貸付
生活保護の申請から受給資格を得るまでの生活費がないホームレスの人は、臨時特例つなぎ資金貸付でお金を借りられます。
貸付条件
- 離職者を支援する公的給付制度または公的貸付制度の申請を受理されている
- 当該給付等の開始までの生活に困窮している
- 貸付を受けようとする方の名義の金融機関口座を有している
貸付額
- 上限:10万円程度
- 返還:生活保護決定後に支給される保護費から返還
急迫した状況での緊急保護

申請なしでも保護される場合
病気等により急迫した状況にある者については、申請が無くとも保護すべきものとされています。
その後、要保護者の意思確認が可能となった場合には、保護受給の意思確認を行います。
急迫保護の対象
- 路上で倒れて意識がない
- 重病で動けない状態
- 凍死・餓死の危険がある状態
- 医療機関に緊急搬送された場合
このような緊急時は、本人の申請がなくても行政が保護を開始できます。
申請時の注意点と成功のコツ

支援者と同行する
前述の通り、一人で申請した場合の通過率は20〜40%ですが、専門スタッフが同行した場合は99%です。
相談できる窓口
- ホームレス支援団体
- 日本弁護士連合会(日弁連)
- 法テラス
- 生活保護サポート団体
- 社会福祉協議会
諦めずに複数回相談する
一度窓口で追い返された場合でも、生活保護に関する知識のある人と同行することで申請できた人も多くいます。
一度断られても諦めず、支援者を見つけて再度申請することが重要です。
正直に状況を説明する
虚偽の申告は後々問題になります。
正直に伝えるべきこと
- 現在の収入状況(ゼロならゼロと)
- 所持している資産
- 健康状態
- 就労能力
- 家族関係
正直に説明することで、適切な支援を受けられます。
記録を残す
窓口での対応に問題があった場合に備えて、記録を残しましょう。
記録すべき内容
- 日時
- 対応した職員の名前
- 言われた内容
- 提出した書類
- 次回の予定
後で問題があった場合の証拠になります。
ホームレス状態から抜け出すために

一歩を踏み出す勇気
生活保護を受けることは、決して恥ずかしいことではありません。
憲法で保障された権利です。
憲法第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する
路上生活から抜け出し、安定した生活を取り戻すための第一歩として、生活保護を活用することは正当な選択です。
情報を正しく知る
路上で生活しているホームレスの方々の多くは、生活保護制度についての情報がなく、何が何だか分からないから今のままでいい、といったケースもあります。
正しい情報を知ることで、選択肢が広がります。
支援者とつながる
一人で抱え込まず、支援者や専門家の力を借りることが成功の鍵です。
つながるべき支援者
- ホームレス支援団体のスタッフ
- 社会福祉士
- 弁護士
- ケースワーカー
- NPO法人
多くの支援団体が、無料で相談に乗ってくれます。
よくある質問

Q1. 働ける状態でも生活保護は受けられますか?
A1. はい、受けられます。生活保護は、居住地がないことや稼働能力があることのみをもって保護の要件に欠けるものではありません。ただし、就労指導を受ける可能性があります。

Q2. どのくらいの期間で受給できますか?
A2. 原則として申請から14日以内に決定されます。ただし、住居の確保に時間がかかる場合もあります。
Q3. 生活保護を受けたら必ず施設に入らないといけませんか?
A3. いいえ。施設入所を拒否すれば、施設入所を強要することはできないため、アパートに入居して生活保護を受けることができます。
Q4. ネットカフェに住んでいても申請できますか?
A4. はい、できます。ネットカフェ難民も住所不定として扱われ、現在地主義で申請可能です。
Q5. 外国人でも生活保護は受けられますか?
A5. 日本国籍を持たない方でも、一定の条件を満たせば生活保護に準じた支援を受けられる場合があります。福祉事務所に相談してください。

Q6. 生活保護を受けると就職できなくなりますか?
A6. いいえ。むしろ生活保護を受けながら就職活動をし、安定した収入を得られるようになれば、生活保護から自立できます。

まとめ:ホームレスでも生活保護は権利

重要ポイントの再確認
- 住所がなくても申請できる
- 現在地主義により、今いる場所の福祉事務所で申請可能
- 住民票の有無は関係ない
- 申請と受給は別
- 申請時は住所不要
- 受給には住居が必要
- 簡易宿泊所や施設を利用して住居を確保
- 支援者と同行すると成功率が高い
- 一人での申請:20〜40%
- 専門家同行:99%
- 諦めないことが大切
- 一度断られても再チャレンジ
- 支援団体に相談
- 法的サポートの活用
最初の一歩
もしあなた自身、または周りにホームレス状態で困っている方がいたら、まずは以下の行動を取ってください。
今日できること
- 最寄りの福祉事務所の場所を確認
- ホームレス支援団体に連絡
- 法テラスに相談
- 信頼できる人に相談する
生活保護は、憲法で保障された国民の権利です。
住所がないから、働けるから、プライドがあるから、といった理由で諦める必要はありません。
路上生活から抜け出し、安全で安定した生活を取り戻すために、生活保護という選択肢があることを知ってください。
そして、一歩を踏み出す勇気を持ってください。支援者は必ずあなたの味方になってくれます。

